人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第20回 セコム株式会社

Profile

二宮 美保氏

セコム株式会社
人材採用部 部長

1985年、セコムに中途入社。人事部に配属され、給与、労務、社内人事制度構築、社員からの各種相談担当、ダイバーシティ施策などに取り組む。2019年4月より人材採用部部長として人材採用の責任者となる。


 オフィスビルの入口や一般家庭の玄関先などで、セコムのマークが入ったステッカーを目にしたことがある方は多いことだろう。また、テレビコマーシャルなどでもセコムの名前を目にする機会は少なくない。日本初の警備保障会社であるセコム株式会社は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで2度目のオリンピックの警備を担当することになる。
 セコムの求める人材像、採用活動、教育・研修などについて、人材採用部部長の二宮美保さんにお話をうかがった

日本で初めての警備保障会社

──セコム株式会社についてご紹介ください。

二宮 セコムは日本初の警備保障会社として1962年に創業しました。1964年に開催された東京オリンピックでは、オリンピック組織委員会から依頼され、選手村の警備に約100人の警備員を派遣しました。当時、日本社会に生まれたばかりの「警備」という仕事は、まだ世の中に知られていませんでしたが、この警備を成功させたことから認知度が高まり、社名も広く知られるようになって、その後の飛躍的な成長につながりました。
 創業当時の警備は、人だけで行っていましたが、その後センサーと通信回線を使ったオンライン・セキュリティシステムを開発。現在、国内の企業向けに約106万件、家庭向けに約136万件、計約243万件のお客様にさまざまなセキュリティサービスを提供しています。このほか、ドローンやロボットによる警備や、大規模スポーツイベントでは飛行船や気球を駆使した空からの警備なども行っています。
 セコムはあらゆる不安のない社会の実現をめざし、いまお話ししたセキュリティ事業に加え、ほかにも防災事業、メディカル事業、保険事業、地理空間情報サービス事業、BPO・ICT事業、不動産事業、国際事業を展開し、海外18の国と地域で事業を展開しています。

──今回の東京オリンピック・パラリンピックで、オリンピックの警備は2回目になるのですね。

二宮 そうですね。2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックでも警備を担当しますが、必要となる警備員は1万4千名といわれており、弊社1社だけで対応できる規模ではありません。そこで、1都3県の警備会社を中心とする警備共同企業体を設立し、数百社からなる「オールジャパン体制」で取り組むことにしました。1964年の東京オリンピックの参加選手は約5,000名でしたが、東京2020大会は約1万5,000名と3倍になると聞いていますし、万全の体制で臨めるよう準備しています。

セコムが求める人材像

──セコムでは、どのような採用をされているのですか。

二宮 新卒採用と中途採用の両方を並行して行っており、通年で採用活動をしています。募集に際しては6つのコースを用意しています。それは「総合」「エリア総合」「設備保守・施工管理」「研究・開発」「メディカル」「ICTエンジニア」の6つで、「メディカル」と「ICTエンジニア」はグループ会社での採用となり、「設備保守・施工管理」と「研究・開発」はいわば専門職の採用になります。特に「設備保守・施工管理」については、電気工事士や電気主任技術者の資格をお持ちの方を求めています。

──「総合コース」と「エリア総合コース」の内容について教えてください。

二宮 「総合コース」の新卒採用では、警備の仕事に限定することなく、幅広い事業分野や部門での活躍が期待できる人材を求めています。中途採用の場合は、侵入・火災などの異常信号を受信した際に現場に駆けつけるビートエンジニア、立哨を主にする常駐警備員、現金護送隊員の3つが入社後のメインの活躍の場となります。
 「エリア総合コース」は、近年、ご家族の近くで働きたいという学生や就職希望者が増えていることに対応して設けたコースで、勤務地を本人が希望するエリア(希望する都道府県内及び通勤可能な隣県)に限定し、地域に根ざした働き方ができることが特徴です。

──どのような人に来ていただきたいですか。

二宮 「安全・安心」な社会の創造に取り組んでいる会社ですので、誠実であることが求められます。また、価値観を共有できることが大切です。セコムの理念の1つに「正しさの追求」という言葉があります。本人にとって正しいかどうか、あるいは組織・会社にとって正しいかどうかと、「正しさ」にはさまざまな捉え方がありますが、セコムは、「社会から見て正しいか」を判断尺度としています。些細なことであっても、この判断尺度を持って、思考し、行動ができるかどうかは重要です。そして、社会に貢献する会社ですから、周りの人々の役に立つことを喜びと感じる方、そのための挑戦意欲が高い方に来ていただきたいと考えています。

──採用選考のプロセスについて教えてください。

二宮 新卒採用の場合、セミナーと呼ばれる就職説明会にまずは参加していただき、適性検査を受けてもらいます。その後、グループ面接、採用担当者による面接、本社の採用責任者による面接を受けていただいて内定となります。
 中途採用は、随時募集しています。ご応募いただいたのち、適性検査と面接を受けていただき採用となります。新卒採用と中途採用のどちらも、面接の際にはご本人の成功体験や失敗体験などをお聞きして、物事をどのように捉えているのかを確認しながら、「安全・安心」な社会創りに一緒に取り組んでいける方かどうかを判断しています。

新入社員研修後、OJTで警備の仕事を学ぶ

──新卒採用の場合の内定者フォローについて教えてください。

二宮 2020年4月入社の場合、内定式を東京と大阪で複数回実施しました。1月の内定式には、留学や勉学、部活などで一般的な就職活動シーズンに間に合わなかった方や、少し遅めに就職活動を始めた学生の方が参加しています。
 内定者に対しては、先輩社員との座談会や懇親会などを各地で実施しています。例年、入社までの時間は二度とない学生時代にしかできない経験を十分にしてください、とお話ししています。ただ近年、「入社まで時間があるので何か勉強をしておくことはありませんか」という声が多く聞かれることから、社員向けの通信教育の一部を提供することにしました。すると多くの内定者が手を挙げてくれました。「新社会人基本」「Excel、Wordの基本」といったコースが人気のようです。

──内定者の声から、通信教育の提供をスタートされたのですね。こちらは試験などが伴うものでしょうか。

二宮 教材をお送りして、自分自身で勉強してレポート提出をしてもらうもので、試験などはありません。コースをきちんと修了していただくことが大切です。

──入社後の新入社員研修について教えてください。

二宮 警備の仕事に配属される方の場合、新入社員研修では、約1週間、セコムの基本理念や社員としての心構えのほか、「警備業法」で定められた教育、救急法、それぞれの業務に必要な知識や技能を学んでいただきます。新入社員研修を終えて事業所に配属されたあとは、職場でのOJTに加え、入社3ヵ月後、6ヵ月後、1年半後にフォロー研修を実施しています。

──その後の進路はどうなっていくのでしょうか。

二宮 所属する事業所の人員構成などでも変わりますが、本社や各事業所で警備以外の仕事に就くほか、セキュリティ事業以外の分野に異動することもあります。一定年数が経てば必ず異動するといった決まりではなく、本人の希望や適性を見て適材適所で配置しています。
 本人の希望は年1回の自己申告制度で申告できるようになっており、上司による人事評価と面談は年2回行っています。また、チャレンジサポート制度といって、社内・グループ内でまったく違う仕事に就きたいという希望も支援しています。いわば社内転職サポートですね。

──教育・研修制度について教えてください。

二宮 「社員の向上と会社の発展は一体不可分」という基本理念に基づき、社員の成長段階と職種に応じた独自の研修・教育体系を整備して人材育成に力を注いでいます。そのためにセコムには全国に4ヵ所、多摩(東京都)、御殿場(静岡県)、名張(三重県)、阿蘇(熊本県)にセコムHDセンターという自社の研修施設があります。年間約300コースの研修を用意して、延べ1万人以上が研修を受けていますから、セコムHDセンターはフル稼働の状況です。警備だけでなく営業や管理部門などでも業務上必要となる知識や年次での研修などさまざまな研修を実施しています。このほか、eラーニングで受講できる研修も用意しています。  お客様と接する社員はセコムそのものですので、教育・研修には特に時間をかけています。

──制度の中には、海外留学制度もあるのですね。

二宮 広い視野を持った人材の育成を目的に公募する制度で、エントリーシート、論文審査、役員面接により選抜しています。欧州・米国やアジア圏の大学院に留学し、海外という日本とは異なる環境の中での生活経験を通じて、さまざまなものの見方や考え方を吸収して視野を広め、仕事に活かしてくれることを期待しています。

98.6%の社員が育児休業から復職

──福利厚生で特徴的なものがありましたら教えてください。

二宮 社員から評価が高いのは、育児休業を子どもが3歳に達するまで取得できるようにしていることです。なかなか保育園に入ることができない場合でも、心配なく休めてよかったとの声を聞いています。また、育児のための就業時間変更・免除(短時間勤務)は小学校1年生まで可能としています。子育てをしている多くの社員が短時間勤務の制度を利用しており、利用する社員が帰宅しやすいように、周囲の協力を求めるマークが描かれた立て札も配付してサポートしています。育児休業後の職場復帰に際しては、ワーク・ライフ・バランスを重視した配属に配慮していることもあり、98.6%もの社員が復職しています。また、2002年からは毎年、男性社員も育児休業を取得しており、2018年度は年間の育児休業取得者138名のうち9名が男性社員でした。
 また、出産・育児・介護などのやむを得ない理由で退職した社員に対し、復帰希望の申請ができる「ジョブリターン制度」を設けています。社員の将来のライフイベントによる離職の不安を軽減し、安心して活き活きと働くための制度です。

──先ほど社員向けの通信教育があるとのお話がありましたが、その内容を教えてください。

二宮 社員の自己啓発を支援するもので、社員なら誰でも受講でき、その講座を修了すると、会社から「自己啓発助成金」が補助されます。現在、業務に必要な資格の取得をめざす公的資格取得コース、職能別コースのほか、語学、IT、一般教養などの講座が用意されています。

──セコムでは資格についてはどうお考えですか。

二宮 所属する部署の業務上で必要となる資格については、会社として研修の実施や取得費用の負担も含めて支援しています。また、仕事に活かすことのできる資格、例えば人事部で働く社員が社会保険労務士の資格を持っている場合などは、その専門知識を活かして成果を出すことで高い評価が得られるでしょう。実際に、社内には社会保険労務士、弁護士、公認会計士、税理士などの資格を活かして活躍している社員もいます。

──採用選考の段階で、エントリーシートや履歴書に簿記検定など何らかの資格を取得していること、あるいはTOEIC®L&R TESTのスコアが書いてあった場合はどう評価されるのですか。

二宮 セコムでは価値観や人柄などを重視した採用を行っていますので、資格を持っているから、あるいはスコアが高いからといって、それだけで採否を決定することはありません。ただし、そういった資格の取得やスキルアップに向けてチャレンジしているという姿勢が、大いに加点評価になることは間違いありません。

──最後に、スキルアップをめざしている方々に向けてメッセージをお願いします。

二宮 資格取得に挑むということは、時間的な制約もある中で大変なことだと思いますが、挑戦するモチベーションを持っているというのはすごくいいことだと思います。そうしたことを考えると、ぜひ資格取得にチャレンジする方を応援したいですね。

[『TACNEWS』 2020年4月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]

会社概要

社名     セコム株式会社
設立年月日  1962年(昭和37年)7月7日

代表者    代表取締役会長 中山泰男

       代表取締役社長 尾関一郎

所在地    東京都渋谷区神宮前1丁目5番1号

事業内容

セキュリティ事業、防災事業、メディカル事業、保険事業、地理空間情報サービス事業、BPO・ICT事業、不動産事業、国際事業

従業員数

15,986名 

グループ総社員数 63,080名(2019年3月現在)