人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第16回 株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS

Profile

西村 壽哉氏

株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS
コーポレート統括部 People Activation部 部長

2004年、新卒で株式会社有線ブロードネットワークス(現:株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS)入社。入社以来ほぼ人事部門に所属(1年半の営業マネージャー経験あり)。2018年9月にPeople Activation部が創設されると部長に就任し、それまで人事部に含まれていた採用企画・制度企画機能を一手に引き受ける。


1961年、大阪ミナミで創業した大阪有線放送社は時代の変遷とともにその姿を変え、2017年12月には株式会社 USEN-NEXT HOLDINGSとして新たなスタートを切った。そのスタートに合わせて、採用活動でも様々な新たな取り組みにチャレンジしている。USEN-NEXT HOLDINGSのリクルーティングスタイル、そして新たな働き方について、コーポレート統括部 People Activation部 部長・西村 壽哉氏にうかがった。

「応募者ファースト」のリクルーティングプログラム

──USEN-NEXT HOLDINGSとはどのような会社ですか。

西村 音楽配信や店舗向けソリューションを展開してきたUSENと、動画配信や通信系事業を展開するU-NEXTが、2017年12月に経営統合しました。その後ホールディングス体制となり、傘下には18社の事業会社が名を連ね、店舗サービス、通信、業務用システム、コンテンツ配信、エネルギー、メディアと6つのセグメントで売上を構成しています。
 ホールディングスには人事・総務・広報・経営企画などの間接部門があり、私の所属するPeople Activation部は人事部門の一部として2018年9月に発足しました。新卒採用、中途採用、グループ間の異動調整、制度企画、働き方改革などを担い、新しい採用制度設計も行っています。
 ホールディングス体制後の、2019年4月入社の新卒がUSEN-NEXT GROUPとして採用する一期生になりました。

──経営統合後の新たな採用にあたり、どのような採用戦略をお考えでしたか。

西村 グループとしてはじめての新卒採用ですから、新しくてイノベイティブで画期的なものでありたいと考えました。そこでまずは新卒採用を皮切りに、就職活動の既成概念に捉われないユニークな採用をしていこうと決めました。
 それが2018年にスタートした「超!全力採用」です。事業はもちろん、採用活動自体に興味を持ってもらい、チャレンジングで変化に強い学生の方に応募してほしいという思いで、これまでなかったまったく新しい採用活動に取り組もうと考えました。
 こうして一期生募集を行った結果、2019年4月に340名の新卒を採用することができました。入社後は、ホールディングス所属で各事業会社に出向という形で配属しています。中途採用もグループ全体で約300名と、新卒とほぼ同数を採用しています。

──「超!全力採用」とは具体的にどのようなものですか。

西村 以前から「学生ファースト、応募者ファースト」というポリシーを大切にしてきた私たちは、「超!全力採用」で6つの施策を考えました。
 事業会社や職種の組み合わせで自由にコースを選択できる「マルティプル・エントリー」、1次選考で自身の個性や熱い想いを動画でPRできる「SMART PR(動画投稿エントリー)」、就職活動で苦労している地方学生のために人事部門の最終面接担当者が各地へ出向いてその場で内定も出す「”全力”スカウトキャラバン」、勉強が忙しい学生や遠方に住んでいる方などが希望すれば最終選考までのすべての面接でライブチャットによる選考が可能になる「LIVEビデオインタビュー」、選考途中で不合格となっても別のコース選択をすれば途中から選考を再スタートできる「トライアウトリベンジ」、会社説明会に3人以上で参加し一緒に働きたい仲間を紹介したら1次選考をスキップし、2次選考に進める特典が得られる「リファラル・スキップ」。
 この6つの施策は、これまでの就職活動にはなかった施策ですが、学生にも私たちにもメリットがあると考えました。

「超!全力採用」がさらに進化した「GATE」

──説明会を行い、内定式、入社式という就職活動の流れは変わりましたか。

西村 今、「超!全力採用」を1年間実施して、グループ全体の採用プログラムを飛躍・発展させた形で一新しようとしているところです。それが現在推進している「GATE」です。
「GATE」の趣旨は、まずは脈々と受け継がれてきた新卒・中途採用の慣習、例えば新卒一括採用や大学3年生の終わりから4年生にかけて就職活動するといった既成概念を見直そうということで始まりました。私たちは「フェア、シンプル、イノベイティブ」の3つのポリシーを掲げていて、学生、求職者と我々が常に対等な立場であり、求職者が「なりたい自分になる」ための門戸が常に開かれているべきと考え、「GATE」と名付けました。
 その一環として、まずは新卒一括採用を廃止して通年採用にシフトしました。18歳以上であれば年齢・学歴・国籍を問わず、いつでも応募OKで、希望があれば在学中の正社員として入社もできます。エントリー窓口はいつでも開いているので、自由に応募し入社時期を決めることができるわけです。
 応募にあたっての設計は極力シンプルであるべきと考えており、煩わしい書類選考や適性検査はなく、エントリーに必要な情報は「名前と年齢とメールアドレス」だけとしています。面接会場に来られない、あるいは忙しいといった場合にはライブチャットで面接が受けられますし、働く事業領域と職種も自由に選べて条件を満たせば何度でも選考に挑戦できます。
 応募者と私たちにとってメリットのある取り組みをどんどんやっていこうと様々な展開を模索しているのがこの「GATE」です。

──2018年の「超!全力採用」をさらに進化させたのが「GATE」ということですね。

西村 「GATE」自体が完成形というより、様々な施策を実施しながら「フェア、シンプル、イノベイティブ」の3つのポリシーに沿って徐々に変えています。入社受け入れにあたってのプロセスも同様です。例えば2018年10月には内定者ウェルカムパーティーを開きましたが、通年採用になりましたので10月にやる必要性はないと考え2019年は実施しませんし、4月に入社式を行うのもおかしいのではないかと考え、2020年については検討中です。2020年新卒と銘打ってはいますが、実際は在学中の2019年10月に入社する学生や、2020年2月〜3月頃から少しでも早く入社したいという学生もいるので、そこは希望をしっかり受け入れて早めにスタートを切ってもらいます。

──そうすると内定者研修を含めフォローアップ体制はどうなりますか。

西村 もちろん入社前のフォローはきちんとしていきます。リアルなイベントの場として、配属相談会や各事業会社を理解していただくための説明会を実施します。また、その様子をSNSでライブ配信してその場で質問を受けたり、映像をまとめてアーカイブにしたりと情報提供や理解促進につながる活動はしっかりと行います。
 入社時の研修についてはただ今準備中ですが、早期入社の方がいるのでeラーニングを充実させ、いつ入社しても基本的なオリエンテーリングは視聴できるようにします。その他、必要なフォローは適宜行いつつ、考え方をガラッと変えて準備中です。

「なりたい自分になる」

──新卒者の採用選考は一般的に、エントリーシート提出→書類審査・適性検査→複数回面接→役員面接→内定という流れだと思いますが、書類審査や適性検査をなくした場合、どのような流れになりますか。

西村 選考ステップとしては複数回の面接を行い、最後に採用担当執行役員が面接を行い決定します。通年採用ではありますが、大学3年生の中頃からインターンシップへの参加を考え、3年生の終わりから4年生にかけてまでを就職活動時期と考える方が多いので、そこをボリュームゾーンとして私たちも会える場を増やして対応します。
 選考方法については通常の面接ではなく、複数の社員とのショートコミュニケーションで多角的に見たり、テーマに対してプレゼンテーションをしてもらったりと、素が出やすいものにしています。何度も同じような面接を繰り返すのではなく、応募者が来るたびに得られるものが変わるような「マルチアングルインタビュー」を採用しています。
 学歴やテストの点数といった基準はまったく設けていません。お会いして話をしていく中で感じる「基礎モチベーションの高さ」や、変化や刺激に対してどんなレスポンスができそうかを、見て、感じて、選考します。
 「基礎モチベーションの高さ」は私たちの採用キーワードで、モチベーションが下がる・上がるといった概念がむしろないことを指しています。「GATE」のテーマは「なりたい自分になる」です。「自分が活かしたい専門スキルを活かし、なりたい自分になる」ために、どんな変化があってもスピード感をもってチャレンジをし続けられる方を「基礎モチベーションが高い人」と捉えています。

──中途採用についてはどのような選考フローになりますか。

西村 中途採用では必ず人事担当者の目線を入れて当グループとのマッチングを図りますが、それ以外のスキルセットの確認などは部門に任せています。
 事業会社、職種によっては経験必須の場合もありますが、グループの掲げている「必要とされる次へ。」というテーマに沿って、いろいろな変化や様々な新しいことにチャレンジしていこうという方針や雰囲気に合うかどうかを一番重視しています。

──「超!全力採用」を始めとする新たな採用方法への反応はいかがですか。

西村 事業領域だけでなく、「この採用方法に魅力を感じて応募しました」という内定者がかなりいました。私の部下にもスカウトキャラバンで一発内定した社員が何名かいるのですが、「地方に来てもらえて、一発で内定を出してもらえたのは助かった」「縁を感じた」という感想を聞いています。選考会場に来られる学生を集客するだけでなく、こちらが地方に行くことで機会が生まれ、そこに喜んで来てくれる方を集められるので、お互いにWin-Winの関係が構築できています。

──入社後の研修制度についてお聞かせください。

西村 グループ統合前は1〜3年目に年次別研修をやっていましたが、階層別研修については見直しを進めています。それよりも、必要とするときに受けられる研修プログラムや意欲がある社員がエントリーできるプログラム、プラットフォームとしてのeラーニングなど、何かあったときに学べる環境、情報取得できる環境を整えたいと考えています。
 さらに社員一人ひとりの成長を促すための人材最適配置プログラム「Next Way」を2018年9月に整備し、社内公募制度「Want U」や、グループ内で人材紹介を行うキャリアエージェント制度「Shine U」、ジョブローテーション制度「Try U」をスタートしています。これまでは自分が勤務する会社しか見えていなかった社員に対し、統合して大きくなったグループ全体を見渡して、「チャレンジしてみたい仕事があれば、新しい職場環境や部署を探して」「応募によってキャリアチェンジして次のステップに進んで」と提案しています。
 環境が変わり新しい仕事にチャレンジすると成長できるので、アサインメントによって成長していける機会をどんどん創出していきたいですね。

オフィス移転で働き方改革を加速

──在学中での正社員登用も可能ということですが、学生の本分である学業と仕事との両立はどうされるのですか。

西村 2018年6月から働き方改革推進プロジェクト「Work Style Innovation」をスタートし、時間や場所に捉われない生産性の高い働き方を推進しています。2018年9月からは全社員約4,000人規模で、自身の裁量による週休3日勤務や早朝出社など自律的な働き方ができるように、従来の固定時間(9:30〜18:00)制から始業・終業時刻を社員自らが決められ、コアタイムもフレキシブルタイムも設けない「スーパーフレックスタイム制度」を導入しました。加えてオフィスという場所に限らず柔軟に働くことができる「テレワーク勤務制度」も導入しています。働く時間や場所に縛られるのではなく、業務によって働く時間も場所も選ぶ。この発想でより自律した働き方をめざしています。今までの働き方は本当に生産性が高かったのかを抜本的に見直そう、決まった時間や場所という概念を取っ払って仕事ファーストでより生産性の高い働き方を各々が自律的に考えながらやっていこうという改革です。
 このように多様で柔軟な働き方ができるので、学業が忙しい学生の方でもどのようなライフステージの方でも働くことは可能だと思います。

──働き方改革を推進する一方で、オフィスの移転もありましたね。

西村 経営統合から半年後の2018年7月、目黒駅前の目黒セントラルスクエア9〜13階フロアにオフィスを移転しました。9〜12階は執務フロア、13階はグループフロアとなり、会議室やセミナールーム、カフェやラウンジがあります。このオフィス移転をきっかけに、フリーアドレス制も導入しました。
 「オフィスに来なくてもいいよ」と社員に投げかける一方で、「オフィスが一番生産性高くイキイキ働ける場所」という状況にしていきたいと考えています。

「ライセンスサポートプログラム」を実施

──就職活動対策で資格を取得する学生もいますが、採用選考ではどのように判断されますか。

西村 資格を持っていても、それだけで採用時の優遇措置はありません。ただ、例えば簿記や会計系の資格を持って当グループの経理・財務に入って「こういう仕事をしたい」といった明確な仕事のイメージがある方であれば、「私たちのグループに入ることによって自己実現が叶えられるな」というイメージはつきやすいと思います。そうした方にはどんどん応募してきていただきたいですね。

──会社で取得を推奨している資格はありますか。

西村 資格取得支援制度として「ライセンスサポートプログラム」を実施しています。その中には会社として、あるいは部署としての推奨資格だけでも100程度あって、それらの資格を取得すると受験料と取得費用の一部が一時金として支給されます。
 具体的な資格でいうと、管理部門系では、公認会計士、税理士、日商簿記検定、中小企業診断士、証券アナリスト、社会保険労務士、行政書士。IT系資格では、ITパスポートなど情報処理技術者試験の試験区分はすべて入ってきます。また電気工事士や工事担任者といった工事系資格のほか、保険ビジネスのための資格、マーケティング関係や宅地建物取引士、衛生管理者、語学ではTOEIC®L&R TEST、中国語検定、外国人従業員向けの日本語検定、またマイクロソフトやGoogleなどの認定資格など、豊富なラインナップです。今後様々な事業展開が予想されるので、幅広い資格取得サポートを用意しています。

──最後に、資格取得をめざしている方に向けてメッセージをお願いします。

西村 みなさんは次の環境にチャレンジしようと明確なイメージを持たれて資格取得やスキルアップをめざしていらっしゃると思います。USEN-NEXT GROUPは、そんなみなさんのモチベーションややりたい気持ちを発揮する場、さらなる成長の機会を幅広くご用意できます。事業領域も環境もどんどん広がっているUSEN-NEXT GROUPで、ぜひ「なりたい自分」をめざしてください。

[『TACNEWS』 2019年12月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]

会社概要

社名  株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS
設立  2009年2月3日
代表者 代表取締役社長CEO 宇野 康秀
本店  東京都品川区上大崎三丁目1番1号 目黒セントラルスクエア

事業内容

グループ会社の経営管理など

主なグループ会社

株式会社 USEN、キャンシステム 株式会社、株式会社 アルメックス、株式会社 U-NEXT、株式会社 USEN NETWORKS、他

従業員数

4,735名(2019年5月31日現在/グループ連結)

URL: https://usen-next.co.jp

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