人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第8回 株式会社千葉興業銀行

Profile

猪狩 愛氏

株式会社千葉興業銀行
人事部 人材開発室 調査役

複数の営業店で預金関連、相続、預かり資産などの窓口対応や相談業務、後方事務の担当を経て、2015年10月に人事部に異動。人材開発室で1~2年目行員の研修企画・運営、試験・通信講座など自己啓発関連の企画運営を担当。

コンサルティング力強化のためFP2級が昇格昇任の重要判定要素になりました。

千葉県を営業基盤とする千葉興業銀行は、法人・個人のお客さまに対して幅広い金融サービスを提供する地方銀行である。変化のスピードが速いマーケット環境に対応するため、コンサルティング力の強化に取り組んでいるという同行の未来を支える人材とはどのようなものなのか、人事部 人材開発室 調査役の猪狩 愛氏にお話をうかがった。

千葉県内のあらゆるお客さまに幅広い金融サービスを提供

──千葉興業銀行についてご紹介ください。

猪狩 当行は1952年に設立された、千葉県を営業基盤としている地方銀行です。設立当時は戦後の復興需要が高まりつつある頃で、地元の皆さまからの「地域の復興のために地元の銀行を」という声に応えて誕生しました。創業の精神に「中小企業者の親切なる相談相手たらんことを期する」とあり、当時は中小企業がメインでしたが、現在では、千葉県内の法人・個人のあらゆるお客さまに対して幅広い金融サービスをご提供しています。営業拠点としては74店舗(県内72店舗・都内2店舗)に加え、ローンプラザ3ヵ所、両替出張所2ヵ所があります。

──2019年のトピックがありましたらお聞かせください。

猪狩 マーケットやそれを取り巻く環境が速いスピードで変化していく中、法人・個人のお客さまのニーズも高度化・複雑化しています。そうした変化に対応して、的確なご提案を行うべく、当行では中期経営計画で掲げている「コンサルティング・バンクの確立」の実現に向けて、お客さまを第一に考える“コンサルティング考動の実践”を展開しています。お客さまが抱える経営課題の把握・分析にもとづき、外部専門機関との連携も行いながら、事業承継支援や営業斡旋・ビジネスマッチングの推進、遊休不動産の活用、海外進出支援や海外販路拡大に向けたサポートなど、本業である事業資金の融資に加え、積極的なコンサルティング機能を発揮できるよう努力しています。

目標に向かって自ら考え行動できる人材

──千葉興業銀行の採用方針をお聞かせください。

猪狩 新卒採用と中途採用を行っていますが、メインは新卒採用になります。2019年4月入行予定者は97名で、一部短期大学出身者もいますが、ほとんどが四年制大学以上です。ちなみに2018年4月入行者は99名でした。毎年100名程度をめどに新卒採用を行っています。
 中途採用については随時行っている状況です。

──御社の「求める人物像」についてお聞かせください。

猪狩 明確に目標に向かって自ら考え行動できる人材です。そして、地域のために、お客さまのために働きたいという熱い思いを持っている方、最後までやり切る粘り強さのある方ですね。
 地方銀行ですので、地域貢献の色合が強くあり、自然と自分の地元のためになりたいという方が集まりやすいのが特徴かもしれません。

人物重視の採用選考

──新卒採用の採用プロセスについて教えてください。

猪狩 2018年の採用活動の際は、エントリー開始時期に合わせて、まず合同説明会や学内説明会に参加しました。そして、エントリーシートを提出していただいたあと、「総合渉外コース」と「個人渉外コース」のいずれかの希望コース別に企業説明会を実施しました。
 選考については、書類のみの選考ではなく、WEB上でテストを受けていただき、その後に複数回の面接を実施しています。採用プロセスについては毎年見直しながら実施していきますので、年によって内容が異なる場合があります。

──面接では、学生のどういったところを見られるのですか。

猪狩 当行は学部学科を問わずに人物重視の採用を行っていますので、面接には力を入れています。面接でお聞きするのは未来のことではなく、学生時代のこと、例えばどういったことに取り組んできたのかといったことをよくお聞きします。
 このため、学生の方は、自己分析をきちんとしていただいて、ご自身の経験や取り組んできたことなどを振り返り、ご自身のアピールをしていただければと思います。

──採用選考に際して、在学中に取得した資格は評価されるのでしょうか。

猪狩 例えば在学中にファイナンシャル・プランニング(以下、FP)技能検定や簿記検定を取得されていれば、「金融に興味があるんだな」「ちゃんと下地があるんだな」とは思いますが、それが採用選考で次の段階に進むための要件にはなりません。当行は学部学科を問わずに採用活動を行っていますので、在学中に資格を取得していなくとも、例えば内定後に興味を持って勉強してもらったり、入行後に学んでいただければいいと思います。あくまで人物重視の採用を行っています。

──先ほどお話に出た「希望コース」について、詳しくお聞かせください。

猪狩 「総合渉外コース」「個人渉外コース」は、総合職と一般職といった区別ではありません。当行では、入行後2年間の育成プログラムを実施しており、どちらのコースで学ぶか入行前に決めていただいております。
 「総合渉外コース」では、個人・法人を問わず様々なお客さまに対するコンサルティング業務を学びます。
 「個人渉外コース」では、個人のお客さまに特化したコンサルティング業務を学びます。
 このコース選択は、入行後の職務やキャリアを限定するものではないため、実際に仕事を経験した上で、改めてキャリアパスの希望についておうかがいする機会を設けています。

インターバル形式の新入行員研修

──新入行員研修について教えてください。

猪狩 4月に入行したあとは3ヵ月間の新入行員導入研修があります。この研修では、主に社会人としてのマナーや銀行の基本的な業務等について、両コース全員が学びます。
 新入行員は基本的に全員が営業店の配属になりますが、営業店での業務と研修とを交互に行うインターバル形式で進めていきます。経験学習をベースに進めていきますので、座学で学んだあとに営業店で実践する、あるいは営業店で予習をしていただいた上で座学で学び、その上で実際の営業活動の中で実践するようにしています。
 サイクルとしましては、集合研修に来る前に必ず事前課題に取り組んでもらい、座学で学んだあとに事後課題に取り組むという形になっています。新入行員導入研修に限らず、当行での研修はこのサイクルで取り組むことで、研修の効果を高めています。

従業員のキャリア形成に注力

──人事制度として特徴あるものをご紹介ください。

猪狩 当行では従業員のキャリア形成に力を入れており、2004年度より人事施策として「キャリア開発支援体制」を導入し、その一環として「キャリア面談」を行っています。キャリア面談は半年に1回、全従業員と人事部とが直接面談するもので、人事部の人間が営業店に赴いて実施しています。自分の上司ではなく、人事部と直接面談を行い、ご自身の仕事を振り返ってもらい、現在の仕事の状況から今後どういう方向をめざしていきたいのか、異動の希望はあるかなどいろいろな話をします。
 このキャリア面談は内定者にも行っており、改めて大学生時代、中学・高校時代を振り返ってもらい、自分の弱み・強みに気づいていただき、それを入行後にどう活かしていくか、入行にあたっての不安の払拭などのアドバイスをしています。
 また、専門のキャリアアドバイザーによる「キャリア開発支援窓口」を開設し、「キャリア開発研修会」の開催や相談を通して、行員のキャリア形成支援の充実を図っています。

──2017年11月には厚生労働省の「グッドキャリア企業アワード2017」大賞を受賞されましたね。

猪狩 当行の『個々の従業員とのコミュニケーション機会の充実による自主性を重んじたキャリア開発支援』が評価され、地方銀行として初の大賞受賞となりました。大賞は、従業員の自律的なキャリア形成支援について特に他の模範となる取組みを総合的かつ継続的に推進し、その成果が顕著である企業に贈られる賞です。

──女性が働きやすい制度への取り組みについてお教えください。

猪狩 ここ最近、女性活躍といわれるようになりましたが、当行では、いわゆるポジティブ・アクション「女性行員の活躍推進に向けた取り組み」については、1999年度より推進しています。このため、結婚しても仕事を続け、子どもがいたら育児休暇を取得するのは当行ではずいぶん前から普通のことになっています。あえて女性のための制度をアピールしなくとも制度として整っており、行員が活用している状況といえます。
 こうした活動が認められ、厚生労働大臣の認定による「子育てサポート企業」として、2007年に千葉県内で第1号の認定を受けており、2018年10月には「子育てサポート特例認定企業」として千葉労働局長より「プラチナくるみん」を取得しています。

──男女関係なく働きやすい制度が整っているのですね。

猪狩 そうですね。意欲のある方にどんどん成長してもらうための制度として、行員転換制度があります。これは意欲あるパート従業員の方の声から生まれた制度で、パート従業員から行員への転換が制度化されています。パート従業員から転換した行員も、新卒で入行した者と同じようにキャリアを積んでいくことができ、管理職になった方もいます。当行ではeラーニングによる自宅学習システムがありますが、正規・非正規関係なくこちらのシステムで銀行業務に必要な知識などを学ぶことができます。産休・育休中もこのシステムを利用できますので、復職の準備として利用される方も大勢います。
 このように、正規、非正規、年齢、性別に関係なく意欲のある方が活躍できる環境と制度を提供しています。

FP技能士2級取得でコンサルティング力を強化

──御社の業務で必要となる資格はありますか。

猪狩 銀行業務で必要な「外務員資格」「生命保険募集人資格」「損害保険募集人資格」の資格取得は必須となります。これらに関しては自主参加型のセミナーなどを開催し、取得に向けた支援を行っています。また、それ以外にもさまざまな資格試験や「銀行業務検定試験」といった業界団体が主催する試験の受験を推奨しています。難易度によっては、合格者に対し、表彰金を支給し、従業員の自己啓発を支援しています。
 そうした資格の中で「FP技能士2級(以下、FP2級)」に関しては、今までは努力して取得しましょうとしてきましたが、2019年度からは昇格・昇任の重要判定要素となる資格試験としました。

──FP2級が昇格・昇任の重要判定要素となった理由を教えてください。

猪狩 当行が「コンサルティング・バンクの確立」の実現を推進していることに関連しています。コンサルティングを行うためには、きちんとしたベースとなる知識が必要です。FP2級を学ぶことで、不動産、タックスプランニング、相続・事業承継などの幅広い知識を取得することができます。そこで、お客さまのためにコンサルティングを行うべく、FP2級を昇格・昇任の重要判定要素とし、積極的に取得を推進することとしました。

──他の資格に関してはいかがでしょうか。

猪狩 難易度の高い資格を受験する方のために、「ハイスキル自己啓発支援制度」を実施しています。この制度では、TACなど通学講座や通信講座で学ぶ際の受講料の一部を補助しています。対象となる資格・検定は幅広く、日商簿記、税理士、公認会計士、ITパスポート、FP技能士1級、中小企業診断士、証券アナリスト、宅地建物取引士、不動産鑑定士、社会保険労務士、司法試験、介護福祉士、さらに語学系の試験も対象になっています。また、この対象資格・検定に入っていなくとも、業務に関係がある資格であれば申請することができます。この制度を利用して、2018年にはFP技能士1級や宅地建物取引士を取得した者がおります。

──最後に資格取得をめざしている『TACNEWS』の読者に向けてメッセージをお願いします。

猪狩 当行は、「勉強したい」「もっと能力を上げたい」という行員の本気の思いに、本気で応える支援をしています。資格取得により、スキルアップをめざすことは、学生・社会人問わず大切なことです。ぜひ、その本気の思いを大切にし、臆することなく、資格取得にチャレンジしてください。

[『TACNEWS』 2019年4月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]

会社概要

社名  株式会社千葉興業銀行
設立  1952年1月18日(営業開始:1952年3月3日)
代表者 取締役頭取 青柳俊一
本社所在地 千葉県千葉市美浜区幸町2丁目1番2号

営業内容

預金業務・貸出業務・商品有価証券売買業務・有価証券投資業務・国内為替業務・外国為替業務・社債受託および登録・付随業務

従業員数

1,348名(2018年3月31日現在)

URL: https://www.chibakogyo-bank.co.jp