特集 マイノリティサポートに取り組む行政書士

康 純香氏
Profile

康 純香(こう よしか)氏

こう行政書士事務所
行政書士

康 純香(こう よしか)
1976年生まれ、大阪府出身。関西大学大学院修了。大阪市内の弁護士事務所に13年間勤務。2014年1月、行政書士試験合格。2014年8月、行政書士登録とともに「こう行政書士事務所」を開業。補助金申請、帰化・ビザ申請などのほか、LGBTや障がい者などのマイノリティサポートにも注力している。

 「ただ家族になりたいだけ」。2019年2月14日、同性の相手との結婚を認めないのは憲法に反するとして、13組の同性カップルが国を相手取り、損害賠償を求める訴訟を4地裁で一斉に起こした。テレビをつければオネエタレントが活躍する一方で、日本では同性カップルの婚姻は認められていない。「そんなLGBT※や障がい者など、マイノリティの人たちのために何か自分にできることはないか」と真剣に取り組んでいるのが行政書士・康純香氏である。社会的マイノリティをサポートするために日夜奔走する康氏の歩みを追ってみた。

※LGBT…レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字をとった単語で、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の総称のひとつ。

「マイノリティをサポートしたい」

──康先生は学生時代から行政書士をめざされたのですか。

 最初は弁護士をめざして関西大学法学部に入学しました。4年間では不完全燃焼でしたのでもう少し真剣に取り組もうと大学院に進みましたが、弁護士への道はなかなか厳しく「これは合格までたどり着くことはできないな」と思い、一度リセットすることに。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのオープニングスタッフとして1年半アルバイトをしました。ただ、いつまでもフリーターでは親に顔向けできないので就職しようと考えたとき、縁あって大阪市の法律事務所で補助者として働くことになり、再び法律の世界に戻りました。

──なぜ弁護士をめざそうと思われたのですか。

 私は生まれも育ちも日本の在日韓国人四世なんです。一世の人たちの中には、日本語の読み書きができず、言葉も正しくは理解できていない方も多くいました。そのため騙されたり、劣悪な労働条件で働いたりしていることもよくあったようです。「世の中は、そういう法律知識がないマイノリティが損をする社会なんだな。いろいろなところで人より不利な分、何かプラスアルファで補わないといけないんだ」と感じたのが、弁護士になりたいと思ったきっかけです。

──その後、弁護士から行政書士へと方向転換された経緯をお聞かせください。

 勤務先の法律事務所は、離婚や相続、倒産処理が多い事務所で、補助者として任せてもらえる範囲も広く、十数年間勤務しました。けれども個人経営の事務所でしたので、弁護士の所長が辞めるとなれば、事務所はなくなってしまう。永遠に続くわけではないんです。そうなったら手に職のない私は正社員にすらなれないかもしれない。自分の将来を考えると、いつまでも甘えているわけはいきません。「何か自分でできることはないか」と考えたときに、もう一度資格を取ろうという思いが湧いてきました。
 そうなると、資格は以前弁護士をめざしたときのようなあこがれの対象ではなく、現実問題として「取らなければならないもの」になります。努力すれば取得できそうな資格、そして生活できそうな資格を検討して、行政書士に決めました。

──どのような受験時代を過ごされたのですか。

 残業がほとんどない事務所だったので、平日の夜と土日に勉強しました。民法などは司法試験で勉強してきた法律の知識をベースに進められたのですが、かつて勉強したのは商法(旧会社法)だったため、会社法は新たに勉強しましたね。メインの行政法は完全に一からでした。
 ひとりで自宅学習し、受験指導校で答案練習と模擬試験をスポット的に受けました。真剣に取り組んだのは1年半。最後の1年間はしっかりと時間を割いて繰り返し勉強し、2013年度の行政書士試験にチャレンジして合格しました。

初年度の売上は2万円

──合格後はすぐに開業されたのですか。

 合格後すぐに行政書士の登録申請をすれば数ヵ月で開業できるのですが、本当にやっていけるのか、稼ぐことができるのかと悩んでしまい、登録も開業も、合格から半年以上経った8月になりました。開業したあとも、軌道に乗るまでは法律事務所で補助者をしつつ、自分でも営業活動をして行政書士としてやらせてもらいました。この法律事務所の所長には大変お世話になり感謝しています。

──勤務しながらの開業は時間のやりくりなど大変そうですね。

 土日に活動していましたね。でも、最初は営業力がないので、資格を取ったものの「行政書士バッジを持っているただの人」でしたね(笑)。
 そんな感じでしたから、初年度の売上はたった2万円でした。「行政書士として食べていくには、営業力がないといけないんだ」とようやく気がついて、異業種交流会などに多少顔を出しましたが、知り合い同士の集団の中に入っていくのがあまり得意ではないことがわかっただけでした。
 行政書士がよく活躍している分野として、建設業関連、入管関連、風俗営業関連などがありますが、こうした分野に途中から参入するのは難しいだろうと思ったので、「それなら、他の分野の中で、お客様が思わず頼みたくなる業務、依頼者にもWINがある業務をやってみよう」と方向転換したのです。そこで最初に始めたのが補助金申請業務でした。
 まずは自分自身で小規模事業者持続化補助金という補助金の申請をしました。これは広告宣伝費に使える上限50万円の補助金で、自分で申請すれば興味を持ってもらえるだろうと実践を兼ねてやってみたのです。

──効果はいかがでしたか。

 当時はまだ事務所のWebサイトもなかったので、最初に補助金でWebサイトとチラシをつくりました。また、弁護士や司法書士をしている学生時代の友人に、補助金申請をしてみないかと声をかけました。ありがたいことに、依頼を受けた補助金申請はすべて通すことができて、初めて「これは仕事になるな」と手応えを感じました。 
 大阪の人って、自分が得をするとみんなに自慢したくなるんですよね。私が補助金申請を通すたびに、その会社の社長さんが「行政書士に頼んだら、こんなお金がもらえたよ」とどんどん宣伝してくれたので、営業マンがついたように口コミで広がっていきました。おかげで2年目は補助金をメインに活動して売上が初年度の100倍になりました。といっても200万円ですが、それでも「自分に営業力がなくてもやっていける!」と自信を持てるようになりましたね。

補助金申請、帰化・ビザ申請、マイノリティサポートが3本柱

──現在の主な業務を教えてください。

 補助金や融資などのお金のこと、帰化や入管業務などの外国人に関すること、相続・遺言・離婚・後見などの家族関係のことを大枠としてやっています。中でも力を入れているのがLGBTや障がい者などのマイノリティの方やその周囲の方のサポートです。せっかく行政書士になったのだから、初心に帰り、自分がやりたかったこと、つまり既存の社会のルールではフォローされない方のお手伝いをしたいのです。

──補助金の際はお客様が口コミで広めてくれたということですが、LGBTとなるとアプローチがまったく違うのではありませんか。

 始めた当初は「匿名でできるネット相談が多いだろうから、しっかりとしたWebサイトを作ろう」と、どんと初期投資しました。ところが現実は違っていて、LGBTに関しては信頼されてからしか相談や依頼はこないことが分かりました。残念ながら、Webサイトの構築がすぐに仕事には結びつかなかったんです。そこで、LGBTのイベントに積極的に参加して「こういうことをすれば、皆さんの不安は取り除かれますよ」とお話ししたり、無料相談を受けたりしました。

──帰化や入管業務といった外国人に関する業務についてはいかがでしょうか。

 外国人の帰化・ビザ申請業務は、大阪市生野区という立地条件もあってか、まったく宣伝しなくても少しずつ増えていきました。というのも、生野区は外国人が非常に多いエリアなんです。帰化案件などは地域柄、生野区の行政書士が詳しそうだというイメージがあるらしく、最初は外国人案件の帰化・ビザのほとんどがWebサイト経由の依頼でした。現在はWebサイトより口コミがメインとなっています。実際に多くの案件を受けているので同業者や他士業の方からの紹介も多いですね。

LGBTをサポートしたい

──LGBTサポートについては、どのように進めてこられたのでしょうか。

 大学生のときに観た映画がすごく印象的で。おばあちゃん同士のカップルの話なのですが、添いとげて1人が老衰で亡くなってしまいます。すると、2人の住んでいた家が亡くなった方の名義だったために、残されたおばあちゃんはご遺族から「この家は私たちが相続しました。あなたには何の権利もありません。出ていってください」と言われてしまうのです。当時の私は弁護士をめざしていたので「公正証書を作っていれば抵抗できたんじゃないか。作っていればその先が全然違ったものになったのに」と痛切に感じました。「知識があれば対処できる。でも、知識がなければ大変なことになる」。そんな思いがずっとありましたね。
 今日でも、映画を観た20年前から何も変わっていないLGBTの現状があります。残されたおばあちゃんを守るために必要だった公正証書は、今、LGBTの人たちを守るためにも必要で、この書面がどれだけ大事なものか皆さんにわかってもらいたいと思いました。最終的に「公正証書はいらない」という選択肢を選んでもらってもいいんです。でも同じ結果になるにしても、対策方法をわかっていた上での選択の結果ならば納得いくのではないかと考えました。
 ということで、公正証書作成の必要性を訴える講演を開いたのがスタートで、あとはイベントでお会いした方からのお問合せや、Webサイトに掲載する実績が増えてからは、Webサイト経由でも相談をいただくようになりました。

──どのようなご相談が寄せられるのですか。

 相談内容は本当に様々です。ひとくちにLGBTサポートといっても、同性同士のカップルだけでなく、例えば自分の性に違和感を持っている方、離婚相談で配偶者がLGBT当事者であるとか、相続手続をしたいけれど戸籍謄本から本来の性別を知られたくないなど、内容は想像以上に多岐にわたります。私も相談を受ける度に新たに調べることが発生するような状況です。

──ご相談に対しては、どのような提案をされるのでしょうか。

 同性同士のカップルの場合は、まず遺言の作成があります。あとは皆さん老後を心配されるのでお互いを後見人にする任意後見契約を併せておすすめすることが多いです。
 今お話しした遺言はその中でも公正証書遺言のことですが、ここ数年注目されている民事信託という方法もあり、私はLGBTの方に向けた信託の仕組みを考えました。
 遺言というのは効力が1回、亡くなったときのみです。例えばパートナーに遺した不動産を、その後、特定の誰かに渡したいというときに活きてくるのが民事信託です。信託の場合は、遺言と違って段階的な効果を持たせることが可能なんです。そういったしくみが柔軟に作れるので、これこそLGBTの方には必要なのではないかと思い、「LGBT信託®」の商標登録もしました。

──サポートとして複数の提案があるのですね。

 そうですね。ここでいつもお話ししているのは、公正証書の作成にもメリットとデメリットがあるということです。まず公正証書を作成するにはそれなりのお金がかかります。極端な話、その辺にある紙の裏に書いても契約書としては成立します。ただ、強制力となると話は違います。公正証書であれば、たとえご家族の方に反対されても一方的に手続きを進めることができますが、紙きれに書いた契約書にはそれだけの効力や強制力はありません。
 逆に言うと、公正証書にはそれだけの強制力があるので、万が一おふたりが別れてしまった場合でも、すでにある公正証書の内容を無効にするためには、また新たな公正証書を作らなければなりません。それにも費用がかかりますから、デメリットのひとつといえるでしょう。
 一般的には、公正証書のご相談は富裕層の方から受けることが多いです。財産が多い方は、争いが起きないように、公正証書でしっかりと対策するわけですね。一方でLGBTの方たちの場合は、自分たちを守るための対策をしたい、というケースです。裕福な方ばかりとは限りませんので、かけられる費用にも限りがあります。となると無理に公正証書をおすすめすることはできません。
 そうしたいろいろなパターンをお話しした上で、複数の提案からどの方法を選ぶかは、当事者に決めていただいています。

──公正証書や任意後見契約、LGBT信託®以外にいざというときのための対応策はあるのでしょうか。

 皆さんご自身の生活があってのことですから、どうしても費用をかけられない場合もあります。そうしたことを踏まえて、以前から作成・ご提供してきた『もしものノート』のLGBT版を作りました。『もしものノート』は、一般的なもの、障がいをお持ちの方のご家族がご自身の亡きあとに備えるもの、そしてLGBTの方向けのものを用意したいわゆるエンディングノートですが、様々な方の経験や体験談に基づき、「もしものとき」に必要になる手続きについて、簡単にカジュアルに残しておけるノートです。強制力はありませんから、遺された方のために「想いだけは書き残しておきましょう。ただ、メリットとデメリットはきっちり理解してくださいね」とお話ししています。
 私としては、公正証書遺言や任意後見契約、LGBT信託®、『もしものノート』など、いろいろな方法の中から、皆さんご自身がどの方法をとるのか選べるようにしたいんです。ときには売上を度外視します。これは、組織にとらわれない個人事業主だからできることだと思います。

パートナー制度の現状

──いろいろな自治体でパートナー制度の導入が進められていますが、これらはLGBTの方たちにとって、状況の改善を期待できる制度なのでしょうか。

 実は現状では、最初に制度設定した渋谷区以外の制度にはすべて強制力がありません。渋谷区は、議会を通した「条例」として定めています。条例とは、地方版の法律ですので強制力があります。しかし今のところ渋谷区以外の自治体は「要綱」なんです。要綱とは、簡単にいえば自治体の事務マニュアルです。「受付にこのような方が来たらこのように手続きしましょう」という自治体内のルールなので、一般市民にまで要綱に沿った対応などを強制することはできません。
 例えば大阪市では、交付されるカードのタイトルも「パートナー証明書」ではなくて、「パートナー宣誓書受領証」になっています。「この方たちがパートナーと宣誓しているので受領しました」という受領証ですので、証明されるのは「宣誓書を受け取った」ということだけです。それをもって、第三者である病院や不動産屋会社、銀行がパートナーとみなしてくれるかどうかは、受け手側の判断に任せられますので、確約がないんです。例えばパートナーが倒れて一緒に病院に行っても、病室に入れてもらえないかもしれません。
 そのような中、渋谷区は唯一、条例を根拠に公正証書に基づく証明書を発行しています。ですから証明書を提示した場合、区・区民・事業者にそれぞれの責務を定めています。きちんとした対応を取ってもらえない場合には、区の指導があり、場合によっては事業者名を公表することもあるとしていますし、広く啓発活動や関連部署も整備しています。
 なぜこういった違いが出ているかといえば、条例を定めるには議会を通す必要があるからでしょう。手間も時間もかかりますので非常に大変です。一方要綱は、首長が作ろうと決めれば、議会を通さずに作ることができます。LGBTという存在をちゃんとわかっているよという理解を示したい自治体にとって、ひとつの解決策と捉えているのかもしれません。

──ひとくちにパートナー制度と言っても、その質はまったく違うのですね。

 こうした現実をお話すると、皆さん驚かれます。同じ「パートナー制度」と言っていますが、渋谷区と他自治体では内容が違います。ですから、自治体や国の整備を待つのではなく自分の身は自分で守りましょうとお話しします。

──今後もLGBTの相談は増えてくると思いますか。

 条例の制定をめざしている自治体もありますが、どうなるかはわかりません。同性婚を認めないのは憲法違反という提訴も、結論までは時間がかかると思います。
 そのような中で2020年の東京オリンピックはひとつの契機になるかもしれません。実はオリンピックでメダルを獲得した方が、その場でカミングアウトするというケースが増えており、その数は毎回増えてきています。おそらく東京オリンピックでも、過去の記録を超える数のカミングアウトがあるだろうと言われています。また、社会的にも知られるようになったので、啓蒙や教育の機会も増えています。ですので、性的マイノリティの方たちもこれまで隠していましたが「言ってもいいのかも」という風潮にはなっていますね。そういう意味でも相談はまだまだ増えてくると考えています。

「任意後見法人」を作ることが夢

──障がい者支援についてはどのように取り組んでいますか。

 LGBTと違って障がい者支援の歴史は長いので、私が新しいことをする必要はないと思っています。ですので「親亡きあと」についての任意後見契約がメインです。こちらでも後見制度の種類やメリット・デメリットについてお話ししています。まず法定後見人の場合、家庭裁判所で選任されるまで誰が後見人になるかわかりません。割り切った言い方をすれば、知らない人が後見人になりますので、その方がどんな方かは付き合ってみなければわからないんです。法定後見人は専門家である弁護士や司法書士などが選任されることが多いのですが、必ずしも障がいに詳しいとは限りませんし、障がい者個々人の症状や特性などは、もちろんまったく知りません。そうした知らない人が後見人になることに対して、皆さんものすごく不安を感じています。
 では任意後見はどうでしょうか。まず、事前に任意後見人をお願いできる方を探しておく必要があります。そして費用は法定後見よりも多くかかるケースがままあることをお話しします。そしてどちらの方法がよいかを選ぶのは障がい者の親御さん自身です。
 最近では任意団体が増えてかなり勉強している方が増えました。私としては、壮大な夢ですが、保護者の方による任意後見法人を作って、法人として任意後見契約を結んで常に誰かに後見人を頼めるようにすることを考えています。障がいの内容は人によってまったく違うので、個々人の症状はもちろん、嫌いな食べ物、嫌いな音などをわかっている保護者が後見人を務める方法です。そして保護者の方も元気な間は法人の中の後見人として、日々の業務にあたっていただきます。
 そして自分に何かあったときには、今度は我が子にその活動が返ってくるという心理的メリットと経済的メリットがあるんです。今この活動の勉強会をやっているところです。

──すばらしい案ですね。今後はやはりマイノリティサポートをメインでやっていかれるのですか。

 やりたいことはそこですが、私はあくまで行政書士ですので、帰化や入管業務など今後も増加し続けるであろう国際業務にも一層力を入れていきます。

行政書士を仕事にしながら好きなことにも関われる

──現在はおひとりで運営されていますが、任意後見法人を作るとなるとおひとりではできなくなりますね。

 イメージとしては、やはり行政書士法人化するのがお客様は一番安心されると思います。今の体制ですと、私が法律事務所を辞めることを考えたときとまったく同じで、私に何かあったらすべて止まってしまいますので、お客様にそういう不安を与えてはいけないし、ご相談を受ける以上は最後まで責任を果たさないといけません。ただ、人間である以上何があるかわかりませんから、事務所を法人化して不測の事態でもメンバーがフォローできる体制を作りたいと思っています。
 任意後見の業務については、現在は私自身が後見人になるのではなく、任意後見をお願いしたい方が相談にいらっしゃるパターンなので、多くの案件に関わることができています。任意後見法人は一刻も早く作りたいところですが、まずは足元を固めてからなので、2020年から大阪万博が開催される2025年までを目標にしています。そのときはLGBTや障がい者だけに限らず、どんなマイノリティの方でも受け入れられる形に持っていきたいですね。

──康先生が行政書士になってよかったと感じるのはどのようなときですか。

 行政書士の資格を取ってから、まったく違う人生になりました。多くの方が、行政書士の資格を取ったら最初はひとりでスタートされると思いますが、何も知らないところでゼロから営業も経理も文書作成も役所に行くのも自分でやらなければなりません。本当に大変なことがたくさんあります。でも月並みですが、「ありがとう」と言ってもらえるやりがいがあります。それに私の中では、ご相談や講演の後に「すごくわかりやすかった!」と言われるのが一番うれしいんです。もちろん、楽をしようと思えば楽もできてしまいます。でも、がんばったらがんばった分だけ返ってくる仕事です。

──行政書士をめざしている方にアドバイスをお願いします。

 私は本当に勉強面では努力する才能がなかったのですが、そんな私でも最後の最後にお尻に火がついて何とか合格できました。これからの世の中、行政書士の資格を持っているからといって、行政書士らしい仕事だけをする必要はないと思います。行政書士という資格は他の資格に比べてすごく自由で業務の幅が広いので、それをとっかかりにいろいろなことに関われます。私のように行政書士を仕事にしながら、自分がやりたかったことにも関われるので、合格する前とは人生の幅がまったく違ってきます。
 今は勉強がしんどいかもしれませんが、最初に資格を取ろうと思ったあの日の気持ちを思い出して、もうひとがんばりしてみてください。

[TACNEWS 2019年5月号|特集]