人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第2回 株式会社ベンチャーバンク

Profile

池上 奈緒子氏

株式会社ベンチャーバンク
人事部 採用グループ

約10年間、人材紹介会社にてキャリアアドバイザーとして勤務。2016年10月、株式会社ベンチャーバンクに入社し、人事職にキャリアチェンジ。現在は中途採用担当として奔走している。

「漫画喫茶ゲラゲラ」、「ホットヨガスタジオLAVA」、暗闇バイクエクササイズ「FEELCYCLE」、日本初の暗闇トランポリンフィットネス「jump one」…。現在ベンチャーバンクには約23の事業(2017年6月現在)があり、それぞれがひとつの会社になりうる独立した事業として展開している。急成長し続ける企業だからこそ、その変化もダイナミック。その礎となる「人」に対する人材観も独創的だ。ベンチャーバンクで中途採用を担当している池上奈緒子さんに、ベンチャーバンクの人材観や採用方法、資格についての考え方をうかがった。

社員第一主義の
「幸せインキュベーションカンパニー」

──ベンチャーバンクの事業内容とはどのようなものですか。

池上 ベンチャーバンクはインキュベーション(新規事業創出)カンパニーとして、様々な新しい価値を世の中に生み出してきました。常に20以上の事業が展開され、年に2~3の新規事業を立ち上げていくことが大きな特徴といえます。
 ビジネスが生まれる背景には、ベンチャーバンクの企業理念である「好きを仕事に」、「チャレンジの結果は成功か大成功しかない」というベンチャースピリットが通底しています。会長の鷲見をはじめ役員メンバーが一番に考えるのは「社員が幸せであるか」です。「お客様第一主義」を謳っている企業は世の中にあまた存在しますが、ベンチャーバンクは「社員が幸せならお客様を幸せにできる」がコンセプトです。やりたいと手を上げる社員の挑戦を、会社が全力でバックアップする。のびのびとチャレンジできる環境がDNAとなって、世にないものを世に生み出し続ける「幸せインキュベーションカンパニー」となっています。

──その経営理念をわかりやすく説明していただけますか。

池上 ベンチャーバンクには、成長し続けている企業だからこそのダイナミックな変化があります。社員は新卒も中途採用も、その変化を楽しみ、わくわくしながら、自分の仕事に向かっています。その変化の中で、特に重要視されるのが「人」です。社員第一主義を唱えるトップは、社員が個人の特性を活かし、欠点を探すのではなく、長所を最大限に伸ばし、一人ひとりを成長させたいと考えています。ですから、日々の業務でもできないことを探すのではなく、「まずはやってみよう。やれる方法を探してみよう」という社風が根づいています。
 こうした環境の中では、自然に「感謝の気持ち」が社員同士に生まれてきます。事業ごと、時期ごとに大小様々な変革の中で、事業としてのチャレンジ、個人としてのチャレンジが、大きな成果を生み出します。仕事はひとりで行うものではなくてチームで行っていくもの。お互いを尊重し、特性と長所を認め合って充実した仕事を行うことで、自身の成功体験を積み重ねられる。それを振り返ったとき、共に力を尽くしたチームメンバー、任せてくれた上司、その環境を与えてくれた会社に「ありがとう」と心から伝えることができます。
 このように、どの仕事、どの事業にも一貫して共通するのが「感謝をする。素直な心で行動する。好きを仕事にする」こと。つまり「すべての係わる人に感謝できるかどうか」。採用でもこの資質があるかどうかを重要視しています。
 この全社共通の理念や考え方をきちんと理解してもらうために、新卒採用・中途採用問わず全員、入社時に宿泊型の理念研修を受けていただきます。

年齢よりも「人間性重視」の採用試験

──現在の従業員数と採用人数を教えてください。

池上 グループ全体で約6,500人(アルバイト含む)です。採用数は、各事業の成長スピードが速いので、採用しても次から次へと採用ニーズが発生し、なかなかすべての事業、部署の採用目標を達成できておりませんが、本部社員は多くて月10名、少なくても月2~3名は中途採用しています。

──採用試験はどのように行われるのですか。

池上 当社では中途採用の比重が高い傾向にあるので、中途採用試験についてご紹介しますと、一般的な適正テストと文章力や簡単な計算力を問う筆記試験が2種類と、面接を2~3回行っています。どの過程においても、当社が大切にしている価値観に共感される方か、ものごとの捉え方が前向きかなどの人間性を重視しています。
 募集は、基本的にこの事業のこのポジションでこの能力の方を、というスタイルです。ただし各事業で同じようなポジションの募集が発生することもあるので、ポジションによっては、人事側で一括に選考し、適性によって配属を決める場合もあります。選考の中でキャリアにおいてご自身がやりたいことは何か、大切にしていることは何かをお聞きします。入社後もさらなる「長所伸展」の挑戦として、キャリアを変更することも可能です。

──採用では年齢的にどのような層を考えていますか。

池上 会社の意向としては、当社にマッチすればよく、かなり幅広い年齢層を想定しています。よく「キャリアチェンジは20代のうち、35歳を超えたら転職は無理」と言われますが、当社はインキュベーションカンパニーなので年齢は関係なく、いかに素晴らしい事業の種を育てられるかを最優先しています。
 ただ当社はベンチャー企業ですから、どうしても30代までの若い社員が多く、50代は中途採用で入ってきた方だけで、生え抜きの社員で50代はまだいません。それでもいち早く定年を65歳に引き上げて、意欲のある方ならいくつになっても元気に働いていてほしいと考えていますので、従来の日本企業とは違い、幅広いチャンスのある会社だと思います。

社員の幸せに軸足を置いた制度

──かなり柔軟な社風ですね。人事制度面でもユニークな制度や取り組みがあれば教えていただけますか。

池上 人が幸せと感じるにはいろいろな視点があって、社内にはそれを後押しする多様な仕掛けがあります。例えば年1回、自分を育ててくれた人に感謝する「感謝プロジェクト」。当グループは全国展開しているため、「仕事にまい進し、なかなか実家に帰れない」、「帰りたいけど実家が遠くて交通費がかかる」という社員に、「親御さんのお誕生日を祝いに行こう」、「お墓参りに行こう」と感謝の気持ちを伝える機会を作るものです。社員誰でも参加できるプロジェクトで、宣言をしてレポートを提出すればひとり3万円が支給されます。

──ユニークなアイディアですね。感謝の気持ちや幸せというのは数値では計りにくく、取り組んでいくに際し難しさはないですか。

池上 入社時の理念研修で感謝の気持ちを徹底的に思い出させるので、「今の自分があるのは自分ひとりの力ではない」ということに改めて感謝する風土が自然と広がっています。普通の企業研修だとスキルアップに集中すると思いますが、当社は本当に人間力に軸足を置いた研修なんですね。そういった背景もあって、みんなに感謝の気持ちがある。ちなみに当社で行っている「社員幸福度調査」において、「この会社で働いていて幸せだと思う人」という人の割合は、グループ全体で7割を超えています。

──その他に制度としてユニークなものはありますか。

池上 独創的な制度はたくさんあります。例えば、入社数年経った社員が自分の部署の上席を通さずに別の部署で活躍したいと宣言し、異動することができる「FA制度」があります。当社では「この仕事に就いたらずっとそこから動けない」ということはありません。その後別のことをやりたいと思えば、自分のキャリアは自分で決めて歩んでいけます。もちろん総合職として会社からの辞令もありますが、基本的には本人が希望しない職場に強制的に行かせることはありません。そこは新しい会社ならではですね。こうして次のキャリア、次のステップへと、ベンチャーバンク内でいろいろなことを経験しながら長く勤めてほしいと考えています。

大切なのは資格取得までのプロセス

──御社が行う事業の中で資格か必要なものはありますか。

池上 基本的にはありませんが、宅地建物取引士があれば活かせる職場はありますし、簿記の知識が活かせるポジションももちろんあります。経理部には公認会計士も複数名在籍していますが、一般社員として働いています。経理財務部長はコンサルタント出身の女性公認会計士で、ヨガが好きで入社しました。採用段階では資格を優先したことはありません。彼女たちは、公認会計士だからといって監査法人や会計事務所で働きたいというわけではありません。ライフスタイルの中で、公認会計士の資格を持ちながら、それほどハードではない、気持ちよく働ける環境に身を置きたかったのです。「資格ホルダー=こういう働き方をしなければいけない」というくくりとは違う働き方を求めていたのですね。資格に紐づいた仕事しかできないということは当社の場合ありませんので、幅広い選択肢の中からやりたい仕事を選ぶことができます。

──応募者が国家資格を持っていた場合、どのような評価をされますか。

池上 プラスマイナスでいえばもちろんプラスです。まず、資格が取得できたということは、仕事の中だけでは経験できない部分の知識まで網羅的に体形立てて勉強できていると判断でき、そこはプラスになります。ただ、その資格があるだけでプラスというより、仕事を通して何をやってきたかという経験を重視しています。
 それから、社会に出てから働きながら勉強して、何か難しい資格を取得したというプロセスです。ビジネスマンとして仕事に挑戦しながら、資格取得に時間を割いてやりぬいた努力。そこは人間的に大きなプラスになりますね。

わずか半年で事業化、
次々生まれる新規事業

──毎年立ち上がる新規事業はどのようにしてスタートするのですか。

池上 当社はフィットネスが主流事業なのですが、例えば海外の最新事情を調査に行き、「これが来そうだな」という会長や役員、社員のひらめきから、「私がやります!」と挙手した社員が新規事業を立ち上げます。これによって成功した事例はたくさんあります。
 新規事業は会長や役員などの一部の社員が発案するだけではありません。当グループでは所属している全社員が新規事業を提案し、立ち上げるチャンスを持っていて、毎月「ビジネス発見コンテスト」を開催し、そこから新規事業が立ち上がっていきます。あるいは、社員の中で「最近、ニューヨークでこういうのが流行っているよ」といったひと言から立ち上がって育っていく事業もあります。本当にいつ誰が新規事業の責任者になるかわからない。チャンスは山のようにある。そこが当社の本当におもしろいところですね。
 そしてここが良いところなのですが、「ビジネス発見コンテスト」で提案する際、事業計画書などは必要ありません。「こんなことをやってみたらみんなハッピーになるし、おもしろそうだよ」というひらめきレベルでいいんです。誰でも提案できて、内容によってはそのまま育っていく。自分が発案した種が事業になって、ヒットビジネスになる可能性があるということです。
 また、当社は「日本にないこと」にこだわっています。そのため、初動はとても速く一気に動きます。ですから「これはいけるんじゃないか」という提案から事業化までほぼ半年で立ち上がることもあります。

──それに合わせて人材採用して事業化となると、人事部は大変ですね。

池上 管理部門は新規立ち上げに際し、気持ち的には一緒になってギアを上げていきます。そこで自分たちが「いやいや、常識的に無理だから」と杓子定規に止める判断はありません。リミットの半年までに何とか間に合わせようと、全力で考え、超スピーディーに対応します。
 というわけで「新規事業がおもしろそう。どんな立ち位置でもそこに係わりたい」という人がたくさん入ってきているのがベンチャーバンクです。本当にやる気さえあればすごく楽しい会社です。逆に「何でもいいから毎日会社に行ければいいよね」というスタンスの人にとっては、辛い会社でしょうね(笑)。

社内は「お互いがハッピーになれる」プロジェクトがいっぱい

──女性のライフステージに合わせた特徴的な制度をご紹介いただけますか。

池上 データから見ても非常に特徴的なのが「産休育休の申請率100%、職場復帰率90%」という高取得率です。日本の女性の継続就業率が約40%と言われる中、なんと倍以上の人が復帰していますね。
 理由のひとつは「戻ってきたい会社」になっていること。家族のいる社員に対して制度が充実しているし、休暇を取りやすい雰囲気、戻ってきやすい雰囲気があるからです。迎え入れる人たちの考え方や仕事内容にも配慮があるので、こうした結果が出ているのだと思います。
 社内には子育てをするママさん社員がたくさんいて、多くの方は「時短制度」を利用して働いています。また、本部業務に従事しているママ・パパの場合、時短制度だけでなく、「在宅ワーク」もできます。ママ・パパ以外でも、職種や部署によっては「変形労働時間制」を取り入れているので、本部でも勤務時間の柔軟性があります。例えば、当社は9〜18時が勤務時間ですが、どうしても2時間しか働けない日があればその日は2時間、翌日はパートナーが休みなので9時間働き、月内で必要勤務時間を調整するということも可能です。これだけ多様な働き方を選択できる、働きやすい会社はなかなかないと思います。
 もう一つの好例が、グループ会社「LAVA」のママさんヨガインストラクター同士で作っている「キラキラママプロジェクト」です。ママさんたちは一番稼働率の高い夕方以降のレッスンに入れないぶん、店舗清掃や店舗のフォローアップをしたり、昼間のレッスンの急なお休みの代行を受けたりしています。このプロジェクトも、出産後に職場復帰したところ気になることがある、と会社に訴えた方が立ち上げました。お互いがハッピーになれる助け合いの精神。グループ内にはそんなプロジェクトがたくさんあります。制度ができても使っていなければ意味はないので、働く人からそうした声が出てくるのはすばらしいことです。

──資格取得をめざしている『TACNEWS』の読者に向けてメッセージをお願いします。

池上 司法試験をめざし、晴れて弁護士となりました。でも既存の弁護士事務所には入りたくない。自分の理想があってそれを実現したい――それならベンチャーバンクで自分の弁護士法人を立ち上げてみてはいかがでしょう。当社なら、ベンチャー企業のように自分で弁護士法人を立ち上げることができるかもしれません。あるいは、会社の法務部を戦闘的な集団にしたいという思いを実現できるかもしれませんし、当社が扱う健康食品には法務的知識も深く必要ですから、多彩な事業があるので勉強の幅は広がります。
 多様な方向で資格の活かし方を考える新しいチャンスがいくらでもある。それが「好きを仕事に」できる、「社員第一主義」のベンチャーバンクです。興味のある方は、ぜひ一緒に新しいチャレンジをしてみませんか。


[『TACNEWS』 2018年10月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]

会社概要

社名  株式会社ベンチャーバンク
創業  1990年12月
設立  2016年10月
代表者 代表取締役会長 鷲見 貴彦(すみ たかひこ)
    代表取締役社長 兼 CEO 佐伯 信行(さえき のぶゆき)
所在地 東京都港区北青山1-2-3  青山ビル11F

事業内容

1.健康食品・化粧品販売事業、2.海外留学事業、3.eコマース事業、4.パーツ美容事業、5.リゾート事業、6.ファンクショナル・トレーニング事業、7.カラダ整体メンテナンス事業、8.オイルトリートメント事業、9.体質別経絡セラピー事業、10.新規事業開発

従業員数

6,537人(正社員 3,990名、アルバイト 2,547名)
※2018年4月末現在

URL: https://www.venturebank.co.jp

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