特集 公務員試験合格者に聞く、合格の秘訣
第2部外務省専門職編

  

世界的な視野で日本の国益を考え、外交を支えたい

 外務省専門職とは、外交の最前線で活躍する、地域・言語・専門分野のスペシャリストのこと。国際関係の縮図の中で、世界の動きを肌で感じながら日本の外交を支えています。今回は、2018年度外務省専門職員試験に合格したTAC・Wセミナーの先輩3人に、試験に挑戦しようと思ったきっかけや、入省後にやってみたいことなどを語っていただきました。

※WセミナーはTACのブランドです。

左から
■松山 みいな(まつやま みいな)さん 大阪府出身、東京外国語大学 国際社会学部(在学中合格)
(総合本科生/教室・個別DVD講座+Webフォロー)
受験語 : 英語
外務省での研修語 : 英語

■鈴木 真結(すずき まゆ)さん 東京都出身、早稲田大学 法学部(在学中合格)
(総合本科生/教室+Webフォロー)
受験語 : 英語
外務省での研修語 : フィリピノ語

■村上 元(むらかみ げん)さん 愛媛県出身、慶應義塾大学 法学部(卒業)
(総合本科生/教室・個別DVD講座) 受験語 : 英語  外務省での研修語 : ロシア語

国際社会で英語を駆使して活躍する外交官の姿に魅力を感じた

──外務省専門職をめざした理由を教えてください。

松山 高校2年生の時に交換留学でアメリカに行き、ロシア出身の留学生仲間ができました。それまでロシアに対しては「遠くて暗い国」というイメージしか持っていなかったのですが、その留学生仲間と生活を共にして初めて「ロシアの人も笑う」といった当たり前のことが理解できました。反対に、世界の中で日本はどんなイメージを持たれているのかも感じることができ、もっと相互理解を深め、その上で日本のために働いてみたいと思うようになりました。そこで、外務省専門職試験の合格者を多く輩出している大学を探して進学し、大学時代は「外交官になる」という目標を掲げて過ごしました。

村上 高校3年生の時に、自分の進路を考える上での参考にしようとあらゆる分野の本を読みました。その中に元外交官の方が書いた本があったのですが、国際社会で外国語を駆使して活躍する姿に強い魅力を感じました。また、自分の知らない言語や文化を学んでみたいという気持ちから、ロシアについて深く知りたいと思うようになりました。そこで、大学時代に長期留学も含め3回ロシアに行き、日本とロシアの関係をよりよいものにしていく外交官になりたいと考えるようになりました。

鈴木 漠然とですが、小学生の頃から、困っている人たちを助ける仕事がしたいと思っていました。大学に入ってからは、バックグラウンドの違う人々と信頼関係を築くことに充実感を覚える自分に気づき、外務省専門職なら日本の国益を考えながら、世界の国の人たちと協力して弱い立場にある人のために働けるのではないかと考えるようになりました。そこで、外務省専門職試験に挑戦することに決めました。

──勉強を始める際に、TAC・Wセミナーを選んだ理由をお聞かせください。

松山 試験に合格した大学の先輩のほとんどがTAC・Wセミナーに通っていたので、大学2年生の2月から通い始めました。

村上 交換留学でロシアに行っていた大学3年生の時、留学先からインターネットで検索して、合格実績などを確認したところ、TAC・Wセミナーが最も有力な選択肢だと感じたので申し込みました。

鈴木 TAC・Wセミナーの校舎が大学から歩いて3分という点にもひかれ、大学2年生の3月に申し込みをしました。

──実際に勉強を始めてみていかがでしたか。ご自身の生活と受験勉強の両立で悩んだり、モチベーションが下がったりすることはありませんでしたか。

松山 民間企業への就職活動はせず、外務省専門職試験一本に絞っていたので悩むことはほとんどありませんでした。TAC・Wセミナーの先生や先輩方が敷いてくれたレールに乗ったという感じです。

鈴木 私の場合は松山さんと逆で、就職活動をするか外務省専門職一本に絞るかギリギリまで迷いました。そこで、大学3年生の時にいくつか民間企業のインターンに参加してみたのですが、民間企業では「顧客」という限られた人たちにしかサービスを提供できないことに物足りなさを感じてしまいました。自分はやはり、制限を受けてやりたいことができずに困っている多くの人たちの力になりたいんだ、ということが再確認できたので、3年生の10月からとスタートは遅くなってしまいましたが、受験勉強に本腰を入れることができました。

村上 私は大学4年生の夏に外務省で1ヵ月間インターンを経験しました。国を横断して日本の外交を見るという課題で、ロシア担当として情勢を分析してプレゼンテーションを行いました。詰めの甘い部分などは容赦なく指摘されたのですが、「ロシアの専門家」として扱ってもらえて、自分が働くイメージが持てたことが勉強をがんばるモチベーションになりました。

──TAC・Wセミナーではどのように勉強を進めていましたか。良かった点や工夫した点もあれば教えてください。

松山 外務省専門職の教材は量が多くて持ち運びが大変なので、自習室とロッカーをフル活用していました。だいたい朝8時から夜9時半までは自習室で勉強、終わったら教材をすべてロッカーに入れ、家では寝る生活です。校舎に行くと外務省専門職だけでなく他の資格の受講生もたくさん勉強しているので、「自分もやるぞ」という気分になれました。

鈴木 私は実家が校舎や大学から遠かったため、Webフォローを使って主に自宅で勉強していました。声に出すと記憶できるタイプなのでよく音読をしていましたね。答練(答案練習)をペースメーカーにし、模範解答と答案構成をセットで手に持って音読し、頭に叩き込んで覚えるようにしていました。

試験制度の変更で気をつけたこと

──平成30年度試験から、第1次試験の専門試験(記述式)の3試験科目のうち、国際法のみが必須となり、憲法、経済学については、いずれかの科目を選択する方式に変わりました。みなさんはどのように専門試験の選択科目を選びましたか。選ぶ上でのポイントを教えてください。

村上 私は経済学を選択しました。実は経済区分受験ができる国家総合職も併願しており、両方の勉強をすると効率的だと講師からアドバイスを受けたためです。実際に勉強してみると、国家総合職の経済区分は学習範囲が広く、外務省専門職の経済学は学習内容が深いので、互いに補完しながら理解ができました。

松山 私も最終的には経済学を選びました。経済学は勉強すればするほど新聞の内容も理解できるようになり、楽しかったからです。それでも、科目選びで失敗するのは怖いと思い、年内までは3科目すべてを平行して勉強していました。

鈴木 私は憲法を選びました。本番で緊張してしまっても実力が発揮できると思ったからです。先生からも「制度変更の狙いは、より専門的な人材を集めること」と聞いていたので、法学部出身で憲法を学んできた私はその趣旨に沿っている、と自信を持つことができました。

──担任講師制度や合格者アドバイザー制度について、TAC・Wセミナーならではの魅力を教えてください。

鈴木 主に自宅で勉強していたので大学にもTACにも仲間がいなかったのですが、月1回の井能先生のカウンセリングが大きな励みになりました。井能先生は最初にカウンセリングシートを見て、まず「基礎能力いいね!」などと、がんばった点をほめてくださるので、私も「次は先生の『国際法いいね!』」を引き出そう」と決めたりして1ヵ月間モチベーションを維持することができました。

村上 経済学の先生には特に助けられました。不安に思っていた時期も「村上くんは研修語、ロシア語になれると思うで」とズバッと言ってもらえたのがありがたかったですね。社交辞令ではなく、心からの言葉をもらえるので信頼していました。また、業務時間外にも関わらず、面接前に電話で激励してもらったことも忘れられません。

松山 合格者アドバイザー制度もよかったです。前年度に外務省専門職試験に合格したTAC・Wセミナーの先輩方が月に1回ホームルームを開いてくれるのですが、立場的に一番近い人の体験に基づく話を聞くことができて助かりました。答練の時のタイムマネジメントや筆記試験対策など、この時期は具体的にどんなことをしていたかという体験談を教えてもらえたので、ゼロから勉強法を探す時間を短縮できましたね。TAC・Wセミナーが合格者を多数輩出しているからこそ受けられるサービスだと思います。

一人ひとりの個性や強みを見極めアドバイスをくれる人物試験対策

──TAC・Wセミナーの人物試験(面接)対策の強みは何だと思いますか。

鈴木 先輩の体験談が豊富にある上に、講師の側にも、これまで教えてきた受講生たちがどんなバックグラウンドを持っていて、どんな対策をして合格してきたのかというノウハウの蓄積があるので、その両方を活用できるのは強いと思います。私の場合は、「長期留学経験がない」「大学で法律を勉強している」といった自分と近いバックグラウンドを持った先輩の体験談を参考にし、入省してからのやりたいことを言語化することができました。さらに、それを伝えた模擬面接の場では、先生から「あなたのやりたいと言ったことは外務省ではなくてもできる」「それは他の人と被るからテーマを変えたほうがいい」など率直なアドバイスをもらうことができました。そのおかげで、「広報文化活動に取り組みたい」という自分の意欲に気づくことができました。

松山 本当の意味で受講生のためになるアドバイスがもらえる点だと思います。私の場合、ロシア語を志望していたのですが、ロシアに長期留学経験のある村上さんと興味のある分野が同じだと選考上不利になってしまうのではと思い、あえて被らないテーマを面接カードに書き込んだんです。すると、井能先生から「これ、本当に松山さんがやりたいことなの?」と突っ込まれてしまって。もしそのまま、やりたいことと違うことを書いていたら本番の面接で深く聞かれて答えに窮するところでした。たとえ他の受講生と興味のある分野が被っても、自分らしさが出せるような方向にサポートしてもらえたので感謝しています。

村上 先生方は受講生のことを本当に細かくよく見ていてくれるので、厳しいことを言われても素直に受け取って改善しようと思えました。それがよかったですね。

──大学1、2年生のときはどのようなことをして過ごしていましたか。やっておけばよかったと思うことがあれば教えてください。

松山 初めから外交官になるつもりで大学に入ったので、長期留学などはあえてせずに情報収集や受験勉強に時間を使っていました。やっておけばよかったと思うのは、読書です。大学1、2年生の時は部活に力を入れて本を読む時間がとれませんでした。外務省に入りたいなら、教養はとても大切です。直接外交に関わる・関わらないは問わずいろいろなことに触れ、その中から興味のあることにチャレンジしておくといいのではないでしょうか。

鈴木 大学在学中に台湾からの留学生との言語交換プログラム(留学生との交流)や海外旅行、民間企業でのインターンなどを経験することができ、外務省専門職をめざす覚悟ができたと思います。やっておけばよかったと思うのは英語の勉強です。大学受験で燃え尽きてしまって大学1年次はほとんど英語の勉強をしなかったので、2年生になってとても焦りました。英語は積み重ねが大切なので、少しずつでもいいから勉強しておくべきです。また、いろいろなことをやってみて、そのあと「やりっぱなし」にしないことも重要だと思います。そこから何を学んだか、どう成長したかをノートに書いておき、言語化しておくといいですね。

村上 いろいろやってみた上で、これからもずっと関わっていきたいと思えたのがロシア語と外交官の仕事なので、やり残したことはないですね。また、社会人のフットサルグループに混ざって運動したことも、いい息抜きになりました。外交官をめざす人にやっておいてほしいのは、旅に出ることです。留学など、学びそのものが目的でなくても、ただ外に行くだけでも十分だと思います。どんどん世界に飛び込んでいってほしいです。

専門性を持ち人間的にも魅力的な外交官になりたい

──4月からはいよいよ外務省に入省です。どのような仕事をしてみたいですか。

鈴木 フィリピノ語が研修言語なので、フィリピン共和国に関わることになると思います。やってみたいことは大きく2つあって、まず1つはODA(政府開発援助)です。フィリピンは都市化が進んでいますが、依然として広大なスラム街があり貧困は大きな問題です。将来、日本に外国人労働者として働きに来る人たちの人材育成に関われたら、と考えています。もう1つはフィリピンと日本の広報文化外交です。フィリピンの人たちは歌やダンスがとても上手で、日本でもフィリピン出身のアーティストが活躍しています。そのことをもっと知ってもらうため、ポップカルチャーのイベントを企画してみたいと思っています。実現したいことがたくさんあるので、できるだけ早く裁量ある仕事を任せられるようになりたいですね。また、自分がやっていることが国民一人ひとりに還元されるものかどうか、日々考えしながら仕事をしていきたいと思います。

松山 私の研修言語は英語で、特定の地域に限定されない言語なので、いろいろなことにチャレンジしてみたいと思います。どんな場所に行っても「日本をよりよくする」という気持ちを持って仕事をしていきたいですね。今からワクワクしています。また、外務省の先輩は、高い専門性を持ちながら人間的にも魅力的な方々ばかりです。少しお話ししただけで、大変な現場をくぐり抜けて来たことがわかります。話す言葉もしっかりしていて、仕事に誇りを持っているところも憧れます。私も、常に知識をアップデートして後輩たちから尊敬してもらえるような存在になりたいと思います。

村上 研修言語はロシア語になりました。学生時代からロシア語を勉強してきたので、ロシア語の通訳になりたいと思っています。外国語の専門家になるには激しい競争を勝ち抜く必要があります。これまで以上に勉強を重ねて、ロシア語やロシア人の考え方に詳しくなるつもりです。その上で、日本とロシアの新しい関係や歴史を築く1人に、将来的にはなっていきたいと思います。過去の歴史的問題など、課題はたくさんありますので粘り強く交渉や対話を重ねていきたいです。

──最後に、外務省専門職をめざす『TACNEWS』読者に、メッセージをお願いいたします。

村上 今、大学卒業者の就職率は上昇が続いていて、簡単に就職が決まる時代と言われています。でも、「やりたい」と思うことは人それぞれ違います。外務省専門職の仕事はとてもチャレンジングなので、めざすものが少しでもある方は、ぜひ挑戦してみてほしいです。

鈴木 人と比べないことが大切だと思います。私は長期の留学をしたことがないし、帰国子女でもありません。「本当に受かるんだろうか」と不安な気持ちが大きかったです。でも、長期留学をしなかったからこそできたことがたくさんあります。「今の自分だからできたこと」をアピールして、自信を持って取り組んでください。

松山 私はずっと外交官になりたいと思っていたので、外務省に入るためだと思うと勉強も楽しんですることができました。受験勉強を始める前は「外交官になりたい」という夢を語るだけしかできませんでしたが、勉強を始めると、1つずつステップが積み上がっていくようで嬉しかったです。ただの勉強だと思うと苦しくなってしまいがちなので、前向きになれる考え方を用意しておくといいと思います。

──外交という仕事への情熱や向上心が伝わってくる座談会でした。みなさんの世界各国でのご活躍をお祈りしています。

[TACNEWS 2019年2月号|特集]