特集 「法令違反から企業を守る」ビジネスに活きるリーガルマインド

大東 泰雄氏
Profile

大東 泰雄(だいとう やすお)氏

のぞみ総合法律事務所
弁護士

大東 泰雄(だいとう やすお)
2000年、慶應義塾大学法学部法律学科在学中に司法試験合格。2001年、同大学を卒業し、司法修習生に。2002年に弁護士登録(第二東京弁護士会)し、2002〜2007年、新東京法律事務所に勤務。2007年、のぞみ総合法律事務所入所。2009年4月〜2012年3月まで公正取引委員会事務総局審査局審査専門官(主査)を務める。2012年3月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻修士課程を修了。2012年4月、のぞみ総合法律事務所に復帰。2019年4月、慶應義塾大学大学院法務研究科(法科大学院)非常勤講師に。

  Google、Apple、Facebook、Amazon――。“GAFA”と呼ばれるこれら大手IT4社に対して、米司法省が反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)違反で調査を開始したというニュースは記憶に新しいだろう。
  日本国内においても、デジタル・プラットフォーマーを取り締まろうとする動きなどが注目を集める中、今回の特集では、公正取引委員会での「企業を取り締まる立場」と、法律事務所での「企業を守る立場」、双方の経験を持って活躍しているのぞみ総合法律事務所パートナー 大東泰雄弁護士に、どのような事例が独占禁止法やそれに関連する法律に抵触するのか、そして、ビジネスパーソンが法律を学ぶポイントやメリットなどについてうかがった。

独占禁止法に精通するため公正取引委員会へ

──現在、法律事務所で独占禁止法の関連分野を専門にご活躍中の大東さんですが、弁護士資格取得の経緯をお聞かせください。

大東 私が弁護士をめざそうと思ったのは、大学生のときに「ビジネスで活躍するよりも、人の役に立てる仕事のほうがやりがいがあるのではないか」と考えたからです。そこで、慶應義塾大学法学部に入学すると同時に、司法試験の合格をめざして受験指導校に通い始め、大学3年で初受験し、大学4年で合格を手にすることができました。卒業後、司法修習に入り、翌2002年に第二東京弁護士会に弁護士登録しています。

──登録後はどのように活動されましたか。

大東 最初は離婚や相続、交通事故、不動産紛争などをメインに扱う一般民事中心の事務所に入りました。そこでは5年間勤めましたが、経験を積む中で、「ビジネスに絡む企業案件のほうが自分には合っているのではないか」と思い始めたのです。そこで2007年から、現在勤務している企業法務を専門に扱うのぞみ総合法律事務所に移り、企業法務全般を幅広く扱ってきました。

──2009年には公正取引委員会に行かれていますが、これはどのような経緯からでしょうか。

大東 企業から依頼を受けるとなれば、強みとなる専門分野を身につける必要があると感じ、まずは弁護士会の経済法研究会に参加しました。その会で独占禁止法(以下、独禁法)について勉強したり、同じ頃に事務所でも独禁法の案件を担当したりした際、興味深い分野だなと感じたことがきっかけです。
 独禁法という法律は、条文の要件が非常にあいまいで抽象的に作られています。公正取引委員会の運用が占める比重が非常に重く、最高裁判所の判例なども数えるほどしかありません。公正取引委員会の先例、いわゆる審決とガイドラインの占める比重が高く、かつ、ガイドラインで文字化されていない相場観や運用といったもので決まることが多いのです。そこで、独禁法を専門分野にするなら、公正取引委員会当局に入って、その運用を知っておくのが非常に大事だと考えました。まさにそのタイミングで公正取引委員会の募集を見つけ、思い切って飛び込んだのです。

──どのような立場で入られましたか。

大東 公正取引委員会には、一定の任期で弁護士を採用する「任期付公務員」という制度があります。私はこの任期付公務員として採用され、2009年4月から3年間、公正取引委員会事務総局審査局審査専門官主査として在籍しました。

──どのような案件に携わったのでしょう。

大東 私が採用された審査局は、独禁法違反の被疑事件を扱う部署でした。独禁法の疑いのある事件を摘発する調査部門ですから、立ち入り検査を担当したり、事情聴取を行って供述調書を作成したり、証拠を読み進めてそれを法律的に組み立て、当てはめて、最後に打つ排除措置命令という行政処分を立案する作業に関与したりしました。独禁法に関する検事のような役割の仕事です。
 また当時は、行政処分に対する企業の不服申立てを審理する「審判制度」というものがありました。現在は廃止されている制度ですが、これは公正取引委員会内部で行う裁判のようなもので、私はその中で、審査官として「企業側の違反を立証する立場」を担当しました。よくドラマで刑事事件の検察官と弁護人が法廷でやりとりするシーンがありますが、あの検察官に当たる立場です。審査官の任期中は国家公務員という立場になりますので、弁護士登録は残しておけますが、弁護士業務は一切せず、完全に国家公務員として働いていました。

──公正取引委員会のプロパー職員と任期付公務員とで、業務上の違いはありましたか。

大東 私のいた部署には数十人がいて、ひとつの島になっていました。そこで私も周囲のプロパーの職員とまったく同じように、一員として仕事させてもらいました。

──公正取引委員会での経験とはどのようなものでしたか。

大東 とにかく得難い経験でした。当局が何を考え、どのように独禁法を適用しているのかがとてもよくわかりました。何より、当時約800人という顔が見える規模の部署で人脈ができたことは、とても大きな財産になりました。今、私が「弁護士」という公正取引委員会とは真逆の立場で個別案件の交渉に行っても、担当官が知り合いという場合が多いです。もちろんお互い一切手加減なしですが、一時期同じ立場にいたことで、お互いにベースとなる信頼関係があり、遠慮なく本音で話をすることができます。

独禁法の目的は「企業同士の競争を促進すること」

──公正取引委員会で国の立場を経験した大東さんは、現在の法律事務所に戻られ、企業を守る立場になられました。事務所内で取り組んでいる案件についてお聞かせください。

大東 企業法務案件の中では、独禁法・競争法と下請法が7割を占めています。
 独禁法・競争法では、事業活動に関する相談対応と助言、社内規定・社内研修など違反の予防体制整備、社内調査・リニエンシー申請、当局の調査・捜査対応、企業結合規制への対応、独禁法関連の民事手続きなどを担当しています。
 下請法に関しては、事業活動に関する相談対応・助言、社内研修など違反の予防体制整備、当局の調査対応に従事しています。
 加えて、景品表示法、コンプライアンス・法務デューデリジェンスなどの企業法務全般が守備範囲です。

──独禁法について、わかりやすく説明していただけますか。

大東 世界的IT企業GAFAにおける情報関連案件など、最近メディアでも独禁法という言葉が多く見受けられるようになりましたが、独禁法の目的は、「資本主義社会の中で企業同士の競争を促進する」ということにあります。より安価で高品質な商品を誕生させるなど、消費者の利益につながるイノベーションを生み出し、社会を発展させるために、企業同士が競争する機能を保護することが独禁法の役割なのです。言い換えれば、その競争を制限したり、阻害したりするような様々な行為を、独禁法で禁止しているのです。
 ただ、独禁法の条文そのものには具体的なことはほとんど書かれていません。これは、いろいろな産業、さまざまな業種の発展を見越しているためです。産業・業種によってビジネスの実態がまったく違うので、社会の変化やビジネスモデルの変化に合わせて捉えられるよう、柔軟な条文になっているのです。公正取引委員会側も弁護士側も、新しい社会の変化に伴う新たな事象を捉えながら、議論を交わしています。

──「企業同士の競争の促進を妨げる行為」とは、例えばどのようなものですか。

大東 競争を阻害する行為の最たるものが「カルテル」と「談合」です。従来から公正取引委員会ではカルテルと談合を中心に対応してきましたが、最近、また新たな競争妨害行為が増え始めています。
 そのひとつが人材を巡る問題です。今、人材が流動化してフリーランスが増え、正社員として働くスタイルだけがメジャーではなくなりつつあります。そうした状況下において、フリーランスは企業と比べると組織力もなく立場が弱いために一方的ないじめが起きるのではないか、という懸念が公正取引委員会の中で出てきていて、そこに独禁法の「優越的地位の濫用」が適用できるのではないかと考えられています。
 これまで「優越的地位の濫用」は、かなり典型的な場面を中心に適用されてきました。小売業界において大手スーパーが納入業者に不当な返品を行うといったような案件ばかり摘発されていたのですが、もう少し範囲を広げて、芸能人やスポーツ選手も含めたフリーランスの保護にも適用できるのではないかというのが、今の公正取引委員会の見立てです。
 米司法省が大手IT4社のGAFAを反トラスト法(日本の独禁法に相当)違反で調査を開始したのも、新たな流れです。従来はGAFAのように大量のデータを持つ企業はなかったのですが、現状として、彼らは本当に巨大な力を持ち始めているため、デジタル市場の独占が懸念されているのです。日本国内でも、公正取引委員会は同様の問題意識を持っているとみられていて、独禁法の中の「私的独占」や「優越的地位の濫用」が適用できるのではないかと考えていると思われます。「私的独占」はカルテルや談合とは別の規制なのですが、平たくいうと、マーケットの中で大きなシェアを持った力の強い企業が、「正しい」やり方でシェアを伸ばしていくのではなく、何か「卑怯なやり方」「不当なやり方」で競合を蹴落として自分だけがシェアを広げていくのは、競争をゆがめるのではないかという捉え方です。この規制は従来からあったのですが、GAFAのような巨大IT企業が出てくるまでは、それほど活発には使われていませんでした。

──「卑怯」「不当」というのは判断が難しいですね。

大東 どこまでが正当なビジネスなのか、どこからが卑怯なビジネスなのかの線引きはありません。公正取引委員会と企業側でも意見が食い違うところですので、正解のない、前例もないところで事案を通じて作り上げていくことになります。それが、この分野のやりがいのひとつですね。

「法律を知らない」というリスク

──企業が意図せず独禁法に抵触してしまうことはありますか。

大東 大企業でも、法務部の方は独禁法についてきちんと理解していますが、営業担当の方の理解が浅いためにカルテルや談合に違反してしまうケースはかなりあります。カルテルや談合の規制ハードルはとても低いので、ちょっとしたことで簡単にカルテルや談合になってしまうのです。実際には、例えば多くの業種の営業担当の方が、業界内で値段を話し合って「明日から100円を110円に値上げしよう」などとがっちり決めることがカルテルで、入札案件があったときに「この案件はどこの企業がいくらで取る」と事前に値段を決め、「それならA社はいくらで入れて、B社はいくらで入れることにしよう」といったやりとりをするのが談合だと認識されていると思います。ここまでやると当然カルテルであり談合なのですが、実はもっと低いレベルで抵触してしまうのです。

──具体的にはどのようなことでしょうか。

大東 例えば、ある製品を作っているメーカーが数社で「原材料費が年々上がっているので、そろそろ値上げしないといけませんね」という会話をしたとしたら、それでもうカルテルとされる可能性があります。その段階では具体的な値段の話は一切していませんが、「値上げする」という方向性を確認し合っただけでも違反になるのです。営業担当の方は「それはカルテルじゃなくて、単なる情報交換だ」という認識だと思うのですが、ここでひっかかってしまう企業が非常に多いですね。

──値上げの方向性を話すだけでも、企業間の競争を妨げていることになるのですね。

大東 そうなのです。また下請法の場合は、「下請代金の減額」という親事業者の禁止事項があって、下請事業者に責任がないのに、一度決めた下請代金を後から減額することは違法とされています。例えば、発注書には100万円と書いて発注し、そこから「コストダウン協力金として5%引いて95万円だけ振り込みます」というような行為は違法になります。下請法は基本的に形式適用(個別の事情によらず、違反行為はどのような理由があっても違反とされる)なので、値下げについて企業同士での合意があったとしても違反になります。これも、現場の方にはなかなか周知されていないので、ひっかかってしまいます。下請法違反になると社名が公表されることがあるので、下請法を知らないのはリスクが大きいですし、このように、知らないうちに違反しているという例はたくさんあります。

ビジネスパーソンにリーガルマインドを

──そのようなリスクを避けるため、一般的なビジネスパーソンはどのようにして備えればよいのでしょうか。

大東 営業担当者や現場を担当する方々が自分から独禁法を学ぼうとはあまり考えないのではと思いますが、独禁法のリスクのある会社では、独禁法遵守マニュアルを作って社内研修を行っていることが一般的です。あるいは、法務部員を中心に外部のオープンセミナーに出席した方が社内でフィードバックをしたり、映像教材を作って営業の現場で活用してもらうといったことがあります。そうした機会を活用していただきたいのですが、その際には法律の条文を覚えることよりも、「こんなことをやると独禁法に抵触するかもしれない」というアンテナが立つようにしたり、普段から意識を持って業務にあたったりできるよう、心がけていただきたいです。気がつかずに見逃してしまうことが企業のリスクになりますから、少しでも「これはまずいのでは?」と思ったら、まずは法務部に相談してみるくらいのアンテナが立つようになることが大事だと思います。

──ビジネスにかかわる法律は、独禁法や下請法に限らず様々あると思いますが、どのような方に法律を学んでほしいと思いますか。

大東 民法と会社法はすべての業種・業態の企業に共通します。そしてカルテルや談合を現場でやってしまうのは営業担当の方ですから、独禁法はまず営業担当の方に学んでいただきたいですね。それから小売業であれば、バイヤーが納入業者からものを仕入れる際などに下請けいじめとなる行為をするのが独禁法の「優越的地位の濫用」や下請法違反に当たるので、買う側の立場の方に学んでいただきたいです。この下請法に関しては、法務部やコンプライアンス部門にいる方だけではなく、より発注の現場に近い購買部門の方に学んでいただきたいですね。また、景品表示法はBtoCで消費者にモノを売る職種の方に、そして個人情報保護法はすべての企業のビジネスパーソンに学んでいただきたいと思います。

──そうした法律を学ぶメリットはどこにありますか。

大東 大きく分けて2つあります。1つは、今はコンプライアンスが非常に重視される時代になっているので、企業で働く上で、あるいは企業と共に仕事をする上で、「法律を知っていること」は何よりも重視される能力のひとつだということです。
 コンプライアンスは日本語で「法令遵守」と言われますが、単に法律を守ればいいということではなく、法令に限らず「企業が社会から信頼を集め続けられるように必要なことをやりなさい」というのが本来の意味です。そうした「常識などに照らし合わせて」社会から信頼を失うことはやってはならないということも含めて「コンプライアンス」になる時代ですから、そのレベルに達する前段階として、まずは法律を知った上でコンプライアンスを進めていくことが、思わぬ不祥事を防ぐことになるのです。

──もう1つのメリットはどのようなことでしょうか。

大東 リーガルマインド(法的思考)の考え方の枠組みを身につけておくと、物事を考えるときの「軸」ができるということです。
 法律的なことに限らず、論理的に物事を考える方法を学べるのが法律学なので、あらゆる場面で論理的思考がしやすくなるというメリットがあります。法律学には「数字を使わない数学」のような側面があって、数学と同じように論理で結論を出していきます。直観的・感覚的に考えるのではなくて、「ルール」「事実」「結論」と法的三段論法で思考できるようになるのです。ビジネスの中では、感覚だけではなくロジックが求められますから、このようなロジカルに考える力は、就職や転職でも有利に働く武器になるはずです。

──リーガルマインドを身につけるにはどうしたらよいでしょうか。

大東 学生であれば、法学部ではリーガルマインドの育成をしているので、そこで学ぶことでリーガルマインドや論理的思考力が身につき、社会で活躍することができます。法学部以外の学生や社会人の場合は、先ほど話したような社内の法務研修を意識的に受けたり、受験指導校などで経営法務講座などを受けてみたりすることもひとつの方法です。
 または「法律を学ぶメリット」に関して、学んだ知識をより積極的に活かしていくという観点から考えると、ちょうど注目を浴び始めた分野へ早めに参入すれば有利になるはずです。デジタル・プラネットフォーマーに対する動きからも、個人情報に関する分野は、今後ますます盛り上がっていくはずですので、このタイミングで個人情報保護法に詳しくなっておく、あるいは個人情報保護士の資格を取得しておくと、いろいろな可能性を広げることができるのではないでしょうか。

◆個人情報保護士認定試験 概要

●合 格 率
過去の平均合格率37.3% ※平均年齢37歳

●合格基準
課題Ⅰ、課題Ⅱ 各課題70%以上の絶対評価
※問題難易度により調整される場合あり

●試験内容
・課題Ⅰ:
・個人情報保護の総論(50問)
  個人情報保護法の理解
  マイナンバー法の理解

・課題Ⅱ:
・個人情報保護の対策と情報セキュリティ(50問)
  脅威と対策
  組織的・人的セキュリティ
  オフィスセキュリティ
  情報システムセキュリティ
※合計150分・マークシートによる 筆記試験

試験実施団体:一般財団法人 全日本情報学習振興協会

若くして活躍できる可能性を広げる「資格」

──リーガルマインドを誰よりも身につけているのが「弁護士」だと思いますが、大東さんの考える、弁護士資格を取るメリットを教えてください。

大東 1つは、「自由度がとても増す」ということです。弁護士の扱う分野は幅広いので、どのような分野をやりたいのか自分で選ぶことができます。さらに、「企業法務」というひとつの分野の中でも、何をやるのか自分で道を決めていくことができます。また、私が自分の希望で公正取引委員会に行ったように、自分のキャリアプランを好きなように描くこともできます。
 昔は弁護士の資格を取ったら、まずは先輩の事務所に入り、何年か経ったら独立するというパターンが中心でしたが、今は弁護士の働き方にもいろいろな選択肢があります。弁護士が何百人もいる大規模法律事務所に入ってその一員としてやっていく道もあるし、インハウスロイヤー(企業内弁護士)になる人もすごく増えています。一方、資格を持たずに会社員として就職した場合を考えると、自分の意思だけでキャリアの方向性を決めることは難しく、人事異動で決まってくる場合が多いでしょう。自由業としてのメリットは、様々考えられる働き方のどれか1つだけに縛られることなく、自分の望む方向性や自分の望む働き方が叶えやすいという点にあると思っています。
 もう1つのメリットは、「資格は若くして活躍できる可能性を高める」ということです。企業に就職して定年まで働くというキャリアを想定した場合、50〜60歳になれば役員になって会社を動かす醍醐味があるかもしれませんが、40歳前後ではどうかというと、初級管理職、あるいはちょっと昇進して課長ぐらいが標準で、仕事としてできる範囲はまだまだ限られている場合が多いのではないでしょうか。
 一方、現在40歳の私は、弁護士資格があることで、ありがたいことに、独禁法の案件で上場企業の社長や役員の方に直接説明させていただく機会がたくさんあります。そして私のアドバイスが会社の意思決定に大きく影響して、その内容がニュースになることも珍しくありません。これはとてもやりがいがあることです。その分責任の重さも感じますが、ビジネスの第一線で、社会が動くところに関われるのは、資格があるからこそのメリットです。インハウスロイヤーの場合も、弁護士資格を持たない他の法務部員とは異なり、裁判に直接関わることができたり、リーガルマインドがより強化される事案を多く経験したりすることができるはずです。

──キャリアアップやリーガルマインドの習得などのために法律を学ぼうと考えている方々に向けてメッセージをお願いします。

大東 「法律」というと、とっつきにくいイメージがあるかと思いますが、法律を知らないことで企業をリスクにさらしてしまうケースは少なくありません。また、一度身につけたリーガルマインドは、ビジネスの現場にも応用することができます。ですから、細かな条文の知識以前に、法律独特の考え方のパターンや思考回路を習得するように意識してみてください。そういう意識を持ってスタートしていただくと、よりよい結果につながると思います。がんばってください。

[TACNEWS2020年1月号|特集]