日本のプロフェッショナル 日本の会計人|2018年2月号

Profile

渡邊 浩滋氏

税理士・司法書士 渡邊浩滋総合事務所
税理士 司法書士 アパートオーナー

渡邊 浩滋(わたなべ こうじ)
1978年、東京都江戸川区生まれ。明治大学法学部卒業。税理士、司法書士、宅地建物取引士。明治大学卒業後、4年間、商社法務部に勤務。2007年、税理士試験合格。合格後、実家の大家業を引き継ぎ、空室対策や経営改善に取り組む。3年間の不動産・相続税専門の税理士法人勤務を経て、2011年12月、税理士・司法書士 渡邊浩滋総合事務所を開業。現在に至る。
著書:『「税理士」不要時代』(幻冬舎)、『相続対策の常識ウソ?ホント?』(清文社)、『大家さん税理士による大家さんのための節税の教科書』(ぱる出版)、他著書多数。

「大家さん税理士」として、不動産賃貸に特化。クライアントの99%が大家さんです。

 6年前、ひとりの税理士が個人事務所を開業した。付け加えると、彼は司法書士でもあり、さらにアパート経営をする不動産オーナーでもある。「家族を養える程度にひとりでやれればいい」。そんなささやかな夢のためにスタートした事務所は、わずか6年で顧問数400件、スタッフ18名にまでに成長。今後さらに拡大していきそうな気配だ。いま彼は「ますます生存競争が激しくなり、AIに仕事を取って代わられる『税理士不要時代』に一石を投じたい」と挑む。今回は税理士・司法書士の渡邊浩滋氏にスポットを当て、新時代に活躍する税理士像を追ってみた。

大学4年生で司法書士に現役合格

 「生まれも育ちも現在住んでいるのも東京都江戸川区です。実家はもともと地主でした。ちょうどバブル期の平成元年頃に税金対策としてアパートをガンガン建てていた時代、農家をしていた祖父が相続対策としてアパートを建てたのが始まりで、両親は5棟86戸のアパートを経営していました」
 そう話し始めた渡邊氏は、「実家は兄が継ぐだろうから、自分は自分できちんと生活できるようにしなければ」と資格取得を考えるようになった。付属高校から明治大学法学部に進学。法律に少なからず興味を持っていたが「司法試験をめざすのはちょっとハードルが高いな」という思いがあって、他に法律系資格はないかと探していた時に目に飛び込んできたのが司法書士だった。
「『街の法律家』というフレーズがすごく響いてきたんです。弁護士は争いがあったあとに解決するけれど、司法書士は争いを未然に解決する法律のプロ。そこがすごくしっくりきた。自分は争うタイプじゃないので、争いを未然に防ぐ身近な法律家はすごく向いているんじゃないかと思いました」
 大学2年の終わりから司法書士をめざし、2回の受験を経て大学4年で見事現役合格を果たす。めざした時からの思いは「いつか司法書士として独立したい」。しかし、いざ合格すると不安も出てきた。
「この先、本当に司法書士一本で食べていけるのか。そこが不安でさらに何かを身につけたいという思いがどこかにありました。それに司法書士事務所に入ると数名から数十名程度の狭い世界で毎日を過ごすことになる。その上、先生と呼ばれる生活を20代から過ごすことになります。そんな環境にいたら自分がダメになるんじゃないか。せっかく新卒で就職できるなら、一度社会に出てもまれたほうがいいと考えたのです」
 すでに大学4年の秋、たまたま「商社の法務部募集若干名」の採用が貼り出されているのを見て、すぐに応募し翌春から社会人としての一歩を踏み出すことになった。入社した商社では大阪本店法務部の配属となり、契約書作成、契約書チェック、担保管理、裁判業務をメインに担当することになった。
「法務部時代もいつか独立しようという思いがあって、独立を見据えていろいろな経験を積ませてもらっていました。時には社内の方の法律相談を受けることもありました。そんな時に必ず出てくるのが税金でした。『税金はどうなるんですか』と毎回聞かれて、『何をするにも税金が絡んでくるんだな。税金の問題を解決しないと何もできないんだ』とわかって、漠然と税金の勉強をしなければと思ったのです」
 決定的だったのが、粉飾決算に係わる裁判業務を担当した時だった。
「初めて会計を勉強して、こういう世界もあるんだと感動したんです。法律と会計ではまったく見ている世界が違って、おもしろくてもっと勉強したいと思いました。一緒に裁判にあたっていた弁護士は会計がまったくわからず、日商簿記3級を取得していた私のほうがよほど知っているくらいでした。その時、『会計を学んだら弁護士にも勝てるんじゃないか。それで独立できるんじゃないか』と確信したんですね」
 こうしてスタートした税理士受験は、1年目は働きながら国税徴収法に運良く合格。しかし簿記論・財務諸表論はまったく未経験の分野だったので「働きながらではとても無理」と判断して、4年間勤務した商社を退社。26歳で東京の実家に戻り、受験に専念。トータル3年半の受験生活で最終合格を手にしたのは2007年のことだった。

実家のアパート経営を再建

 税理士試験合格と前後して、実家では大事件が起きた。アパートの賃貸経営をしている両親から「固定資産税が払えない」と相談されたのだ。
「余裕のある暮らしをしているとばかり思っていたので、そんなわけないと耳を疑いました。私も経理・税務を勉強している身だったので、毎月多額の家賃収入があるはずだと通帳や帳簿を見てみると、驚いたことに散々たる状況でした。父には経営の概念がまったくなかったようで、家賃収入をまるごと生活費にして、使いたい放題使っていたんです。預金残高はゼロ。破産は時間の問題でした。
 困り果てて顧問税理士に資金繰りの相談をしたのですが、ろくな提案もしてもらえず、『売却すれば借入金は返済できますよ』と他人事のようなアドバイスをされました。
 私にはエアロビ・インストラクターをしている兄がいて、それまでは兄が実家の家業を継ぐものだと思っていたので一切係わっていなかったんです。そんな状況を見てしまったからには話をしなければと思い、『兄貴が引き継ぐんだったら今からきちんとやってくれないか』と頼みました。すると兄は『今はエアロビが大事な時期で頭はエアロビでいっぱいなんだ。お前がやりたいんだったらやってくれ』という返事でした。そこで『じゃあ僕がやる』と言って、引き継ぐことにしたのです」
 こうして2007年11月、税理士業のかたわら一念発起して賃貸経営に乗り出し、立て直しに取り組み始めた。税理士試験に合格してからの1年間はアパート経営の立て直しに充て、所有物件を1棟1棟つぶさに見て回った。
 1年経って税理士法人に勤めることになった時も、迷うことなく不動産・相続専門の法人を選んだ。法人では個人の確定申告から何でもやらせてもらえただけでなく、不動産絡みの譲渡申告や相続税申告をかなり自由にやらせてもらうことができた。
「自分がアパート経営をしていることも理解してくれて、かなりの回数のセミナー講師もやらせてもらって、自由にお客様をつかまえていました。独立のためのトレーニングを積むには最適な環境でしたね。有資格者しか採用しない全員税理士の組織。言うなれば個人事業主の集合体で、自分が仕事した分はその分だけ跳ね返ってきました」
 2008年に税理士法人に入り、同時並行で実家の事業の立て直しを進めた結果、リフォーム費用の借入、管理会社の変更、節税、法人化などの対策によって、預金残高0円から1,400万円を残すまでに改善させることができた。2010年からは個人でセミナー活動を始め、2011年12月、「税理士・司法書士 渡邊浩滋総合事務所(以下、渡邊事務所)」の看板を掲げて独立開業に踏み切った。

盛り上がる「大家さんの会」

 渡邊氏は著書『「税理士」不要時代』でこう書いている。
 『税理士という国家資格を持っている人でも、顧客目線で有益なアドバイスやコンサルティングを行えない人がいるのは仕方のないことかもしれません。今までそれで税理士業は成り立っていたわけですし、一人の税理士がすべての業界事情を細部まで把握することは実際に不可能だからです。だからこそ、税理士はもっと新しい働き方を模索すべきではないかと感じていました。』
 実家のアパート経営が危機的状況に陥るまで顧問税理士に放っておかれた経験。しかも相談しても売却を勧めてくるだけ。そんな「税理士の業界的な課題」に真正面からぶつかった渡邊氏は、「こんなことなら自分が大家さんの味方になりたい。そのほうが絶対良いアドバイスができる」と、自らを「大家さん税理士」と名乗り、大家さんに特化した事務所をめざしてきた。
 不動産専門・不動産特化の税理士事務所が数ある中でも、渡邊事務所のように大家さん(賃貸経営)に特化した会計事務所は他に類を見ない。
「必死に空室対策や金融機関への融資の交渉をしたり、20年以上放置されていた建物の修繕もして、半年後には何とか経営を立て直すことができた。この経験から、いかに大家さんが孤独な存在かを痛感したんです。今の私ならもっと大家さんの力になれる」と、実際に自分が不動産オーナーになってから感じた大家さんとしての思いを話す。
 自分が大家という肩書きを持っていたからこそ勤務時代から大家さんたちとの交流が強く、開業時に賃貸経営に特化することができた。そのおかげで、進む道には少なからず自信を持つことができたのは、現在でも大きなバックボーンとなっている。次第に大家さん仲間も増え、「大家さん会」というコミュニティを立ち上げるに至り、独立後の2011年には大家さん仲間と「行動する大家さんの会」という勉強会も設立して、毎回100人以上の大家さんが集まるようになった。この頃から世間にも「大家さん税理士」としての認知が広まり、業界的な注目を集めるようになった。
「大家さんの会がなぜそれほど盛況になったのか。それは大家さんたちが横の関係を重要視していたからです。空室対策として何をしているのか、節税対策を取り入れているのか、税理士はどういうアドバイスをしてくれるのか、情報交換のできる場が欲しい。まさに私が実家の経営を立て直した時に感じていたことでした。だからこそ、そうした場を生み出して提供したいと考えました。開業してわずか6年ですが、ここまでお客様が増え続けているということは、早い段階で結果につながったということですね。
 あるいは独立当時、賃貸経営に特化した税理士がいなかったというのも成長の大きなポイントだったのでしょう」
 独立当初はニッチな世界の専門特化で果たして勝算はあるかという不安はあったが、フタを開けてみると「圧倒的に集客しやすい」ことがわかった。2012年の確定申告開けから顧客数が急増し、2014年に4、5人だった職員は、現在18名にまで増え、急成長を遂げたのである。

クライアントの99%が大家さん

 特化しているからこそできるサービス。それは間違いなく自分自身で賃貸経営をしている立場であること、そしてそれを活用して多くの大家さんの相談を受けたことにある。そこから得た経験や事例は蓄積され、効率の良い、効果的な専門的ノウハウやテクニックとして顧客に還元され、賃貸オーナーにとっての大きなサービスとなった。節税策として事業的規模とは何かを把握し青色申告をしているか、65万円控除をしているか、小規模企業共済を利用しているか、青色事業専従者給与を利用しているか、建物の名義は適正か、法人化を検討すべきか…。そのチェックポイントは多岐に及ぶ。しかも、このサービスを提供している会計事務所はほとんどないと、渡邊氏は指摘する。
「なぜ賃貸経営に特化した会計事務所がないのかというと、不動産所得の計算方法が通常の事業所得とはまったく違うからです。不動産所得にしかない注意点などが結構あるし、申告書も仕訳が一般事業と違うので知らない税理士が多いんですね。
 例えば、賃貸経営で注意しなければならないのは赤字になった場合です。普通の事業だったら損益通算といって事業所得や給与などの他の所得と相殺できますが、不動産所得で赤字になった場合、土地での借入金の利息をその赤字から差し引かなければなりません。つまり赤字が300万円出て、土地の借入金の利息が200万円あったら、赤字300万円から200万円を引いた100万円の部分しか赤字の相殺対象にならないのです。これは不動産所得だけの規定で、それを事業所得と同じようにやってしまうと大間違いになってしまいます。あるいは、会社勤めをしている方で不動産オーナーであることを会社に隠している場合、赤字にしてしまうと給料所得と相殺されて住民税が課せられるので、会社にばれてしまうこともあります。建物を買った時の耐用年数もあまり知らない税理士が少なからずいて、うちに切り替えてきたお客様の申告書を見ると間違いがあることも多いですね。こうしたことが、不動産所得が一般的な税理士から敬遠される理由です。考えてみれば、一般事業会社が100社ある中で大家さんがひとりいて対応しなければならないとなれば、それは大変ですよね。
 ところがクライアントの99%が大家さんの私にとっては大家さんはとてもありがたい存在です。まず賃貸経営は仕訳数が圧倒的に少ない。大家さんの収入は月に一度の家賃収入だけ、支出は借入金の返済とか固定資産税、あとはちょっとした経費や管理会社への支払い程度なのでパターン化できます。日々の売上の入力もいりません。つまりパターンが決まっていてそれほど複雑ではないので、スタッフが熟練していなくてもできるんです。今18名いるスタッフもほとんどが未経験で入って1年以内ですが、それでも充分対応できます。入力業務はパート社員による入力センターを作り、そこで入力処理を集中的に行い、事務所のスタッフは申告書をまとめ、お客様対応をするのがメイン業務となっています。お客様対応においては、大家さんのニーズに一件一件きちんと応え、相談に必ず乗るようにしています。すると大家さんの悩みがパターン化されて、今では私の回答の範疇にすべての答えがあるようになりました。大家さんであればどういったケースでも対応できますし、喜んでいただけると自負しています」

求む。『「税理士」不要時代』に共感してくれる方!

 大家さん税理士として開業して6年。どのような思いで事務所を育てていこうと思っているかを聞いてみた。
「まさか6年でここまで成長するとは想像もしていませんでした。何とか食べていける自信は当初からありましたが、事務所の成長スピードはそんなレベルをはるかに超えて、今では仕事量が事務所でこなせるキャパシティを上回ってしまうような贅沢な悩みを抱えるようになりました。
 私の成功の秘訣は何といっても業種特化。これに尽きると言っていいでしょう。そのメリットは、
・ワン&オンリーの存在になれる。
・低価格競争から脱却できる。
・質の高いコンサルティングの提供ができる。
・自分の興味のある分野で楽しみながら力を発揮できる。
・今なら業種特化するだけで注目を浴びられる。
ということにあります。
 最近では『大家さん専門の税理士』を謳う税理士も出てきていますが、私が見る限り不動産投資専門で不動産の購入がメインだと思います。私はそことは一線を画していて、あくまで買うなり建てるなりしたあとにいかに失敗しない賃貸経営ができるかを見ています。これは賃貸経営の経験がないとできない。ですからまだ競合と言えるところはないですね」
 事務所の特徴のひとつに「訪問しないこと」がある。会計事務所のメインメニューは月次巡回監査が多いが、それを一切していないという。
「大家さんの場合、税金を払った月ぐらいしか変化はありません。それなのにわざわざ高い月次顧問料を払ってもらった上にこちらから出かける。それはいらないんです。その分安くして、普段は会う必要はないけれど何かあった時に応えられるようにしておけば、充分だと思います」
 Webサイトによる集客で、全国津々浦々にクライアントが存在する渡邊事務所。メインは一都三県になるが、仙台や盛岡など全国各地にお客様がいて、沖縄・石垣島で賃貸経営をしているお客様までいる。つなぐのは、すべてメールや電話、Web会議だ。
 現在は大家さん向けの専門サイトからの問い合わせが殺到している。セミナーもかなりの件数に上り、2016年は年間90本こなしたので平均で週2回ペース。2017年は月に4~5本に抑えたが、それでも毎週実施していた計算になる。
 税理士と司法書士の業務比率は「税理士10に対して司法書士は2」。税理士に軸足を置いたスタンスではあるが、司法書士業務については司法書士として開業していた後輩に報酬を支払い、教えてもらいながら業務を覚えたという。通常の司法書士は金融機関や不動産会社から依頼を受けることが多いが、渡邊事務所は顧客から依頼を受けるほうが多い。開業6年目の現在、顧客が物件を購入する際に登記したり、管理会社を作る際の会社設立に資格を活かし、「相続の登記を含め、税務まですべてできます」というワンストップサービスを強みとしている。
 今後も大家さん税理士として業種特化した方向で事業を拡大していくと意欲を見せる。
「この事務所自体を大きくするより地方展開を考えています。というのは、セミナーで地方に行くと地方のほうがより喫緊の課題が多く、終わってから『相談したい。なんで先生は地方にいないんですか』と言われることが多いからです。商圏がそれほど大きくないのに専門特化するリスクを背負うことはできないので、私のように専門でやっている人が地方になればなるほどいないのでしょう。だから私はむしろ地方にサービスしないと自分自身が専門特化している意味がないと考えています。
 そこで、提携してくれる税理士の方とフランチャイズ形式で業務提携することにしました。これを今年具体化させていくために、準備を進めている段階です。
 お客様も絞っているし、巡回監査もしない。うちは既存の会計事務所とは真逆をやっているので、既存の税理士業界にとらわれていない人のほうが向いています。そんな若手税理士、開業したばかりの税理士とつながっていければいいですね」
 地方展開によって事務所はますます成長気流に乗っていくだろう。そのためにも専門特化に少しでも興味のある税理士や税理士志望者を採用したいという。渡邊氏の考える理想の人物像とはどのようなものだろう。
「まず資格と経験にはこだわりません。良い人を採用する。それに尽きます。私のスタイルは今までの税理士業界とまったく真逆のことをやっているので、業界に染まっている人だと馴染まないでしょう。うちで本当に働きたいと思う人を育てたい。そのためには経営理念に共感してくれる人であることが大前提です」
 そこで書いたのが、経営理念を詰め込んだ『「税理士」不要時代(幻冬舎)』という著書だ。そこには「誠実」「思いやり」「あきらめない」という経営理念の三本柱と「すべての仕事はコミュニケーションから相手をおもんばかる行動理念」として「言葉にするのを忘れていないか、ありがとう!」「聴くことを忘れていないか、素直な耳!」「思いやりを忘れていないか、オモバカ!」という「オモバカスピリッツの三つのアクション」を唱えている。募集広告の応募資格の欄にも、「経験不問。『「税理士」不要時代』に共感してくださる方」のみが記載される。
「オモバカとは、相手の状況・立場を思いはかって、行動すること、相手に喜んでもらうにはどうすればいいか、相手を気にかける言葉を言えたかを、常に考えることです。
 誠実・おもいやり・あきらめないことが、私たちの誇りです。誠実とは先に自分の利益を考えないこと。そんな考えに合致している人を2017年10月に2人採用しました。まったくの未経験者です。
 新卒採用も積極的に行って、若い人たちを育てていきたい。まだまだ税理士業界で大家さん専門はいないので、今こそ良い人を取って専門特化させていきたい」
 実家のアパートは資金繰り難から脱出し、満室状態の黒字経営で維持している。成功の秘訣は、大家さんが自ら行動して情報を得ること、リスクを把握して対応策を知ること、さらに税金や修繕費など経営に係わる収支を常に把握する意識を持つことだという。
「でも、そんなことよりも何よりも大事なのはまず行動すること。まったくアパート経営をしたことのなかった私の何が良かったかと言えばひとつしかなくて、ただ行動しただけなんですね。大家さんは空き室に困っているけれど、何も行動しないでただただ困っている。それなら不動産屋さんでお茶を飲みながら『物件お願いします』というだけでも違う。それをやればいいんです。賃貸経営の一番のリスクは何もしないこと。成功の鍵は実行力に尽きるんです。そういうことを大家さんに伝えていきたい」
 税理士業界をめざす後輩にも精力的にエールを送る。
「資格を取っても食えないみたいなネガティブな意見がWebサイトや新聞などに載っています。税理士は食えない、AIに仕事を取って代わられる…などと言われていますが、私はやり方次第だと思っています。資格を取っただけで食える。それは絶対ないでしょう。でも、いかにお客様の悩みを解決するか、お客様のためを思えば絶対に食えると私は思っています。そこは確信があるので、あきらめずに合格をめざして欲しいし、合格した暁にはお客さんのために力を尽くしてもらいたいと願っています」
 大家さんというニッチな分野でこれだけ伸びてきたのだから、新しいことに挑戦する人にとって追い風は吹いている。渡邊氏にとっては、それが何より楽しみだ。
「そんな若い人がどんどん出てくれば、税理士業界はもっとおもしろくなるはず。資格を取得しただけで税理士としてつつがなく働いていける時代は終わりを迎えつつあります。せっかく努力して獲得した資格ですから、喜ばれながら、自らを伸ばしていける環境で働いてほしいですね」
 と、優しい微笑みで締めくくった。

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