日本のプロフェッショナル 日本の会計人|2021年7月号

Profile

山田 典正氏

アンパサンド税理士法人 代表社員 税理士

山田 典正(やまだ のりまさ)
1982年7月3日生まれ、千葉県出身。法政大学経営学部卒業。大学卒業後は税理士試験に専念し、2008年1月、アクタス税理士法人に入社。2012年、税理士試験合格。2015年1月、山田典正税理士事務所として独立開業。2018年1月、社名をアンパサンド税理士事務所に変更。2019年10月、アンパサンド税理士事務所より組織変更し、アンパサンド税理士法人となる。

柔軟な働き方ができる多様なスタッフとともに、
クライアントの未来に貢献します。

 「求人」は一般的に、やってもらいたい仕事が決まっていて、そこに採用した人を当てはめていくというケースが大半だ。しかし、今回ご登場いただく税理士の山田典正氏は「人を仕事に当てはめるのではなく、人が仕事を考える」方針のもと、多様なスタッフとともにクライアントの未来に貢献していきたいという考えでアンパサンド税理士法人を運営している。そんな山田氏が税理士をめざした経緯から、受験、勤務時代、独立開業から今日までの歩みとともに、独自の仕事観、人材観などについて詳しくうかがった。

人にいい影響を与える生き方がしたい

 「父は公認会計士(以下、会計士)、母は税理士、3人兄弟はみな会計業界で働いている」今回ご登場いただくアンパサンド税理士法人を率いる税理士の山田典正氏の背景をひと言でいうとこんな一文になる。しかし、父や母の後ろ姿を見て、早い時期から会計業界をめざしていたのかといえば、そんなことはない。
「将来は会計の道にという両親からの勧めは一切ありませんでした。あとから聞いて知ったのですが、子どもたちには自由に育ってほしいという母の方針があったそうです。だから日常の中で会計の話が出ることはほとんどなかったですし、『会計の道に』『税理士に』と勧められたこともありませんでした」
 実は山田氏の長兄である税理士の山田直広氏は『TACNEWS』2019年11月号掲載の『資格で開いた「未来への扉」』に登場している。トラックドライバー、自動車整備士、営業マンという経歴を持つ税理士として、掲載当時は話題を集めた。このように、山田家の子どもたちは、両親から将来の道をサジェストされることなく、自由に自分自身の将来を選択してきたのだ。
 山田氏は中学・高校時代、学校帰りに母が経営する会計事務所に寄ることもあったが、中学時代は専らパソコンでゲームをしていた。高校時代は母の手伝いでアルバイトとして領収書貼りや簡単な入力作業をしたこともあったが、正直なところ母親が何をしているかはよく知らなかった。
「中学、高校時代、自分が将来就く職業のイメージはありませんでしたが、中学3年頃から『自分が生きる意味ってなんだろう』と死生観について深く考えるようになりました。アニメが好きでよく観ていたのですが、『エヴァンゲリオン』を始め、当時のアニメにはそうしたテーマを持つものが多かったからかもしれません。
 自分なりの死生観の結論は、人との関わりの中でどれだけ他の人にいい影響を与えてきたか、死ぬまでのその蓄積が自分の人生の価値になるというものです。大学に進学した理由も、大学にはいろいろなタイプの人がいるだろうから、その人たちと関わって話を聞きたいと思ったからです。経営学部に進んでいますが、将来の職業を意識して選んだわけではありませんでした」
 こうして法政大学経営学部に進学した山田氏だが、そこで熱中したのは音楽活動だった。 「今思うと本気とは言えない程度だったので恥ずかしいのですが、ミュージシャンをめざしたいと思っていました。音楽はメッセージ性が強くて、人に影響を与えることができるだろうと。でも、ただ楽しいだけで終わってしまいましたね」
 「人にいい影響を与える生き方がしたい」という思いは定まっているものの具体的な職業は浮かばず、就職活動をしないまま大学4年の冬を迎えた。

一人ひとりと深く関わる

 大学卒業間近となっても、結局自分の進路について腑に落ちる答えは出なかった。
「そんなとき、何がきっかけだったかは覚えていませんが、進路について母と話をすることがありました。そのときに自分の思いを正直に吐露したところ、税理士はどうかと勧められたのです」
 母親からは、「税理士はお客様の会社のことはもちろん、個人のこと、家庭のこと、老後のこと、子どものこと、ときにはペットのことなど、人生のあらゆる場面の相談を受ける仕事だよ」と教えられた。
「それまで自分は、税理士の仕事はただ数字を扱う仕事という認識でしたが、母の話を聞いて印象が変わりました。また、それまでは影響を与えるならより多くの人にという考えでしたが、税理士のように一人ひとりに深く関わり頼りにされるのもいいかもしれないと思うようになりました」
 「一人ひとりと深く関わる」という税理士の仕事に興味を持ち税理士試験への挑戦を決めた山田氏だが、本格的に勉強するには学費が必要だ。そこで、卒業した年の夏までは派遣の仕事をして学費を貯めることにした。
 こうして2005年9月、TACの2年本科生に申し込み税理士試験への挑戦を開始した。1年目は3科目を受験し、簿記論と財務諸表論に合格。2年目は税法3科目にチャレンジしたかったが、負担を考えて法人税法と相続税法の2科目を選んだ。

コンサルティングをやってみたい

 勉強しながら実務経験を積むため、就職活動は2年目の本試験後から始めた。 「8月の本試験前から就職活動を始める人が多いことは知っていましたが、法人税法と相続税法は初めて勉強する科目なので、本試験までは受験に専念しようと決めていました。ただやはり本試験後からのスタートとなると、募集を締め切っている事務所も多く厳しい状況でしたね。結局そのときは内定をもらえず、ひとまず母の事務所でアルバイトとして働くことになりました。そのあと、11月から就職活動を再開して無事アクタス税理士法人に内定をもらいました」
 こうして2008年1月に、山田氏は会計人としてのキャリアをスタートした。山田氏がアクタスを選んだ理由は、「Consulting Mind」というポリシーに共感したからだった。コンサルティングをやってみたいという漠然とした思いが、アクタスを選ぶ決め手となった。
「入社半年で上場子会社や年商数十億円規模の会社もメインで担当をさせてもらいましたが、社会人1年目なのでマナーや身だしなみといった社会人としての基本から不安で、正直なところ大変でしたね。わからないことが多い中、お客様からの質問に対しても何とか回答し、『念のため調べてから正式に回答します』と言って、会社に戻ってから周辺の知識も含めて必死で調べました。とにかく知らない分野を無くそうと必死でしたね。もちろん、それでもわからないときや不安なときは、上司や同僚に相談し助けてもらいました。苦労は多かったですが、このときの経験は自分の糧になっていると思います」
 山田氏は幅広い顧客層を持つアクタスで、様々な規模の企業に携わった。巡回監査から決算申告、事業承継のための株価評価、相続税申告、上場企業の顧問や連結納税・組織再編・国税税務の相談業務、数十億円規模の資産家の相続対策や確定申告なども担当。入社4〜5年目には中間管理職的立場となり、後輩の指導やサポート、グループの取りまとめなどを行うようになっていた。
 仕事と両立しながら勉強を続けた山田氏は、受験4年目に法人税法に合格し、6年目に消費税法、7年目に相続税法に合格。入社5年目の2012年、税理士試験合格を手にした。
「私は字が汚い上に文字を書くスピードが遅く、時間内に論文を書ききれず腱鞘炎にもなりました。字が汚いことがコンプレックスで、一生合格できないんじゃないかと思ったこともあります。2年目は手ごたえがあった法人税法も不合格で、そのあとも税法科目に苦戦しました。とにかく税法科目にひとつ合格するまでがつらかったですね。7年かかりましたが、最後まであきらめなくてよかったです。
 合格時にはすでにひと通りの業務を経験していたこともあり、独立開業も視野に入れていました。ただその頃、お世話になった先輩や同僚の独立開業による退職が重なり、またリーマンショック後は控えられていた採用活動が動き始め、新人も入ってきました。私は自由にやらせてもらったし評価もしていただいたので、恩を返してから退職したいと思い、合格後2年間はアクタスに貢献してから独立開業しようと決めました」
 予定通り2年後の2014年4月に退職を申し出た。退職時期が12月末に決まり、「立つ鳥跡を濁さず」で後味よく退職できるよう引き継ぎをしていった。毎年秋の恒例だった社員旅行には、退社が決まっている人は参加しないことが多かったが、山田氏は参加して思い切り楽しんだ。社員旅行の夜、2次会で行ったカラオケでアクタスの加藤代表が「サライ」を熱唱して山田氏を送り出してくれたことはとてもうれしかった思い出だという。
「独立後もお客様を紹介してもらうなど、アクタスとは良好な関係が続いています。なんといってもOBとしてリクルートサイトに載せてもらっていますから。もし今からもう一度税理士法人に就職し直すとしても、アクタスを選ぶと思います」

東京・錦糸町で独立開業

  2015年1月、山田氏は東京・錦糸町にある自宅を事務所として独立開業を果たした。錦糸町を開業地とした理由について、山田氏はこう語っている。
「やはり都心のほうが情報は速いし、仕事にスピード感がある。学ぶところが多いので、東京でノウハウを積み、将来的には地元である千葉県船橋方面にも展開していきたいと思い、中間地点にある錦糸町の自宅で開業するのがベストと考えました。
 もともとコンサルティングがやりたくて前職であるアクタスに入っているので、独立後もコンサルティング業務を通して、企業が求めるサービスを提供していくことを実践していきたいと考えていましたね」
 山田氏が独立する半年前、大学時代の友人が経営コンサルタントとして独立していた。その彼からは学ぶところが多く、独立後には一緒に経営者に会ったり、飲みに行ったり、スポーツをしたり、勉強会を開いたりと、積極的に交流していた。山田氏はそんなつき合いを通じて、コンサルティングの考え方を学んでいった。
「クライアントの課題解決のために知識やノウハウを提供するコンサルティングの仕事を知る中で、税理士はお客様からお金をもらって、何をサービスとして還元しているのだろうかと考えるようになりました。例えば納税の手続き業務なら、お金をいただいて、さらに税金としてお金を払ってもらう仕事だとも言えます。節税できるというメリットはありますが、節税は課税の繰り延べにすぎないケースもあります。私はそうではなくて、お客様にダイレクトにプラスになるサービスを提供したいという思いがありました」
 そう考えた山田氏は、お金を生み出すサービス、資金調達や補助金の支援業務に着手した。さらに生産性向上設備投資促進税制(当時)による即時償却(設備投資にかかった資金を一括で償却する)のための手続き支援も開始。このようにスポット業務を走らせながら、コンサルティング業務や顧問業務の展開を図っていった。
「スポット業務を積み重ねることでノウハウが身についたら、その分野の専門家として認識してもらえるようブランディングを行いました。基本的にクライアントの獲得方法は紹介です。今まで培った人脈から輪を広げていきました」
 こうして独立開業した山田氏の年商は、1年目700万円、2年目1,500万円、3年目3,000万円と順調な滑り出しを見せた。今日では法人のクライアント数は110社ほど。ただし、グループ会社として複数社を見ているケースも多く、窓口ベースではおおよそ70件ほどになる。
 2016年には自宅とは別に事務所を借り、2018年1月には現在ともに代表社員を務める税理士の大塚俊希氏が合流し、事務所名をアンパサンド税理士事務所に変更。そして2019年10月に法人化した。

クライアントすべての事業計画書を作る

 アンパサンドでは個人向けの相続業務の他、法人向けに、法人顧問サービス、アウトソーシングサービス、経営支援サービス、相続業務、財務支援サービス、その他コンサルティングサービス(事業承継、組織再編、業務改善など)などを提供している。基本的にクライアントのニーズに合わせてサービスをカスタマイズし提供するのが、山田流である。
「理想として、質の高いサービスを提供するためにも全クライアントの事業計画書を作りたいと考えていて、途中までは実際に行っていました。ただ、いただいているフィーでは採算が合わないケースや、作った事業計画書をまったく見ないクライアントもいますので、現在は報酬や要望に応じて、おおよそ7~8割程度の作成に留まっています。事業計画書には未来の数字を載せ、そのベースとなる過去の実績数字も入れます。会議では、売上、原価、経費といった過去の話は短時間で終え、経営者とは経営の話、つまり未来の話をすべきだと思っていますので、打ち合わせでは『こうすると売上が増える』『この月に新たな事業を始めたらどうなるか』など未来軸で話をします」  こう言うと過去の数字に重きを置いていないようにも映るが、山田氏は未来の数字を作るためには過去の数字がどのように管理されているかが重要だと考えている。
「管理会計が重要だと考えていて、クライアントの会計処理についてはこだわりを持っています。アンパサンドとしてのベースとなる科目体系表もありますが、使う科目は会社によって多少異なったり、売上や原価でも新しい科目が必要になったりすることもありますので、クライアントに合わせてカスタマイズしながら、提出するレポートにいかに興味を持ってもらうかという視点で資料を作成しています。ただ定型的なサービスを提供するのではなく、本当にクライアントに必要なサービス、コンサルティングを提供していきたいですね。
 ただ、クライアントのニーズに合わせてなんでも請け負ってしまうことは、自分の首を絞めることにもなりかねません。ですから現在はご紹介であっても、こちらが提示した条件にご納得いただいた上でお引き受けするようにしています」
 自分たちのやりたい仕事からずれてしまわないようにきちんと線引きをしつつ、クライアントのニーズに最大限応えていく。そんな風に実績を作りながら事務所を大きくしてきた山田氏。今でもほぼすべてのクライアントに関わり、打ち合わせにもほとんど参加しているという。サポート体制を強化するため、各クライアントに担当者と入力担当者、そこに山田氏も加わる形で複数担当制になるように社内体制も構築中だ。

スタッフの柔軟な働き方を認める

 現在のアンパサンドの陣容は総勢11名、うち税理士2名、会計士3名となっている。
「柔軟な働き方を認めていて、中には自分で事業を行いながら働いている人もいます。始業時間も10時としていますが、そこまで厳密ではありませんし、予定がある日は早めに帰るというのも問題ありません」
 こうした柔軟な働き方を実現している背景には、山田氏の働き方へのこだわりがある。
「まず、人を会社に当てはめようとは思っていません。その代わり、何をやればいいのかは自分で考えてほしいと思っています。『自分はこういう役割だからこれをやる』ではなくて、『こういう経験やスキルがあるから、それを活かせるこの仕事をする』といったように。
 新しい仕事を始めるときは、希望者を募ることもあります。例えばM&AのFA(ファイナンシャル・アドバイザー)の依頼があったとき、会計士のメンバーに話したら『やってみたい』と言うので、今実際に取り組んでいます。このように、人を仕事に当てはめてやってもらうのではなく、自分自身でやりたい仕事を考え取り組んでもらおうという方針です」
 また、会計士が3名在籍していることは、税理士法人の規模を考えるとレアケースではないだろうか。どのように採用しているのだろうか。
「会計士の3名中2名は私のTwitterを見て応募してくれました。Twitterではいろいろな仕事の話を発信していますが、既成概念にとらわれずに仕事に取り組んでいる姿勢に共感して、一緒に仕事をしてみたいと思ったそうです。監査法人では第三者として監査を行う都合上お客様との距離が遠いので、もっとお客様に入り込んだ仕事をしてみたいと考えるようになるみたいですね」
 多様な人材に多様な働き方が選択できる組織。それが山田氏がめざす事務所の姿なのだろう。さらに、人材育成のために月1回の勉強会も開いている。
「今のスタッフは考える力や勉強意欲が高く、自分で考えながら仕事をしてくれます。2020年の緊急事態宣言以後、うちもリモートワークを併用しながら業務を進めてきましたが、新人研修はZOOMを使って行い、その内容は録画して今後も活用できるようアーカイブを残すようにしました。私が何かの作業を行うときも、ZOOMで録画しながら作業を行い、作業時に解説もして教育コンテンツ化しています。スタッフの勉強にもなるし、業務の引き継ぎにも使えます」
 また、こんなユニークな制度もある。
「うちには『寄付手当』があり、3ヵ月に1度、3,000円〜9,000円を支給し、好きな団体に寄付してもらっていて、寄付のための勉強会も実施しました。そのあと自分でさらに調べて『寄付したい団体が見つかりました』と喜んで報告してくれたスタッフもいましたね。寄付先を選ぶことは世の中について考えるきっかけにもなりますし、考えることで自然と知見が生まれていきます。また、生まれた知見はお客様との会話に活かすこともできます。寄付をすることで社会も自分も幸せになれる。それがこの手当を出している理由です」

影響力を高めるため、メディア活動に注力

 ユニークな人材戦略で成長を続けるアンパサンドだが、事務所の今後について山田氏はどう考えているのだろうか。
「やりたいことはたくさんありますが、それに無理やりつき合わせてしまうとスタッフが疲弊してしまいます。もちろん希望者がいれば一緒にやろうとなりますが、個人でやること、組織でやることは区別したいと思っています。メンバーは能力的にも人間的にもいい人材が揃っているので、私がやりたいことに無理やりつき合わせて、それが崩れてしまうのも嫌なのです。もちろん売上は作っていきますが、単なる組織拡大のためというよりは、組織を維持するためです」
 組織拡大のためではなく、スタッフ、組織の維持を最優先に事業を行っていきたいということだ。
「私個人としては影響力を高めるために、メディアの活動に力を入れていきます。自分の時間を、税理士実務、経営者、クリエーターにそれぞれ3割ずつ、インプットに残りの1割を使う配分が理想ですね。この中のクリエーターというのは、カッコよすぎる言い方かもしれませんが、要は情報発信、コンテンツ制作、ライティング、知識・ノウハウのコンテンツ化です。
 ビジネス的に考えると、どれかひとつに専念したほうがいいのですが、お金が目的ではありません。自分がやりたい仕事は何かと考えたとき、税理士として知見を高める、経営者として法人をよりよい組織にしていく、クリエーターとしてよりよいコンテンツを作っていく。この3つに注力したいと思ったのです」
 山田氏が考えるコンテンツの中には映像コンテンツも含まれているという。制作に時間がかかるのが難点だというが、どんな内容を考えているのだろうか。
「動画の内容はすべてのビジネスパーソンが知っておくべき簿記・会計の知識を考えています。2022年に施行予定の電子帳簿保存法によって社会はさらにDX化が進みます。簿記・会計の存在意義・本質は何なのか。それはコミュニケーションツールであると思うのです。メンバーが簿記・会計に対して共通認識を持つことが組織には必要だと思っています。
 財務会計、管理会計、税務会計など、会計には様々な側面があり、本来いろいろな場面で柔軟に活用できるものです。例えば業績評価のKPI設定に会計を取り入れれば、そこから人事評価制度にも会計の要素が加わり、全社的に会計が浸透していきます。このように社内で簿記・会計を共通言語化して、さらに事業計画書や経営戦略ともリンクしていけば、最も効果的な経営管理を行うことができるのではないでしょうか。このあたりのことはあまりコンテンツ化されていない領域だと思うので、ハードルは高いですが、将来的には自分の考えを整理してコンテンツ化に取り組んでいきたいですね」

自身の価値観を持ってほしい

 アンパサンドの行動指針には「私たちは7つの&(アンパサンド)を遵守して行動します」と記されている。例えば「プロフェッショナルとしての研鑽を重ねつつ、ゼネラリストとしての視野の広さを持つ」「企業を守る高いコンプライアンスを持ちつつ、攻めの提案を惜しまない」「法律に関しては厳格な態度を貫きつつ、お客様に合わせた柔軟なサービスを提供する」といった具合で、どれも二律背反する要素を組み合わせた言葉になっている。
 「ビジネスの中で二律背反するものを同時に実現するのは難易度が高いですが、それを実現できるメンバーが揃っています」と語る山田氏。人材にも自信があるようだ。
 採用に関しては大半のメンバーがここ1年以内の入社のため、現在は積極的な採用はストップしており、今年の夏以降に改めて採用を開始する予定だという。
 最後に税理士の仕事の可能性と受験生へのメッセージをいただいた。
「税理士の仕事は国の税金に関わる仕事です。税金は国民全員が関わっているものなので、そこに悩みがあったり、個々のライフスタイルによる違いがあったりと、いろいろな要素が絡んできます。世の中には日々新しいサービスが生み出されていますが、それによって税金はどのような影響を受けるのかを知ることが必要です。お金が関わってくることには、税金も関わってくる。だから税理士はものすごく可能性がある仕事です。そしてその中でどこを強みにして、どういう税理士になるのかは人それぞれです。
 個人か法人か、営利か非営利かというクライアントの属性によって、求めるものや考え方も異なってきます。多様なお客様がいるからこそ、税理士は自分の価値観を反映しやすい仕事だと思います。その価値観がいいなと言ってくれる方をお客様にする、見つけていく。ただ、特化せずなんでも引き受けていると税理士は疲弊してしまいます。税理士には真面目で優しい方が多いので、困っていると何でもやってあげてしまい、結果、自分が疲れ切ってしまうのです。
 ですから自分のやりたいことやどういう人の助けになりたいのかという軸を明確に持って、税理士という仕事の中で表現していくことが大事です。そうすれば楽しいしやりがいもあり、人から求められ感謝もされる楽しい税理士人生が送れると思いますよ。ぜひ、がんばってください」


[『TACNEWS』日本の会計人|2021年7月号]

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