特集 「キャリアのためには資格が必要」全力でつかんだ税理士資格

齋藤 俊哉氏
Profile

齋藤 俊哉(さいとう としや)氏

税理士法人よしとみパートナーズ会計事務所
税理士

1981年生まれ。通信制高校を卒業して進学した専修大学を中退し、税理士試験合格をめざす。個人税理士 事務所勤務を経て、2007年税理士法人よしとみパート ナーズ会計事務所入所。立正大学法科大学院卒業。実 務経験を積みながら税理士受験を続け、2019年税理 士登録。現在はよしとみパートナーズの中で8名のメン バーをまとめるチームリーダーを務める。プライベート では、開業税理士の妻との間に2人の子どもがいる。

 1科目ずつの受験が可能で、一度合格した科目は生涯有効な税理士試験。働きながら5科目合格をめざす人も多い資格だ。齋藤俊哉氏もそのひとり。税理士法人で働きながら、10年以上かけて税理士資格を取得した。
「資格がなくても仕事はできるが、税理士資格を持っているからこそ見える世界がある」と語る齋藤氏。法人内ではチームリーダーとしてメンバーをまとめる齋藤氏に、税理士をめざしたきっかけや、税理士という資格の魅力についてうかがった。

「なくならない仕事」とは? その答えが税理士だった

──現在、税理士としてご活躍中の齋藤さんは、税理士試験を受けるために大学を中退し、その後、税理士法人で働きながら大学院を卒業されましたね。

齋藤 はい。学歴という点では、私はまわり道ばかりしています。遡ると高校も、最初に入った地元の高校を中退したあと、都内の通信制高校に入り直しています。高校時代はあり余る力をどこにぶつけていいかがわからず、バイクに夢中になっていましたね。バイクに乗って友達と騒ぐことが楽しくて。高校は色々あって(笑)退学になってしまったので、通信制高校を卒業して大学へ進学しました。

──高校中退ののち、改めて大学進学をめざしたのはなぜですか。

齋藤 父親に「視野が狭い」だとか「田舎の中で、自分の見えている範囲だけで物事を判断するんじゃない」などと言われたことも理由にあると思います。都内の大学を卒業して教師をしていた父親から見ると、私は井の中の蛙に思えたのでしょう。「東京の大学へ行ってみろ、世界はもっと広いぞ」とさんざん言われました。当時は、「そんなこと知るか!」と反発していたのですが、高校の先生からの勧めもあって、進学することにしました。

──実際に都内の大学に行ってみて、いかがでしたか。

齋藤 都内の大学へ入ってみると、田舎とは大きく違っていて、「凄いな」と率直に感じました。出会った先輩たちの中には尊敬できる人がたくさんいて、「人と出会う」ということに夢中になりました。サークル内ではイベントや旅行を企画するなど、人を集めてみんなで何かを一緒にやるという活動をしていたのですが、そうした活動を通じて知り合った人の紹介で、さらにいろいろな人と繋がりができていきました。この頃に知り合った人達とは、今も繋がりがあります。自分の人脈の基礎になっている部分でもありますね。

──サークル活動に熱中したのですね。当時のキャリアプランはどのようなものでしたか。

齋藤 地元にいた頃よりも世界は広くなっているものの、まだ勉強とは距離がありましたし、キャリアプランなども一切考えていませんでした。ただ、先輩の中には自分で起業した人や優秀な人たちがたくさんいて、そういった方のキャリアを羨ましく思って見ていましたね。その頃から、漠然とではありましたが、自分には会社勤めのサラリーマンというのは不向きだろうと感じていました。

──その後、大学を中退するに至った「税理士受験」を決心したのは、いつ頃、どのようなきっかけからでしたか。

齋藤 大学1、2年生の頃はサークル活動に明け暮れていて、将来を考え出したのは3年生になってからですね。それまではサークル内に尊敬できる先輩がたくさんいたので、その人達についていくのが楽しかったです。でも先輩達が抜けてしまったら、心にぽっかり穴が開いてしまったというか、喪失感が生まれました。そこで初めて「これから自分はどうする?」と、キャリアについて考えました。すると自分には何もないことに気づいたのです。大学で一所懸命勉強してきたわけでもないし、自分が本当にやりたいことは何だろうと悩みました。当時、世の中は不況で、いわゆる就職氷河期の頃でした。先輩がリストラされたという話を聞くこともあり、仕事を失うのは辛いなと思って、「なくならない仕事って何だろう?」と考えるようになったのです。

──齋藤さんにとっては、その答えが税理士だったのですね。

齋藤 そうですね。国が存在する限り、「税金」はなくなりません。だから税金に関係する仕事に携わったら、仕事がなくなることはないだろうと、当時は考えました。そこから行きついたのが「税理士」だったのです。そして税理士をめざすなら、何よりもまず簿記の知識が必要です。そこで、受験指導校へ通うことを決めました。

──そのタイミングで大学を中退したのですか。

齋藤 いいえ。大学には籍を置いたまま、休学して勉強を始めることにしました。土台となる基礎知識がまったくありませんでしたから、集中して取り組みたかったのです。実際に勉強を始めてみると、もともと数字が好きだったこともあって、簿記のおもしろさにはまっていきました。
 その後、本格的に税理士試験に向けた勉強を始めて、初年度の受験で会計2科目の「簿記論」と「財務諸表論」に合格しました。この合格実績を武器に会計事務所への就職活動をして、千代田区にある個人税理士事務所に入所することが決まってから大学を辞めました。

個人税理士事務所へ入り、「営業」に明け暮れる

──その事務所での仕事はいかがでしたか。

齋藤 当時は会計事務所の業務についてまったくわかっていなかったので、とにかく実務をやってみなくてはと思い、千代田区の個人税理士事務所へ入りました。所長税理士とパートの女性がいるアットホームな雰囲気の事務所でしたが、セミナーの手伝いをするように言われたり、過去のセミナーの参加者リストを渡されて「営業に回って来て」と言われたり、営業色が強かったので、想像していた税理士業務とはちょっと違うな、と感じましたね。

──イメージされていた仕事内容ではなかったのですね。

齋藤 税理士もある意味サービス業ですから、営業が必要になる場合もあるのですが、当時の私は、会計事務所というのはこんな事もやるのかと少し驚きました。税理士の友人と仕事の話になったときにも、「会計事務所に入ったら、まず帳簿のつけ方からじゃないか?実務に一切触れさせないのはおかしいよ」と言われたのですが、そうは言っても仕事ができないヤツと思われるのも悔しいので、とりあえず顧客を取ることを目標に、飛び込み営業で何件か仕事先を取りました。この経験で、結構メンタルは鍛えられたかもしれませんね。でも結局、1年で退所することにしました。

税理士法人よしとみパートナーズ会計事務所へ

──その後2007年に25歳で税理士法人よしとみパートナーズ会計事務所へ入所。前の事務所を辞めてから再就職までの期間はどれくらいですか。

齋藤 2007年3月に退職したのですが、会計事務所の採用活動は夏の本試験前後と冬の合格発表前後をメインに行われているので、8月の本試験が終わってすぐに活動をして再就職しました。
 いくつかの事務所を受けたのですが、最終的によしとみパートナーズを選んだのは、一連の対応がすごくよかったことと、「いつから働けますか?」という問いに「明日にでも」と答えてもらったことが決め手でした。他に内定をもらっていた事務所もあったのですがお断りして、よしとみパートナーズへ入りました。私が入った頃はまだスタッフも20数名でしたが、今は当時の3倍くらいの人数になっています。

──躍進していますね。事務所を移ってからは、仕事をしながら合格をめざす日々になったのでしょうか。

齋藤 いいえ。税理士試験合格への気持ちは持ち続けていましたが、最初の2~3年はほぼ仕事に没頭していました。周りには「資格試験を受けている」と言ってはいたものの、実際のところ勉強はできていませんでしたね。
 入所後に配属になったチームでは、メンバーが退職したところに私が入れ替わりで入ったので、前任者の業務を引き継ぐことになり、とても忙しかったです。でも私自身が仕事に飢えていたというか、とにかく1日でも早く業務を覚えたいという気持ちが強かったので、忙しさはまったく苦になりませんでした。

──どのような仕事内容でしたか。

齋藤 入所してすぐ30件位のお客様を引き継ぎました。内容は、記帳代行の仕事が多く、数字を作ることがメインでした。当事務所はお客様の業種が幅広く、製造業や卸売・小売業に始まり、医療法人から飲食関係、芸能プロダクションやNPO法人もあります。特定の業種に特化しない総合型の会計事務所なので、私が担当したお客様も、本当に様々な業種がありました。

──経験を積んで会計業務をひと通りこなせるようになって、その後に大学院へ入ったのですね。

齋藤 当時、同期は4人いたのですが、1人は退職し、他の2人は早々に税理士資格を取りました。2人が有資格者として先のフェーズに進んでいくのに、私だけが資格を取れないままでいたのです。資格を取らなくても、業務自体はできます。でも、その先のキャリアを考えたら資格は必要です。そもそも私が会計事務所に入ったのは、一人前の税理士として活躍するためだったのですから。
 そうして勉強に本腰を入れなければと思っていた頃に、友人の親御さんが新潟で税理士法人を経営されていたご縁で法科大学院の先生を紹介してもらうことになり、それがきっかけで、税法科目の免除を受けるために大学院への進学を決めました。

──働きながら通われていたのですね。

齋藤 大学を卒業するときと同様、法科大学院でも卒業単位を取らなくては卒業できません。私は1年目で卒業単位を全部取ってしまおうと思って、週5日で通学していました。その頃が一番辛かったですね。仕事をしながら大学院へ通って、その上受験勉強もしていたので、時間的にもとても大変でした。

──どのように両立したのでしょう。

齋藤 通っていたのは大学院の夜間のコースでした。事務所の就業時間は9時から18時までなのですが、専門業務型裁量労働制(労働時間を実労働時間にかかわらず一定の時間とみなす制度で、時間管理は個人の裁量に任されている)で働いていたため、当時は朝7時半に出勤して17時までに業務を終わらせ、そのまま退社して通学していました。
 大学院ではレポート課題も多くありましたし、その内容も小手先でできるようなものではありませんでした。先生も結構厳しかったのですが、無事に卒業し税法2科目の免除を受けることができました。

結婚、共働きでの子育てで、受験勉強に本腰が入る

──齋藤先生は奥様も税理士とのことですが、ご結婚のきっかけは何でしたか。

齋藤 妻とは同じ事務所の同僚でした。彼女もやはり転職組で、入社時は資格を持っていなかったと思います。最後の1科目は、よしとみパートナーズにいるときに取っていました。私よりもかなり速いスピードで税理士資格を取得していましたね(笑)。
 その頃の私は、社内の後輩と一緒に飲みに行って後輩の愚痴を聞いたり、他愛ない話で盛り上がったりしていました。その飲み仲間として彼女を誘うことにしたのがきっかけですね。

──その頃といえば、大学院に通っていた時期ではないですか?

齋藤 そうです。通学のない日に飲み会を入れていました。あの頃は、仕事も勉強も、仲間との付き合いも恋愛も(笑)、公私共に欲張ってあれもこれもしていました。体力はありましたね。今の年齢では無理だと思いますが(笑)。

──全力で生きておられたのですね。

齋藤 そうですね。妻とは会社には言わずに交際していたのですが、結婚という話になったので、結婚式の日程を決めて周囲に伝えました。そして家庭を持ち子どもができてからは、いっそう資格の勉強に身を入れるようになりました。妻が産休・育休明けで事務所に復帰すると、共働きで子育てしながらの受験勉強になったのでさすがに大変でしたが、その後、妻が退職することが決まったときは、もう絶対に資格を取るしかないと思いました。妻からのプレッシャーも、半端ではなかったですからね(笑)。

──どのように勉強時間を確保していましたか。

齋藤 TACには土曜日に通学していました。平日は仕事が優先で、18時に帰れるということはほぼありません。ですから早起きして、子どもが起きるまでというか、泣き出すまでの時間が貴重でしたね。5時頃に起きて、家を出るのが7時から7時半頃なのですが、その間に理論のインプットとアウトプットを勉強しました。朝は頭が冴えているので、極力頭を使う勉強をやるようにしました。あとは通勤時間です。帰りが遅くなることも当たり前の生活でしたが、帰りの電車でテキストを開けなかった頃は、現実として試験には合格できなかったので、最後の年はどんな状況であっても絶対にテキストを開くようにしていました。また、先ほども話したように裁量労働制で働いていましたから、朝は10時に出社することにして、最寄り駅に8時に着いたあとは出社までの2時間、駅前のカフェで時間を計って総合問題を解くようにしていました。昼休憩は理論の暗記に時間を費やしましたね。こうしてスキマ時間を見つけては勉強に充てるということを続けて、合格を手にすることができました。

「レジェンド」とまで呼ばれた受験期間を経て合格

──最初の科目を取得してから10年以上かけて合格。長い受験期間はどうでしたか。

齋藤 それまでの人生の3分の1が受験期間ですからね。事務所の中でも「レジェンド」と呼ばれていましたよ(苦笑)。税理士をめざす新人が入所してくると、「うちにはレジェンドがいるから大丈夫だよ、がんばって」みたいな感じでイジられていましたね(笑)。

──お話をうかがっていると、資格の取得をめざす人たちに協力的な事務所のようですね。

齋藤 そうですね。最初から資格を持って入って来る人もいますが、うちの事務所では税理士登録者のうち7割近くが働きながら受験や大学院通学をして合格していると思います。そういう意味では、勉強と仕事を両立しやすく、応援してくれる事務所です。

──働きながら税理士の受験をするなら、事務所選びもポイントになりますね。

齋藤 そう思います。事務所の協力が一切ない状況で働きながら合格するというのは、よほど強い信念がないとなかなか難しいかと思います。
 よしとみパートナーズには試験休暇制度がありますので、夏休みとセットにするとか、有休を使うなどして直前期の勉強時間を作ることができます。それと、やはり裁量労働制で働けることは大きかったですね。現在も、受験指導校に通っているスタッフがいますが、与えられた業務を自分の裁量でやりくりして進めることができるので、講義のある日は16時頃に退勤して、講義が始まる前に勉強しているようです。

──受験期間が長引くとモチベーションを維持するのが大変ではなかったですか。

齋藤 途中でどうしても、気持ちが中折れしてしまう時期はありました。もうこのまま資格を取るのは無理なんじゃないか、と。絶対に資格を取りたいという気持ちを忘れかけそうでした。
 それでもモチベーションを上げられたのは、家庭を持って子どもが生まれたことが大きいです。「絶対資格を取る」という気持ちを、改めて強めてくれたと思います。
 やり続けること、そしてやり切ることですね。諦めたらそこで失敗が決まってしまいます。やり切ったからこそ、今、税理士の資格が手中にあるのだと思います。

税理士登録し、チームリーダーとしてメンバーをまとめる

──現在はどのようなお仕事をしていますか。

齋藤 当事務所ではチーム制をとっていて、チームごとに仕事をしています。「チーム」という個人事務所が集まっているイメージでしょうか。
 だいたい1チーム4~5名ほどの規模でチーム運営をしていますが、私は引き継いだもともとのチームが大きかったということもあり、今、8名のメンバーを抱えるチームリーダーをしています。
 このチームでは170社ほどを担当しています。メンバー1人当たりの担当数は、多い人で40件以上担当しており、平均して30件位になります。

──チームリーダーはどういった役割をするのですか。

齋藤 新しいお客様が来たら、まずはその会社の現状を理解しないといけないので、自分が最初に携わってから、チームのメンバーにそれぞれ仕事を振っていくという形でやっています。
 税理士業務のカテゴリとしては、大きく分けて2つあると思います。1つは記帳や申告書の作成などの手続き業務、もう1つはコンサルティング業務です。担当者が、書類作成や日々の入力やお客様への経理支援といった業務を行いつつ、一緒になってタックスプランニングをはじめ、各種提案や相続・事業承継や会社の組織再編成のような特殊事項に対応していくという進め方をしています。

──税理士事務所の中には専門分野を謳っている所もありますがいかがでしょうか。

齋藤 当事務所は総合型事務所として、「お客様からの依頼は断らない」という考えを基本スタンスとしています。総合型の事務所は専門性が低いのではないかと言われることもありますが、そうならないように、メンバー各々が伸ばしたい分野や苦手な分野を補うための専門性の高い専門部会を設けています。
 専門部会には「医療・特殊法人部会」「資産税部会」「国際税務部会」「税務研究部会」があります。部会では、事例を持ち寄ったり外部講師を招いたりして専門性を高めています。また、部会以外でも新聞雑誌や情報誌などで有益な情報があれば、事務所内のネットワークで共有しています。

──事務所内はチーム制をとっているとのことですが、「このチームは医療系が多い」などの専門性はありますか。

齋藤 チームによってはあります。医療法人などのお客様が多いチームもあれば、スポーツ選手のお客様が多いチームもあります。他にも、例えば飲食店経営者は横の繋がりが強い場合が多いので、そこからのご紹介で飲食系のお客様が多くなったりもします。確かに専門性にこだわる人もいますが、私としては、自分のチームのメンバーには税理士としてオールラウンドに対応できるようになってほしいと思っています。
 私が仕事上意識しているのは、スピード感、特にレスポンスの速さです。問題を抱えたお客様はすぐに答えがほしいと思っているはずですから、仮に問題解決の精度が8割くらいであっても、まずはとにかく最初のレスポンスをします。
 ご相談を受けて、自分の専門度が足りなければ専門度の高い人へ繋げばいい。専門外のことでも、弁護士の方なり司法書士の方なりへ繋いで解決すればいいのですから。

──横断的に動くわけですね。

齋藤 自分の特徴はそこかなと思っています。人とコミュニケーションを取ることが苦ではないのです。新しいお客様にお会いする時も、躊躇することはないですね。
 税理士というと「コミュニケーション下手な人」という世間のイメージもあると思います。実際、手続き業務を得意とする人もいれば、能力は高いけど口下手という人もいますが、私はそういう人たちを引っ張って、足りない部分をフォローできればと考えています。

──個性を活かしてくれるリーダーですね。

齋藤 インタビュー記事を読んだチームメンバーに「そんな訳ないじゃん!」と言われてしまいそうですが(笑)。個人的には、組織に属する以上、リーダーにはそういった役割を期待されているはずだと解釈しています。まだまだ、力不足で足りない部分が多いですが、そういうリーダーでありたいと思います。

妻は独立開業。税理士有資格者のさまざまな働き方

──同じく税理士である奥様のお話をお聞かせください。

齋藤 私の妻は、結婚してまもなく子どもを授かりましたが、出産後、産休・育休明けで職場復帰しています。子育てはどうしても女性に負担がかかりますから、「子どもは1人だけにして完全に仕事復帰するか、それとも2人目も考えるか」と今後のライフプランについて話し合っていたところで2人目を授かったので、いったん子育てに専念することになりました。
 ただ、本人にもこのままではキャリアがなくなってしまうのではないかという心配があったようです。そこで「じゃあ、開業しちゃえば?」と、自宅を事務所にして独立開業することになりました。始めの頃は、会社で担当していた業務を委託のような形でやっていました。今は2人目が生まれたばかりなので子育てがメインですが、今後は少しずつでもできる範囲で、妻のペースで仕事をしていってくれたらと思います。

──資格があればこその働き方ですね。

齋藤 そうですね。十分な能力があるのに、家庭の事情で在宅でないと働けないという女性はかなり多いと聞きます。会計事務所は、そういった女性の活躍なしにはやっていけない時代になってきていると思います。

──現在キャリアを模索中の方や、資格をめざす方へメッセージをお願いします。

齋藤 ITの普及で、仕事がなくなるのではと言われることもある税理士ですが、社会的役割や責任はありますし、何よりも中小企業の経営者から必要とされています。また、究極のサービス業である税理士の業務は、真の実力があれば、ITに取って代わられる仕事でもないと思っています。
 税理士をめざす方へ伝えたいのは、「まずは行動する」ということです。思うだけで行動に移さない人がいますよね。「こうなればいい」という願いや思いで終わってしまっている。でも結局、行動することでしか前へは進めないのだから、実際に行動に移すことがとても大事だと思います。また、途中で諦めてしまうから失敗になるのであって、信じた道を最後までやり切れば、失敗というものはないと思っています。そして、行動して、諦めずにやり切れば、結果はきっと出ます。
 税理士として働いていて、高学歴の方はやはり優秀だと実感することも多いです。そんな中でも税理士の資格があることで、自分も仕事上ではそうした人たちと同じ土俵に立てていると感じます。
 資格があるからこそ見られる景色があります。今、合格に向けてがんばっている皆さんにも、是非その景色を見てほしいと願っています。

[TACNEWS 2020年2月号|特集]