特集 社会保険労務士が実践する、実務と家事・育児との両立

  
大塚 圭一氏
Profile

大塚 圭一(おおつか けいいち)氏

大塚労務事務所
社会保険労務士 承認コミュニケーター®

大塚 圭一(おおつかけいいち)
1982年12月、埼玉県出身。2004年11月、大学在学中に社会保険労務士試験合格。大学卒業後、都内の環境系ベンチャー企業入社、フランチャイズ開発営業、直営事業営業を担当。2006年1月、大手社会保険労務士事務所入所、顧客開拓営業、顧問先約40社を担当。2008年5月、東京都中央区銀座にて大塚労務事務所を開業。2010年11月、業務拡大に伴い、豊島区池袋に事務所を移転。その後人員増員に伴い、同じ豊島区池袋の現事務所に移転し、現在に至る。

実務と家事・育児との両立では、決して無理をしないこと、できる範囲で取り組むことが大切です。

「働き方改革」という言葉が浸透し、近年は男性が育児休暇を取得することも当たり前と考える企業が増えつつある。では、有資格者にとっての働き方改革はどうだろうか。今回は、独立開業して実務と家庭との両立に取り組んでいる社会保険労務士の大塚圭一氏に、資格取得の動機から勤務時代、独立開業、そして実務と家事・育児との両立についてうかがった。

暗記に苦しんだ受験時代

──大塚さんが社会保険労務士(以下、社労士)をめざした理由を教えてください。

大塚 小さい頃から人と同じというのがあまり好きではなく、人と違うことをしたいという思いがありました。大人になるにつれ、他人が作った会社で働くことにも抵抗を感じていました。そう考えて自分の周りを見ると、父が埼玉県で社労士事務所を開業していたのもあり、私はその環境の中で育ってきましたから、どこか企業に属するのではなく、どこに行っても活躍できるようなスペシャリストとして資格を活かす生き方をしたいと考えました。それが社労士をめざした理由です。

──試験勉強はいつ頃から始めたのですか。

大塚 大学2年の秋頃です。最初の本試験までは、とにかく詰めこむ勉強スタイルで乗り切ろうとしていましたが、実際は、いくら勉強しても内容が頭に入ってきませんでした。アルバイト経験はあっても、社会人として働いた経験がなかったので、勉強している内容に実感がわかなかったのです。例えば、給与の支払日はわかっても、締日とは何かがわからない。ひとつわからないことが出てくると、そこにひっかかって、講義での聞き逃しが多く出ていました。同じ講義の動画を何度も繰り返して見たりもしましたが、それでもわからないことがありました。教室では、講義のあと、受験仲間がよく講師に質問をしていましたが、私はその質問すら出てきませんでした。社会人の受験仲間からは「若いから暗記ができていいね」なんて言われていたのですが、自分としては勉強内容のイメージがつかめないので、とにかくひたすら覚えてやろうと頑なに暗記してました。しかし、理解を飛ばしてただ暗記するだけではダメでした。主語や述語を入れ換えた問題が出題されたら、もうさっぱりわかりませんでした。

──大学4年での2回目の受験の際は、勉強の方針は変えたのですか。

大塚 大学3年の本試験で、きちんと理解していなければダメなんだと痛感し、それからはバラバラだった知識を結びつけるように、点と点をつなぐように勉強を進めました。するとそれまで暗記していた知識が体系的に理解できるようになりました。加えて、社会人の受験仲間と仲良くなり、定期的に勉強会をするようになりました。そこでアウトプットする機会ができ、より知識が定着し、合格することができました。皆には本当に感謝しています。

──大学3年から4年にかけて、ほとんどの時間を受験勉強に充てたようですが、大学の授業との両立はいかがでしたか。

大塚 社労士の受験勉強をすることは決めていましたので、2年までに必須科目の単位はほとんど取っていました。残りは労働法や年金など、社労士の勉強にも関連する授業を選択したので、大学の単位の心配をすることなく、社労士受験に専念することができました。

──大学3年の後半からは、就職活動の時期になりますが、就職活動はされたのですか。

大塚 社労士の受験勉強と並行して行いました。大学4年の頃は、昼間は就職活動、夜は社労士の勉強という感じでした。最初は就職するつもりはなかったのですが、「せっかく新卒で就職できるのにもったいない」とゼミの先生に言われ、就職活動を始めました。父の事務所を見ていると、営業力で規模を大きくしていましたので、自分も営業力は身につけたいと考え、バリバリにノルマがあるような、とにかく厳しい会社に入ろうと思い、たくさんの会社を訪問しました。

──就職活動ではどのような企業を選んだのですか。

大塚 営業職に就きたかったので、人事部に配属されないように、社労士の受験勉強をしてきたことはあえて伏せ、自己PRや面接でも一切話さないと決めていました。1年目から結果を求められるようなベンチャー企業を中心に就職活動をして、新卒で環境系ベンチャー企業に入りました。

──お父様の事務所に入るという選択肢はありませんでしたか。

大塚 父は営業力で事務所を伸ばしたといっても、もともと営業畑出身だったわけではありません。将来、父の事務所を継ぐことがあったとき、さらに拡大していけるように、きちんと営業ができるようにしておきたいと考えていましたので、最初から父の事務所に入るという選択肢は、大学卒業時にはありませんでした。

ベンチャー企業で営業力を磨く

──ベンチャー企業では、どのような業務をされたのですか。

大塚 主に営業です。最初はフランチャイズ加盟店を探すための電話営業をしました。自分としては社労士試験に合格していましたし、営業もきっとできるだろうという根拠のない自信がありましたが、思うように成果を出せずに、3ヵ月目からは建設業の現場に異動して、内装やオフィスの原状回復などの工事を行いました。その後、営業部に復帰しましたが、今度は直営の工事を受注する営業部への異動でした。そこは会社が行ったPRに反応してくれた顧客に対してアプローチをする反響営業ではなく、ゼロから自分で仕事を取ってくるような「ザ・営業」でした。まずは先輩や上司から、過去に取引のあった建設関係者の名刺を何枚か貰い受けるところからでした。当時は発注者の立場が圧倒的に上で、新人の営業マンなど眼中にないといった扱いがほとんどでした。時には「部外者が勝手に入ってくるな」と怒鳴られたり、「こんな見積りじゃ話にならない」と、何時間もかけて作成した見積書を投げ捨てられたりということもありました。上司に相談すると「そのうち仕事を貰えるようになるからがんばれ」と言われたのですが、途中で「もしかして、いい客は自分で持って、その残りをこちらに回しているのでは?」と感じ、指示とは別に自分で飛び込み営業をするようになりました。その結果仕事を受注できたときの喜びは今でも忘れられません。そして受注した現場を何とか納めたあと、会社を辞めました。ようやく色々覚えてきたタイミングで、誰にも相談せずに退職の申出をしたので、会社からはものすごく怒られましたし、いま振り返ると、本当に失礼な辞め方だったと思います。しかし始発から終電まで、そして現場があれば土日も出勤し、会社に少しでも貢献できるように努めていましたし、当時は常にノルマと社長からのプレッシャーにさらされていたので、退職直後こそ若干の開放感がありましたが、すぐに物足りなく感じるようにもなりました。

──退職後はどのようにされたのですか。

大塚 父の社労士事務所に入りました。昼間は営業活動をして、夕方から社労士の実務を行いました。父の事務所には3年近くいましたが、その間に約8,000社に飛び込み営業をしました。よく「飛び込み営業なんてすごい」と言われますが、前職での「また来たのか迷惑者」と言われるような営業に比べると、100倍気楽でした(笑)。合わなければもう行かなければいいわけですから。父の事務所は埼玉県にあり、最初は事務所周辺を回っていたのですが、回る先がなくなって、だんだんと埼玉県内でも事務所から遠くに行くようになりました。時間もかかり効率が悪いので、それなら企業数が多い都内に行ったほうがいいと考え、都内で営業活動をするようになりました。

──お父様の事務所に入られたのは、後継者という位置づけだったのですか。

大塚 はい。ですが、父の財産を食いつぶすような恥さらしな人生だけは死んでも嫌だと思っていました。生まれてきたからには何らかの爪痕を残したいと。ですので、単に「息子だから」「身内だから」ではなく、実力で「こいつに任せていい」とならなければダメだと考えています。その思いで、営業力も含めて社労士としての実力を身につけるために、日々、努めていました。スタッフや事務所など環境が整っている以上、代表よりも知識は上回っていなければ話にならないと常に思っていました。

──その後、ご自身で独立開業された理由を教えてください。

大塚 都内で営業しているうちに、同世代の経営者の方がお客様になってくれました。その方と何度か話をしているうちに、自分には経営者としての経験がないために説得力がないのでは、と感じたのがきっかけです。雑談で、採用や人的な苦労、事務所の家賃やリースの話が出てきても、自分では経験していませんし、家賃相場もわかりません。結局、「人」に関する相談は、100人いれば100通りの考えや事情等が存在し、明確な正解がないケースが多々あります。そのときに必要なのは「経験値」です。自分が経験したことであれば、「私だったらこうします」と最後に背中を押してあげることができます。それを短期間で身につけるには、経営者になって全責任を負う立場になることが一番の近道だと感じました。事業計画など明確なものはなく、ただその気持ちだけで開業してしまいました(笑)。そして、父の事務所を離れ、2008年5月に東京都中央区銀座で大塚労務事務所を開業しました。

お客様が求めていること以上のご提案を

──ご自身の事務所、大塚労務事務所ではどのような業務を行おうと考えたのですか。

大塚 社会保険等の手続き、給与計算といった業務はもちろんのこと、特に力を入れているのが労務相談です。開業以来、労務管理に特化した大手弁護士事務所を顧問に迎え、連携して対応しています。

──顧客の開拓はどのように行いましたか。

大塚 父の事務所から引き継いだ顧客は1件もなかったので、ゼロからの開拓でした。最初の頃は飛び込み営業もやりました。住宅他図を片手に、3ヵ月で1,000件くらいは回りました。徐々にお客様が増えていき、その後はお客様や士業仲間から紹介をいただくことで顧問先は増えています。

──かなりの数の飛び込み営業をされましたね。飛び込み営業は得意なのですか。

大塚 前職からやっていましたので、抵抗はありません。私自身、実はまったく社交的な人間ではないと思っているのですが、飛び込み営業なら機会は1回しかありませんので、ダメなら次にいけばいいだけです。その意味で、社交的でない方には飛び込み営業をお奨めします。

──スタッフを採用したのはいつ頃ですか。

大塚 社労士実務に関しては、父の事務所にいたときは実務を担当してくれるスタッフがいましたので、私はある程度営業活動に専念できました。けれども独立すると、妻も手伝ってくれましたが、基本的には自分ひとりですので、営業だけでなく、社労士実務も行わなければなりませんでした。そこで、顧問契約先が増えてきて、豊島区池袋に事務所を移転した2010年11月に、初めてスタッフを採用しました。 

──現在の顧問先数、スタッフ数を教えてください。

大塚 顧問契約で150件、就業規則や人事評価制度、研修講師などのスポット案件が常時40~50件同時に動いています。現在、スタッフは非常勤スタッフも合わせて10名で、妻も手伝ってくれます。手続き業務、就業規則など担当者を決めて業務を進めていますが、増員も予定していて、現在募集内容を精査しています。

──お客様の業種などに特色はありますか。

大塚 お客様の8割が新規法人ということが特色のひとつです。業種的には介護・保育・福祉と運送業が多いです。とはいっても、飛び抜けて多いわけではなく、様々な業種のお客様がある中では目立つという程度です。また、自分の子どもが幼稚園に通っているということもあり、保育業界に力を入れていきたいと考えています。

──仕事を進める上で心がけていることはありますか。

大塚 「ミスなくスピーディーに」はもちろんのこと、お客様が求めている以上のものをご提案できるように心がけています。例えば、頂いた質問については、その回答にプラスして関連する事例や注意点をお伝えするといったものです。
 労務に関するご相談には、明確な答えがない場合もあります。特に労使トラブルについては、100人いれば100通りあるといわれます。社労士として法律的なアドバイスに加え、その会社に合った解決法をご提案させていただいております。また、社長が本当に困っているときには、会社にうかがって社員の方から直接話を聞いたり、ご説明したりするようにしていますし、ときには解雇予告に立ち合ったりすることもあります。やはり社長も不安ですから、社員に話す前にお会いして話をするだけでも安心していただけますし、社労士が立ち合うことで内容に信憑性も出ます。
 また、最近の若い方は、将来性のある会社よりも、自分らしく働けて、プライベートも確保できる環境を選ぶ傾向が強いようです。いかに自分の個性や持ち味を発揮してイキイキと働けるか、そんな働き方ができれば、社員自ら学ぶことも増えていくと思います。ですから、そうした職場環境を作るお手伝いができればと考えています。何といっても、従業員の方が会社に行きたくない一番の理由は、能力などとは関係のない人間関係といわれています。そこで最近力を入れているのが企業研修です。プロのカウンセラーに指導していただき、心理学を取り入れた内容になっています。社員数10人未満の零細企業から数百人規模の上場企業まで幅広くご依頼をいただき、需要の高さを実感しています。

大塚 圭一氏

仕事も家庭も、できる範囲で無理なく

──現在、社労士として独立開業して業務を行っていますが、子育てや家事にも積極的に取り組まれているとお聞きしました。

大塚 いま、上の子が幼稚園の年長、下の子が生後8ヵ月です。子育てや家事などの手伝いをするようになったきっかけは、妻に頼まれて妊婦健診に付き添って行ったことからです。最初は純粋に心配だから一緒に行きました。ただ、妊娠中はつわりもありますし、体調が安定しないこともあり、「これは大変だ。家事をすべて妻だけで行うことは難しいな」と感じました。
 そして、子どもが産まれてから感じたことは、家事と育児をひとりで全部やるのは無理だということです。私が少しでも家事をやれば、妻は育児の時間を取ることができます。予防接種、乳幼児健康診査など、子どもを連れての外出も増えてくるので、妻の負担を少しでも減らしてあげられるようにと考えていました。そこで長女が2歳までは、家庭を中心に据えることに決めました。だからといって、無理やり仕事より家事や育児を優先しているのではなく、家庭を中心に考えて、できる範囲で仕事をするようにしました。ときにはバランスを逆にして、仕事を中心に考えて、できる範囲で家事などをやることもあり、あくまで「できる範囲で無理なく」と考えていました。

──仕事と家事・育児との両立ができるようになるまで、苦労されたのですか。

大塚 最初はどうバランスを取っていいのかがわからなくて、1日2~3時間しか仕事の時間が取れないことも多々ありました。もともと18時間くらい働いていた私からすると、全速力で走っていたのが急にハイハイになったくらいのペースダウンでしたが、2年間と覚悟を決めましたので、特に大きな問題はありませんでした。実際子どもの成長を間近で見ることができ、楽しい面もたくさんあり、とても充実した日々を過ごすことができました。

──どのようにして両立を実現したのでしょうか。

大塚 それまでなるべくコストを掛けてこなかった部分に手を付けるようにしました。それは、社会保険に加入することを含め、待遇を上げて経験豊富なスタッフを採用し、スタッフに仕事を任せられるようにするということです。そしてクラウドシステムを導入するなど、これまでアナログだったものを効率化し、スタッフがクオリティの高い業務に時間を割けるような環境作りができたのが大きかったと思います。そうした土台ができたので、あとから入社するスタッフも安心して働けるようになったのではと思っています。また、顧問先とLINEやメッセージなどスマートフォンでやり取りしたり、いつでもどこでもちょっとした隙間時間に作業をこなすことに自分自身も慣れてきました。さらにインターネット上でスキルアップの講座を受講したりと、先行投資も惜しまずにやるようにしました。買い物の合間にショッピングモールのフードコートで電話対応やメール返信をすることもよくありました。そうして自然と仕事と家事・育児のバランスが取れるようになってきました。また、子どもは成長しますから、少しずつ手がかからなくなったこともあると思います。
 他にも、以前は自宅が事務所から遠かったのですが、無駄な時間を少なくするために、事務所の近くに引越しました。家族に何かあってもすぐに駆けつけられる距離ですから、妻も安心だったと思います。子育てするなら郊外のほうがいいという考え方もあると思いますが、通勤時間に片道1時間かけていては、私の場合、仕事との両立はできません。また、移動手段を車にしたのも、両立のために効率がいいからです。すぐに迎えに行けるとか、買い物がしやすいといったことです。ただ、事務所近くに引越したことで家賃や駐車場代といった出費は増えましたね。知人の社労士の中には、仕事と家庭を両立するため、自宅を仕事場にした人もいます。私は多少の距離は必要だと考えていますが、そのあたりはそれぞれの家庭での考え方だと思います。
 今は仕事中心の従来の働き方に戻りましたが、お客様との会食や、夜でないと時間がつくれない新規のお客様とのアポイントなどがない限り、夜は早く帰るようにしています。お風呂に入れたり、下の子に食事をあげたりと、やることは満載です。
 仕事と家庭のバランスで悩んでいる社長やその従業員の方々にアドバイスするような機会があれば、自分の経験を還元したいと考えています。

メールチェックは1時間に1回

──仕事のスケジュールはどのように決めているのですか。

大塚 スケジュールはお客様との打合せを優先して入れていますが、夜と朝一番には入れないようにしています。また、外出先から事務所に戻ると効率が悪い場合は、無理して戻らずに帰宅します。単にスタッフの様子を確認するためだけに戻ったりすることはせず、そこはスタッフを信じて任せています。

──事務所でないとできない仕事、事務所でなくてもできる仕事といった区分けはありますか。

大塚 区分けはありますが、できるだけ事務所で仕事をするようにしています。スタッフとのコミュニケーションが取れますし、疑問点の確認や進捗状況の把握などもできます。スタッフにとってはわざわざ外出先にまで電話するほどでもないような話が、実は後々重要になってくることもたくさんありますので、できるだけ事務所で仕事をするようにしています。

──仕事の進め方で工夫されていることはあるのでしょうか。

大塚 例えば、就業規則作成の依頼があって打合せをしたときは、その後には予定を入れずに、すぐに取りかかるようにしています。そのほうが効率的だと気がつきました。
 仕事も子育ても、何時までに何々をやろうと決めるのですが、なかなか予定通りにいかないことがあります。ただし、いまは決めた時間が来たら、できていなくとも止めるようにしました。できるまでやるといったように好き勝手に仕事をしていては、きりがありませんから。
 また、メールチェックは1時間に1回としました。届いたメールを都度確認していると、メールの内容に引きずられて、進めていた仕事が後回しになったり、遅れの原因になりかねません。ただその分、メールは放置しないように気をつけています。相談メールの場合、すぐには回答できない場合もありますが、その際は「調べてから返信します」とまずは返すようにしています。

──お客様やスタッフからの連絡はどうされていますか。

大塚 家事をしていても電話がきたら出ますし、メールやLINEに返信もしています。ただ、子育てや家事との両立を始めるまでは、お客様とLINEでやりとりはしていませんでした。お客様から「LINEやってませんか」と聞かれて始めたのですが、お客様によっては、LINEのほうが楽だし、連絡が取りやすいという方もいます。妻も、電話やメール、LINEでお客様やスタッフと連絡を取っている様子を見て、「家事と仕事を両立できているみたいでよかったね」と言っていました。何とかそれなりに両立できていたのではないかと自己評価しています(笑)。

──社労士業務と家事・育児との両立について、ご自身ではどのようにお考えですか。

大塚 社労士として独立開業をしていて、仕事を任せられるスタッフがいなかったら、両立は難しいと思いますので、スタッフには大変感謝しています。また、企業勤務などの場合は育児休暇が取れるかもしれませんが、普通は長期間にわたって、平日の昼間の時間も使って育児や家事にかかわっていくことは難しいと思います。そこをどの程度かかわるようにしていくのかは、それぞれの家庭で話し合って、無理のない範囲で行えばいいと思います。
 まだ例はありませんが、スタッフから私と同じようなスタイルで仕事をしたいという相談があったとしたら、実現できるように話し合い、他のスタッフも含めてサポートをしたいと考えています。

自分が置かれた環境で資格を活かす

──社労士業務と家事・育児との両立を行ってみて、 仕事のやり方も変わったのですか。

大塚 資料が必要になる手続き業務は、完全にスタッフに任せるようにしました。私は労務相談やお客様との打合せを中心にしましたので、事務所のデスクでなくても仕 事ができるようになりました。限りある時間の中でいかに 効率的に仕事をするかを考えるようになり、隙間時間を見つけては、電話の折り返し、LINEやメッセージをチェックしたりするようにしています。仕事の時間は限りあるものと 意識することで、業務効率は確実に上がりました。

──事務所の今後についてお聞かせください。

大塚 お客様もスタッフも増やしていきたいと考えてい ます。仕事をきちんと任せられる有資格者の方に入っていただきたいですね。スタッフそれぞれの個性や経験を活かしてやっていきたいと考えています。

──社労士を始めとする資格取得に向けて勉強し ている方々にメッセージをお願いします。

大塚 『TACNEWS』は私も受験中の気分転換に読んでいました。資格をどういう目的で取得するのかは人によっ て違うと思います。ただ、取得したらぜひ活かしてほしい。 資格を取得したからといって、必ずしも独立開業する必要はありません。自分が置かれている環境の中で、資格を活かしてください。そして得意分野を作り、楽しく仕事ができたらいいですね。がんばってください。

[TACNEWS 2019年11月号|特集]