人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第9回 株式会社アイティフォー

Profile

内藤 あかね氏

株式会社アイティフォー
管理本部 人事部

Web系サービス企業の営業職を経て、2013年、株式会社アイティフォー入社。営業管理部での営業サポートを経て、2017年に管理本部人事部へ異動。新卒採用担当としての採用活動のほか、労務、給与賞与・社会保険業務などにも携る。

株式会社アイティフォーは1972年の創業以来、海外の先進情報機器を取り扱ってきた。1983年には債権の督促を行う「オートコールシステム」を日本で初めて開発し、現在では金融機関における債権回収業務システム分野で圧倒的なシェアを獲得。1990年代後半にはECサイト構築やコンタクトセンターシステム構築事業を加え、情報機器の販売からソフトウェア開発型企業へと変貌を遂げた。2004年には無借金化を実現し、以来、高収益・無借金の安定した経営基盤を保持している。人事部の内藤あかね氏にアイティフォーの採用と社員教育、資格取得に対するスタンスについてうかがった。

RPAと決済クラウドを新機軸にトータルソリューションを提供

──アイティフォーの事業内容をご紹介ください。

内藤 学生の方にはあまり馴染みのない社名だと思いますが、アイティフォーは業務用システムを提供するBtoBの会社です。主となるのは金融機関向けソリューションですが、公共機関向けソリューション、コンタクトセンターソリューション、小売業向けソリューション、ECサイト構築ソリューション、RPA業務自動化ソリューションといった各事業と、それらをつなぎ合わせる基盤ソリューション、システム導入後の保守、運用を提供するカスタマーサービスを相互に連携し、トータルソリューションシステムを提供しています。
 また、当社は親会社を持たない独立系で、専門分野に特化した独自パッケージの開発に経営資源を集中し、独自に顧客開拓を行う直接販売によって高い収益性を保持しています。

──現在、御社が注力されているのはどのような業務ですか。

内藤 現在非常に受注が増えているのはRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)という業務自動化システムで、業界や業種を問わず、これまで人間が行ってきた繰り返しの作業を機械に任せようというシステムです。これまで当社がメインとしてきた金融機関やコールセンターだけでなく、自治体や官公庁などでも大きく成長が見込める分野です。
 また小売業に向けてはQRコード決済、クレジットカード決済、電子マネー決済などすべての決済手段に1台のマルチ決済端末と決済クラウドで対応するキャッシュレス決済ソリューション「iRITSpay(アイ・リッツペイ)」の提供にも注力しています。改正割賦販売法対応として、クレジットカード情報非保持化のPCI DSS(クレジットカード業界における国際的なセキュリティ基準)対応を実現し、インバウンド対策も万全なシステムとしてご提供しています。

──成長を続けるアイティフォーで働く魅力とはどこにありますか。

内藤 手がけるプロジェクトの90%はお客様へ直接ソリューションを提供しますので、上流工程からシステム開発に携わることができます。社内のどの職種であっても直接お客様と話しながらものづくりができるのは、当社の魅力だと思います。

求めるのはコミュニケーションスキルと自ら学ぶ姿勢

──アイティフォーの採用方法をお聞かせください。

内藤 職種は、システムエンジニア(SE)職、営業職、テクニカルエンジニア職(ネットワークインフラ系エンジニア)の3つで、新卒採用と中途採用、どちらもコンスタントに実施しています。
 中途採用に関しては、人材紹介会社を介して必要に応じて採用していますが、SE職は常に募集をしている状態です。
 新卒採用では2019年4月入社は18名で、SE職14名、営業職3名、事務職1名です。例年新卒の6割がSE職として入社し、2割が営業職、今年は採用がありませんでしたがテクニカルエンジニア職が2割という比率で採用を行っています。

──具体的な新卒採用の流れを教えていただけますか。

内藤 2パターンの流れがあります。1つは、2018年から実施している、インターンシップから入ってその後2次面接、最終面接と進むパターン。もう1つは、会社説明会に来ていただき、筆記試験、1次面接、2次面接、最終面接と進むパターンです。2次面接は役員面接、最終面接は社長面接になり、全員最後は必ず社長と面接をしていただきます。

──最終面接は役員の方という企業が多いと思いますが、社長が最終面接をされる理由を教えてください。

内藤 学生の方が経営者と会う機会はなかなかありませんので、話していただくことでより当社に対する理解を深め、関心を持っていただきたいという思いがあります。社長は学生の方とお会いするのがとても楽しみで、直接お話しして聞いてみたいことがあるようです。学生の方も面接前はガチガチに緊張した様子ですが、終わった後は「楽しく話ができました」とかなりリラックスして出てこられますね。ちなみに中途採用の最終面接も社長の面接になります。

──求める人物像はどのようにお考えでしょうか。

内藤 当社では、営業職だけでなくSE職もお客様と会話しながらシステムを作っていくので、社内でパソコンに向かうというより、常に人と関わっていく仕事が多いのが特徴です。ですからまずはコミュニケーション能力がある方、加えて、次々新たなものが増えていくIT業界なので、自ら情報を収集し、学んでいく姿勢を持っている方を非常に高く評価しています。

──SE職は理系のみの採用でしょうか。

内藤 学部学科は問わず採用しています。最近では文系から応募される方が増え、SE職のうち2~3割は文系の方、あるいは理系でも数学科や化学科など、情報系ではない方が入社しています。文系や未経験の方でも、IT業界に興味を持って独学で勉強したり、資格を取ってみたりしてITをめざされる方は積極的に採用しています

トータル6ヵ月間、1,000時間のSE育成プログラム

──内定から4月の入社までのフォロー体制についてお聞かせください。

内藤 先輩社員と1対1で面談し、実際どのような仕事をするのか、社内の雰囲気はどうかなど、当社への理解を深めていただく機会を一度設けています。また8月に行われる納涼会に内定者を招待し、内定者同士の懇親や若手先輩社員とのコミュニケーションの場として活用していただいています。
 10月以降はeラーニングによる入社前教育を行います。学生の本分は学業にあると思いますので、入社前研修に時間を取られ勉強が疎かになるようでは困りますし、特に理系の学生の方は卒業研究などで忙しい方が多いので、基本的にはeラーニングでの自宅学習のみです。

──eラーニングはどのような内容ですか。

内藤 ECサイトで基本情報技術者試験のテキストを購入していただき、実際にECサイトを使ってみて気がついた点や改善できそうな点などの意見を提出していただきます。あとはそのテキストを使い、新入社員全員に受験していただく4月の試験に向けて自主学習をしていただきます。

──入社後の新入社員教育はどのような流れで行われていますか。

内藤 4月は職種を問わず、社会人ビジネスマナー全般と当社の事業を理解するための基礎的知識の研修、情報処理技術者試験に向けた直前集中講座を実施します。
 5月には事務職は配属先でのOJTと実際の業務に入ります。SE職と営業職は当社の顧客である金融業界、小売業界、コールセンター業界等の業界研修を受けます。  営業職は5月下旬に配属先に分かれ、担当する業界ごとにより深い内容の研修を受けていただきます。
 SE職はその後4ヵ月間、プログラミングや基礎的専門研修など、より仕事に必要なIT研修を受けます。SE職の研修期間はトータル6ヵ月間、1,000時間という長時間に及びます。9月末に配属先が決まり10月に現場に配属されてからは、研修で学んだことをOJTで実務に落とし込んでいきます。
 当社のSE職研修はかなり長めに設定されており、配属後にもOJTがありますから、トータルで考えると育成期間は1年以上になります。そもそも基礎知識がなければ、現場の環境によって成長スピードも知識の入り方もばらつきが出てしまうので、ある程度基本的な知識の土台を固めた上で現場に出したいというのが当社の意向です。

──入社からOJTまで1年間がSE職の基本的な研修となると、育成期間はどのぐらいと捉えればいいのでしょう。

内藤 終わりははっきり決めてはいませんが、ほぼ1年半です。キャリアパスでいうと、最初の半年間の研修後、現場に配属されてから半年~1年は下流工程やプログラミングなど研修で学んだことを実務に落とし込む仕事を担当していただき、ある程度できるようになった段階で先輩と同行してお客様を訪問し始めます。そこでどのように要件定義をするのか、どのようにヒアリングをしているのかを勉強し、3年目からは小さなプロジェクトのPL(プロジェクトリーダー)を任されるとともに、PM(プロジェクトマネージャー)研修を受けていただきます。また、3年目になると新入社員が行う下流工程のフォローをするなど新人の育成にも携わっていきます。
 PLやPMとしてある程度経験を積んできた社員には、当社が推奨するPMP® (プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)資格の取得に向けた外部講師による研修も実施されます。このように当社は基本的に研修が多い会社だと思います。どのレベルになっても、新しい情報や次のステップをめざして学んでいく姿勢を大切にしています。

──営業職は配属後どのような動きになりますか。

内藤 業界研修のあとはOJTで先輩に同行しながら学んでいきます。そこで先輩の案件をサポートしながら営業の一連の流れを勉強し、その後先輩のフォローを受けながら自分で案件を取りにいったり、案件を任されたりするようになります。
 当社の場合は、案件が具体化してくると営業職だけでなくSE職もお客様先に同行し専門的な質問のサポートをするような、部署の垣根を越えたチームで営業を行うこともよくあります。よって、営業手法だけでなく、周囲をうまく巻き込む調整力や、チームを引っ張るリーダーシップのようなスキルも必要になります。

情報処理系をメインに44資格を奨励

──会社として取得を奨励している資格はありますか。

内藤 現在、情報処理技術者試験をメインに、ソフトウェア会社のオラクルが実施しているデータベース系資格など、全部で44資格を奨励しています。中には簿記、TOEIC® L&R TEST、秘書検定などもあり、取得をめざして勉強している社員もいます。基本的に受験費用は会社負担で、合格すれば資格に応じて合格祝金を一時金として支給しています。資格手当の制度はありませんが、人事評価には反映されます。
 最近ではお客様がプロジェクトをアサインする際、プロジェクトマネージャーにPMP®資格の保持者を求めてくる場合があります。当社にはいくつものプロジェクトがありますので、何十人ものPMP®資格の保持者を抱えておかなければならないという事情も、資格奨励の背景にあります。

──新卒採用の応募者が情報処理技術者の資格を取得している場合はプラスになりますか。

内藤 もちろん、学生時代から資格の勉強に真摯に取り組んできた実績は評価されます。たとえ試験に合格しなかった場合でも、結果を分析し「次回はここを対策してまた受験したい」ということであれば、業務に関係のない資格であっても、プロセスを評価したいと考えています。

──情報処理系以外の資格、例えば簿記を取得している学生はどのような評価をされますか。

内藤 簿記の資格を持っていること自体がプラスの評価になるというわけではありませんが、例えば「授業で興味を持ったので簿記の勉強をし、社会勉強のために受験しました」というのは非常に前向きな姿勢だと捉えます。その資格試験に向けて、どのような姿勢でどのようなプロセスを経てきたのかという部分を評価の対象にします。

昇級の年功的運用はなし実力で勝負の環境

──社員のための福利厚生や人事制度でユニークなものはありますか。

内藤 福利厚生制度の中で若手の社員に比較的人気が高いのは社員旅行です。3~4年に一度のペースですが、社員旅行といっても全社員が同じ旅行先に向かうわけでなく、国内外12コースの中から自分の好きなコースを選び、社内の仲間と行くことができますので、みんな楽しみにしています。若手は同期で旅行することが比較的多く、海外を希望する社員も多いのですが、家庭を持つ社員は近場の国内といったように、仕事やプライベートの状況に応じて自由にコースを選ぶことができます。
 また人事制度に関しては、若手社員に比較的早くチャンスを与えるために、新入社員の初めの昇格のみ自動昇格することが決まっていて、それ以降は一切年功的運用をしない評価体制となっています。ですから早い社員は入社5~6年目、27歳程度で管理職相当に昇格することもあります。一人ひとりの能力を見ながら、それぞれにふさわしい等級とそれに見合う処遇を考えています。一方では40〜50歳になっても管理職になれない社員も出てきます。昨年まで上司だった人が部下になるということは、当社では珍しくありません。そこは社員の理解が浸透しているので、運用はうまくいっていると考えています。

──女性のための制度はいかがですか。

内藤 他社と遜色のない制度を実施しています。現在も女性5名が産休・育休を取得中で、当然復職のタイミングでは安心して働ける環境を用意しています。
 また、IT系は男性社員が多い業界で、当社も男女比は9:1と女性の比率は低めです。しかし、SE職で文系の採用を始めてからは女性の応募者も増えておりますので、今後は女性社員も増えていくと思います。

──資格取得をめざす方々にメッセージをお願いします。

内藤 OJTだけでは、キャリアの中でどうしても未経験の部分やウィークポイントなどに知識のムラが出てきてしまいます。そうした状況でも、自分のレベルに合った資格を取ることで得手不得手のないスタンダードな知識を身につけることができる。資格取得にはそんな魅力があるのではないかと感じます。
 資格取得は、希望する職種や興味を持っている業界へのよいアピールになります。当社も資格取得に向けてコツコツ学んでこられた前向きな方を採用したいと考えています。結果はもちろん、プロセスも必ず強みになりますので、資格取得に向けがんばってください。

[『TACNEWS』 2019年5月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]

会社概要

社名  株式会社アイティフォー
設立  1972年12月2日
代表取締役社長執行役員 佐藤 恒徳
本社所在地 東京都千代田区一番町21 一番町東急ビル

事業内容

「金融機関向けソリューション」「公共機関向けソリューション」「小売業向けソリューション」「ECサイト構築ソリューション」「RPA業務自動化ソリューション」「コンタクトセンターソリューション」の各事業。それらをつなぎ合わせる「基盤ソリューション」、システム導入後の保守、運用を提供する「カスタマーサービス」を提供。

従業員数

537名 (2018年3月31日現在)

URL: https://www.itfor.co.jp/