行きたい会社・欲しい人財 第11回 城南信用金庫

Profile

佐原 行雄氏

城南信用金庫
人事部

2006年、新卒で城南信用金庫に入庫。大田区、世田谷区の2店舗にて10年間、渉外係を担当。その後人事部に異動して3年目。主に新卒採用、インターンシップを担当。

城南信用金庫は単なる金融業務の枠にとらわれない。地元の中小企業経営者の話に親身になって耳を傾け、困っていることや悩んでいることをしっかりと解決し、お客様が必要としない商品を提案することはないという。中小企業経営者が喜び、元気になれば、地域も活性化する。そんな「お客様応援企業」を標榜する城南信金の切り札は、何といっても「人」。人事部・佐原行雄氏に、城南信用金庫の経営理念や人の採用、育て方についてうかがった。

信用金庫の全国ネットワーク化をめざす

──城南信用金庫についてご紹介ください。

佐原 城南信用金庫(以下、城南信金)は「中小企業の健全な育成発展」「豊かな国民生活の実現」「地域社会繁栄への奉仕」という経営理念のもと、「人を大切にする経営」「思いやりを大切にする経営」の徹底、「健全経営」「堅実経営」の徹底、「お客様本位」に基づいた取り組みの徹底を経営方針に掲げています。
 私たちはお客様から事業の売上や後継者問題など、普段のお悩みごとやお困りごとをしっかりとお聞きした上で、その問題を解決するところから始めています。また、お客様のリスクになる商品は絶対におすすめしません。まずはお客様ありきの「お客様応援企業」を標榜しているところが大きな特徴です。中小企業経営者のあらゆる悩みごとに対応できる体制を整え解決することで、喜んで笑顔になっていただく。それは地域の活性化につながり、ひいては私たちの経営理念の実現につながります。これこそ仕事を通じた社会貢献であり、当庫で働く醍醐味といえます。

──現在、力を入れているのはどのような取り組みですか。

佐原 信用金庫は、北は北海道から南は沖縄まで全国に261金庫あります。それぞれの地域で人と人とのつながりや地域との連携を大切にしていますが、そのつながりを活用して、全国にまたがるネットワークを構築していくことに信用金庫全体で取り組んでいます。一信金ではできなかったことも皆が集まれば日本を動かす大きな力になりますし、ひいては社会を発展させる取り組みになる。これが信用金庫の魅力ではないかと考えています。
 その一環として行っているのが「よい仕事おこしフェア」というイベントです。2018年に行われた第7回目となるこのイベントには、過去最高の47都道府県の212信用金庫から協賛を受けて、全国の中小企業が集結し、商談、観光PRイベント、トークショーなどが行われました。このフェアをひとつのきっかけに、全国の信用金庫をネットワーク化し、地方と地方、地方と都心のお客様をつなぐビジネスネットワークの構築をめざしています。

求めるのは「明るく、礼儀正しい人」

──「人と思いやりを大切にする」城南信金の採用方針と求める人物像についてお聞かせください。

佐原 これまでは新卒採用をメインに行ってきました。2018年4月入庫が116名、2019年4月入庫が63名で、2020年は80名を採用する予定です。今後は特別なスキルがある方を中心に、中途採用にも力を入れていきたいと考えています。
 当庫の「人を大切にする」「思いやりを大切にする」という理念は、対お客様だけではありません。周りと競い合い、自分だけが稼げて収入が上がればいいという考えは、本来の信用金庫のあり方ではないと考えています。新卒で入ってこられる方にも「明るく、礼儀正しい方」「自分のしたことで回りが笑顔になるのが何よりもうれしいと思える方」を求めています。周りの人を助けられる、思いやりのある方に来ていただきたいですね。

──理系出身者の採用はしていますか。

佐原 学部・学科は全く問いません。2019年4月入庫の63名中3名は理系学部出身です。出身地域についても、内定者には東京・神奈川・埼玉・千葉在住の方が多いですが、特に地域で線引きはしていません。私も静岡県出身で、大学から関東に来ていますが、見知らぬ土地だから働きづらいということはまったくありません。当庫の理念に共感してくれた方であれば、学部・学科、地域を問わず採用しています。

予測できない質問で発想力、コミュニケーション能力を見る

──新卒採用の流れについて教えてください。

佐原 まずWeb経由で提出していただいたエントリーシートで書類選考します。その後一次選考として約5名の集団面接を、次に二次選考として約3名の集団面接とSPI(適性検査)を行います。そしてSPIの結果を踏まえて三次面接として1対1の個人面接を行います。基本的にここまでの面接は人事担当が行いますが、その後の最終面接は役員による集団面接で、5~6人に対して複数の役員が担当します。

──「明るく、礼儀正しい人物」を採用するために、選考で何か工夫をされていますか。

佐原 2018年に実施した例をお話しすると、一次選考では面接日ごとにテーマを変え、何かを漢字一文字で表してもらうという課題を与えました。例えば1日目は「あなたを漢字一文字で表すと」、2日目は「あなたの就職活動を漢字一文字で表すと」といったようにテーマを変えて質問しました。事前に用意しておいた答えを暗記して話せるような質問内容ばかりではその方の中身が見えづらいので、自分の言葉で話してもらえるような質問をするようにしています。予想もしない質問にどう答えるのか、瞬発力や発想力を中心に見ていますので、面接というよりも、コミュニケーション能力や人とやりとりする力を重視しています。2019年もテーマを変え、同じような手法でやっていくつもりです。
 こうして最終面接を通過した方が、10月1日に正式内定となります。

内定後はイベント参加や簿記検定の取得を推奨

──内定後は研修などのフォローアップ制度がありますか。

佐原 2018年は内々定を出してから2~3週間後に2017年入庫の新人研修があったので、希望者にはその様子を見てもらい、座談会を開いて1年上の先輩新入職員へ不安に思っていることなどをぶつけてもらいました。例年、内定者のための懇親会も開いており、若手職員と交流を図ってもらいます。10月の内定式後、12月にはクリスマス会も実施します。
 さらに先ほどお話しした「よい仕事おこしフェア」のサポート要員として、毎年内定者の方にもアルバイトとして参加してもらっています。こうした行事から入庫を決める方もいますので、これも内定者フォローの一環と捉えています。
 3月には入庫前新人研修を2泊3日で行い、経営幹部や先輩職員も参加して、ビジネスマナーから当庫の取り組みや歴史、現状やめざす方向を学ぶだけでなく、グループディスカッションで夢を語っていただきます。合間には札勘(札勘定)練習や発表、札勘コンテストも行われます。こうして4月1日の入庫式を迎えるという流れです。

──内定から入庫までに、資格取得など学習面での課題はありますか。

佐原 10月1日の内定式では、日商簿記3級を持っていない方には取得するように、またすでに3級を持っている方には2級の取得をおすすめしています。日商簿記検定は、内定から入庫までの間に11月と2月の2回、受験のチャンスがあります。必須ではありませんが、取っておいたほうが入庫後の実務に役立ちますので、まずは簿記の勉強を始めるように推奨しています。

──入庫式のあとはどのような流れになっていますか。

佐原 いったん支店長とともに配属先店舗に向かいます。そして2018年は4月に2週間、5月は5日間、6月は1週間の集合研修を行いました。つまり4月の半分は研修、5~6月も実務を兼ねた研修ということです。そこではより実践的な研修でコンプライアンスなどにも触れながら、営業のロールプレイングや財務の勉強などをグループワークで行い、6月になるとほぼ実務中心に融資・生保・財務・相続などの基礎を学んでいきます。
 その後も年度別研修が定期的に行われ、年次に合わせた内容で集合研修を行っていきます。日常的には、足りない部分を補うために専門別セミナーなども開かれます。これは完全に業務時間外なので、希望者のみ参加になります。

幅広い公的資格等の推奨で自己研鑽意欲アップ

──入庫後に取得する資格にはどのようなものがありますか。

佐原 入庫5年までの新入職員には、通信講座で預金、為替、融資、企業分析、金融法務、融資審査・管理・回収について学んでもらい、全信協基礎実務試験(全国信用金庫協会が実施する、金融経済等に関する全国統一実務試験)や銀行業務検定試験の財務、税務、法務各3級を受けてもらいます。5~10年目の中堅クラスにはさらに銀行業務検定試験の各2級を受けてもらっていて、FP(ファイナンシャル・プランナー)や宅地建物取引士などの資格を取る職員もいます。
 公認会計士、税理士、中小企業診断士、社会保険労務士、司法書士、宅地建物取引士、行政書士、FP1級、金融窓口サービス技能検定1級、情報処理技術者試験の資格には、公的資格等取得奨励金制度が適用されます。合格祝い金として一時金が出る制度で、難しい資格ほど金額が上がります。
 中でも中小企業診断士については、お客様からのご相談や課題解決に直接的に役立つ資格なので、「中小企業診断士資格取得奨励制度」という別枠で制度化しています。合格一時金だけでなく受験指導校の受講料を一部補助する制度で、多くの職員がこの制度を活用して中小企業診断士資格の取得をめざし、毎年何名かが合格しています。
 また職員の得意分野を伸ばすための教育制度として、事業性融資、保険・税金・相続、創業支援、事業承継・M&Aなどの各分野に特化して学習し、学習過程を修了して試験に合格した職員には城南信金内で認定するアドバイザー称号を授与しています。これは2018年度から始めた試験なのでまだ取得した職員は出ていませんが、称号を授与されれば名刺にも肩書きとして入れることができます。
 こうした取り組みには、自己研鑽意欲の高い職員をどんどん育てていくという狙いがあります。学ぶ機会はたくさんありますが、強制ではないので学ばないという選択も可能です。ただ、仕事をしているとどうしても「これを勉強しておかないといけないな」と切実に思うようになります。知識がなければお客様に迷惑をかけたり満足していただくことができなかったりするので、自発的に「やらなければ」と考える職員が多いようです。

──奨励制度などを利用して取得した資格は昇級や昇格の要件に関わってきますか。

佐原 資格を持っている職員については、資格があるからというだけで昇級・昇格に反映するということはしていませんが、きちんと努力しているということを評価します。自分を高めるため、仕事に知識を活かすために勉強してもらいたいので、「努力をしているかどうか」という基準で見ています。

──学生時代に資格を取得している場合、新卒採用時には評価の対象になりますか。

佐原 学生時代に何をやってきたかが大事ですので、「宅地建物取引士の資格を取りました」ということであれば、がんばったという評価にはなります。しかし、それはがんばったことのひとつの形です。ボランティア活動やサークル、アルバイトなど、他にもがんばったことがあればそちらも同じように評価しますので、資格の取得そのものがそのままプラス加点になるということはありません。学生時代は勉強も大切ですし、勉強以外で学ぶこともたくさんあります。就職活動に向けて資格を取得する学生の方もいるかもしれませんが、当庫では「他の分野と同様に、がんばったことのうちのひとつ」という捉え方をしています。

男性職員の育児休業最長10日間の「人に優しい企業」

──人事制度や福利厚生面でのアピールポイントをお聞かせください。

佐原 城南信金は2017年3月、多様性を認める新たな企業文化の確立を積極的に進める「ダイバーシティ推進プロジェクトチーム」を発足し、同年9月に東京都が選定している「TOKYO働き方改革宣言企業」に採用されました。女性や高齢者、障がい者といったすべての人が尊重され、互いに協力して活き活きと働けるダイバーシティ企業をめざして「城南働き方大改革」を実行しています。
 そのひとつが男性職員の育児休業取得で、普段は取りにくい男性の育児休業を最長10日間取れるようにしました。若い人にはきちんと育児に参加してもらおうという制度で、2017年からスタートし、対象となった男性職員の100%が取得しました。出産後の退院時が一番大変なので、その時に休みを取ると奥様が安心するという意見が多く寄せられています。
 産休・育休取得者も常時80名ほどいて、ご主人の転勤や、続けて第二子・第三子の出産で子育てをするなど、特別な事情がない限りはほぼ100%復帰しています。
 また、職員が抱えている育児や介護といった家庭内の悩みを解決する目的で「子育て・介護コンシェルジュデスク」を人事部内に設置しています。保育施設の確保や介護と仕事の両立といったあらゆる悩みを相談できるように、直通ダイヤルや専用メールアドレスでいつでも応えられるようにしています。
 長時間労働の是正も進めており、営業店の若手職員はほぼ残業なしで帰宅しています。2017年度の一般職員の残業時間は月平均12時間。営業日換算すると、1日1時間の残業もないことになります。店舗によっては、18時に電話してもすでにつながらないところもあります。支店長が最後に鍵を締めるのですが、それぐらい早いということです。

──最後に、資格の取得をめざしている方々に向けてメッセージをお願いします。

佐原 常に資格を取得したその先をイメージしてください。モチベーションが上がりますし、取得後の具体的な仕事のイメージにもつながると思います。資格を取ることだけを目標にして、取って終わりにしてしまわないこと。「その先」をイメージしながら勉強を続けていただきたいと思います。

[TACNEWS 2019年7月号|連載|行きたい会社・欲しい人財]

会社概要

社名  城南信用金庫
創業  昭和20年8月
代表者 理事長 渡辺泰志
本社所在地 東京都品川区西五反田7-2-3

事業内容

信用金庫法に基づく預金、融資、内・外国為替、そのほか金融業務全般
金融業務の枠を越えた各種お客様応援業務

従業員数

2,108名 (平成30年3月31日現在)

URL: https://www.jsbank.co.jp/