特集 公務員試験合格者に聞く、合格の秘訣
第2部 外務専門職編

  

 外務省専門職員は、日本の国益を守るため国際社会を舞台に活躍する外交官です。外交官は主に「国家総合職試験」と「外務省専門職員試験」を経て採用されていますが、同じ外交官でも言語と地域のスペシャリストとして外交の最前線で日本外交に貢献するのが外務省専門職員。今回は、2017年度外務省専門職員試験に合格したTAC・Wセミナーの先輩3人にじっくりお話を伺いました。

世界と日本の架け橋になるために、広い視野を持ち続けていく

左から
■石黒 美柚(いしぐろみゆ)さん
東京都出身、慶應義塾大学 法学部(既卒)
(総合本科生/教室講座+Webフォロー)
受験語 : 英語
外務省での研修語 : 朝鮮語

■米倉 菜摘(よねくらなつみ)さん
東京都出身、中央大学 法学部(在学中)
(総合本科生/教室講座+Webフォロー)
受験語 : 英語
外務省での研修語 : ペルシャ語

■伊藤 直之(いとう なおゆき)さん
東京都出身、早稲田大学 法学部(既卒)
(1.5年総合本科生/教室講座)
受験語 : 英語
外務省での研修語 :チェコ語

日本に根を置きながらも言語と地域のスペシャリストになれる仕事

──外交官という職業を知ったきっかけや、めざそうと思った理由を教えてください。

伊藤 大学3年生の時にチェコ共和国の首都プラハにあるカレル大学に交換留学したのが大きなきっかけです。留学先を探している時に、現地の学生が日本語でプラハの紹介をしているテレビ番組を見て、歴史ある街並みに興味を持ちました。実際に行ってみると、中世からの古い建築物と近現代のものが混在し、街全体が美術館のよう。学生もヨーロッパ中から集まっていて多くの刺激を受けました。大学4年生の6月には帰国し、民間企業への就職活動を始めたのですが「チェコという国と関わる仕事がしたい」という気持ちを抑えることができませんでした。そこで、信頼する教授に紹介されて外務専門職という仕事を知り、めざすことにしました。

石黒 私は大学でアメリカの政治を専攻しており、学んだことを自分の目で確かめたいという気持ちから外務省のインターンシップに参加してワシントンに行きました。そこで初めて外交官の方と出会い、「自分もめざせるかもしれない」と思ったのです。それまで外交官という職業は知っていたのですが、「雲の上の存在」「帰国子女の人がなるもの」という勝手なイメージを持っていました。ところが、その先輩も国際政治を学んでおり、英語も自分で努力して身につけて外交官になったと聞き、親近感を抱くことができました。

米倉 最初のきっかけは、高校の時に世界史の授業でイスラムについて知ったことです。「なんだか怖い」という漠然としたイメージしかなかったのですが、1日5回もお祈りをする真面目な人たちに驚き、興味を持ちました。外交官という職業を知ったのは、大学1年のアメリカ留学中。一緒にディスカッションをしたアメリカ人の学生が外交官志望と聞き、「すごい職業をめざす人がいるんだなあ」と印象に残りました。本格的にめざすようになったのは、国際法の授業で外交官として活躍している大学の先輩の体験談を聞いてからです。この仕事なら、日本に根の部分を置きつつ、中東地域やイスラムのスペシャリストになれる、と思い挑戦することにしました。

友人の勧めで知ったTAC・Wセミナー。合格実績の高さに「ここしかない」

──勉強を始める際に、TAC・Wセミナーを選んだ理由をお聞かせください。

伊藤 大学4年生の11月に外務省の説明会に行ったのですが、「自分が就くべき仕事だ」と強く感じたのでその足でTAC・Wセミナーの無料講座説明会に参加し、すぐに申し込みました。TAC・Wセミナーは国家総合職をめざす友人が受講していて、「外務専門職をめざすことにした」と相談したところ勧められたので選びました。他と比較はしていません。一応パンフレットで料金は確認して、合格率の高さを見て「ここしかないな」と思いました。

石黒 友人が公認会計士をめざしてTAC・Wセミナーに通っており、勉強のしやすさや講師陣の熱心さについては聞いていました。私はインターネットで他と比較したのですが、TAC・Wセミナーは合格率が8割以上と桁違い。無料講座説明会でカリキュラムなどを確認し、「ここしかない」と大学4年生の8月から勉強を開始しました。

米倉 私もTACの合格者占有率を見て、無料講座説明会も体験講義も行かずに生協で直接申し込みました。

講師もロッカーも頼りになる存在。答練では伸びていく手応えを感じた

──Wセミナーのどのような制度を活用しましたか?良かった点も教えてください。

伊藤 担当講師制度を活用しました。経済学の中尾大志先生に月1回のペースでカウンセリングをお願いし、今勉強すべきものと後回しにしていいものをアドバイスしてもらいました。中尾先生は話しているだけで楽しく、頼れる存在です。二次試験終了後、個別面接で手応えをまったく感じることができずに不安な気持ちでいたとき、温かい励ましの言葉をもらったのもうれしかったです。

石黒 良かった点が多すぎて困るくらいなのですが、ふたつ紹介します。まずは、「ロッカー」です。私は必ず朝から渋谷校に行き、自習室でその日の勉強を終わらせていました。そして、教材をすべてロッカーに入れ、帰宅。自宅学習ではダラダラしてしまうので、「渋谷校で勉強し自宅では息抜きをする」とメリハリをつけることができてよかったです。もうひとつは、Web講義の2倍速機能です。特に教養は量が多いので、3時間の講義を1時間半で聴くことができるのは、時間の節約になる上に、聴き漏らさないよう集中力が高まり一石二鳥でした。

米倉 ロッカーは私もよく使いましたね。カウンセリングも月1回はお願いしていました。一番役に立ったと感じたのは、論文答練(答案練習)です。私がTAC・Wセミナーに入ったのは大学2年生の2月だったのですが、サークルが忙しくて勉強を始められたのが3年生の9月から。出遅れてしまったために知識がまったく足りず、最初はテキストを丸暗記して答練に臨んでいました。しかし、答練が終わる頃には引き出しが増えており、伸びていることが実感できました。

仲間とともに挑む面接対策。本番の待合室にもTAC・Wセミナー生が

──受験勉強中、モチベーションはどのように保っていましたか?

伊藤 「絶対にこの仕事に就く」と思っていたのと、民間企業の就職活動も終わっていましたので、あきらめるという選択肢はありませんでした。しかし、1回だけ勉強ばかりで嫌気が差したことはあります。10月の論文マスター演習の頃です。ある日、「今日は机に向かわない1日にしよう」と決め、朝から映画のDVDを5本くらい借りて観続けました。すると、やはり夜になって「丸1日勉強していない」という後悔に襲われ、次の日から勉強を再開することができました。

石黒 モチベーションが下がるということはほとんどありませんでした。むしろ楽しんでいたと思います。国際法や憲法、経済学の知識は外交官になるために必要なもの。ポジティブな気持ちで勉強できれば外交官に向いている証拠であり、仕事も楽しめるはず。そう思って取り組んでいました。

米倉 わたしはふたつのことをしていました。ひとつは手帳での進捗管理。1日の終わりに手帳を開き、その日勉強したこととその日の気分を簡単に記録していました。書きたくない時はあえて書きませんでした。あとから記録を振り返って、勉強がはかどった、またははかどらなかった理由を分析し、その後に活かしていました。もうひとつは友達と定期的に会う時間を持つことです。4月くらいまでは週1回は必ず友達と会う時間を作り、食事やお酒を楽しみました。息抜きはもちろん、民間企業への就職活動の話などを聞くことで、視野を広く持つことができました。

──苦手科目を克服した方法やおすすめ勉強法を教えてください。

伊藤 高校時代に国立大学をめざして受験勉強をしていたことと、法学部で法律の基礎を学んでいたこともあり、勉強していて苦手だと感じる科目はありませんでした。試験の出来はわかりませんが(笑)。経済学は初学でしたので不安はありましたが、やってみると楽しかったです。勉強法ですが、僕は数的処理を30分、次に経済学を60~90分というセットを最初に必ずやるようにしていました。集中力の限度が90~120分なので、ここにアウトプットする科目を当てるという作戦です。数的処理と経済学のセットをこなしたら、国際法などインプット中心の科目に取り組む、という流れでしたね。

石黒 法学部出身なので法律科目は好きでしたが、昔から数字が得意ではなく経済学に苦手意識がありました。ところが、TAC・Wセミナーで講義を受けると経済学は理論が重要、ストーリーを理解すればよいということに気づくことができました。そこから、先生のグラフの説明を自分でも再現できるよう注意してメモをとるように。講義後はメモを見ながら声に出して講義内容を復習し、他の人にも説明できるようになるまで精度を上げていきました。

米倉 石黒さんの勉強法、去年の自分に教えてあげたかった…。私も経済学が苦手で、本番までに克服できたとは言い難いです。答練が始まってから経済学の正しい勉強法を知るというくらい出遅れていたので、中尾先生と相談して3月に始まる任意のゼミで基礎の基礎からWebフォローもつけてやり直しました。ゼミで3周目をやったくらいでやっと、「ここは必須」というレベルがわかったと思います。実は、2017年度の経済学の試験問題は例年とは傾向が異なる内容のものでした。

伊藤 そうですね、前年とはまったく違いましたね。

米倉 今まで見たことのないタイプの問題が出て動揺しました。しかし、ゼミのおかげで「誰にとっても高得点を取るのは難しいはず、今書くことのできる精一杯を出そう」と仕切り直すことができました。

──TAC・Wセミナーの人物試験(面接)対策ではどのようなことを行いましたか?役立ったこと、気をつけたことなどを教えてください。

伊藤 面接対策の講義では、面接カードの記入方法や自己PRの方法まで細かい解説を聞くことができました。模擬面接や模擬グループ討議も本番さながらという感じでした。

石黒 過去に面接で先輩たちが聞かれた膨大な質問が冊子にまとまっているので、自分と似たような志望動機や経験の人が受けた質問を参考にして面接カードを作り込むことができました。グループ討議は受験番号から本番でどの人と同じ組になるか予測ができるので、事前にそのメンバーで集まって練習ができました。TAC・Wセミナーの受講生が多いからこそできる強みだと思います。

米倉 面接カードに書いた自己PRと、面接で受け答えをする自分がブレないように注意しましたね。「自分はこの長所を前に出していく」というのを、他の仲間からのアドバイスをもらいながら決められたのもよかったと思います。面接当日は待合室にたくさんTAC・Wセミナーの仲間がいたので、緊張を和らげることができました。

──大学1・2年生の時はどのようなことをしていましたか?やっておけばよかったと思うことがあれば教えてください。

伊藤 英語力をアップさせて留学をしたいと考えていたので、英語の授業に真剣に取り組むとともに、交流イベントに参加して留学生と積極的に話すようにしていました。また、1年間という短い期間ですが国際法研究会に所属し、国と国との紛争を解決する模擬裁判の大会出場も経験しましたし、サッカーサークルでは生涯の友人ができました。ただ、「もっと多くの地域を訪れたかった」と今になって思います。サマースクールや交換留学、旅行などで何度か海外に行くことができましたが、行って行き過ぎることはないと思います。

石黒 中学、高校で英語ミュージカル部に所属していたので、大学1年の時はダンスサークルの活動に打ち込みました。2年生以降は国際交流サークルに入って留学生と英語で会話できるイベントを企画したり、IT企業のインターンでサイトやアプリの開発をしたりしました。英語の塾講師とパン屋さんの接客のアルバイトも経験しました。自分の向き・不向きを学生のうちに理解しておきたかったので、なんでもやってみようという気持ちでいました。やっておけばよかったことは、私も伊藤さんと同じく旅行ですね。アジアには行きましたが、もっと遠いアフリカなどの国を、学生のうちにこの目で見ておきたかったなと思います。

米倉 国際関係に興味があったので、大学1年生の時はアメリカに留学し、大学2年生の時はゼミでミャンマーに行きました。ミャンマーでは「元国内避難民の恐怖体験とPTSDの罹患可能性に関連性はあるのか」というテーマで、国内避難民だった当事者の方に会って調査を行いました。他にも、国連大学のプログラムに参加するなど、興味を持ったことには自分からアクセスするようにしていました。心残りがあるのは、中東へ旅行ができなかったこと。そして、英語の勉強をもっとしておけばよかったと思います。

40年という長いスパンで日本と相手国の関係発展に尽くしたい

──4月からはいよいよ外務省に入省です。どのような仕事をしてみたいですか?

伊藤 経済の知識を深めていきたいと思います。将来的には経済の専門家となり、自由貿易を推進できるような経済外交に携わりたいです。また、今年は日本とチェコの国交回復60周年という記念の年です。僕がこれから40年、外交官として勤め上げ、退官する頃には100周年になります。その頃には日本とチェコの関係がより深いものとなり、伊藤の力が「ここまでこれたのも、あったから」と周囲の方に言ってもらえるような仕事を、生涯をかけてしていきたいと思います。

石黒 朝鮮半島を含む安全保障の分野で活躍していきたいです。難易度が高く責任が重い仕事なので、期待に応えていきたいと思っています。また、組織の中で貢献しつつ、私個人も夢や目標を持って仕事をしていきたいです。まずは人間的な魅力を磨いていきたいですね。将来的には、次世代の人たちにいい影響を与えることができる存在になりたいです。私自身、外交官の先輩や企業で働く人々などたくさんの人にお世話になったので、あとに続く人達に大切なことを伝えていきたいです。

米倉 研修語がペルシャ語なので、イランが専門地域になる予定です。イランについてはまだ知らないことが多いので、国のことを理解していきたいです。言語、歴史、近隣諸国とのつながりなどを吸収するために、常にアンテナを張っていくつもりです。将来的には、まずは日本とイランの距離が縮まるような文化交流事業などに関わっていきたいです。次のステップとしては、イランに進出したい企業をサポートするといった対イランの経済外交もやりたいと思っています。イランは、日本人にとって身近ではないけれど大事な国です。私が退官するまでに、日本人がイランに対して良いイメージを持てるように尽力したいです。

──最後に、外交官をめざす『TACNEWS』読者に、メッセージをお願いいたします。

伊藤 言語と地域のスペシャリストになることができるのが外交官の魅力だと思います。専門性を深めたいと思っている人、世の中を良くしたいという志がある人は、この仕事を通してチャンスがたくさんあるはずです。がんばってください。

石黒 安全な社会で生活できること、TAC・Wセミナーに通うことができるほど経済的に余裕があること、当たり前に思えますが実はとても恵まれています。この環境に生まれることができたからこそ、責任を持って挑戦してほしいです。

米倉 受験を通して感じたのは、外務専門職は努力が比較的実りやすい試験であるということです。TAC・Wセミナーにいれば、努力の方向性も見えやすいので信じてついていってください。努力できることも外交官の適性です。努力をアピールする機会として、ぜひ受験勉強を利用してほしいと思います。

──努力を続けてきたからこそ語ることができる体験、受験生にとって大いに参考になりそうです。日本の代表として世界各国でのご活躍をお祈りしています。ありがとうございました。

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