特集 「組織の力」で士業の可能性を広げたい
~行政書士法人の挑戦~

氏
Profile

石下 貴大(いしげ たかひろ)氏(写真左)

行政書士法人GOAL 代表行政書士
「行政書士の学校」校長

1978年栃木県出身。立教大学法学部卒。2008年、行政書士石下貴大事務所開業。2014年、行政書士法人GOALへ組織変更し代表就任。専門特化したチーム対応で企業の経営をトータルサポートする。自らは産業廃棄物許可申請等を専門とする環境系行政書士として活躍。「行政書士の学校」校長、行政書士法人会理事、元全国産業資源循環連合会青年部協議会 相談役、上智大学ロースクール環境関連講座運営委員。『士業業界ランキング500(2023年完全版)』では「士業業界に影響を与えた100人」に選出。

橋場 栞(はしば しおり)氏(写真右)

行政書士法人GOAL 行政書士

富山県出身。福島大学卒業後、公務員となるも退職。その後数社を経験し、NPO法人の立ち上げで行政書士法人GOALのサポートを受けたことから行政書士の仕事に興味を持つ。2016年、アルバイトとして行政書士法人GOALに入所し、実務経験を積んだのち正社員に。2020年、行政書士資格取得。現在は法人業務リーダーとして、法人設立(株式会社・NPO法人・一般社団法人)、資金調達など許認可全般の各種サポートを一手に引き受ける。

 行政書士業界は他士業よりも組織化した事務所が少ないと言われる。そんな中、業界の底上げと行政書士の選択肢拡大という目標を掲げて行政書士法人GOALを立ち上げたのが石下貴大氏だ。『TACNEWS』2018年1月号にもご登場いただいた石下氏と、アルバイトからGOALの正社員となり、行政書士試験合格、法人業務リーダーへとキャリアアップした若き精鋭メンバーの橋場栞氏に、この5年間の変化と成長、行政書士という資格の将来性や「組織であること」の魅力をうかがった。

企業に伴走するため行政書士法人化を選択

――石下さんには約5年前にも『TACNEWS』にご登場いただいています。そこから組織にも様々な変化があったかと思いますが、改めて行政書士法人GOALを立ち上げた理由を聞かせて下さい。

石下 法人化を決意したのは、「お客様と同じ立場で伴走したい」という気持ちがあったからです。まだ個人事務所だった頃も、お客様から会社設立に関して個人事業と法人化のどちらがいいのか相談を受けることはよくありました。その際、法人であることの社会的信用度を説明しているのに、自分自身は個人事業主であるということに矛盾を感じたのです。士業の顧客はほとんどが企業です。BtoBの仕事である以上は、自分たちも法人であるほうが共感と信頼を得られると思います。
 また僕は美容室を経営していた母を早くに亡くした経験があるので、事業の存続性が重要だということも身をもって感じています。法人化していれば、万が一自分に何かあっても組織は残り続けます。企業のパートナーとして伴走するのであれば、お客様を継続してサポートできるというのは大事なことだと考えました。

――とはいえ法人化・組織化となるとコストも大きく掛かります。

石下 利益率だけを考えるならば、強い営業力を持つ行政書士がアルバイトやパートタイマーのスタッフを数名雇って個人事務所で仕事をするというのが効率は良いでしょう。実際その観点から個人事務所のままでいる選択をしている方も多いと思います。でも行政書士の仕事は基本的に労働集約型の仕事なので、個人事業主の場合はずっと走り続けなければいけないし、対応できる業務領域も限られます。組織化して、自分が苦手なことを得意とするメンバーを加えれば、自分だけではできなかったことができるようになる。強みを活かして支え合えば、仕事の可能性を大きく拡げられるということに、僕は魅力を感じています。
 それに行政書士試験をクリアした全員が全員、営業も経営も得意かというと、そんなことはないわけですよね。だから、就職という形でも活躍できる「勤務行政書士」という選択肢を作っていきたいと考えています。

全国4拠点、スタッフ総勢17名、全国ネットワーク2,000人超

――前回の取材当時(2017年末)以降、組織はどのように変化しましたか。

石下 まず、2018年に社会保険労務士法人をグループに加えることができました。当時はデイサービスなど障害福祉事業の仕事が多い時期でした。介護も障害福祉と近い領域なのでお客様にご相談いただくことが多かったのですが、介護事業は社会保険労務士(以下、社労士)の業域ですから自分たちでは対応できず、もどかしい思いをしていました。またGOALでは起業支援を得意としていますが、起業して人を雇ったあとには社労士に相談したい人事労務の案件も出てきます。資金調達に関しても、融資は行政書士が対応できますが助成金は社労士の業域です。これらをワンストップで対応できるようにしていきたいと考えていたところ、ちょうど当時のスタッフの伴侶が社労士だったので、参画してもらうことになりました。
 そしてこれをきっかけに、拠点展開にも乗り出しました。社労士法人を川崎に構えたので行政書士法人も川崎支店を作り、一緒に働けるようにしたのです。また、2020年には僕の地元がある宇都宮にも支店を作りました。2021年には大阪支店も出し、現在は4拠点、正社員13名にパートスタッフとインターンを含めて総勢17名体制になっています。

――「行政書士は業域が広すぎて現場を学べる機会が少ないから」と2013年に設立し、校長を務めている『行政書士の学校』はいかがですか。

石下 その後も行政書士向けのセミナーや交流会を続けて、現在は全国から年間のべ2,000人以上の行政書士に参加していただいています。セミナーの講師は各業域の専門家ですから、全国対応が可能な専門家のネットワークが構築されています。

業務を知るために、まずは飛び込んでみる

――橋場さんは行政書士法人GOALにアルバイトとして入所し、その後正社員になってから行政書士資格を取得したそうですが、それ以前はどのようなお仕事をされていましたか。

橋場 大学卒業後は地方公務員として就職したのですが、1年程で退職しました。今振り返れば、学生時代は「この職業につきたい」というビジョンがなくて、具体的なキャリアプランが描けていなかったですね。所属していた教育関係のゼミでは地域と子ども達と学生が一緒になって授業をする活動があり、その中で市役所の方とご一緒することもあったことから、「公務員になって地域活性化にたずさわりたい」と考えたのですが、実際働いてみると、人と直接触れ合える機会はそう多くはなかったのです。困りごとを抱えている方々に向き合って社会貢献できる活動をしたいという気持ちが強かったため、違う道を探すことにしました。

――そこからどのようなきっかけで行政書士という存在を知ったのでしょうか。

橋場 退職後はいくつか異なる業界・業種を経験しましたが、行政書士については学生の方々と一緒にNPO活動をしていた際に知りました。自分もそうでしたが、世の中には本当にいろいろな働き方・生き方があるのに、それを学生のうちに知る機会はとても少ないのです。だから活動の一つとして、様々な生き方をしている大人を巻き込んで、「世の中にはこういう生き方がある」ということを伝え、学生たちの可能性や選択の幅を広げる活動をしていました。学生が経営者と交わる機会を設けようということで某企業が主催した賀詞交歓会に参加した際に、石下と面識ができました。その頃私が参加していたNPOは法人格のない団体でしたが、活動を続ける中で法人化が必要になりました。最初は自分たちで設立認証申請書類を作ってみたものの全然うまくいかず、最終的にGOALにサポートしてもらいました。

――それがきっかけでアルバイトをすることになったのでしょうか。

橋場 そうですね。NPOの法人化に際して初めて実際に行政書士の仕事に触れて、「こんなふうにサポートができるんだ」と興味を持ちました。この先のキャリアに悩んでいた時期でもあったので、独立開業もできる資格で、女性も活躍しやすいという話を聞いて、行政書士の仕事にトライしたい気持ちになりました。
 またNPOの活動を通じて様々な社会の課題に関わる中で、自分ひとりの力だけではできないことが沢山あると感じていたため、行政書士としてNPOを支援することが、最終的に社会貢献につながるのではないかと考えました。とはいえ私も転職を重ねていましたし、すぐ正社員になるのではなく、まずは実際の業務を知って自分に合っているかを見極めたい気持ちがあったので、アルバイトをさせてもらうことにしました。

――ちょうどスタッフを募集されていた時期だったのでしょうか。

石下 いいえ(笑)。でも、僕らの仕事ぶりをきっかけに「行政書士の仕事に興味を持ったので働かせてほしい」と言ってもらえるなんて、うれしいじゃないですか。個人的に、おもしろい人ややりたいことを持っている人が好きです。熱意のある人に出会えるご縁はなかなかないと思うので、直感で採用を決めました。当時の事務所は8名規模。橋場は9人目でしたね。

――未経験で入所して、どのような仕事からスタートしましたか。

橋場 最初は入管業務のサポートです。法人設立もほぼ同じ頃から手伝わせてもらいました。法律知識もなく最初は何もわからなかったのですが、様々な業務に挑戦させてもらえましたし、仕事も興味深いことが多かったです。外国人の方が日本で就職や生活するためには、申請して資格を取得しなくてはいけないというルールも知らなかったので、入管業務に携わる中で「ああ、こういう手続きが必要なのか」と日々発見がありました。ビザから始まり、宅建業や飲食業などの許認可、法人の設立業務まで、横断的に複数分野の仕事を経験できるのは刺激的でしたね。そうして入所して1年目頃に正社員になりました。

石下 僕のほうから橋場に「正社員にならないか」と声を掛けたと記憶しています。優秀な人材でしたので、これからも一緒に働いてほしいと思いましたね。

橋場 日々の業務を通じて、行政書士という職業の魅力を感じるとともに、GOALという事務所が自己実現と社会貢献を両立できる環境だと実感していた頃でした。社員やお客様の成長と挑戦を大切にするGOALの社風に惹かれ、私自身も挑戦する方々のサポートを通じて社会に貢献していきたいという想いを持っていたことから、正社員の話をお受けしました。私の場合、「職業として何になりたいか」というよりも、「どういう人と仕事をしたいか」「どんな貢献につながる仕事ができるか」が大事です。特にいろいろなNPOのサポートを通じて、社会を良くする活動をしている人たちをお手伝いすることにやりがいを感じています。

――その後、行政書士資格はいつ頃取得したのですか。

橋場 2020年の試験で取得しました。行政書士事務所で働くからには資格を取得したいという気持ちはありつつも、まずは与えられた仕事をきちんとこなすことが優先で、なかなか本腰を入れて勉強できずにいました。本格的に勉強を始めたのは、コロナ禍が始まった頃です。行政書士の試験科目は公務員試験と重複している部分も多いので、当初は独学でも何とかなるだろうと考えて市販テキストで勉強してみたのですが全然ダメ。そこで講座を利用しました。科目は似ていても専門性や勉強の仕方がまったく違いましたね。行政書士試験では法律が重要で、条文をきちんと理解することが求められますので、きちんと対策することが大事だと感じます。

「資格を持っているだけ」では信用は作れない

――資格を取得したあと、変化はありましたか。

橋場 資格を持っていない期間もいろいろな仕事に挑戦させてもらっていたので自分としては大きな変化はありませんでしたが、お客様からの反応として、より信頼感が増した感触がありました。ただ、私は仕事の実績を通じて信頼を得ていくことが大事だと考えているので、「資格があるだけで信頼してもらえる」という考え方には少し違和感があります。いくら資格を持っていても、経験がなければお役に立てる場面は限られてしまいますから、資格を持っていることだけに安住せず、自分で勉強し続けなければいけないと思っています。

石下 成長し続ける気持ちは非常に大事だと思います。僕らはお客様に対してものすごく責任のある仕事をしています。法人設立はもちろん、許認可がなかったらその仕事ができないし、ビザがなければ日本にいられないわけですから。そうした本当に責任がある仕事をしているので、その責任に見合った報酬を得られるようにもしていきたいです。「報酬」とは「提供する価値への対価」だと思っているので、自分たちが提供できるものがより価値の高いものになれば、相応に報酬金額も上がっていくと思います。「売上を上げる」というと資本主義的に感じるかもしれませんが、スタッフの人生の選択肢を増やすためにも「給与」という形で払い支えていかなければいけない。まずは僕自身が行政書士としてしっかり成長し続けて、行政書士の可能性を拡げていく。スタッフにもしっかり還元して、後進の方々にもやりがいと共に努力が報われる世界だということを見せていきたいと考えています。

AIに代替されない力を磨く

――石下さんはSNSも積極的に活用されていますが、X(旧Twitter)では行政書士業界の課題について「市場規模が小さい」「競合が増え続けている」「継続課金しにくいビジネスモデル」「本人申請を助長するテック企業も参入」とも発信されていましたね。

石下 そうですね。現状はしっかり分析した上で、その中で成長し続けるために何をすべきか模索することが大事だと思っています。行政書士の仕事は労働集約型のビジネスモデルですから、売上を増やすために徹底的に作業を効率化して数をこなすというのはひとつの手法だと思います。でも、それにも限界がある。僕らは労働集約を突きつめたいわけではないので、やはり高難易度・高専門性サービスの方向へ行くべきだと思っています。そしてそれを実現できるのは個人ではなく組織、それも人材育成のできる組織だと思うので、そこにチャレンジしたいと考えています。

――具体的にどのような組織作りを考えていますか。

石下 複数の領域で専門性の高いチームを持つことを意識しています。「集合知」と僕らは呼んでいますが、ひとりで勉強するよりメンバーたちの知見を集めるほうが早くいろいろな経験を積めますし、全員で意見を出し合うほうが学びも深くなると思っています。産業廃棄物、建設業などの許認可、ビザ、補助金など、それぞれの専門性を高めるにはチーム制を取るのがいい。そしてそこに、各チームを横断的に見られる経営企画的な役割の人がいる組織にすることが有効ではないかと思っています。

――専門領域を持つ行政書士の全国ネットワークを活用する考えもあるのでしょうか。

石下 スポット的な協業を考えています。行政書士は業域が広いので、すべてを自分たちだけで対応するのは難しいですし、その必要もないだろうと思っています。例えば今、補助金申請がブームですが、GOALではその領域で人数を増やしていくことは考えていません。法改正があったときなど一時的に需要が膨れ上がる分野がありますが、そういう分野についてはネットワークの力を活かしたいという考えです。プロジェクト型の外注スキームを構築し、外部メンバーとチームを組めるしくみを所内で持てたらと考えています。外注のデメリットは育成ができないことなので、コア業務はあくまで所内で行い、期間限定の需要にはプロジェクトチームで対応するという2軸を並行させるのが効率的だと思っています。

――AIの活用についてはどのように考えていますか。

石下 AIが士業の仕事を奪うと言われて久しいですし、おそらく今後は許認可手続きも生成AIやテック企業の提供するツールを活用した自己申請が増えるでしょう。ではAIにできない業務は何かというと、お客様の課題を洗い出して最適解を提案するという、コンサルティングに近いものになっていくと考えています。
 今、他の専門家の方々と共に『みんなの助成金』(運営:株式会社ボランチ)という補助金・助成金検索サイトを提供しています。企業のお客様に助成金や補助金の情報をご案内するツールです。これを使えば利用可能な助成金などを簡単に検索できるのですが、経営者と話していると、そもそも自分たちの会社の課題を把握しきれていない方も多いのです。「むしろこういうことをやったほうが良いのでは?それにはこういう助成金が使えますよ」という提案をするほうがお客様には有意義だと思います。でもAIチャットは俯瞰的な視点からの問題提起や回答はしてくれませんし、申請が通るような事業計画書ができたとしても、その通りにやって本当に会社が儲かるかまでは考えていないですよね。顕在化している問題にはAIでも誰でも対応できますが、しっかりヒアリングをして潜在的な課題を見つけ出した上で最適解を提示するというのは、専門知識を持った人間にしかできないと思っています。AIも学習していくとは思いますが、あくまで過去の事例から導き出された回答に過ぎませんから、潜在的課題への対応やアイデアは出てこない。この差は必ずあると思っています。今後、書類作成などの手続き業務への影響は大きくなっていくでしょうが、GOALでは「作業」よりも一段階上のコンサルティング領域に強いチームを作っていきたいと思っています。

行政書士の働き方に選択肢を増やしたい

――組織の中で専門性が高くコンサルティングもできるメンバーを育てていくとなると、いずれ独立開業しようと考えるスタッフも出てきませんか。

石下 実際、過去にそういうことはありました(笑)。でもGOALを離れて活躍するのは悪いことではないですし、GOALで経験を積んだはずなのに外では大したことないというほうがむしろ問題だと思っています。僕らも日々進化しているので、仕事のやりがいだとか、GOALにいるほうがより成長できるとか、「法人だからこそ」のメリットを感じてもらいたいと考えています。長く一緒に働いてもらえる環境を作るのが僕の役割ですね。

――GOALでの仕事のやりがいについて、橋場さんはどう感じていますか。

橋場 入所してから横断的にいろいろな分野の仕事をさせてもらえたのは組織に属していたからこそですし、やりたかったNPO法人の設立業務に携われるようになって、今は非常にやりがいを感じています。今後もさらに専門特化したスキルや経験値を増やしていきたいと思っています。好きな分野は会社やNPO法人の設立といった社会起業支援ですが、設立手続きに留まらず顧問やコンサルティングを通じてお客様の成長を支えられるようになりたいですね。そのためには「まずどのようなスキルが必要なのか」という棚卸しも必要ですが、単純なヒアリング能力だけでなく問題解決能力が大事だと思っています。資金調達にも興味があるので、簿記などの知識も身につけたいですし、業務リーダーのポジションをいただいたので、人材育成にも力を入れていきたいです。GOALでやりたいことはまだまだありますね。

石下 橋場が立ち上げ支援を担当したNPO法人がテレビのニュースで取り上げられたこともあります。NPO法人立ち上げのお手伝いをすることは、社会を良くする活動を広める一助になると考えていますので、これをきっかけに社会起業家支援という立ち位置を見つけてもらえたのではと思っています。
 またNPO活動は非営利ということで活動の継続が難しいのですが、近年「遺贈寄附」という形も少しずつ広まってきています。相続人のいない方が、自分の賛同する活動に直接寄附するというケースは今後増えていくでしょう。今は認定NPOなど大きな団体が寄附対象の中心ですが、もっといろいろなNPOにも寄附できるような選択肢が増えればより良い社会の実現につながると思うので、積極的に支援していきたいですね。

――GOALは女性スタッフが多いですが、女性はライフステージの変化によって物理的に仕事に影響が出る時期もあるかと思います。その点でも組織の強みは感じますか。

橋場 そうですね。独立開業に憧れる気持ちもありますが、妊娠・出産、病気など、仕事を続けられない期間も出てくるかもしれません。その意味で、組織に属しているというのは安心ですね。

石下 今も「段階的に仕事復帰したい」と言っている育児休業中のスタッフがいて、まさに明日、復帰に向けた打ち合わせをする予定です。誰かがこれまでと同じ働き方ができなくなった場合も、組織の力でカバーできる体制を作っていきたいですね。現在、フル在宅勤務をしているメンバーも2名います。テレワークに関してはコロナ禍が転機になって、導入してみたら上手くできたという面はありますね。そういうしくみ作りも僕の役目だと思っています。

――石下さんの様々な挑戦が認められ、書籍『士業業界ランキング500(2023年完全版)』では「士業業界に影響を与えた100人」にも選出されましたね。

石下 とても光栄なことです。たいていの場合、士業業界誌に行政書士事務所はランクインしていません。ほとんどが大手の会計事務所や弁護士事務所が選ばれているイメージです。ただこれは業界規模を考えれば当然のことですので、そんな中でも名前を載せていただいたことは本当にありがたいです。「おもしろい行政書士がいるぞ」と他士業の方々に知っていただけるチャンスになりますし、同じ行政書士の方々にも「がんばれば活躍できる」という励みにしてもらえたらいいなと思います。

――最後に、資格取得をめざす読者にメッセージをお願いします。

橋場 キャリアに対して漠然とした意識しか持っていなかった私が、今やりがいを感じながら働けているのは行政書士資格を手に入れたからこそですし、資格のおかげで人生が豊かになったと思います。資格を取得することで知識が身につきましたし、自信も持てるようになりました。私の場合は「資格を取ってから働く」という流れではなく、「まずは自分に合っているか、アルバイトからお試し」というパターンでしたが、もし少しでも士業に興味があるのなら、私のようにまず一度その世界に飛び込んでみるのもアリだと思います。実務をしながら学ぶことはモチベーションアップにもつながります。ぜひがんばってください。

石下 僕は行政書士になって16年目になりましたが、全然飽きないのが凄いと思っています。まだまだできないこともあって課題は山積みですが、その山を一歩一歩登り続けていくことが成長につながります。「以前はできなかったことができるようになる」というのが僕の中では充実感をおぼえる要素なので、これからも自分がどこまでやれるか、挑戦し続けたいと思っています。
 また、資格は自分の人生を切り開くための大きな武器になります。今後は士業に厳しい時代が来るという人もいますが、これは変化するチャンスでもあると思います。お客様のニーズをつかんでサービスを提供すれば、存在価値は必ず増していきますので、チャレンジしたい方はぜひ業界に来てほしいです。一緒に新しいスタンダードを創っていきましょう。

[『TACNEWS』 2023年12月号|特集]