人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第23回 GMOインターネット株式会社

Profile

(左)目黒 隆幸氏

人事総務部 兼 グループ人事部 部長

2000年にGMOインターネットに入社、グループ総務部に配属。2006年5月、部署編成にて人事総務部・グループ人事部の責任者となる。

(右)谷下田 まどか氏

人事総務部 兼 グループ人事部 マネージャー

メーカー勤務を経て2007年にGMOインターネットのグループ会社に入社、管理部門に配属。2011年、GMOインターネットに転籍。人事担当として採用・研修業務に従事。

「すべての人にインターネット」。GMOインターネットグループは、この言葉をキーワードにインターネットの"場"の提供に経営資源を集中してきた。現在では、上場企業10社を中心とした全114社、グループ総勢6,000名超の総合インターネットグループに成長している。新型コロナウイルスの影響下で、どのように採用活動を進めてきたのか、またどのような人材を求めているのかを、人事総務部兼グループ人事部部長の目黒隆幸氏と同部マネージャーの谷下田まどか氏にうかがった。

社会インフラとなったインターネット事業

──GMOインターネット(以下、GMO)とはどのような会社ですか。

谷下田 1995年にインターネット事業を開始したGMOは、「すべての人にインターネット」を合言葉に、インターネットをより豊かに便利にするための事業を行ってきました。当グループではインターネットインフラ事業、インターネット広告・メディア事業、インターネット金融事業、暗号資産(仮想通貨)事業を展開しています。その中でもインターネットインフラ事業はグループ全体の収益の半分以上を占めています。
 インターネットインフラとは、インターネットを使うための基礎です。例えばネットワークが道路だとすると、その道路上で情報を運ぶトラックがプロバイダー、受けとる皆さんの家の住所がドメインで、家がサーバーに当たります。GMOグループのインターネットインフラ事業は、ドメイン、クラウド・ホスティング、EC支援、セキュリティ、決済、アクセスのどれもが国内でトップシェアを占めています。インターネットを使う上で、なくてはならないインフラサービスを提供しているのがGMOです。

目黒 企業理念に「スピリットベンチャー宣言」を掲げ、サービスの開発からお届け、その後のサポートまですべてを自社で行う事業会社であることが大きな特徴です。事業、サービス、システムのすべてを内製化しているところに強みがあります。お客様にサービスを提供し、そのさらに先のインターネット利用者に向けてサービスを提供しているので、実はとても多くの方に当社のシステムや基盤を使っていただいています。

──今後、何か新しいサービスを展開する計画はありますか。

谷下田 既存サービスではありますが、新型コロナウイルスの影響下で話題になった「ハンコ通勤」(押印のためだけに通勤するという状況)を改善するべく、グループ会社のGMOクラウド株式会社・GMOグローバルサイン株式会社が共同開発した、電子契約サービス「GMO電子印鑑Agree」を期間限定で無償提供するなどの取り組みを実施しています。

採用のメインは作り手

──GMOでは新卒採用、中途採用をどのように行っていますか。

谷下田 新卒・中途問わず、当社の選考を希望される方には、エントリー段階でまず当社の企業理念「スピリットベンチャー宣言」を必ず読んでいただきます。それに賛同いただき、グループのめざすところに一緒にチャレンジしてもらえるかどうかを、最も大切にしています。
 また新卒・中途ともに当社の採用は、エンジニアやクリエーターといった作り手である技術者がメインです。特に新卒の場合は、インターネットサービスの作り手側になることに興味を持っている方、事業会社としてすべて自分たちで作るということにワクワクしてもらえる方、自分でモノを作って直接お客様に届けるということにやりがいを感じていただける方、技術やインターネットがとにかく好きな方を求めています。

目黒 私たちは幅広く事業を展開していますので、新しいビジネスやサービスを開始することも多く、スピードが速い分、新しい取り組みと既存の枠組みとをどうすり合わせ、調整していくのかがとても重要です。新たに事業やサービスを展開する際には会計や法律、人事総務などとの連携が大切ですので、エンジニアを支えるバックオフィス、専門職の方も多く採用しています。技術系の部門と管理部門ががっちりとタッグを組んで事業を進めていくという体制が構築されているのが当社の強みです。
 また“100年単位で続く組織・企業グループを作る”というグループ代表の思いを実現するために、創立25周年の現在、我々がその礎を作る役割を担っていると捉えています。

──新卒と中途、どちらの採用がメインでしょうか。

谷下田 年間の入社人数で言うと中途採用のほうが多いですね。新卒は2020年4月に、当社単体で41名、グループ全体で約170名が入社しました。中途は年度によって異なりますが、新しいビジネスや新しい事業を開始することが決まったときにその要員を一括採用することもあれば、専門分野の人材を必要に応じて採用することもあります。適材適所で必要なスキルを持つ人材を必要数採用することが多い一方で、年度計画として中途採用を行う部門もあるので、1年を通じて中途採用を行っています。

──管理部門の採用はどのように行っていますか。

目黒 新卒の場合は管理部門という採用枠はなく、事業部門と管理部門のいずれかで活躍する人材をビジネス職として募集・採用し、必要に応じて適当な部門へ配属しています。2020年度の新卒入社41名のうち、10名前後がビジネス職として配属される予定です。

すべてオンラインで実施した2021年度新卒採用

──2021年度の新卒採用活動は新型コロナウイルスが大きく影響したと思います。コロナ禍のもと、新卒採用はどのように進めましたか。

谷下田 当社の新卒向け会社説明会には入口が2つあります。1つは動画説明会で、24時間いつでもご自身の都合に合わせて参加できるものです。もう1つは定期的に実施しているライブ説明会で、以前は会場で実施しましたが、2021年度向けはすべてオンラインで実施しました。また、大学や専門学校等での説明会もオンライン開催となりました。
 この会社説明会で興味を持たれた方にエントリーシートを提出していただき、書類選考通過後は4回の面接を経て内定となります。こちらもすべてオンラインで行いました。

──説明会から面接まですべてオンラインだったのですね。

谷下田 そうですね。始めはどうなることかと思いましたが、私たちが思っていた以上に学生の皆さんの抵抗は少ないようで、オンラインでの選考をスタートしてからもスムーズに採用活動を行うことができました。
 採用活動を通して、このような状況の中でもオンラインで企業を知るチャンスがあるということをすごく喜んでいただけた実感がありました。従来通り東京と九州で説明会を実施するよりも、オンライン説明会にすることで幅広い地域の皆さんに参加していただけるようになり、これまで出会うことのなかった地域の学生と接点を持つことができたこともとてもよかったと思っています。

──一度も顔を合わさずに内定を出すことに不安はありませんでしたか。

谷下田 実際に働く職場を見ていただくことも、ひとつの大事なコンテンツとして選考のステップに入れていましたので、状況を見ながら一度は会社に来てもらいたいと最後まで悩みました。しかし、応募者にとっては選考が止まることが大きな不安要素になるため、難しい判断でしたが、オンラインのみで最後まで進めました。そして選考で最後まで残った方には状況を見て1名ずつ来社していただき、会社の中を案内しました。
 オンラインでは会社の空気感も伝わりにくいため、自分が働くであろう環境を一度は見てみたいという思いは、私たちよりも応募者のほうが強いと思います。そこで、ライブには敵いませんが、オンライン説明会の中になるべく社内の雰囲気が伝わるような写真や動画を取り入れるよう工夫しました。

学生生活を悔いなく過ごしてほしい

──内定者フォローはどのように行っていますか。

谷下田 同期との親睦をなるべく早い段階から深めてもらうための懇親会や、先輩・人事部との交流会を随時行っています。少しずつ当社で働くイメージを持っていただきたいので、7月からオンラインでの懇親会を実施しており、人事部だけではなく、できるだけ現場の年の近い先輩にも参加してもらっています。また、10月に行う内定式もオンラインでの開催を計画しています。
 また、入社以前にeラーニングなどで学習をしていただくということは一切ありませんが、技術者が多いこともあり、内定者同士で技術勉強会を開催するサポートをしたり、当社が開催する技術イベントに参加してもらったりと、様々なコンテンツを用意しています。
 一番は学生生活を悔いなく過ごしていただくことだと考えていますが、いずれ当社の仲間としてインターネットサービスを「使う側」から「提供する側」になることを自覚して、様々なインターネットサービスに触れて興味を持っていただきたいですね。

──2020年4月の入社式と新入社員研修はオンラインで実施されたのですか。

谷下田 そうですね。入社式から5月末までの研修は完全にオンラインで実施しました。新卒パートナー(新入社員)は6月1日から出社し、OJTを受けています(7月1日時点)。
目黒 新卒パートナーからは「配属前に一度は職場を歩かせてください」という希望がありました。職種によって状況は違いますが、現在大きな単位で配属されているメンバーとまだ研修期間中のメンバーがいて、どちらも実際の職場なり環境を経験した上で、8月中旬までにすべての正式な配属先を決めていきます。

実際の出社で得られる貴重な体験

──GMOの新入社員研修についてご紹介ください。

谷下田 新卒パートナーには入社後3年間、1年で4回、計12回の研修を用意しています。2020年はオンラインとなりましたが、予定通り実施しています。しかしながら、やはりオンラインだけでは伝えきれない部分や、顔を合わせて行うからこそ伝えられる部分があると感じているため、必要に応じてオンラインでの不足を補う研修を追加しようと考えています。

──直接顔を合わせることでしか伝えられない部分とは、具体的にどのようなものでしょうか。

谷下田 たくさんありますね。顔を合わせるからこそわかる空気感や温度感、例えば今日は先輩たちがバタバタしていて忙しそうだなとか、席に座っていれば伝わる部署の雰囲気などは、どうしても文字や画面上では伝えきることができません。先輩たちの顔をしっかり見ながら仕事をする。もしくは先輩たちの話し声が聞こえる中で業務をする。それも言葉には代えられないとても大事な経験です。そうした空気感を味わってもらうために、6月から出社している新卒パートナーには研修室ではなくて、様々な業務スペースのど真ん中で研修を受けてもらっています。
目黒 まさに空気感という言葉にすべて表されていると思います。PC画面の中だけでは他の情報が得られませんが、会社に来れば自分の業務をしながら、他の同期が指導を受けたり、さまざまな業務を行っていることが情報として得られたりするわけです。そういったところにこそ、実は伝えたい情報が満載なのです。

──今後の採用活動はオンラインが中心になっていくのでしょうか。

谷下田 オンラインとオフラインのハイブリッド型になると思っています。先ほどお話ししたように、働く環境を見てもらうことや、仲間に会ってもらうことを非常に大事にしているため、完全オンラインでの採用活動もできますが、両方のいいところを活用しながらやっていけたらと思っています。
 会社説明会については、いろいろなやり方ができると考えています。同じ時間帯で全国、全世界の方々に当社を知ってもらえる手法としては、オンラインが非常に効果的だったと感じていますので、うまく組み合わせていけたらいいですね。

目黒 採用活動とは話が変わりますが、毎年6月に、前年度に活躍したパートナーを表彰する「GMOインターネットグループアワード」というイベントを開催しています。いつもはホテルの大きな会場に大勢のパートナーを集めて行いますが、2020年度は完全オンラインで実施しました。これまでは会場のキャパシティが人数制限となっていましたが、オンライン開催にすることでより多くのパートナーが参加することができるようになり、大人数でもスムーズにコミュニケーションを取ることができるという経験を得ました。一方で「やはりオンラインでは物足りなかった」という意見も出ていて、採用活動に限らず、オンラインとオフラインをどのように融合していくかが重要になっていくと思います。

インターネット産業で活躍する専門職に期待

──ユニークな福利厚生や幅広い人事制度の中で、特徴となるものをご紹介ください。

谷下田 当グループはNo.1のサービスを提供することをめざしており、パートナーが意欲や能力を充分に発揮できる環境を整えるべく、社内のカフェや託児所、マッサージ室、お昼寝スペースなどの福利厚生施設を充実させています。
 人事・教育制度面では、新卒、中途、役職向けなど、様々な研修を用意しています。一方で、自分たちで能動的に勉強会などを開催する際は、自由に使えるカフェやオープンスペースがたくさんありますので、パートナーはそちらをうまく活用しています。会社から伝えること、自分たちから学んでいくこと、ともに積極的なところが当社の大きな特徴です。

目黒 特に技術者は、自分たちで独自のコミュニティやネットワークを作り、そこでの情報交換をアクティブに行っています。インターネット上の情報で恩恵を得てサービスを作っているからこそ、自分たちが得たものはインターネット上に還元するという思考を、もともと持っているんですね。そこで、会社の垣根を超えたエンジニアやクリエーターたちが当社のカフェやオープンスペースでいろいろなイベントを開催し、より幅広い技術やノウハウ、経験をいろいろな人とつながることで広げています。そういう機会を積極的に作ることができる環境があるのも、当社の大きな特徴です。

──資格取得のためのフォローアップ制度はありますか。

谷下田 まず、選考の過程でこの資格がないとエントリーできないといったハードルはありません。そして技術者限定とはなりますが、入社後は「GMOすごいエンジニア制度」という、資格取得に際して教材購入や受験のための費用を会社が負担する制度が利用できます。
 また、専門分野では有資格者を必要に応じて中途採用しているので、財務部には公認会計士が複数名いますし、法務部には弁護士も在籍しています。そうした有資格者が資格を維持するための費用は会社がすべて負担しています。

──資格を仕事に活かしたいと考えている方々にメッセージをお願いします。

谷下田 スピードと変化は、インターネット産業の大きな特徴です。まだまだ発展途上の産業だからこそのおもしろさがあります。その変化とスピードの中、自分の専門分野や専門知識を活かして新しいビジネス・サービスを作ってみたいという想いで、当社に入社する専門職の方が大勢います。専門職としての確固たる自分の領域と、当社事業の融合に興味を持ってもらえる方ならとても楽しいはずです。チャレンジしてみたいという高度な専門知識をもつ専門職の皆さんにも、ぜひ来ていただきたいと思っています。

[『TACNEWS 』2020年10月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]

GMOインターネットグループ オフィス外観(セルリアンタワー・渋谷フクラス)

会社概要

社名  GMOインターネット株式会社
設立  1991年5月24日
代表者 代表取締役会長兼社長・グループ代表 熊谷 正寿
グループ本社 東京都渋谷区桜丘町26番1号 セルリアンタワー

事業内容

インターネットインフラ事業、インターネット広告・メディア事業、
インターネット金融事業、暗号資産(仮想通貨)事業

従業員数

6,012名(※2020年3月末日時点・企業グループ合計数)

URL: https://www.gmo.jp/