日本のプロフェッショナル 日本の社会保険労務士|2020年8月号

Profile

渡邉 健吾

社会保険労務士法人フォレスト
代表社会保険労務士

1985年、埼玉県生まれ。2009年、明治学院大学法学部政治学科卒業。同年4月、ベンチャー企業に入社し、営業を担当。2010年、社会保険労務士試験合格。合格後の12月、社労士法人に転職。2012年4月、社会保険労務士事務所フォレストとして独立開業。2017年、事務所を社労士法人化。2019年4月、埼玉大学大学院経済経営専攻入学。

相談業務と手続業務を鍛えることが、事務所の成長に。
社会保険労務士のスキルを活かして、国際貢献にも取り組む。

 大学時代に国際協力に興味を持った渡邉健吾氏は、その後の経験から国内に目を向け、企業経営をサポートすべく社会保険労務士資格を取得した。相談業務と手続業務を鍛えることで実力を蓄え、現在では外国人の技能実習制度を通じて国際貢献の一翼を担おうとしている。そんな渡邉氏に、社会保険労務士をめざした動機から独立開業と事務所の成長、そして今後の展開までをうかがった。

社会保険労務士の知識を活かして国際貢献

「新型コロナウイルスの影響がなければ、3月はミャンマー、4月はベトナムに行く予定でした」
 こう語り始めたのは、社会保険労務士(以下、社労士)の渡邉健吾氏、35歳。さいたま市浦和区で社会保険労務士法人フォレストを率いる代表社労士だ。

 渡邉氏がミャンマー、ベトナムに行く目的は、お客様とともに技能実習生の面接を行うため。それが、新型コロナウイルスの感染拡大により、訪問することができなくなったのである。

「社労士は、日本の法律の中で力を発揮できる士業です。その専門知識を活かして、国際貢献にもつながり、お客様にもメリットがあることのひとつとして外国人の技能実習制度に着目しました。技能実習生の受け入れに際しては、2019年までは既存の協同組合に依頼してお客様とともに現地に行き、技能実習生の面接を行い、お客様企業での受け入れをサポートしていました。

 その後2020年1月には私が準備を進めていた企業経営協同組合の設立認可が下りましたので、自身の協同組合で技能実習生の受け入れを行えることになり、2月にはお客様とともにカンボジアに行ってきました」

 技能実習制度は、日本で培われた技能、技術、知識を主に開発途上地域などへ移転することを目的として、1993年に制度化された。ただ、人手不足を補う目的での制度利用などが横行したため、何度かの法改正が行われている。

 2017年に新たに施行された技能実習法(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)では、技能実習生が技能実習に専念できる環境・体制の確立と、労働力の需給調整手段としないことが明記され、監理団体(協同組合等)、実習実施者(技能実習生を受け入れる企業)を監理監督する外国人技能実習機構が設立された。渡邉氏が認可を受けた企業経営協同組合は、その監理団体にあたる。

「新型コロナウイルスの影響は、技能実習生にも及んでいます。母国に帰ったまま日本に戻れなくなった方、新たに来日予定だったのに出国・入国ができないままの方も大勢います。一番の影響は、技能実習生など向けの技能検定の実施が延期されたことです。技能実習生は来日1年以内に技能検定の基礎級に合格しなくてはなりませんが、検定が実施されなければ、当然合格することもできません。中には、在留資格を『技能実習生』から『特定活動』に変更して対応しているお客様もいます。お客様も技能実習生も不安を抱えていますので、できる限りのサポートをしていきたいと考えています」

 法改正もあり、技能実習生を取り巻く環境整備は進みつつある。そんな中で労働環境整備、社会保険の適用や残業手当の支給など、社労士が力を発揮できる場がたくさんあることも、渡邉氏が協同組合を自ら立ち上げた一因となっている。

「人の役に立ちたい」

 社労士として技能実習生の受け入れに取り組んでいる渡邉氏の考えの根底には、「人の役に立ちたい」という思いがある。

「子どもの頃は野球少年で、プロ野球選手をめざしていました。高校野球に進んでから、現実的にプロ野球選手になるのは難しいと判断し、高校中盤からは消防士をめざしました。もともと体を鍛えるのが好きだったのですが、消防士は、日常的にトレーニングをしながら人の役に立てる仕事だと考えたのです。そのために体育大学への進学準備も行ったのですが、消防士という選択肢を外して考えてみると、体育大学への進学は自分の道を狭めてしまうことに気づきました。そこで普通の大学への進学に切り換え、明治学院大学法学部政治学科に進学しました」

 学部学科選択の基準は、政治経済を学べるかどうかという点だったという。当時の渡邉氏は国際政治と開発経済、国際協力への興味関心が高く、将来は国際連合、あるいは開発コンサルタントとして日本のODAを使って海外で活躍したいと考えていた。

「大学1年のとき、国際協力への関心からタイとカンボジアに行きました。カンボジアはまだ地雷の除去が進んでいない地域もあり、国としても貧しかったのですが、人々がエネルギーに満ちていることを、身をもって知りました。その後インドにも行き、そこで人の幸せについて考えるようになりました。インドの人々は家族と宗教、そして国家をとても大切にしていて、誇りを持って生きていることを知ったからです」

 このときの経験から渡邉氏は、自分が誇れるものは何か、何を大切にして生きていきたいかを考えるようになった。そして、自分自身の家族や友人を大切にしていきたいと考えた渡邉氏は、外から内へ意識が変わり、日本に目を向けてみようと考えるようになったのである。

 同じ頃、渡邉氏はCSR(Corporate Social Responsibility/企業の社会的責任)活動にも興味を持った。特にフランスの飲料水ブランド、ボルヴィックが行っていた「1ℓ for 10ℓ プログラム」に感銘を受けたという。ボルヴィックを1ℓ飲むたびに、アフリカ・マリ共和国に清潔で安全な水が10ℓ生まれるよう、支援によって井戸や給水施設がつくられるプロジェクトである(プロジェクトは水環境の一定の整備が行われ、2016年8月に終了)。

「ボルヴィックは水を通じて国際的に貢献していました。その事実から、企業に目が向くようになり、企業の経営をサポートする仕事に就きたい、企業経営をサポートすることで、その企業を通じて国際貢献できないだろうかと考えるようになりました。  そして企業の経営資源はヒト・モノ・カネですから、そのいずれかの専門性を身につけようと思いました。その中で、もともと人の役に立ちたいという思いを持っていたこともあり、人に関する専門家になろうと考え、社労士という新しい選択肢が出てきました」

 こうして渡邉氏は大学3年のときから社労士の受験勉強を始めたのである。

現在も活きている営業経験

 渡邉氏は大学4年に1回目の社労士試験を受験し、3回目の試験で合格を果たしている。当時はベンチャー企業で営業を担当していた。

「大学3年から社労士の受験勉強を始めていたので、就職活動には完全に出遅れました。大学入試のときに2回浪人しているので、卒業後も受験勉強に専念するという選択肢はありませんでしたし、当時は新卒を採用している社労士事務所は見当たりませんでしたので、まずは内定をもらえたベンチャー企業に就職しました。営業職は一度経験しておいたほうがいいと考えていたことも、就職先を決めた一因でした」

 ベンチャー企業での営業経験がなければ、社労士法人としての今日の状況は作り出せなかっただろう、と渡邉氏は振り返る。  営業の仕事をしながら社労士受験を続け、入社2年目の本試験で合格した渡邉氏は、合格発表後の2010年12月に社労士法人へ転職した。

「実務経験を2年積んだら独立開業するつもりでの転職でした。30〜40社を担当して、お客様との窓口を務めていました」  渡邉氏が社労士実務に就いたばかりの2011年3月、東日本大震災が発生した。このとき、企業の雇用維持のために雇用調整助成金などが活用されている。

「災害特例法の中に、失業していなくとも失業手当を受ける方法があります。一般に『離職票』といわれているものを『休業票』に変えて行う手続きですが、当時は東北地方でこの手続きを行ってくれる社労士が少ない状況にあったので、自分としては、役に立てるのなら現地に行きたいと思いました。ただ、雇われている身ですから勝手に行くこともできず、歯がゆい思いをしました。このときに、早く独立開業すべきだと感じたのです」

 渡邉氏は、自分が持つ専門的なスキルで人の役に立つことができるはずなのに、それができなかったことが辛かったと振り返る。

 そして2012年4月、社会保険労務士事務所フォレストとして渡邉氏は独立開業を果たした。フォレストという名称は、「FOR+REST」、「クライアントの利益を生み出すために、経営者と従業員に、安心を与える」という思いからつけられたものである。

相談業務と手続業務を鍛える

 当初は自宅で業務を行っていた渡邉氏だが、開業した年の12月には事務所を構え、同時にアルバイトの採用も行った。当時はどのような事務所をめざしていたのだろうか。

「現在もその途中ですが、数字的な目安としては売上規模3億円、スタッフは25〜30名の事務所を想定し、業務面では相談業務と手続業務をきちんと行っていこうと考えました。

 相談業務については、私はアドバイザリーとコンサルティングとを分けて考えています。コンサルティングは自分から提案をして生み出していくのに対して、アドバイザリーはお客様からの質問や相談に応えていくことになります。私の強みは、この『相談に応じるアドバイス力』です。お客様に聞かれたことに対して的確なアドバイスを行えるよう心がけていて、アドバイザリーの強化を常に行い、何かあったときに相談に応じられるスタンスを大切にしています。そして手続業務については、正確かつ迅速に行うことを意識しています。

 勤務時代に学んだことですが、あれこれと手を広げるよりも、2つの業務をきちんと鍛えていくことが大切です。今でもそう考えて業務を行っています」

 開業当時は、顧客開拓のフックになるという強みがあることから助成金業務を行っていたという。ただ現在では、助成金業務がなくても社労士法人として選んでもらえる手応えがあるので、業務としては抑え気味だそうだ。

 さて、独立時にはお客様ゼロからのスタートだった渡邉氏だが、どのようなかたちでお客様を増やしてきたのだろうか。

「最初は飛び込み営業を行いました。ただし、地元ではなく少し離れた場所で行いましたね。社労士会の活動も行っていましたので、会で誤解されたり、あつれきを生んだりするような行動は避けるように心がけていました。ダイレクトメールも、今までに3回出したことがありますが、そこには必ず一文を添えました。『すでに社労士と顧問契約を結ばれている場合は、この書面は破棄してください』と。社労士同士が気まずくならないようにということは、現在でも気をつけています」

 お客様が10社程度になって以降は、紹介をベースに顧客が増加し、現在は約110社になっている。
「今は紹介されるお客様に対応することで手一杯です。今後は紹介よりもWebサイトでの集客を増やしていきたいのですが、人材を含めた体制が整っていないので、これからの課題のひとつです」

いろいろな業界に精通したい

 順調に成長を続けるフォレストだが、お客様構成で多い業種などはあるのだろうか。

「最初にお客様になってくれた10社のうち3社が建設業だったため、建設業が多いですね。今の建設業界は以前とは異なり、社会保険の加入は当たり前になっています。また横のつながりが強い業界だけに、気に入っていただけると紹介をしてもらいやすいですね。

 建設業の業務は、労働保険の適用に特徴があります。一般企業では労災保険と雇用保険を一元的に適用しますが、建設業の場合、労災保険の責任は下請企業のぶんも元請企業が負うことになります。言い換えれば、下請企業は自社で労災保険は計算せずに雇用保険だけになるということですね。そして、同じ会社に事務職や営業職がいる場合は、自社で労災保険も適用します。そのため元請工事を行い、事務員がいる建設業の場合は、下請企業のぶんも含めて1社で労働保険番号が3つあることになります。その点が特殊といえます」

 社労士業界においては、手続の複雑さなどから、建設業と運輸・トラック業界、保育・介護業界、医療業界が特殊業界と位置づけられているという。

「スピード感をもって事務所を成長させていきたいのであれば、業界専門、業界特化という戦略も考えられると思いますが、私はいろいろな業界を見たほうがいいと考えています。専門とする業界があるよりも、幅広い業界に精通したい。なぜなら、いろいろな業界を知ることができて楽しいですし、いろいろなお客様に喜んでいただけるからです。」

スタッフの転職を応援する理由

 順調に成長を続ける渡邉氏率いるフォレストは、2017年に社労士法人化を果たし、現在総勢12名、うち社労士3名という構成である。ちなみにスタッフは全員正社員だという。

「最初にスタッフを採用したのは、独立した年の暮れに事務所を構えたときでした。最初はアルバイト1名を採用し、総勢4名になるまでは短時間勤務のアルバイトのみの採用でした。正社員1名にアルバイト3名くらいがいいかなと思っていたのですが、実際には短時間勤務のアルバイトに効果的な働き方をしてもらうことはなかなか難しかったですね。そこで開業3年目からの採用は正社員のみとすることに決めました」

 4年前からは新卒採用を実施しており、毎年高卒1名を採用している。大卒の新卒採用も行っており、2018年には2名を採用している。大卒の場合、自社とのマッチングを慎重に見極めているが、なかなか採用にいたらないことが課題だという。 「大卒は2019年、2020年の採用がありませんでした。大卒の方には資格取得も視野に入れて入社してほしいと考えている一方、高卒の方については、実務を経験してから、資格取得をめざすかどうか決めてもらえればと思っています」

 また、即戦力となる中途採用も実施している。
「中途採用は新卒採用よりも難しいですね。今までに延べ30名程採用しましたが、残っているのはその3分の1です。中途採用に際しては、簡単な仕事ではないこと、仕事は難しいことを厳しめに話すようにしています」

 自社での中途採用は難しいと話す渡邉氏だが、転職そのものはマイナスとは考えていないようだ。
「離職や転職について、ネガティブなイメージを持たれる方はいまだに多いと思いますが、私はマイナスではないと考えています。そもそも資本主義はお金やモノだけでなく、人も循環するというのが前提ですから、転職は世の中にとってプラスになるはずです。確かに『仕事が辛いから』『人間関係が嫌だから』という理由の転職はマイナスに作用しやすいと思いますが、海外に目を向ければ、皆さんご存じのようにキャリアアップでの転職は当たり前です。

 ですから私はスタッフには転職していいよ、と言っています。転職した先でさらに成長し、よりよい仕事ができるのであれば、応援したいと思いますし、転職先企業から『すごい人材が来た』と思ってもらえるように育てていきたいのです。そのぶん指導は厳しくなりますね」

 また、事務所にはグループの弁護士法人 法律事務所フォレストも同居しており、調停や労働審判、訴訟につながりそうな相談の場合は、早い段階から弁護士に入ってもらっている。各種イベントや社員旅行などは一緒に開催しており、合同でお客様を招待しての新年会も毎年開催している。
「お客様にとっても、弁護士が一緒にいるというのは安心感につながるようです」

社是を通じて姿勢を伝える

 渡邉氏自身が醸し出す雰囲気は柔らかく、事務所内も和気あいあいとしているが、先の「仕事に厳しい」という部分は、社内にはどう伝えているのだろうか。

「フォレストには社是があり、この社是を通じて仕事に取り組む姿勢を伝えています。社是は『第三者目線』『他責NG』『スーパーポジティブ』『チームプレー』『殻を破る』です。

 いくつかご紹介すると、『第三者目線』とは、相手目線を追求し、第三者目線で様々な観点を持ち、選択肢や可能性を拡げることです。よく、『相手の立場に立って自分ならどうするかを考える』という方がいますが、<自分なら>という目線が入っている以上、これは相手目線ではなく、自分目線です。相手が何を求めているのか、どうしたいのかをキャッチすること、そしてお客様である会社、経営者、幹部、そこで働く社員が何を求めていて、どうしていきたいか、どうあるべきか等、きちんと汲み取ることが必要なのです。

 また『他責NG』とは、あらゆる問題を他社、環境、時間のせいにしないで自分の問題として捉えることです。自分のこととして捉えるためには、精神力が必要ですし、自身の改善を図れなくて成長はできません」
 確かに言葉を聞くだけでなく、その意味を知ると厳しい面がうかがえる内容といえるだろう。

 もうひとつ「スーパーポジティブ」についても聞いてみた。
「『スーパーポジティブ』は、やらない、できない理由を並べるのではなくて、結果が出る瞬間まで、最後の最後までやり続けるということです。あれこれ理由を並べてやめてしまう、あきらめてしまう人は多いかと思います。しかし、言い訳を並べるのではなく、実現できる方法を考え、手段をつくして最後の結果が出るまであきらめない、その精神を持っていると、意外と実現できることは多いんですね。そう思い続けるためには『ダメだ』と思わず、『できる』と思い続けるポジティブな精神が必要なんです。

 なんて、ちょっと偉そうに話していますが、僕自身も足りない部分はもちろんあり、ネガティブになりそうなときにスタッフがポジティブになってくれるときは救われます。私を含めてスタッフ同士が良いところと悪いところを理解しながら、お客様に満足されるサポートができる専門家チームを作っていきたいですね。また、みんな距離が近い中、顔を合わせて仕事をしているわけですから、厳しいだけでなく、笑いがありながら仕事ができるようにも努めています」

困難な状況を乗り切るのも経営

 2020年に入り、日本に、いや世界中に大きな影響をもたらしたものは、新型コロナウイルスの流行にあることは間違いない。人に関する業務である社労士のもとには、多くの相談が寄せられているのではないだろうか。

「飲食店、興行、ホテル関係の会社にとっては非常に厳しい状況が続いていると思います。ご高齢の経営者の場合、廃業を考えるひとつのきっかけになるかもしれませんね。でも若手の経営者で廃業を選択せざるを得なかった方には、ぜひもう一度再起してほしいと考えています。うちのお客様で廃業や倒産はほとんどありませんが、その状況を乗り切っていくことも経営なのだと思います」

 一時期は夜遅くまで相談の電話が途切れることがなかったという。事務所内では受話器を置いた瞬間に次の電話がかかってくるし、携帯電話には通話中に何件もの不在着信がある状況だったという。

「雇用調整助成金については事務所としての経験がなかったので、ここで経験できたことは大きいと思います。この経験が、将来にわたってお客様に安心材料を提供できることにもつながると考えています」

続けることが合格への一番の近道

 順調に成長を続けているフォレストと渡邉氏だが、今後の展開についてはどのように考えているのだろうか。

「事務所を始めるときに、売上規模3億円、スタッフ25〜30名という数字を掲げたとお話ししましたが、これは私が40歳までに達成したいと考えていた目標でした。ただ、数年前から数字を追うことはやめていますし、特に意識をしているわけではありません。

 今後については、企業の『人』に係る経営サポートをすることに変わりはありません。社労士法人としては相談業務と手続業務の強化をさらに進め、技能実習生については、企業経営協同組合にてサポートし、また、別法人の株式会社HRbankで有料人材紹介、教育・研修事業、採用活動のサポートなどにも取り組んでいきたいと計画しています」

 社労士業務に加えてさらに幅広い展開を進めていこうとしている渡邉氏は現在、埼玉大学大学院で経営学を学んでいる。事務所トップとして実務を行いながらも学ぶことを続けている渡邉氏に、社労士をめざしている受験生にアドバイスをいただいた。

「今受験勉強に取り組んでいる方は、ぜひ一生懸命に勉強してください。続けて勉強していれば、一度高い点数を取れるようになったあと、多少勉強量を落としても点数は下がらないと思います。
 私自身、本試験では2回、ある科目で合格基準点に1点足りずに泣きました。特に2回目の受験は、他の科目ではかなりいい点数を取ったのですが、合格基準点に1点足りない科目があり不合格でした。そういう意味では、多少は運もあるかもしれません。きちんと勉強している方は、そのまま続けることが合格への一番の近道だと思います。
 社労士は今、知名度も認知度も上がっていますし、人の問題は企業経営において重要度が増していますから、今後も必要とされるでしょう。社労士はきちんと仕事をすれば経営者に感謝される仕事ですので、やりがいもあり楽しい仕事です。ぜひがんばってください」

 新型コロナウイルスの流行については、「将来お客様と、こんなことがあったね、あのときは大変だったね、と振り返ってお酒を飲めるようになるといいですね」と語る渡邉氏。

「会社経営という文脈の中でよい印象を残せると、経営者と濃い関係を築くことができますし、それだけやりがいも大きくなると思います」

 困難を乗り越えた先を見る渡邉氏の目には社労士として、そして経営者としての覚悟がうかがえた。


[『TACNEWS』日本の社会保険労務士|2020年8月号]

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