特集 公務員試験合格者に聞く、合格の秘訣
第1部 国家総合職編

  

日本の政策の根幹に関わる「国家総合職」。「官僚」や「キャリア」とも呼ばれ、霞ヶ関の中央省庁におけるダイナミックな活躍が期待されます。今回は2016年度の国家総合職試験を見事に突破し、2017年春から入省するWセミナーの内定者4名が登場。キャリアをめざしたきっかけや勉強のコツ、将来の夢についてじっくり語ってもらいました。
※WセミナーはTACのブランドです。

日本のよりよい未来を創造するキャリアをめざしたい

左から
阿部 修也(あべしゅうや)さん
東京都出身、慶應義塾大学法学部在学中合格
(法律本科生/日吉校/ ビデオブース(個別DVD)講座)
受験区分 : 大卒教養
内定先 : 国土交通省

栗本 伊里彩(くりもといりさ)さん
群馬県出身、早稲田大学政治経済学部在学中合格
(法律本科生/早稲田校/教室講座)
受験区分 : 大卒法律
内定先 : 農林水産省

野木 香住(のぎかすみ)さん
東京都出身、東京大学経済学部在学中合格
(経済主要科目本科生/渋谷校/教室講座)
受験区分 : 大卒経済
内定先 : 内閣府

岡松 野花(おかまつやか)さん
愛知県出身、一橋大学法学部在学中合格
(法律本科生/渋谷校/教室講座)
受験区分 : 大卒法律
内定先 : 外務省

──国家総合職をめざした理由について教えてください。

阿部 高校2年生の時、東日本大震災が起こったのがきっかけです。もともと鉄道などのインフラには興味があったのですが、被災された方や帰宅が困難になった方が多くいたのを目の当たりにして、「当たり前の生活」を支えるものに関わりたいと思うようになりました。それで、国土交通省を志望しました。

栗本 小中学校の教員をしている両親から子どもと家庭環境にまつわる話を聞くことが多く、人々の「生活」に関心を持つようになりました。当初は厚生労働省を考えていたのですが、いろいろな説明会などに足を運ぶうちに「食」により惹かれることがわかり、農林水産省をめざすことにしました。

野木 大学3年生の時に小学生の子どもたちと放課後の時間を一緒に過ごす学童保育のアルバイトをしていました。そこに家庭で虐待を受けていた子どもがいたのですが、学校側が介入するにも限界があるという現実を知りました。それで「国が問題に関わり、制度自体を変えていくことが大切では?」と考えるようになったんです。内閣府を選んだのは、あらゆる政策に各省庁との調整役という形で関わることが多く、子どもを支えることはもちろん、さまざまな分野で仕事ができそうだと感じたからです。

岡松 父の仕事の関係で、2歳から6年間中国に、中学3年生から4年ほどオーストラリアに住んでいました。海外にいると日本に対する他の国の興味や関心が徐々に薄れてきている、と思う場面があり、危機感を持つようになったのがきっかけですね。ただ流れに任せて日本の存在感が小さくなっていくのを見るより、自分が未来を創る側に立ちたいと思い、外務省を志しました。

口コミや合格実績でWセミナーを選択
自分なりの「作戦」を立てた

──受験をするにあたってWセミナーを選んだ理由をお聞かせください。また、実際に入ってみてよかったと感じたのはどのようなところですか?

野木 大学の先輩から「経済区分で受けるならWセミナーがいいよ」と勧められて選びました。私は部活でオーケストラをやっていて、校舎に通う時間がなかなか取れなかったのですが、DVDは板書の内容がレジュメになって付いてくるのでとても役立ちました。5月の第3週目に演奏の発表を終えて、その1週間後に1次試験というスケジュール。すきま時間に勉強できるシステムで助かりましたね。また、官庁訪問対策のゼミが充実していて、同じ省庁希望者同士で集まって自主的に行った勉強会では、志望動機を添削しあったり、情報交換ができたりしてよかったです。

岡松 私は大学の生協でパンフレットを見比べて、合格実績が一番高かったので選びました。先生が一人ひとりに合わせて丁寧なアドバイスをしてくれる点がよかったです。山下先生にお世話になったのですが、私の人生経験を聞きながら、強みやプレゼンテーションのコツなどを指導してもらえたので、官庁訪問対策はもちろん、人事院面接でもそのまま使えて2次試験の前にあたふたせずにすみました。

阿部 大学から歩ける距離に校舎があり、合格実績が高かったことや、DVDやWEBを利用すれば自分のペースで勉強ができることを知って決めました。僕は秋に実施される「教養」区分の試験で合格していたのですが、同じように内定している人たちを集めてグループディスカッションや面接の対策をしてもらえたのが助かりました。先生や、前年に合格した先輩方から「人に意見を求める点は良かったけれど、ずっと消しゴムをいじっていて落ち着きがなかった」など客観的なアドバイスがもらえました。

栗本 インターネットで他の受験指導校と比較してWセミナーの実績の高さを確認しました。また、官庁訪問対策までしっかりできるのも魅力的でしたね。私の場合は数的処理が苦手で、最後まで伸びずに悩んでいたのですが、山下先生に「ギリギリ5問だけとって、法律をとにかくがんばれ!」とアドバイスを受けたのを信じて何とかなりました。

──受験勉強期間を振り返ってみて、苦労した点や工夫したことはありますか?おすすめの勉強法もあればぜひ教えてください。

栗本 高校は推薦入学、大学へは内部進学で、いわゆる「受験勉強」を経験したことがなかったので不安でいっぱいでした。勉強を開始したのが大学3年生になる前の2月だったのですが、まずはアルバイトなどを辞めて勉強時間を確保し、コツコツ教室に通ってペースを崩さないように気をつけました。大学の授業が残っている時期は、Wセミナーの講義プラス2、3時間の復習。試験直前期は10~15時間勉強していました。焦りを感じるくらいなら勉強しようと思っていましたね。ストレスを感じたら、就職活動中の友達を食事に誘ってお互いに気分転換をしていました。おすすめの勉強法は、過去問を何年分も何周も解いていくことです。

岡松 私も本格的にエンジンがかかったのが栗本さんと同じくらいの時期でした。中学2年生までしか日本の教育を受けておらず、世界史や日本史に地理、物理や生物など、教養科目がほぼ初学だったので、数的処理と文章理解、法律で点数を稼ぐ作戦でいきました。とは言っても、法学部ですが専攻は政治なので民法や行政法にも触れたことがなかったのでハードでしたね。先輩に教えてもらった勉強法で実践していたのは、1週間分の勉強スケジュールをあらかじめ決めて実行するというやり方です。
「何時に何をする」まで手帳に書き込んでおいて、積み残しは日曜日にやり、すべて終わっていれば午後からは遊ぶ、というようにしていました。また、記述問題は先生に言われたことをそのまま書くと点数がもらえるので、講義の音声を3倍速にして聞きながら、教科書をひたすら何周も読み返して頭に焼き付けていました。大学やWセミナーの友人とたまに飲みに行くのはいい息抜きになりましたね。

阿部 僕もこれまで中学しか受験経験がなく、久しぶりの受験勉強でした。ただ、試験には数的処理など「算数」的なものが多く、意外と中学受験の知識が役立ちましたね。1次試験直前には高校の授業で好きだった科目を見直ししたのも効いたかなと思います。あとは、Wセミナーの講義の復習をためないようにしました。気晴らしはアパレル接客のアルバイトです。受験勉強中も面接のネタになるかなと思って、週1回は続けていました。省庁の説明会やインターンに参加するのも、モチベーションが上がりましたよ。

野木 私は中学と大学受験の経験があります。大学の授業には出席していたので、科目によってはほとんど勉強しなくてもいいものがありました。また、大学受験の時も自分で勉強するのが好きで塾にはほぼ通わなかったんです。今回もDVDを見ながら自分のペースで勉強するのが向いているかもしれないと思ったので、がんばることにしました。受験勉強を始めて感じたのは、学校の勉強と択一式試験の問題の傾向の違い。同じテーマを扱っていても問われ方が違って混乱するので、早めに過去問をチェックしておくのがいいと思います。先にゴールを把握しておくほうが何をしたらいいか洗い出せて効率的ですから。苦労したのは択一式試験の勉強が間に合わなかったことです。最終的には、配点が低い科目や学校の勉強で触れていなかったような科目は思い切って捨て、他の科目でフォローすることをめざしました。

──民間企業への就職活動は行いましたか?

栗本 私は受験への不安から、最初からやらないと決めていました。その代わり公務員試験で併願をしていました。面接慣れをしたいなら、やっておいた方がいいと思います。

阿部 僕はインフラ系や銀行などを回りました。「公務員と民間企業の仕事の違い」は国家総合職の面接でよく聞かれるポイントなので、「この職種ならどうだろう」などと考えながら話を聞いたりしていました。

野木 私は民間企業にも行きたい気持ちがあったので、金融系、デベロッパー、メーカーの面接も受けました。特に金融は大学で勉強してきた経済知識が活かせるので公務員と迷いましたね。

岡松 私は政府系金融機関と、シンクタンクを受けました。栗本さんと同じで国家総合職一本でいこうと思っていたのですが、周りの友達に影響されて…。民間就活をしたことが特別有利になると感じたことはあまりないので、勉強とのバランスを考えて無理のない範囲でやればいいと思います。

官庁訪問で構えすぎはNG
リラックスして楽しむことが大切

──官庁訪問攻略のカギはなんだと思いますか?また、所属大学で有利不利を感じたことは?

岡松 訪問する側の中には、議論をしようとする人が多いのですが、相手はプロなので簡単に論破されてしまいます。それよりも、現在自分が関心を持っている内容を伝えたり、疑問に思ったことを聞いてみたりなど、会話を楽しむ気持ちが大切ではないでしょうか。外務省に関しては、所属大学で有利不利は本当にないと思います。東大生が多い印象はありますが、公務員試験を受けている母数が多いだけで、採用の時に優遇されるということはないはずです。

栗本 内定者の先輩方に「楽しんだ者勝ち」と聞いていたので、リラックスして臨むようにしました。私は農林水産省に本当に行きたくて説明会にも何度も行っていたので、職員の方と顔なじみになるくらい。志望動機や「食育」をやってみたいということ、「説明会のあのお話がおもしろかったです」などとお伝えするなど、最初から最後まで楽しくおしゃべりして帰ってきました。農林水産省に関しては、いろいろな大学の人が集まっているので有利不利はないと感じました。

野木 私は3つの省を回ったのですが、面接時間がそれぞれ20分、40分、2時間と大幅に違うのに驚きました。志望動機や質問の内容はある程度時間に合わせて準備しておいたほうがいいと思います。また、民間の就職活動をしていた時に目線が下がりがちだと指摘されたので、面接の時はあまり手元のノートを見ず、相手の顔を見てコミュニケーションをとるように心がけました。内閣府は内定者が10人を少し超えるくらいで、6、7大学くらいの方が集まっています。むしろ大学に偏りがないようにしているのかな、と感じます。

阿部 国土交通省では「身近な地域の問題に関して、どういう政策ができると思う?」という質問や、大学の時に何をやっていたのか、アルバイトの時はどう考えて行動していたのか、などいろいろな面から聞かれたのが印象に残っています。事前にどれだけ準備をしてきたかよりも、多岐にわたる質問をされた時にどういう返し方をするのかを見ているんだろうなと思います。大学での有利不利は特に感じませんでした。

国家総合職としてこれから実現したいこと

──入省したらどのような仕事をしていきたいですか?

岡松 日本の安全を確保することと、経済的なことも含めた広い意味での日本の「豊かさ」を外国との関係の中で発展させていくことがこれからの使命だと思います。個人的に日本は「責任を果たせる国民性」を持っているのではないかと感じています。これを活かして、国際的にリーダーシップを取っていくことが世界のためにも、日本のためにもなるのではないかと考えています。

栗本 どんなことが起こったとしても食料を安定供給すること、それを約40年間農林水産省で果たしていきたいです。また、私個人の夢としてはやはり「食育」ですね。日本人が「食」をもっと大事にしていけるように、各世代のニーズにあった働きかけをしていきたいです。

阿部 インフラを活用して国民の生活や安全を守ること、さらに経済を発展させることが国土交通省のミッションなので、それに力を尽くしていきたいです。個人的にやってみたいことは、住んでいる場所による生活の格差を解消することですね。人口が減って公共交通機関の維持が難しくなっている地域で、通学や通院が困難な人が増えているという実態があります。単に赤字だから運行本数を減らす、ということではなく、輸送需要に合った形態を作る、自動運転を取り入れるなどしていけたらと思っています。

──公務員試験や資格取得をめざしている『TACNEWS』読者に、メッセージをお願いします。

栗本 勉強したことは必ずどこかで役に立つので、あきらめないで最後までやり遂げてほしいです。そのためにも、一度大きな目標を決め、段階を踏んで進むのが重要だと思います。

野木 官庁訪問まで含めて長丁場の試験です。途中で息切れしないように、適度に気分転換をするのがおすすめです。特に学生生活は一度きりなので、悔いのないよう楽しんでもらいたいですね。

阿部 しっかり勉強すれば不可能ではない試験だと思います。初心を忘れず、1日2日休んでもまた机の前に戻れば大丈夫。面接には「ここで働きたいんだ!」という強い気持ちで臨むときっと相手にも伝わるはずです。

岡松 勉強が辛くなったら、自分が国のために働いている姿を想像してワクワクしてみましょう。こんなにインパクトの大きい仕事はなかなかないと思います。がんばってください!

──個性豊かな皆さんの、日本の未来のために生き生きと働く将来の姿が見えてくるような座談会でした。本日はありがとうございました。

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