特集 今すぐ身につけたい「IT/ICTスキル」

吉村 睦美
Profile

吉村 睦美(よしむら むつみ)氏

CompTIA日本支局
マーケティングディレクター

SI企業の営業職、米国コンサルタント企業などのIT系の仕事に従事したのち、エンジニアのスキルや人材育成に関心を持ち、IT認定資格に関連する職に就く。2005年よりCompTIA日本支局にて、認定資格の普及啓発のためのマーケティングを担当。認定資格を利用したITに携わる人材の発展のため、様々なプロモーション活動を行う。

IT業界出身の公認会計士、AIを活用したリーガルサービスを提供する弁護士、デジタルマーケティングで活躍する中小企業診断士――。今や士業の世界でも、IT/ICTスキルの利活用は事業の成功を大きく左右するファクターだ。また、たとえ直接的にITを扱う仕事に就いていなくても、日々インターネットや電子データに触れているビジネスパーソンにとって、最低限のIT/ICTスキルはもはや必須のスキルと言える。では、広く世の中で通用するITスキルを身につけるためには、数あるIT系資格のうちどの資格を取得するのが効果的なのだろうか。世界を代表するIT業界団体「CompTIA(コンプティア)」の日本支局でCompTIA認定資格の普及に携わる吉村睦美氏に、IT/ICT業界の現状とCompTIA認定資格取得のメリット、士業実務とIT/ICTの関連性などについてうかがった。

ワールドワイドなIT業界団体「CompTIA(コンプティア)」

──最初に、CompTIAについて教えてください。

吉村 CompTIA(コンプティア/the Computing Technology Industry Association)は、世の中に流通している様々なIT規格の標準化を提言するため、ITベンダーとパートナー企業がオープンな対話を行う場となるべくグローバルなIT業界団体として、1982年にシカゴで誕生しました。現在、ICT業界を中心とした2,000社以上のメンバー企業、3,000社以上の学校機関、トレーニング関連の企業とのパートナーシップを締結し、数万人を超えるITプロフェッショナルのコミュニティを運営しています。活動拠点は欧米を中心に世界10ヵ所あり、CompTIA日本支局はそのひとつとして2001年4月に設立されました。
 CompTIAの一番の目的は「IT業界を継続して発展させていくこと」。業界の発展にいろいろな形で貢献していくことをミッションに掲げ、必要となる様々なリサーチ活動やコミュニティ活動、人材育成活動に注力しています。CompTIA日本支局では、人材育成活動を中心に様々な企業や学校機関の支援を行っています。

── IT業界の継続した発展には、人材育成がポイントになるのでしょうか。

吉村 ひとつの大きなポイントであることは間違いありません。CompTIA本部では、リサーチを通じ、今後IT業界としてどの分野のニーズが高まるか、そのニーズに応えるにはどの分野のテクノロジーを標準化すべきかなどについて検討しています。一方で、継続的にそのIT分野を発展させていく上で絶対的に必要なのが「人材」です。CompTIA認定資格は、この「人材育成」を目的に作られました。「IT業界をどう発展させていくか」という課題解決の中で必要不可欠な「人材」を育成するために、IT業務に必要とされるスキルの標準化を行い、このスキルを所持しているか判断する指標として認定資格を作ったのです。現在、CompTIA認定資格試験は世界165以上の国と地域で実施されており、グローバルスタンダードとして広く知られています。

──多くの国に広がっているのですね。

吉村 そうですね。自身のキャリアやスキルを育成する方法はいろいろありますが、おそらく一番効果的かつ効率的な方法は、資格の取得だと思います。
 例えば、人材育成方法の代表例であるOJTは、どうしても指導する先輩の得手不得手や携わる業務範囲に習得分野が引っ張られてしまうため、スキルにばらつきが出てしまいます。また、書籍などからスキルを身につけようとしても、自分の関心ある分野に偏って学習してしまいがちです。認定資格の役割のひとつは、スキルをきちんと標準化していくこと、得手不得手をなくすことにあります。決してOJTや書籍を使った学習を否定しているわけではありませんが、最終的にどのようにしてスキルを証明するかという点まで考慮すると、資格の取得はとても合理的な手段だと思います。必要な知識を体系的に身につけていることを客観的に証明できますので、第三者にも自分のスキルをアピールしやすいはずです。抜け漏れのないバランスのとれたスキルを身につけ、そのスキルを証明するために、認定資格を活用いただきたいですね。

IT実務のスタートラインに立てる人材の育成

──現在、CompTIA認定資格の取得者はどれくらいいるのですか。

吉村 認定資格はいくつかの種類に分かれていますが、全種類を合わせるとグローバルでは270万人以上が取得しています。一番多い「CompTIA A+」は1993年の開始以来120万人以上、「CompTIA Security+」は2002年の開始以来70万人以上に取得されています。「CompTIA Security+」は、情報セキュリティ系資格の中でも多くの方に取得いただいている資格です。日本国内では企業の人材育成計画の一環として取得されるケースがほとんどで、取得者の7~8割が企業ユーザーです。「実務のスタートラインに立てるよう、必要な知識を身につけてほしい」「担当業務の範囲だけでなく、関連するスキルを体系的に身につけてほしい」という企業側のねらいがあるのでしょう。

──IT系の資格には、CompTIA認定資格の他にも各ベンダーの認定資格などがあります。CompTIA認定資格ならではの特長を教えてください。

吉村 大前提としてCompTIA認定資格は、ネットワーク系、サーバー系、セキュリティ系といったいずれの分野においても、その担当として働く上で「スタートラインに立てる人材であること」を求めるスキルセットにしています。なぜならCompTIA認定資格は、特定のベンダーや製品に依存しない「ベンダーニュートラル」、特定のテクノロジーに依存しない「テクノロジーニュートラル」な資格だからです。出題範囲は、業界団体として中立的な立場で「特定の職種において、必須とされるスキルセットは何か」をリサーチした上で定義されています。現在は13業務分野の認定資格を提供していて、例えば「CompTIA Network+」というネットワーク管理業務を行う方向けの資格は、「9~12ヵ月のネットワーク業務の実務スキルを評価する内容」と定義されています。

──CompTIA認定資格は、個別具体的な特定の製品、特定の技術に特化した内容を学ぶわけではないということですね。

吉村 そのとおりです。IT業界では、昨年まで主流だったサービスが、新しいサービスの台頭によってあっという間に廃れてしまうことも珍しくありません。そのため、ある特定のベンダーの製品に偏ったキャリアを積んだ場合、ニーズの変化によっては、ゼロから新たなスキルを学び直さなければならないこともあり得ます。
 しかしCompTIA認定資格でベースとなる知識を積み上げておくことで、こうした事態にもある程度対処が可能です。他のベンダーと関わる中で、コマンドが違う、設定が違うとなった場合でも、ベースを理解していることで、そうした固有の部分さえ補えば、すぐにキャッチアップできるのです。

──土台となる基礎知識をCompTIA認定資格で固めておけば、ベンダー系資格の知識を載せ替えるだけで応用を利かせられるのですね。

吉村 はい。実践性と汎用性の両方を兼ね備えているのがCompTIA認定資格だと言えますね。ベンダー系資格は、そのベンダーを扱う企業などに対しては大きなアピール力があると思いますが、転職やキャリアアップなどを考えるのであれば、まず汎用的な資格を取得しておくほうがキャリアも柔軟に描きやすいです。そうすれば、よく言われがちな「IT業界で資格は使えない」というミスマッチが起こることもないでしょう。

「どのようなスキルを証明したいか」を主軸に資格を選ぶ

──「IT業界で資格は使えない」と言われてしまう理由をどうお考えですか。

吉村 目的をあまり考えずに取得する方がいるためではないでしょうか。IT業界で取得される資格の多くは、運転免許などとは違い「その資格がないと仕事ができない」「その資格を持っている人だけが就ける仕事がある」というものではありません。もちろん、最近の傾向としてジョブ型の採用傾向が見られ、特定のスキルが求められる場合も増えていますが、現時点では、まだ主流とまでは言えないかもしれません。そのため、取得後にスキルを活かせるかどうかは、適切な資格を選べているかどうかによります。IT系資格は内容や分野が細かく分かれていますので、例えばデータベース系の仕事をやりたいと応募してきた方がネットワーク系資格を取得していても「求めているスキルとは全然合わない」「この資格は今回の職種では使えない」と判断されてしまう可能性はあるでしょう。「取りやすそう」という理由だけで資格を取得するのではなく、その資格が自分のキャリアにおいてどう活かせそうか、どのようなスキルを証明してくれるのか、きちんと理解して目的に添った資格を選べば、資格は必ず役に立つはずです。

──確かに、「資格を取ること」に主眼を置きすぎた結果、取得の目的やその後のキャリアを考えず、単に試験の難易度などで資格を選んでしまうケースはありますね。

吉村 そうですね。取得しやすい資格を選ぶこと自体は悪くないのですが、何のために取得するのか、どのようなスキルを証明したいのかまで考えておくことが重要だと思います。
 また、「資格は使えない」と言われるもう1つの要因として、日本では、企業側が必要なスキルを明示していないこともあると考えています。これは、日本で働くIT人材の満足度が他国に比べ非常に低いことにも通じると思います。日本でも少しずつジョブ型雇用が浸透してきたとは思いますが、まだ多くの企業では「とりあえず『いい人』を採用して、人員が不足した部署で働いてもらおう」といった人材活用のされ方が多く見られます。そのため、ネットワークエンジニアとして採用されたはずなのに「来月からサーバー担当になって」と、扱う分野が変わってしまうような配属もよくあります。
 このように、先のキャリアパスが読めないために、一体どのようなキャリアパスを描いて、その中でどの資格を取得するのがベストなのか悩んでしまい、結局「会社が推奨している資格を取得すれば、一応努力目標として認められるし、報償金や資格手当ももらえるから」と、本来めざしたいキャリアから外れた資格を選んでしまうケースも多いのです。「資格は持っているけれど、自分の仕事とはあまり紐づかない」「何となく役に立たない」といったイメージを持つ方が多いのは、こうしたことも一因ではないでしょうか。
 組織に所属していて、組織内でのキャリアアップ・スキルアップをめざす場合は、組織のゴールに基づいて自身のキャリアパスを描き、その上で「自分がどのようなスキルを証明したいのか」を考えるという流れで資格を選ぶのがよいと思います。

CompTIA認定資格のキャリアパス

CompTIA日本支局ホームページより

「セキュリティ」「DX」「データ」

──今後のIT/ICTの動向については、どのようにとらえていますか。

吉村 今の2大キーワードは「セキュリティ」と「DX(Digital Transformation)」ですね。まず、セキュリティに関しては、守り破られのイタチごっこで「100%安心」という状況は作り得ないため、継続的な人材育成が重要な分野だと考えています。
 また、DXに関しては、最近よく流れるCMの影響もあってか、「社内業務管理をクラウドで行うことがDXだ」というイメージが一般化しているように感じます。本来の意味はそうではなくて、従来の業務、例えば手作業で行っていた業務を一括データ管理するなどにより、情報共有の仕方が変わり、仕事の進め方が変わり、働き方なども変わってくることを指します。つまり「ヒト・モノ・カネ」の動かし方、仕事のやり方やワークフロー自体が変わってくるので、これをきちんと理解した上で再定義し直すことが必要になってくると思います。

──言葉だけが独り歩きしないように考える必要がありますね。

吉村 そうですね。また、もう1つ「データ」というキーワードもあります。
 私たちは、米国の本部と仕事をすることも多いのですが、日本のIT情勢は、アメリカのITの波から大体3年ほど遅れていると感じています。その中でやっと今追いつきつつあるのがデータアナリストなどのデータに関連する職種です。「データをどのように活用していくのか」という点はDXにも含まれているので、今後の流れを変える大きなテーマだと考えています。そうなればデータを守るためのセキュリティと、データを「集める人」「使う人」「その舵取りをする人」も紐付いてきます。幅広い分野に絡んでくるデータ関連の職種は、今後のIT業界の流れを作るテーマのひとつだと思いますね。

新認定資格創出と3年に一度の資格更新

──CompTIAとして、業界トレンドはどのように見ているのですか。

吉村 CompTIAでは「IT Industry Outlook」という「今年のIT展望」をグローバルにレポートとして出し、これをベースに注目すべきトレンドを毎年10項目ぐらい挙げています。そこから「今後のトレンドの中で、この分野はどうしても人材が足りなくなる」と予想される分野に対して、人材の効率的な輩出のため、必要に応じて認定資格を開発していきます。

──ということは、トレンドが変われば今後新しい認定資格が出てくる可能性もあるわけですね。

吉村 そのとおりです。どの分野のニーズが高いか・低いかといったリサーチはかなりの頻度で行っているので、新たに生まれる資格もあれば、なくなる資格もあります。例えば、昔は「インターネット」に特化した認定資格がありましたが、今では私たちの生活インフラとして当たり前のものになっていますので「CompTIA Network+」の1項目として組み込んだり、「データ管理」に関する項目を他の分野から切り離して新たな認定資格を開発したりもしています。最近では、企業内でクラウドを活用したり、オンプレミス(機器やシステムを自社で保有・運用する利用形態)と共存したりと様々なIT活用形態がありますので、CompTIA認定資格もIT実務の実状に合った形で身につけられるスキルの見直しを行っています。

──一般的な資格の中には、試験合格後も更新するための講習受講が課せられるものもあります。CompTIA認定資格はどのようになっていますか。

吉村 IT業界は変化が速く、3年も経つと必要なスキルセットが大きく変わってくるので、CompTIA認定資格も約3年に1回更新し、出題範囲から定義し直しています。その中で新しい試験に変わっていくことになりますが、その3年目のタイミングで認定資格を更新していただきます。
 更新の際は、例えば取得した認定資格を再受験して更新することもできますし、上位の認定資格を受験いただいてもいいことになっています。さらに、外部認定資格を取得しても構いませんし、ブログを書いたり講演会をしたりすることで更新に必要な要件を満たす方法もあります。試験を受けていただくことが目的なのではなく、定期的にスキルをブラッシュアップしていくことを目的にしていますね。

専門スキルとITスキルを掛け合わせる

──公認会計士、税理士、社会保険労務士といった、いわゆる「士業」として働いている方や、現在士業をめざして学習中の方にも、IT/ICTスキルを身につける意義はあるのでしょうか。また、具体的にどの認定資格を学べばよいのでしょうか。

吉村 「CompTIA IT Fundamentals(以下、CompTIA ITF+)」という、名前のとおり最もベーシックな知識を学べる資格が役に立ちます。例えば簿記の資格を取っても、実務において手作業で仕訳をすることはほぼ皆無なはずです。当然、パソコンを使うと思いますが、そうなると会社の財務状況など重要な機密情報にアクセスできることになります。セキュリティを守れなければ大問題になりますし、情報をアウトプットしてクライアントに共有する際にはプリンタに繋がなければなりません。クラウドサービスを使っているのであれば、セキュリティに考慮した方法でネットワークに繋ぐことも必要です。
 今はセールスの方も工事現場の方も、皆さんタブレットなどを使って必要な情報を入力したり、情報共有したり、連絡を取ったりしています。もはやITに一切関わらずにできる仕事はないといっても過言ではありませんので、どのような仕事をするにしても、一人前のビジネスパーソンとして、最低限のIT知識は必要なのです。
 さらに士業の場合、扱うデータはクライアント企業の従業員情報や財務データなど機密情報が多いので、いかにしてそうした情報を脅威から守るかという点は、非常に重要になってきます。実際に認定資格を取らないとしても、少なくとも勉強はしておくべきだと思いますね。

──では、「CompTIA ITF+」が具体的にどのような内容なのか、教えてください。

吉村 「Fundamentals(基本的な、根本的な)」という名称の通り、パソコンやスマートフォン、タブレットなどのハードウェアコンポーネントと機能、互換性やネットワーク、セキュリティ、基本的なITリテラシーに関する「基本的な」IT知識が身についているかどうかを評価する内容です。何の設定もされていない新品のパソコンを渡されても、自分ひとりでネットワークに繋ぎ、プリントアウトできるようにし、最低限自分のパソコンのセキュリティは守れる、つまり自分が安心・安全に仕事をできるだけのIT環境を作り出せるレベルのスキルが身につきます。受験資格要件は特にないので、合格者の中には高校生の方もいらっしゃいます。
 大事なお客様から相談を受けたときも、「士業としての専門知識に加えてITの資格も持っている」と言えれば、重要データを取り扱う人材がITスキルを持ち、セキュリティに関してもきちんと理解していると証明できますから、非常に大きな差別化になると思います。士業をめざす方にこそ、ITスキルも身につけていただけたらと思います。

士業こそITの知識が必要

──ITセキュリティの知識がないまま、士業として就職あるいは開業すると、クライアント企業の経理データや個人の資産状況など、重要な情報を脅威にさらしてしまうリスクも抱えることになるわけですね。

吉村 そうですね。士業になるための国家試験には、もちろんITに関する出題はありません。それにも関わらず、資格を取得するとプロフェッショナルとして、会計ソフトを使ったり、電子申告などを行ったり、ネットワーク上でデータを扱ったりするようになります。
 特に士業の方は専門スキルを持っているので、かなり専門的かつ機密性が高いデータを業務の中で日常的に取り扱っています。この意味で、士業の方がITを理解できていないと、セキュリティ面での大問題を起こすリスクを抱えていることになります。
 IT業務をメインに行えるほどの高度な理解は必要ありませんが、士業のプロフェッショナルの方こそ、ご自身の専門性に加えるひとつの軸としてITをきちんと理解し、少なくとも自分が仕事で関わるIT環境だけは理解している状態になることをお勧めします。ITセキュリティの一番の砦は個人、つまり自分なので、エンドポイントである自分がセキュリティを守るための知識を身につけていることが大切です。「CompTIA ITF+」を取得することでそのレベルは充分クリアできますので、ぜひ学んでいただきたいですね。

──独立開業する場合、お客様情報を守るためには「CompTIA ITF+」を学んでおけば大丈夫ですか。

吉村 独立開業する場合は、「CompTIA ITF+」でのIT面の理解に加えて、おそらく業務の中で活用するであろうクラウドの理解を高めるために、「CompTIA Cloud Essentials+」というクラウドの意義や導入によるメリット・デメリットを判断して運用できる資格も役立ちます。様々提供されているクラウドサービスの中で、自分にはどのクラウドサービスが合っているのか、どの程度のネットワークが必要なのかなどを判断したり、セキュリティについてより深く理解したりするにも最適な認定資格だと思います。
 基本的なITの理解とクラウドの理解は、これからのビジネスパーソンは常識レベルで持っておくべき知識ですので、学生の方には「CompTIA ITF+」と「CompTIA Cloud Essentials+」の2つを学んでおくことをお勧めします。IT業界での就職を希望しているのであれば、この2つにプラスして、ネットワークやセキュリティに関する認定資格も役立ちますね。

ITスキルでキャリアの選択肢を増やそう

──先ほどCompTIA認定資格は企業単位で取得されるケースが大半とうかがいましたが、属性的にはIT系企業のエンジニアが多いですか。

吉村 資格にもよりますが、エンジニアが多いですね。20代後半から30代前半の受験者が多く、9割が男性です。IT業界で働く女性はまだ少ないので、女性に関心を持ってもらおうと、女性のIT推進を進めているIT企業もたくさんあります。力仕事も不要で、スキルが必要とされることから、女性にとってIT系は働きやすい業界だと思います。特にテレワーク環境下では、ITスキルを持っているとキャリアを考える上で仕事環境を整えやすいと思います。

── ITスキルを身につけることでキャリアの幅が広がりそうですね。

吉村 そうですね。学生の中にも「IT業界で働く」=「プログラマー」のイメージを持っている方は大勢いますが、IT業界の中でも、プログラマーなどのいわゆるシステムエンジニアとして働いている方は、実はそれほど多くないと思います。資格取得に向けた自身への先行投資をするだけで、その先に新たなキャリアが見えてきますから、非常に魅力的だと思います。

──最後に、資格取得やキャリアアップをめざす方々にメッセージをお願いします。

吉村 資格の主な役割は「スキルの証明」ですが、もう1つ役割があります。それは1~2年の実務経験を積まなければ得られないスキルが、資格の取得を通じて短期間で身につけられる点です。CompTIA認定資格はCompTIAのプラチナパートナーであるTACで数日間のトレーニングを受講し、1日試験センターに行って試験を受けるだけで、1~2年分の実務経験と同等のスキルが身についている証明になるのです。
 特に士業の皆さんには、すでにスペシャリストの知識がありますから、そのスキルをさらに活かすためにも、ITスキルを身につけることをお勧めします。ITの基本的な知識や、ITでできること・できないことを理解してさえいれば、新たなサービスを生み出すこともできるはずです。ぜひがんばってください。

[『TACNEWS』 2022年10月号|特集]

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