特集 公務員試験合格者に聞く、合格の秘訣
第2部 外務専門職編

世界中に日本のファンを増やす下支えがしたい

外務専門職とは、言語と地域のスペシャリスト=「外交官」として世界と日本の架け橋となる存在。外務省が独自に実施する試験で採用が決まり、在外公館勤務と外務省本省での勤務を数年ごとに繰り返します。今回は、2016年度外務専門職試験に合格したWセミナーの先輩3人に、外交官をめざした理由や将来の夢について伺いました。
※WセミナーはTACのブランドです。

左から
森嶋 南(もりしま みなみ)さん
愛知県出身、大阪大学 外国語学部(卒業)
(総合本科生教養カット Type/教室+ ビデオブース(個別DVD)講座)
受験語 : 英語
外務省での研修語 :アラビア語

稲葉 真奈美(いなば まなみ)さん
神奈川県出身、早稲田大学 法学部(秋卒業)
(総合本科生/ ビデオブース(個別DVD)講座+Webフォロー)
受験語 : 英語
外務省での研修語 :フランス語

小林 時也(こばやしときや)さん
長野県出身、東京外国語大学 言語文化学部(在学中)
(総合本科生/ ビデオブース(個別DVD)講座)
受験語 : 中国語
外務省での研修語 : 中国語

異文化に触れて出てきた「疑問」が外交官をめざすきっかけに

──外交官という「職業を知ったきっかけや、めざそうと思った理由を教えてください。

小林 地元の大学に通っていた時に、中国人留学生の友人ができたことがきっかけです。高校3年生の時に尖閣諸島中国漁船衝突事件があり、テレビなどの報道から中国に対していいイメージを持っていなかったのですが、彼らはすごく友情に厚くて、親日家。そこで、自分の持っている情報が偏っていることを知ったと同時に、「これから日中関係を良くしていく仕事ってなんだろう?」と探していたところ、外交官という職業を知りました。そして、中国について深く学ぶために今の大学へ入り、中国への1年間の留学経験もしました。

稲葉 私は幼い頃に南アフリカに住んでいたことがあるのですが、郊外に行くときに車に乗っていると、ストリートチルドレンがドアをノックしてくるのに驚いたんです。「同じ子どもなのに、どうして差が生まれてしまうのだろう」って。それで、国の仕組みや法律の整備に少しずつ興味を持つようになりました。外交官という職業を教えてくれたのは、高校の先生です。明確にめざすようになったのは、大学3年生の時にフランスへ1年間留学してから。様々な国の留学生と交流し「あなたと会って日本人がどんな人たちなのか理解できたし、日本にもっと興味を持った」と言ってもらえたのが嬉しくて、フランス語を使って外国とつながりながら日本のことを発信していく仕事がしたいと思いました。

森嶋 中学1年生の時にアメリカ同時多発テロ事件が起きました。当時ニューヨークに親戚が留学していて、家族全員でテレビを見ていた時のことです。イスラム教徒がほぼテロリストであるかのような報道がされていて、「それって本当なのかな?」という疑問が強く心に残りました。それで、言語を通してテロの背景を学ぶため、大学ではアラビア語を専攻することに。外交官という存在を初めて知ったのは、エジプトの首都カイロに1年ほど留学していた時です。現地に住む日本人同士の交流会に参加した時に、当時研修生だった外交官の方が参加されていて、そのお仕事について教えてもらいました。でもその頃は「そういう職業の人に会ったな」という程度の印象。大学を卒業する時は、普通の日本企業がかっこいいと思い、銀行に就職しました。同期にも仕事内容にも恵まれて本当に楽しかったのですが、留学時代に知り合った外交官の方にたまたま再会したり、プライベートでのケニア旅行で現地領事館の方のお世話になったりしたのがきっかけで、やはり自分には外交官が合っているんじゃないかと直感が動いてしまって。1週間くらい悩んでからバタバタと決めました。

先輩の口コミと合格実績の高さが受講の決め手に

──勉強を始める際に、Wセミナーを選んだ理由をお聞かせください。

小林 大学の先輩たちが歴代Wセミナーにお世話になっていました。他のところにはまったく見向きもせず、ここしかないと思い込んで入りました。

稲葉 国家総合職をめざしてWセミナーに通っている友人がいて、自分がやりたいことを話していると「やってみようよ!」と言ってパンフレットを見せられて強く勧められました。それが9月末だったので、時間がなくてすぐに講座説明会に行きました。結果、実績もあるので、他と比較などもせずに「Wセミナーを信じてやるしかない」と思って始めました。

森嶋 就職してから外交官の仕事に興味を持ったので、最初はどうしていいかわかりませんでした。でも、大学の先輩で受験経験者の方がいて、Wセミナーという名前だけは聞いていたのを思い出したんです。それで、インターネットで検索したところ、合格実績が高いことや担任講師の学習サポート制度があるということがわかって。当時は関西に住んでいたのですが、東京のほうが先生も多くて勉強に集中できるだろうと思い、上京して勉強を開始しました。

「担任講師制度」をフル活用
自分に合ったアドバイスがもらえた

──Wセミナーのどのような制度を活用しましたか?良かった点も教えてください。

小林 中国留学から戻った大学3年生の時から受験勉強を始めたのですが、休学扱いで単位の交換ができなかったため、3、4年次も履修しなければならない授業が残っていました。それで、大学で授業を受けながらすきま時間にパソコンで ビデオブース(個別DVD)講座を受講しました。ひとりで勉強するとやる気を維持するのが大変ですが、月1回程度、Wセミナーの中尾先生と杉原先生が大学で出張面談をされていて、具体的な質問がなくても行けば気さくに話してくれるので助けられましたね。また、Wセミナーには合格した先輩の情報が豊富にあるので、それらに触れて「先輩たちも苦しんでいたんだな」と励まされました。講義内容に関しては、憲法、経済学、国際学とすべてが初学だったので不安が大きかったのですが、先生たちの講義が非常に面白くて続けることができました。特に国際法では、今まで知らなかった知識やアプローチ方法をたくさん伝授してもらい、国際関係を楽しみながら吸収することができましたね。

稲葉 担任講師制度をフル活用しました。勉強を始めたのが遅く、何から手をつけたらいいか見当もつかなかったので、毎月初めに中尾先生に会いに行ってスケジュールを一緒に組んでもらっていたんです。「今月これくらい大学の授業があって、ここにサークル、ここにゼミ、ここに卒業旅行があります」と話すと、「講座のこの講義は受けて、これはこの時期からやっておこう」
と提案してくださって。親身な対応がありがたかったですね。本当にお世話になりました。私は欲張りなタイプで、何かひとつのことをがんばるために他のやりたいことをあきらめることができないんです。それを理解してサポートしてくださった先生には感謝しています。

森嶋 私の場合、担任の先生とはたまにしか面談をお願いしなかったのですが、少ない回数でも密度が非常に濃かったのが印象的でした。1回目の試験が不合格だったので、再チャレンジする時に国際法の先生とお話ししたのですが、暗記が下手であることや、それで国際法が弱いことをズバリと指摘されました。でも「森嶋さんはきっと何とかなるよ」と言われ、具体的なアドバイスは特になかったんです。私にとってはそれが逆に効果的で、克服方法を自分自身で考えることができたので良かったですね。先生方はおそらく生徒の性格や理解度によって、どこまで面倒を見るか、相談に乗るかは変えているんだと思います。また、Wセミナーの合格者アドバイザーさんのブログはよく読んでいました。日替わりで勉強法や小ネタなどが載っているので、他の受験生もこれを読んでがんばっているんだ、合格したら「面白かったよね」って話したいな、なんて想像しながら楽しんでいましたね。

4月のムードには要注意! 模試の点数や苦手克服にもとらわれすぎないで

──勉強が辛くてあきらめそうになった時期はありましたか?

稲葉 ありますね。4月です。小林 試験が近づいてきてもなかなか伸びている実感がないし、「合格なんて無理なんじゃないか」って弱気になりがちですよね。

森嶋 4月の頭にWセミナーで受けた模試(模擬試験)の結果が出るのですが、そこから本番の試験の直前まで講義がないので、結果がよくないと苦しいですよね。私は一度どん底まで気持ちが落ち込んでしまえば、あとは自然に上がってくるタイプ。2、3日家に引きこもって、漫画を読んだり、料理をしたり、掃除をしたりなど勉強以外のことに没頭して持ち直しました。

小林 勉強をしないといけないのにやる気が出てこないときは僕にもありました。インターネットを1日中見続けたこともあります。そうすると「よし、またやってやるぞ!」って気持ちが沸き上がってきたりして。

稲葉 親しい人に話を聞いてもらうとスッキリしましたね。他には趣味のDVDやインターネット動画を見たりしていました。2時間くらい見て「あっ、やらなきゃ」と思って勉強に戻る、というのを繰り返していました。

森嶋 5月半ばくらいになると「あと1ヵ月しかない」という焦りのほうが強くなって、覚悟が決まるんですけどね。

小林 4月は微妙な時期なんですよね。受験勉強は冬にしか経験したことがないのに、いつの間にか桜が咲いていて。

稲葉 周りの友達も就職が決まって、忙しそうに働いていますしね。

森嶋 世間全体がキラキラしているのに、私だけ重い冬のコートを着ている、みたいな(笑)。だから、4月独特の雰囲気や模試の結果にとらわれすぎないことも大事だと思います。

──苦手科目を克服した方法もあれば教えてください。

小林 経済学には特に苦手意識がありました。ただ、国際的なことや国内の経済とリンクしている部分がある、と気づいてからは、面白くなってきたんです。先生も講義の中で、「たこ焼き屋さんを始めるとしたら、こうやって原材料を仕入れてきて…」というように、身近なものとつなげて具体例で教えてくれたので、印象に残り理解できました。最後まで不安要素を完全に消すことはできませんでしたが、本番の試験は今までよりもしっかり書けたなという手応えはありました。「とにかくやるべきことをやれば大丈夫だ」と信じることができるのはWセミナーの講義のいいところですよね。

森嶋 私の苦手科目は担任の先生にも指摘された通り国際法でした。普通の本なら5、6冊分の情報量が国際法では1冊に凝縮されているので、体系化されているとはいえ覚えるのが大変で。1年目は暗記しようとしてうまくいかなかったので、2年目からは「理解」に重点を置きました。具体的には、ノートを取るときに絵や図を描く、自分が当事者になったつもりで想像しながらメモを取る、などです。また、もし自分がこの事件に陥ってしまったらどうなるだろうか、この知識は実際にはどう使えるのか、などと自分の実生活とリンクさせて学習していました。私も小林さんと同じく最後まで苦手を克服した実感がなくて、終わった今もないのですが、模試の結果にとらわれすぎずに最後までやりきることが大事だと思います。

稲葉 それこそ私も模試は経済学で0点だったことがあります。50点満点で2枚中1枚0点、1枚5点、という時も。

小林 僕は両方0点だったこともあります。

稲葉 それでも「落ち込むのではなく、結果を消化するのがベストな時間の使い方だ」と思って、できなかった部分を徹底的にやるようにしましたね。書けなかった答案は、家で模範解答を音読しながら歩いてみて体に叩き込む、ということを地道にしていったら少しずつですが理解が進むようになって、だんだん楽しくなってきたように思います。

日本と相手国
相互発展のために尽くしたい

──4月からはいよいよ外務省に入省です。どのような仕事をしてみたいですか?

小林 僕は中国の領事館か大使館で勤務することになると思います。日本への関心を高め、理解と信頼、親近感を深めてもらう広報文化外交に力を入れていきたいですね。自分が留学から戻ってきた時に、日本の街並みの清潔さや美しさ、秩序が整っている点に心が安らいだので、そういう面も世界の方々にも知ってもらいたいなと思っています。中国だけではなく、日本と他の国々との関係が少しでもよくなり、互いに発展できるような外交をめざしていきたいです。

森嶋 合格してから周りの方に「特別な仕事に就いた」と見られがちなのですが、私個人としては「数ある仕事のうちのひとつ」という認識。驕らずに取り組んでいきたいと思っています。まずは、地域における専門的で小さな仕事を一つひとつ積み重ねて、大きな問題解決に少しでも役立てればうれしいです。そして、将来的には日本が第二次世界大戦後に素早く秩序を取り戻したノウハウを、現在中東地域で紛争状態に陥っている国を立て直す時に伝えていきたいです。インフラ整備などの技術はもちろん、気持ち的な部分まで丸ごと「輸出」できたらいいですよね。

稲葉 私はおそらく最初はアフリカに行くことになります。まず、自分自身がアフリカの現状を知ること、そして自分の友人や知り合いなど身近な人たちにもアフリカに関して興味を持ってもらいたいです。さらに、フランス語というツールを使って、他国間での取り決めや法整備にも関われたらいいなと思っています。現在、アフリカ地域の問題を先進国だけで決定しているという側面もあるので、少しずつ改善しながら世界の調和に貢献できれば幸せです。また、将来的には日本の子どもたちに自分が知った世界を伝えていきたいと考えています。

──最後に、公務員試験や資格取得をめざしている『TACNEWS』読者に、メッセージをお願いします。

小林 僕は長野県で生まれ育ち、高校を卒業するまで海外の方との交流もなければ海外旅行もしたことのない田舎者です。外務省とまったく縁のないような人間が大丈夫だろうかという不安はありましたが、合格することができました。だから、最後の最後まであきらめないでほしいです。愚直でもいいから「想い」を持ち続けること。そうすれば誰にでもチャンスはあるはずです。

森嶋 勉強している最中はすごく孤独で、私は「誰かとつながりたい、話したい」と苦しみながら日々過ごしていました。でも、合格すれば世界中の人たちとつながることができる仕事が待っているんですよね。今はひとり、または家族や友人など狭いコミュニティに身を置いているけれど、その先にもっと広い楽しい世界が待っていることを頭の隅に置いてもらえたらうれしいですね。

稲葉 私の場合は勉強することをただ「大変」と思うのではなく、「知識を得ることでより一層豊かな人間になれる」とポジティブに考えて楽しんでいました。自分がどんなやり方、考え方ならがんばることができるのか、勉強しながら探っていくことが大事なのかなと思います。現状に満足せずやるべきことをやりきった人、自分を信じ切った人が勝ちだと思います。がんばってください。

──みなさんの飾らない人柄が魅力的で、受験生のやる気が出そうなお話が満載でした。世界と日本の架け橋としてご活躍をお祈りしています。本当にありがとうございました。

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