特集 理系公務員試験合格者に聞く、合格の秘訣

能登 亮佑さん
Profile

左から

■津田 崚平(つだ りょうへい)さん

埼玉県出身、芝浦工業大学工学部卒業 (土木職本科/渋谷校)
内定先:国立大学法人等(新潟大学)


■金子 明美(かねこ あけみ)さん

東京都出身、星薬科大学大学院卒業 (技術職本科生(教養)/渋谷校)
内定先:特別区Ⅰ類 衛生監視(衛生)


■五十嵐 隆裕(いがらし たかひろ)さん

千葉県出身、日本大学理工学部卒業 (機械職本科生/通信講座)
内定先:東京都Ⅰ類B 機械(※前倒し採用で2018年1月.港湾局勤務の予定)

国や自治体において、各分野の専門技術者として活躍する理系公務員(技術職)。土木、建築、機械、化学、電気・電子・情報など、多彩な場面で活躍しながら暮らしやすい社会づくりをめざします。今回は、2017年度の理系公務員試験を突破した3名のTAC受講生の方々に、内定までの道のりや受験勉強のコツ、将来の夢などを語っていただきました。

※当記事は2017年12月に取材しました。

自分の専門知識やスキルを、より多くの人のために活かしたい
民間企業で働いたことで本当にやりたいことを発見

──理系公務員をめざした理由について教えてください。

五十嵐 大学卒業後に新卒で入った会社で、航空機整備機材の設計などをしていました。仕事は楽しかったのですが、「もっとたくさんの人の役に立つ仕事がしたい」という気持ちも抱えていました。転機は社会人2年目の秋でした。休暇中にバイクで北海道までツーリングをし、キャンプをしようとしたところ水を買い忘れたことに気づきました。お店や自動販売機どころか水道も近くになかったため、やむなく川の水をペットボトルや砂でろ過したのですが、とても飲めたものではありませんでした。その時、いつでも使いやすく整えられた「水道」のありがたさを実感。人々の安全・快適な生活を支えるインフラづくりに関わりたいと理系公務員をめざすことにしました。

金子 私も薬学の大学院を卒業後、食品メーカーで品質管理の仕事に就いていました。専門性が活かせる上にやりがいもありましたが、急な休日出勤が多くプライベートな時間を持てないのが悩みでした。また、取引先は企業が多かったため、商品を購入したお客様の反応を直接見ることができないことも物足りなく感じていました。私には行政で衛生監視の仕事をしている友人が何人かいて話を聞いたのですが、完全週休二日制でメリハリをつけて仕事ができることや利用者の方々と直接やりとりできることに魅力を感じ、受験を決意しました。

津田 大学時代は応用化学を専攻し、卒業後はシステムエンジニアとして民間企業に勤務していました。たまたま仕事で測量やGPSについて調べてシステムに組み込むことがあったのですが、そこで土木のおもしろさに開眼。自分が学んで楽しむだけでなく、得た知識を世の中の人のために使いたいと感じ、転職を決めました。

担任講師制度は直前期と面接期間中にフル活用

──受験をするにあたってTACを選んだのはなぜですか? 受講を始めた時期や、どのように仕事と勉強のバランスをとっていたかも教えてください

五十嵐 TACに資料請求をしたのは、北海道のキャンプから帰ってきた次の週だったと思います。調べてみると機械職に強いこと、受験情報が豊富だということがわかり、社会人2年目の3月にTACの通信講座を受講しました。しばらくは仕事と受験勉強を両立させようと努力してみたのですが、私はひとつのことにしか注力できないタイプなのでうまくいきませんでした。そこで、社会人3年目の夏に退職。3~4ヵ月ほどエンジンがかからずにいましたが、2016年の年末に千葉県庁の説明会へ参加したのを機に本腰を入れ、勉強に集中することができました。

金子 私がTACに資料請求したのは受験する前年の、2016年の9月です。校舎がたくさんあり、駅から近くて通いやすい点が良かったです。会社にはなるべく迷惑をかけないよう、同じ年の12月には仕事の引き継ぎにかかる時間などを算出して自分なりにスケジュールを組み、年明けの2月末に退職しました。TACには2017年の2月から通い始めましたが、勉強に専念できたのは3ヵ月足らずだったので、時間はあまりなかったですね。そこで平日は毎日校舎に通って勉強に集中し、週末だけ息抜きをするようにしていました。

津田 社会人2年目の2月末にTACの無料講座説明会に参加しました。他の受験指導校とも比較をしてみたのですが、土木の科目が最も充実しているのがTACでした。私の場合は土木を初めて勉強するので、基礎からしっかり教えてくれるところがいいと思い、TACを選びました。受験勉強を開始したのは、社会人3年目の4月からです。勉強だけに専念するのは不安があったので、会社に交渉してシステムの監視を行う夜勤の仕事に変えてもらいました。そして、夕方にTACに通ったあと、仮眠を取りつつ夜通し仕事、という生活を8ヵ月ほど送っていたのですが体調を崩してしまいました。そこで3月末に退職し、その年の5月から受験がスタートしました。

──担任講師制度はどのように活用していましたか?

五十嵐 私は通信講座を受講していたので、担任講師制度を利用していいのかすらわかりませんでした。最初はおそるおそる「通信生も質問していいですか?」と聞きましたね(笑)。最初に担任の和田高雄先生に相談したのは、3月の直前期。面接対策をどうしようか悩んでいたのですが「1次試験に受かってからで大丈夫。面接はスキマ時間を使って準備しよう」とアドバイスを受け、その通りにしました。和田先生は「面接・本試験情報復元シート」以上の膨大な情報をお持ちで、とても頼りになる存在。受験勉強の進め方や併願先について、面接対策などいろいろなことを相談しました。多いときは2週間に1回はお会いしていて、それがいいペースメーカーになっていました。

金子 私も担任の和田先生には大変お世話になりました。面接が始まる6月下旬から、多い時は週に2~3回相談していました。混んでいてなかなか予約が取れない時は、校舎の近くのコンビニで偶然会った和田先生に直談判して空いている時間を少しもらったりもしました。先生、あの時はゴリ押ししてすみませんでした(笑)! 和田先生が予想した質問は、実際の面接でもいくつか同じことが聞かれたのでびっくりしましたね。

津田 私も担任の和田先生には本当に感謝しています。1次試験の合格が出たあと、面接カードの添削をしてもらったのですが、私のうまくまとまらない「思い」を辛抱強く聞き取って整理してもらえたことが忘れられません。先生とお話をするたびに土木に関わりたいという気持ちがさらに強くなり、仕事を通して実現したいことも具体的になっていったように思います。

面接では、実際の仕事を意識して話すように

──受験勉強はどのように進めましたか? 重点を置いた分野などを教えてください。

津田 先ほどもお話しした通り、土木は初学だったのでひたすらTACのテキストと過去問を解き、実戦力がつくようにしました。また、教養科目は数的処理と文章理解に重点を置き、資料解釈に関しては後回しにして時間がある時にやるようにしました。苦手な現代文や英文は必ず1日1回は触れるようにして、直前期は特別区や都庁で出題される時事問題の対策もしました。

金子 教養科目はほとんどTACの教材でカバーできると思ったので、特に数的処理や文章理解、英文を中心に勉強しました。専門科目に関しては、大学時代の友人から専門分野の参考書などを借りて独学で行いました。また、勉強期間が短く、教養や専門に力を入れたかったので、論文は模試のみでの対策にしました。ただ、本番で予想もしなかった論文テーマが出て焦ったことがあるので、時間がある人は模試以外にも添削課題を出して論文慣れをしておいたほうがいいと思います。

五十嵐 私の志望先の場合、数的処理で8~9割の点数が取れれば大丈夫という確信があったので、とにかく数的処理の対策だけしました。ただ、リスクもあるのですべての人にはおすすめできないですね。

──TACの面接対策で、印象に残っていることがあれば教えてください。

金子 模擬面接は担任の和田先生だけでなく、他の先生やTACの職員の方にも面接官役をしてもらえるので、本番のような緊張感を持って練習することができました。印象に残っているのは、「区の職員として対応をしている想定で話そう」というアドバイスです。私は聞かれたことについてたくさん話してしまうタイプなのですが、「住民や利用者の中には、説明を詳しく聞きたい方と、簡潔に要点だけ知りたい方がいる」という話を聞き、相手のニーズにあった伝え方の重要性に気づくことができました。本番の面接はもちろん、これからの仕事でも役立つと思います。

津田 私も、模擬面接は10回くらい経験しました。自分でストーリーを作って模擬面接に臨み、終わったあとにTACからもらった評価シートを見て足りない箇所を修正して次回に活かす、ということを繰り返し、内容をよりよいものに更新していくことができたと思います。つい、「土木に関わりたい」という気持ちが先走ってしまうのですが、「それぞれの自治体がどんな仕事をしていて、どんな人を求めているのかを理解することも大切」というアドバイスは参考になりました。また、私は自分の思ったことをストレートに言ってしまう癖があるのですが、「オフィシャルな場ではある程度忖度(そんたく)をすることも必要だよ」と言われ、その通りだと実感しました。今後も周囲と良い関係性を築く上で注意していきたいと思っています。

五十嵐 模擬面接は1回だけでしたが、事前準備のために読み込んだ「面接・本試験情報復元シート」が本当に役に立ちました。自分と同じ志望先の先輩が多く掲載されているので、それを参考に自己分析と情報分析を繰り返し、志望理由や自分が実現したいことを明確にすることができました。

地域との連携を深め利用する人が笑顔になるような仕事をしていきたい

──これから公務員として新たな生活が始まります。どのようなことを実現したいか、思いを聞かせてください。

津田 新潟大学の研究室付きの職員となり、器具の準備、実験・実習の補助、実験設備や実験室の保守などを行います。基本的には教授のサポートですが、学生に直接指導をすることもあります。さらに、職員でも研究発表を求められるので、テーマを決めて深めていかなければなりません。また、夏季や冬季の休み期間中は、地域の小・中学生対象のワークショップなどの企画や運営があります。年間を通じてやることは盛りだくさんですが、いつ何をやるかが事前にわかっているので、メリハリをつけて仕事ができそうです。学生はもちろん、地域、企業などさまざまな人たちと大学をつなぐ架け橋的な存在になれたらと思っています。また、新潟は親戚が多く幼い頃から馴染みのある土地なので、生活の拠点を移すことにもワクワクしています。プライベートでは花火や雪などの風物を満喫したいですね。走ることが好きなので、マラソンイベントにも参加し たいです。

金子 江東区の生活衛生課で衛生監視員として働く予定です。衛生監視とは、食品関係施設や環境営業施設などに対する監視指導・調査、病原体などの検査、動物の保護管理などの業務で、人の健康な生活を守ることが目的です。私はこの仕事を通じて、江東区に住む人や通勤・通学をする人、観光に来る人すべての健康や安全を守っていきたいと思っています。衛生監視の仕事は、衣食住に関わるもの全般が対象になるのでとても幅広いです。学生時代に身につけた薬学、前職の食品に関する知識をフルに活かして、マルチに働ける衛生監視員をめざしたいです。また、江東区には2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックで行われる競技の会場となる場所が複数あり、訪れる人や新しく住む人が増えることが予想されます。区の発展のために、食品や公衆衛生という持ち場から力を発揮したいです。プライベートでは、生け花や着付けなどに挑戦してみたいですね。結婚や出産などでライフステージが変わっても、仕事を続けやすい環境を手に入れられたことをうれしく思っています。

五十嵐 私は前倒し採用で、2018年1月から東京都港湾局で働く予定です。港湾局では、東京港の整備・管理運営をはじめ、臨海副都心の開発、海上公園、水門・防潮堤などの防災施設や、島しょの港湾・漁港・空港及び海岸の整備・管理など、さまざまな事業に取り組んでいます。どこの部署に配属されるかはまだわかりませんが、高品質でスマート、次世代に長く使ってもらえ、関わる人が笑顔になるようなインフラを作っていきたいです。まずは港湾局で仕事を覚えることが第一ですが、将来的には水道の仕事もしたいです。退職した時に、孫に「おじいちゃんは、あれを作ったんだよ」と誇れるようなエンジニアになれたら本望です。

──最後に、公務員試験合格や資格取得をめざしている『TACNEWS』読者に、メッセージをお願いします。

五十嵐 試験勉強は、TACの教材をしっかりやりさえすれば大丈夫だと思います。大切なのは「志」です。生涯をかけてでもやりたい仕事とは何なのか、仕事を通じて社会をどう変えていきたいのか、自分ととことん対話をして突き詰め、それを面接で伝えてほしいです。やりたい仕事が見つからない人は、家や学校、職場から離れてみることをおすすめします。私の場合はツーリングに行ったことが直接のきっかけでしたが、前職の時の海外出張の経験や、試験直前期に小河内ダムを見に行ったことも大きな刺激になりました。ぜひひとりで、移動の時間も自問自答に使ってみてください。学生の方なら都庁のインターンに参加するのもいいと思います。1dayインターンシップや仕事を体験できるインターン、各種セミナーもあるので、興味のあるものに参加してみてください。

金子 五十嵐さんと似てしまうのですが、私も自分の足を使って情報を取りに行くことはかなり重要だと感じました。面接では、「職員としてその地域でどのように活躍したいのか、自分の言葉で伝えること」が求められます。私の場合は、インターネットの情報だけでは他の人と差がつかないと思ったので、国会図書館や区政会館の特別区コーナーに行って知識を頭に入れました。さらに、徒歩やコミュニティサイクルを利用して区を巡ってみることで新たな発見があり、それらを志望理由に反映することができました。もし、1次試験の点数が同じくらいの人が何人かいたら、面接で実体験を元にオリジナリティのある意見を言った人のほうが記憶に残るのではないかと思います。

津田 添削課題など、出すべきものは必ず出しましょう。簡単そうで、なかなか難しいことです。初めて勉強する科目がある人は、受験する前年の12月までには目処がつくくらいに内容を押さえておくと安心だと思います。そして、何よりも大切なのが健康です。知識を蓄えるのも、どんな仕事をやりたいかを考えるのも、体力が必要です。受験勉強中に自分が体調を崩してしまい、心からそう思いました。体に負担をかけるようなスケジュールは立てないこと、勉強中には適度に休憩を入れること、睡眠はある程度まとまった時間とること、などをぜひ心がけてください。心と体がちょうどいいバランスで勉強できる生活習慣を自分なりに確立できれば強いと思います。

──皆さんの今後のご活躍を楽しみにしています。本日はありがとうございました。


[TACNEWS 2018年4月号|特集]