特集 公務員試験合格者に聞く、合格の秘訣
第1部 国家総合職編

  

 政策立案、法案作成、予算編成など、国の中核を担う官僚(キャリア)としてダイナミックな活躍が期待される「国家総合職」。今回は2017年度の国家総合職試験で合格を勝ち取り、2018年春から入省するWセミナーの内定者3名に、キャリアをめざしたきっかけやおすすめの勉強法、今後どんな仕事に携わりたいかなどを、膝を交えて語ってもらいました。

※WセミナーはTACのブランドです。

省庁での仕事を通じて、より良い社会を実現したい

左から
■福田 一郎(ふくだいちろう)さん
鹿児島県出身、早稲田大学法学部(既卒)
(2年法律本科生/早稲田校/教室講座)
受験区分 : 大卒法律
内定先 : 厚生労働省

■大出 迪子(おおいでみちこ)さん
東京都出身、東京外国語大学国際社会学部(既卒)
(経済本科生/Web+音声DL通信講座)
受験区分 : 大卒経済
内定先 : 農林水産省

■加藤 雄貴(かとうゆうき)さん
神奈川県出身、慶應義塾大学経済学部(在学中)
(政治・国際本科生/渋谷校/教室講座)
受験区分 : 大卒政治・国際
内定先 : 外務省

総合的に力をつけ、大きな舞台で活躍できる。それが国家総合職という仕事

──国家総合職をめざした理由について教えてください。

青山 9歳から15歳までアメリカで暮らしていた経験から、英語を活かせる外交官の仕事に興味を持っていました。国家総合職を志望するようになったのは、大学3年生の時です。大学のプログラムで2年間フランスに留学し、日本の良さを世界に発信したいと強く思うようになりました。また、何かのスペシャリストになるよりも、総合的に力をつけて活躍したい気持ちがあり、国家総合職として外交官をめざすことにしました。

福田 「正義のために戦いたい」と思っており、大学2年生まで考えていませんでした。ところが、いろいろな方のお話を聞いたり、警察庁のインターンシップに参加したりするうちに、政策を通じて人々を守ることのできる国家公務員の仕事のほうが自分に合っているのではないかと思うようになりました。それで、国家総合職を志しました。

大出 大学4年生の時、他省庁の専門職に内定していました。それが自分に合っていると思い込み、他を調べもせずに受験したのですが、秋頃になると「視野が狭かったのではないか」とモヤモヤしてしまいました。それで、もっとたくさんの省庁を見て、自分が納得できる場所へ行こうと内定を辞退。大学を卒業してから国家総合職試験を受けることにしました。

官庁訪問までサポートしてくれるTAC・Wセミナーなら情報量で勝ち抜けると確信できた

──受験するにあたってTAC・Wセミナーを選んだ理由をお聞かせください。

加藤 私が受験した政治・国際区分の対策講座が他の受験指導校にあまりなかったこと、そして、無料講座説明会のわかりやすさが決め手になりました。それまで国家総合職試験について何も知らなかったのですが、試験制度から官庁訪問まできめ細かく説明してもらえたこと、特に1次試験の基礎能力試験でどの科目をどのくらい得点すればよいかまで分析されていることに驚きました。官庁訪問は、ある意味で情報戦です。ガイダンスだけでこの情報量なら、TAC・Wセミナー以外の選択肢はないと思いました。

福田 友人がTAC・Wセミナーに行くというので興味を持ったのがきっかけです。Webでも受講できると聞き、自分のペースで勉強したい僕には合っていると思いました。教室講座にはしていましたが、実際に受講したのはほぼ大学のパソコンルーム。一緒に入会した友人の話から全体の講義進度を把握しつつも、自分が気になる箇所を好きなだけ学習できるのがよかったです。

大出 私も先輩や友人でTAC・Wセミナーに通っていた人が多かったことと、官庁訪問のサポートまで手厚いと聞いて入りました。

──受験期間を振り返ってみて、苦労した点や工夫したことはありますか?おすすめの勉強法もあればぜひ教えてください。

加藤 私が勉強を始めたのは、オリンピックの開催時期。勉強のために深夜まで起きていたのについオリンピックを見てしまう、という悪循環からなかなか抜けだすことができませんでした。年末くらいから本当に焦り始め、覚悟を決めて自宅学習に励みました。工夫したのは息抜きです。集中力が長時間続かないタイプなので、3時間の講義を1.8~2倍速で聴き、そのあとは音楽を聴いたりゲームをしたりしてリラックス。満足したらまた講義に戻るようにしていました。また、海外の重要人物の名前はカタカナだけだと覚えづらいので、人物画像、アルファベット表記の名前、その人の国の言語での名前表記とセットで記憶するようにしていました。顔写真をネットで検索しながら、「ユニークな顔をしているなあ」などと感想をつぶやくとより定着しやすかったです。

福田 私もインターネットの誘惑に打ち勝つのに苦労しました。 本格的に勉強を始めたのは大学3年生の夏以降だったのですが、年明けに勉強の見通しがついて気が緩み、ダラダラと動画サイトを見続ける時期が続いてしまったことがあります。私は加藤君以上に集中力が続かないタイプだったので、3時間の講義を倍速で1時間半に設定し、45分受講したら休憩、また講義に戻る、というようにしていました。他に、同じく国家総合職をめざしてTAC・Wセミナーに通う友人と食事に行って励まし合いました。勉強法に関しては、自分は知識量で勝負するタイプなので、判例や条文をできるだけ多く読み込むようにしていました。

大出 TAC・Wセミナーには最初の内定先に行くか悩み始めた大学4年生の冬に入りました。実際に勉強を始めたのは、年明けの2月からです。1次試験まで本当に時間がなかったのですが、留学で1年卒業を遅らせている上に既卒での受験のため、絶対に今年度で試験に合格しようと決意していました。国家総合職試験で重視されているのは基礎、特に経済区分は7割が基礎だと過去問を見てわかったので、基礎固めと問題演習を意識して勉強していました。モチベーションの維持で役立ったのは、各省庁の説明会への参加です。あらゆる政策立案に携わっている職員さんに直接会い、刺激を受けることができました。

──民間企業への就職活動は行いましたか?

福田 面接慣れのために少しだけ行いました。学生時代のエピソードを話す機会が多かったのですが、国会議員インターンシップに参加したことや、インターンシップで出会った人といじめ相談をインターネットで受け付けるプロジェクトに携わったことなどに興味を持ってもらえることが多く、2次試験の人事院面接や官庁訪問の参考になりました。

大出 説明会だけは何社か行きました。よく「お客様に向けて」という言葉が出てくるのですが、その中に「お金はないけれどそのサービスを必要としている人」は入っていないと感じました。そこから、民間企業では難しいけれど、国家公務員としてならサービスを必要としているすべての人に届けることができるのではないか、と気づくことができました。

加藤 私は民間企業でやりたいことを見つけられなかったので、就職活動はしませんでした。国家総合職に不合格だった場合は、大学院に進んで再チャレンジしようと思っていました。

「今までやってきたこと」と「これからやりたいこと」をいかにつなげられるか

──人事院面接や官庁訪問攻略のカギはなんだと思いますか?また、出身大学で有利・不利を感じたことはありますか?

福田 2次試験の人事院面接では、大学の民法ゼミで幹事長だった話をしたところ「省庁でもリーダーとして仕切る場面が多いけれど、人の命を扱っているから責任はとても重い。その覚悟はある?」と聞かれました。僕は「もともと命を守る仕事がしたいと思って志望しました。政策を打つ時は国民の命を侵害しないことを重要視します」と答え、真剣さを伝えることができたかなと思います。また、議員インターンシップ中に国会議員のリサーチ活動を手伝っていたのですが、国立国会図書館から政策の資料を取り寄せられ、情報を集められたことが官庁訪問で活かせたと感じています。大学名で有利不利は感じたことはないですね。厚生労働省の内定者は、同じ早稲田大学の学生が数人、他は北海道や京都の大学から来ている人もおり、国公立も私立の人もいます。当たり前のことですが、大学が有名というだけでは何も評価されないと思います。

大出 2次試験の人事院面接では、人との関わり方や困難な時の対処法についての質問が目立ちました。私は大学3年生から4年生にかけてローマに留学していたのですが、異なる文化圏から来る主張が強い留学生仲間と過ごしたことでバランス感覚が養われたことをアピールしました。また、困難な時の対処法については、大学時代に所属していたバレーボール部で廃部の危機を乗り越えたことを話しました。一時期部員が2人にまで減ってしまい、試合に出られないどころか練習も新入生勧誘活動もできないという状況だったので、他団体や大学側、顧問の先生などに掛け合って人を借りたり、歓迎会に混ぜてもらったりしていました。その結果、6~7人まで持ち直すことができたのですが、この話は反応がよかったと思います。官庁訪問ではやってみたい政策に関して、どんどん深掘りされて気が抜けなかったです。ひとつ答えるごとに「現状はこうなっているけど、それならどうする?」と聞かれるのですが、なんとか食い下がって自分なりの意見を言えるかどうかがカギだと思います。農林水産省に関しては、内定者の大学は様々です。学歴よりも人柄が評価の対象とされ、多様性を重視しているように感じます。

加藤 大出さんの言う通り、どんな人物かを見られているとともに、「その場でどうコミュニケーションするか」も見られていると感じました。ひとつ質問に答えるとさらに深い質問、また答えるとより深い質問、と繰り返していくと、必ずこちらが想定していない質問が出てきます。それをどう答えるかを見られているような気がしました。私の場合は動揺して苦し紛れの回答になってしまいましたが、良い回答かどうかよりも、何かをひねり出せるかどうかが評価の分かれ目なのかもしれません。官庁訪問では、私の場合はフランス留学経験から広報文化外交と国連外交に携わりたいと伝えました。この他にも経済外交、安全保障などテーマはたくさんありますので、自分の今までの経験とやりたい仕事をうまくつなげて活躍したい気持ちをアピールできると良いと思います。外務省内定者の大学もバリエーションに富んでいます。特定の大学が有利・不利という印象はありませんでした。

──官庁訪問までを振り返って、TAC・Wセミナーでよかったと感じた点を教えてください。

加藤 民間企業への就職活動はもちろん、インターンシップも経験したことがなかったので、人事院面接以降の過程はまったく想像がつきませんでした。TAC・Wセミナーで面接の受け方や面接カードの書き方まで講義で丁寧に教えてもらえたことで、官庁訪問までを無事に乗り切ることができたと思います。

福田 先生に繰り返し添削してもらうことで、面接カードに書ける本当の意味での「志望動機」が見つけられたと思います。漠然としたイメージを言葉にまとめる作業を一緒にやってもらえたのが助かりました。

大出 官庁訪問期間中に複数の省庁の職員さんの話を聞き、どこも魅力的に見えて志望先を決められなくなってしまいました。困り果ててTAC・Wセミナーの先生に電話で相談したところ、遅い時間にもかかわらず親身にアドバイスをもらえました。本当に感謝しています。

不安があるからこそ勉強が続けられる。日本をどんな国にしたいかイメージを持とう

──入省したらどのような仕事をしていきたいですか?また、今、どのような資格に興味を持っていますか?

大出 日本に根ざした食文化を守っていくために、各地域で生産されている作物を最大限に活かしていく取り組みをしたいと考えています。そのために、農家の方々が農業を続けられる環境を守っていきたいですね。具体的には、農家の方々の収入の安定、年々減少していく担い手を増やすこと、また耕作放棄地問題にも積極的に取り組んでいきたいです。個人的に勉強したいと思っているのは、ワインです。

福田 私が厚生労働省をめざしたのは、最近話題になった過労死事件がきっかけです。このような事件が二度と繰り返されないように、問題が起きる前に対処できるような政策を打っていきたいと思っています。仕事を通じて、人の命を守っていきたいです。

加藤 まずは広報文化外交に力を入れたいです。フランス留学中、他のヨーロッパの国々に旅行をする機会が多かったのですが、どこの国でも私が日本人だと知ると、日本の音楽やアニメについて話しかけてくれました。それがとてもうれしかったとともに、もっと世界の人に日本の国民性や文化などを知ってもらいたいと思うようになりました。また、国連外交にも携わりたいと思っています。現在(※)日本は安全保障理事会の非常任理事国ですが、常任理事国になるための取り組みをしていきたいです。自分ひとりの力では到底できない大きな課題ですので、勉強を重ね、多くの人たちとともに実現に向かっていきたいと考えています。

──公務員試験合格や資格取得をめざしている『TACNEWS』読者に、メッセージをお願いいたします。

福田 僕は、受験勉強中いつも不安でした。しかし、合格する自信があれば勉強なんかしなかったと思います。今不安な人は、不安だからこそ勉強に打ち込めると思ってがんばってほしいです。国家総合職に関しては、「この政策をやりたい」という「意見」よりも、「こんな社会にしたい」という「想い」のほうが大事だと思います。官庁訪問でも、この「想い」が重要視されている気がしました。自分のめざす社会像をイメージしながら説明会に足を運べば、「想い」が実現できる省庁が見つかるのではないでしょうか。

大出 どの資格をめざすにしても、辛い勉強よりは楽しい勉強がいいと思います。ぜひ、勉強を楽しんでください。自分が今学んでいることと、やりたい仕事がどう結びついているかを理解できれば、やる気も出てくるはずです。国家総合職試験を受ける人は、視野を広く持つことが大切です。机の上で勉強するだけでなく、説明会に参加したり、省庁職員の方々とお話をしたりすることで、自分の関心事項を見つけ、深める作業をしていくといいと思います。

加藤 受験勉強は、最初は楽しくても続けると辛くなる時期が必ず来ます。その時は、勉強する時間と同じくらい息抜きの時間を大切にしてください。好きなことをする時間が、勉強への意欲を育ててくれると思います。国家総合職をめざす人は、国の仕事に関わりたいと思うようになった「きっかけ」をいつも心に留めておいてください。疲れた時、心が折れそうになった時に思い出せば、また勉強に戻ることができますよ。

──皆さんがそれぞれの個性や強みを活かして各省庁でご活躍されることを楽しみにしています。本日はありがとうございました。

※取材当時。当記事は2017年10月に取材しました。