人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第7回 株式会社ダイフク

Profile

秋本 誠斗氏

株式会社ダイフク
人事総務本部 人事部 人材開発グループ

6年間の医療機器業界勤務を経て、2016年、株式会社ダイフク入社。入社後、人事部に配属され採用担当となる。人事畑9年目の人事・採用のエキスパート。

ダイフクを一言で紹介すれば、世界を代表する物流システム・機器の総合メーカーである。物流が社会インフラの大きな担い手となる中、2017年に創立80周年を迎えた株式会社ダイフクは、世界23の国と地域に事業拠点を擁し、海外売上高比率は約70%である。グローバルマーケットをターゲットにするダイフクには、世界を舞台にチカラを発揮する人材が大勢活躍している。人事部人材開発グループの秋本誠斗氏に、ダイフクの人材戦略や育成制度、さらには資格に対する考え方についてうかがった。

マテハン業界で売上高「世界第1位」

──ダイフクの事業内容をご紹介いただけますか。

秋本 1937年の設立当時はクレーンや製鉄機械を手掛けていましたが、1957年に自動車メーカーの生産ラインにコンベヤシステムを納入して以降、生産や物流現場の自動化を支える企業として事業を展開してきました。当社の強みは、マテリアルハンドリングシステムを構成する主要な製品を自社で開発しており、コンサルティングからアフターサービスまでの一貫した体制で、「メーカーでありながらシステムインテグレーター」の役割を果たしていることです。また、モノづくりにとどまらず、お客さまのニーズに合わせて物流センターの自動倉庫や生産ラインをカスタマイズできるのも、私たちの強みです。半導体・液晶生産ラインシステムでは売上高の95%が海外で、空港ターミナルに張り巡らされる手荷物搬送システムでは、米国を中心に海外の500以上の空港に納入しています。

──ダイフクの代名詞である「マテリアルハンドリング」とは何ですか。

秋本 マテリアルハンドリング、通称マテハンとは、「生産・物流の現場でモノを効率的に保管、搬送、仕分け・ピッキングする」ことです。昨今、社会課題となっている少子高齢化による人手不足を補う分野としても注目されています。ちなみに当社は、マテハン分野で4年連続売上高世界第1位になっています(米国Modern Materials Handling誌によるランキング調査・2018年)。

──2019年のトピックがありましたらお聞かせください。

秋本 海外市場の需要拡大に対応するため、これまでの日本を中心とした生産体制から、グループ全体の最適調達・生産体制への移行を進めています。海外の生産規模では、2016年に中国を2.5倍に、2018年に韓国を1.5倍に拡充してきました。2019年は米国の一般製造業・流通業向けシステムの製造2拠点を1つに統合した工場を新たに建設し、生産規模を現在の2倍に増強します。国内では、2019年12月に大阪本社の新事務棟が完成する予定です。

社是「日に新た」のチャレンジ精神

──ダイフクの採用方針をお聞かせください。

秋本 基本的には新卒採用をメインに、キャリア(中途)採用ではエンジニア、SEを必要に応じて随時補充しています。2019年4月入社予定の新卒内定者は124名(大卒以上文系17名、高卒32名、専門卒3名、残りは理系の大卒以上)です。大卒以上の理系出身者はエンジニアとして設計・施工監理・アフターサービスに、文系出身者は営業や総務・法務などの間接部門に、高校卒・専門学校卒の方は製造部門の配属になります。昨今、グローバル展開を進める当社においては、特にエンジニアの補充が重要になってきており、現在は、新卒採用とキャリア採用の両建てで進めています。

──御社の「求める人物像」についてお聞かせください。

秋本 ダイフクには社是「日新(日に新た)」があります。その意味は「今日の『われ』は昨日の『われ』にあらず、明日の『われ』は今日の『われ』にとどまるべからず」です。当社には、新しい自分にチャレンジしていく、最後までやり遂げる、といった企業文化があるので、グローバル志向で、チャレンジ精神のある方を求めています。

面接重視の採用プロセス

──新卒採用の採用プロセスについて教えてください。

秋本 ダイフクの新卒採用の特徴は、とにかくたくさんの学生の方にお会いする点です。例えば面接枠が100あって、説明会参加者が100人いるとしたら全員と面接をさせていただきます。

──ある程度人数を絞ってから面接を実施する企業が多いと思いますが。

秋本 ダイフクでは、会社の価値観と学生の就職への考え方等をすりあわせながら選考していくので、グループワークやディスカッションは行わずに、すべて面接で選考を行います。大学や学部も関係なく、たくさんの学生に会い、人物とのマッチングを意識しながら最終的な内定を出しています。

──どのような面接を行われるのですか。

秋本 面接は人事総務部の担当者と役員が協力して行っています。面接は複数人の面接官が行います。一次面接では学生1人に対して面接官2〜3人、三次の役員面接になると多い時は6〜7人の事業部門の役員が出席します。これは、採用に対して事業部門の役員自身が自分の目と耳で学生の考えを聞き、自部門とのマッチングを図りたいと考えるからなのです。一般的に、他社の役員面接は役員1〜2名と人事担当の3名程度と聞きますので、学生には事前に「今日、出席する役員は何名です」とお伝えてしています。

 キャリア採用でも、最終面接は必ず役員が出席します。当社役員は面接をとても重要視しており、直接会って判断したいと考えています。これも社風なのでしょうね。

──国内の外国人社員についてはどのように採用されていますか。

秋本 外国人採用は、キャリア、新卒ともに力を入れています。国内に勤務している外国人社員は約80名います。2018年4月の新卒外国人は、マレーシア2名、韓国2名、中国2名、ベトナム1名、タイ1名の計8名でした。2019年4月には中国からの留学生2名と海外の大学を卒業するインド人2名が入社してきます。今後も技術やコンサルティングの部門で「海外との掛け橋」になる人材を採用していく方向です。

 また、これまで当社が採用した外国人社員は、ある程度の日本語スキルがなければ内定を出してはいませんでしたが、今後は優秀なグローバル人材の獲得に力を入れ、入社してから日本語スキルを高める仕組みも取り入れていきます。

人と人のつながりを大切にする会社

──新入社員研修について教えてください。

秋本 入社してから約5ヵ月間の新入社員研修は、当社のマザー工場である滋賀事業所を中心に行います。期間中は座学のほか、事業部や工場での実習、顧客納入先での現場実習を行い、9月に配属となるのですが、配属先でも半年程度は色々な実務を経験することになるので、最終的に担当業務に就くのは2年目からになります。これがダイフクの教育研修の大きな特徴です。

──5ヵ月間の研修を受けるのですね。

秋本 そうです。実習が工場、事業部、現場(顧客納入先)の3種類あるのもユニークだと思います。現場での実習には2〜3週間ほど入ります。

 工場を見て、事業部を見て、現場を見て、社会人としてのルールやマナーを学び、メーカーとしてのモノづくりを理解した上で、配属先の業務に携わることが新入社員研修で重要であると考えています。特に、事業部の間接部門や本社部門に配属される社員は、配属後に現場に行く機会がほとんどないため、現場を知ることは貴重な体験となります。

──会社の役割、自分の役割がきちんと伝わる研修ですね。

秋本 5ヵ月間の新入社員研修で、切磋琢磨しながら過ごす中で生まれてくる絆は強いですね。研修を終えて配属先に向かう時は皆、寂しがります。当社の仕事は1人ではできません。常にチームとして動く意識は非常に重要だと考えて、それに耐えうる人材を育成しています。

──滋賀事業所はどのぐらいの大きさなのですか。

秋本 事業所の敷地面積は約120万平米で、東京ドーム25個分の広さです。1970年に土地を取得した後、段階的に造成工事を行ってきました。事業所内では農薬を使わないなど、自然との共生を保ちながら事業活動を行っており、現在、敷地内には約50種類の絶滅危惧種が生息しています。

 また、事業所内には「日に新た館」という世界最大級のマテハン・ロジスティクス総合展示場があります。ダイフクの技術とノウハウを結集した150種類・400点に及ぶ物流システム・機器を展示し、実際の動きをお客様に見ていただけるショールームとして、年間2万人のお客さまに来館いただいています。設備のスケールや迫力を体感いただくため、学生の方にも最終面接の前に必ず見ていただきます。

柔軟な働き方を支援する「制度と環境づくり」

──人材戦略もユニークな御社ですが、人事制度として特徴あるものをご紹介ください。

秋本 グローバル関係の研修は、海外の異文化や宗教・商習慣まで勉強することに力を入れています。

 選抜型の研修になりますが、例えば「海外語学トレーニー制度」に選ばれた社員は国内で英語の勉強をした後、会社側の全額負担かつ給与支給で海外に語学留学に行きます。この研修を受けた社員は、海外駐在や長期出張に従事することが期待されています。「グローバル勤務コース」は、会社が一部費用を負担して語学トレーニングと宗教・商習慣・異文化コミュニケーション・国際契約などを学び、海外に行ってビジネスを展開できるように段階的に行う研修です。

──女性のための制度にはどのようなものがありますか。

秋本 積極的な女性採用と教育研修をしていますが、他のメーカーと同様に社員の女性比率は低い傾向にあります。しかし当社の場合、女性社員の退職率は低く、女性社員の平均勤続年数は16年と、男性社員の17年とでほぼ同じです。メーカーでは、男女で平均勤続年数に7〜8年の開きがあるのが一般的なので、これは当社の特徴と言えるかもしれません。

 退職率が低い理由としては、ダイフクには長く働ける環境、あるいは長く働きたくなる仕事があるからだと考えています。女性を支援する制度に注力した結果、産休・育休の取得率は100%、復職率も100%です。独自の取り組みとして、復職前には不安がないように面談をしています。また、産休・育休中には、毎月発行の社内報を送付し、社内イントラネットにもアクセスが可能なので社内情報の収集もできます。加えて「育休復帰者のための上司向けセミナー」も開き、育休から戻るママになった女性社員ヘの対応を指導し、復職後の働きやすい環境づくりに努めています。

 その他、外部企業との提携による無料で保育園をさがす「保活コンシェルジュサービス」や、ベビーシッター費用補助も行っています。女性に限らず利用できる柔軟な働き方には「スーパーフレックス制度」があります。例えば、時短勤務期間が終わっても子育てで大変な場合、上司の許可を得ていればコアタイムに関係なく、何時に出社しても何時に帰宅しても良い制度です。ジョブリターンエントリー制度は、例えばご主人の海外転勤によって退社しなければならない場合、あるいは保育園が見つからず復職できない場合に、退職せずに一定の条件で復帰できる制度です。

 こうした様々な制度で柔軟な働き方を支援し、快適な環境で仕事ができるように配慮しています。

資格試験に通ずる「ダイフクのDNA」

──御社の業務で必要となる資格はありますか。

秋本 当社で使う資格はTOEIC® L&R TEST、電気工事士、建築士資格になりますが、採用選考に際して履歴書の資格欄に記載される資格が合否に反映されることはありません。しかし、面接では資格を取得するまでの努力や、なぜその資格を取得したのか、勉強した期間や取り組み方などをお聞きします。ちなみに当社に勤務する一級建築士は、10数名のチームで自動倉庫の構造設計や免震・耐震などへの対応に取組んでいます。

──入社後、取得を奨励している資格はありますか。

秋本 主に語学ですね。英語はもちろん、中国語、韓国語、スペイン語、ドイツ語、タイ語などが奨励されており、要件となる語学資格を取得すればグローバル勤務コースに認定されます。また、英語に関して言えば、TOEIC® L&R TESTで一定以上のスコア取得や、前回と比較して一定以上のスコアがアップしていれば奨励金などを支給する社内制度があり、社員の継続的な語学力向上を後押ししています。また、内定者にはCASEC※の通信教育を受講していただき、内定から入社までにどれだけ伸びたか、語学に対する意識付けをしています。

──資格取得をめざしている『TACNEWS』の読者に向けてメッセージをお願いします。

秋本 ダイフクでは、1980年代前半に顧客の国内自動車メーカーから「海外進出のために協力してほしい」との依頼を受け、当社初となる海外現地法人を米国に設立したのが、当社のグローバル化の始まりでした。当時は、英語が苦手な社員が突然命じられて、海外に赴任するようなケースも珍しくありませんでしたが、そこから今日に至るまで苦労して培った軌跡があります。海外にチャレンジしていきたい、世界で活躍したい、そうしたグローバル志向とチャレンジ精神を持った社員の成長に向けて、当社では先進的な取り組みやユニークな制度改革を行ってきました。

 ダイフクには社是「日に新た」の「今日の『われ』にとどまるべからず」の精神、そして「最後までやり遂げる」DNAが息づいています。『TACNEWS』の読者の皆さまには、当社の企業風土とDNAをご理解いただき、難関資格試験突破に向けた取り組みの一助にしていただければ幸いです。

[『TACNEWS』 2019年3月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]

会社概要

社名  株式会社ダイフク
設立  1937年5月20日
代表者 代表取締役社長 下代 博
本社所在地 大阪市西淀川区御幣島3-2-11

事業内容

物流システムの総合メーカー。一般製造・流通業向け、半導体・液晶生産ライン向け、自動車生産ライン向け、空港向けシステムの他、洗車機や電子機器事業を展開。

従業員数

9,193人 (グループ計/2018年3月31日現在)

URL: https://www.daifuku.com/jp/