特集 外国人サポートで資格を活かす
~行政書士の世界~

  
Profile

若松 絵里さん

若松絵里社労士・行政書士事務所 代表 東京入国管理局・届出済申請取次行政書士 社会保険労務士

若松 絵里(わかまつ えり)
長崎県出身。新卒で富士通株式会社入社。数年後に退職し、1年間イギリスに語学留学。帰国後、ソニーイーエムシーエス株式会社、ジボダン・ルール株式会社(本社:スイス)、ゼネラルエレクトリック・ジャパン(本社:アメリカ)等の日本法人に勤務。2003年、行政書士試験合格。2004年、社会保険労務士試験合格。2005年10月、「若松絵里社労士・行政書士事務所」を開設。

行政書士試験の合格者には、社会保険労務士試験の受験資格が与えられる。学習面でのステップアップはもちろん、行政書士と社会保険労務士(以下、社労士)は親和性の高い間柄といっていいだろう。行政書士の業務には、建設業許認可申請、外国人就労ビザ許可申請、風俗・旅館業・飲食店営業許可申請と色々な会社設立関連業務がある中、社労士資格を併せ持つことで、労働者の労働契約や給与計算、就業規則といった労務管理にまで広げていけるからだ。選択肢が多々ある中で、行政書士と社労士のダブルライセンスを持ちながら、あえて外国人就労ビザ申請手続、つまり入管業務にこだわって「行政書士業務100%」に絞り込んでいる、異色の行政書士が若松絵里さんだ。若松さんの軌跡を追って、「入管手続は何がおもしろいのか」、「なぜ行政書士100%なのか」について考察したい。

一生続けられる仕事をしたい

──若松さんは、どのようなきっかけで資格を取ろうと思われたのですか。

若松 高等学校を卒業してから富士通株式会社で数年間、一般事務職として勤務しながら英語の専門学校を卒業しました。その後、英語と秘書の勉強をするために退職し、1年間ほどイギリスに語学留学しました。帰国後は正社員としてヨーロッパ系企業の日本法人に秘書として4年間勤務し、その後もやはりヨーロッパ系企業に転職しました。こちらでも4年間秘書として勤めたのですが、自分のキャリアプランを見つめなおし、長期的に勤務できる仕事をしたいと考えて人事部への異動願を出しました。その後、主に人事採用(新卒・中途)の仕事をする中で、海外本社の方針で行われた整理解雇等について、本社と解雇される労働者との調整なども経験し、日本と海外の労働慣行の違いを痛感しました。
 この時、解雇等、労働基準法を含めた法律の知識に触れ、もっと勉強したいと思うようになったのです。しかし当時は残業が多く、とても学校に通って勉強するような時間はありませんでした。それでも社内には社労士の資格を持っている方がいたので、まずは独学で社労士試験の勉強を始めようと考えました。

── 留学して英語と秘書の勉強をし、外資系企業に秘書として採用され、目標達成ができたわけですね。なぜその後、人事部へ異動願を出して、社労士資格を取ろうと方向転換されたのですか。

若松 当時、秘書は花形の職種でしたし、英語が好きだった私にとっては自分を活かせる職業だと思っていました。でも、一生続けられる仕事なのかと考えれば、不安はぬぐい切れませんでした。そこでずっと続けられる仕事に就きたいと考えて、何か士業をめざそうと思ったのがきっかけです。ちょうどその当時、労働基準法等の法律系知識の充実を図りたいと考えていたので社労士試験の合格を目標にすることにしたのです。
 と言っても、独学ではきついし勉強時間も確保しづらかったので、当時勤務していた会社を退職して、その後ゼネラルエレクトリック・ジャパン(以下GE、本社:アメリカ)に契約社員として勤務しながら勉強することにしました。GEでは合計2年間ほど、人事部で主に採用業務を担当しました。
 思い切って契約社員に切り換えたことで時間が確保できたので、まず2003年に行政書士試験、そして2004年に社労士試験にチャレンジし、合格することができました。その後は2005年10月に「若松絵里社労士・行政書士事務所」の開業に踏み切りました。ただ開業当初は事務所の収入だけで食べていくのは難しかったので、並行して週2〜3回、GEでのパートタイム勤務も続けながらのスタートでした。

── なぜ、社労士試験の前に行政書士試験を受けたのですか。

若松 それは大きな勘違いをしていたからです。実は自分の学歴では社労士の受験要件を満たしていないと思い込んでいたので、要件を満たそうと先に行政書士試験を受けたのです。合格後に専門学校卒の専門士であれば大丈夫だと知りました(笑)。
 でも今は100%行政書士業務なので、結果的には良かったと思っています。実際に仕事をしてみたら行政書士のほうが自分には向いていたんですね。

── パートタイム勤務と同時並行で事務所を運営していた期間は、どれぐらいでしたか。

若松 1年間ほどです。仕事は変わらずそれまでやっていた採用関連で、社労士の知識を使う機会はありませんでしたが、外国人の採用等、英語を使う機会が多く、楽しい仕事でした

登録後、すぐに独立開業

── 開業されてからはどのような業務を展開してこられましたか。

若松 開業から現在まで、日本で活動する外資系企業や初めて外国人を雇用する日系企業、あるいは日本で新たに起業される外国人・外国法人のサポートを行っていきたいと考えて、就労ビザ取得のための入管手続代行・外資系企業の日本支店・日本支社設立手続、労働・社会保険関連手続、就業規則(和文・英文)を始めとした各種規程作り、外国人を雇用する際に必要な雇用契約書の作成・レビュー等を中心分野として業務を展開してきました。
 現在は8〜9割が「入管=ビザ申請手続業務」です。この仕事を依頼してこられるのは日本に進出してくる外資系企業と、外国人を雇う日本法人が半々の割合です。あとは就業規則と雇用契約書作成、また英文翻訳をアメリカ人と一緒に行っています。

── 独立当初はゼロからのスタートだったと思いますが、どのように仕事を広げていかれたのでしょう。

若松 実は私は営業がすごく苦手なんです。開業すると皆さん異業種交流会などに積極的に参加されるのですが、私はそういうことにあまり向いていませんでした。そこでまだ仕事がなくて時間があった開業時に集中してホームページやブログを念入りに作り込んで、情報発信に努めていました。そこから徐々に問い合わせが入るようになって仕事が増えてきました。現在でも新規の9割はホームページからのお客様です。

──行政書士のほうが向いているというお話でしたが、いつ頃そう気づかれたのですか。

若松 当初は社労士業務の就業規則と社会保険手続業務をやりたいと考えていたのですが、最初に来た仕事が入管手続だったことから、まずは行政書士業務から始まりました。これをやっているうちに「自分に合っていて楽しいな」と思うようになったので、独立して最初の仕事をした時に気づきましたね。

──最初に受けた入管業務の依頼もホームページからですか。

若松 外資系企業の人事部にいる姉からの依頼です。ちょうど行政書士試験に合格した直後でしたが、入管の仕事をするためにはさらに研修を受けて試験を受け、東京入国管理局・届出済申請取次行政書士の資格を取得しなければなりません。それには3〜4ヵ月かかってしまうので、慌てて取得しました。この入管業務も社労士業務も、開業半年後に受けたのが最初の仕事です。

── 開業前に社労士事務所あるいは行政書士事務所に勤務して、実務経験を積むなどの準備期間は取らなかったのですね。

若松 その当時、行政書士事務所は個人事務所が多く、ほとんど募集がありませんでした。それに、社労士事務所での勤務については、会社員時代に給与計算や社会保険手続を経験したことがありましたので、わざわざ勉強のために社労士事務所に勤めることにあまり魅力を感じませんでした。そこで自分で開業しようと決めたのです。
 独立して2年目以降は、給与計算や社会保険手続も受けるようになったのですが、勤務時代に経験しているので新しい法律を自分で調べながら独力で進めることができました。

業務を行政書士に一本化

──2005年10月に独立されて2006年4月頃に最初の行政書士業務を受けてから、仕事は順調に進んでいきましたか。

若松 あまり順調とは言えませんが、姉の紹介を受けたあとは自分で探すしかないと、パートもやめて事務所に注力しました。そこから何とか食べていける程度の収入になったので、まず入管業務をメインとして、英文の就業規則の依頼案件の受託が増えてきたのをステップに、業務を広げていきました。

──仕事が安定してきたと感じたのはいつ頃ですか。

若松 あまり心配せずにいられるようになるまでに4年はかかりましたね。2009~2010年までは順調だったのですが、2011年の東日本大震災を機に外国人の数が激減し、受けていた仕事がオールキャンセルになってしまう等、その落ち込みがあまりにも激しくて、途方に暮れるような状況でした。そんな不安定な状態が2013年まで続きましたね。

──その時、何か別の業務にシフトしようとは考えなかったのですか。

若松 外資系企業の給与計算や社会保険手続を専門にしている社労士から委託で仕事をいただいたり、就業規則の翻訳をしたりしました。
 その間に徐々に外国人も戻ってきて、入管の仕事も以前のように増えてきました。ただ、近年は英語や中国語など語学が堪能な行政書士の数も増えてきているので、負けないようにやらないといけないなと思っています。

──すでに開業11年目を迎えられていますが、独立後、仕事の流れや時間の使い方にはどのような変化がありましたか。

若松 2015年に入管業務のほうがかなり安定してきたので、2008年からやっていた、社労士業務の顧問契約(給与計算や社会保険手続)を思い切ってすべて友人の社労士に譲りました。ですから今は入管8〜9割、残りは就業規則の英文翻訳などのスポット業務という行政書士100%の事務所です。
 このように、業務を一つに絞ったのでゆとりもできて、精神的にも肉体的にもかなりリラックスして仕事ができていますね。自分で自分の仕事や時間を組み立てられるのは独立しているメリットです。業務が繁忙な時期には可能な限り仕事を受けて、仕事の谷間の平日は旅行に出かけたりもしています。こうしたメリハリのある時間の使い方は、会社員時代には絶対できませんでした。

──行政書士が安定してきたとはいえ、社労士業務を一切やめてしまうというのは思い切った決断でしたね。

若松 労働関係、社会保険に関する法令は毎年かなり多くの法改正があります。その都度勉強してキャッチアップしなければならないのですが、入管法はそれに輪をかけて変わるので、両立は大変かなと考えました。
 例えば、社労士関係の業務については、法改正等によって、運用や届出用紙等が変わったとしてもあとで年金事務所や労働基準監督署等に出向いてその場で訂正ができます。一方、入管法の法改正は本当に厳格で、その都度最新の法改正をインプットして、間違えないようにしなければいけない緊張感があります。特に安倍政権が外国人の移民政策を積極的に推進しようとしているので、数年ごとに新しいビザの資格ができたり、運用基準が変わるので、その都度正確に対応していかなければならなりません。それまでの運用が大規模に変わってしまうのですが、その対応を間違うことは絶対に許されません。申請書類を1ヵ所書き間違えただけで、申請がNGになるばかりか、以後その外国人の方の申請は受け入れられなくなり、日本に入ることができなくなってしまう可能性さえあります。つまり私たち行政書士が誤った書類で申請してしまうと、その外国人を雇用する会社だけでなく、ご本人が将来日本で生活したり就労する機会を失ってしまう等、その方の人生をも左右してしまう危険もあるのです。

やりがいと楽しさがあふれる入管業務

──入管業務の流れを教えてください。

若松 まず、来日する外国人のビザが取れるかどうか、問い合わせがきます。ビザを取るための条件はたくさんあるので、まずはお話を伺いますが、中には完全に無理なケースもありますので、その場合はその理由を説明してお断りしています。ビザを取得できる可能性がある場合は、詳しい相談から入り、ご依頼があれば雇い主(会社)とご本人(外国人)と一緒に入国管理局に提出する必要な書類を作成します。
 ケースバイケースですが、ビザを申請するにはご本人の学歴証明書や前職の在籍証明書、所得税の納付状況証明書等も確認しなければなりません。また、ご本人の履歴書のほか、雇用する企業の業容や状況についても決算書等を見るなどし、ビザ取得が可能かどうか総合的に判断します。時には海外の親会社の登記簿謄本など、かなり多岐に渡る書類が必要になります。この申請書類の収集に平均2週間から1ヵ月、その後、入国管理局に書類を申請して結果が出るまでに1〜3ヵ月かかります。ですからビザの申請手続きに着手してから許可がおりるまでは、会社の規模にもよりますが、一般的な中小企業がスポンサーとなって就労ビザを申請する場合は、早くて2ヵ月、長くて4ヵ月が必要です。

── 緊張感のある入管業務に感じるやりがいとはどんなところでしょう。

若松 ビザ申請は、入国管理局が要求している書類さえ提出すれば許可がおりるというような届出制の許認可ではありません。個々の申請によって許可を取得するまでの難易度が違うのです。ビザを取得できる要件ギリギリの案件については、通常の申請書類を提出するだけでは足りないことが多いので、確実に許可を得られるようにプラスの条件を探して、それを証明する補強書類を追加するなどの工夫や苦労があります。このように、許可がおりるかどうかギリギリの案件で、自身が追加提出した補強書類が功を奏し無事に許可を得られたときなどが一番やりがいを感じます。開業年数が長くなるごとにこのような難しい案件が増えてくるので「これは普通に申請したら難しいだろう」というケースを何とかして許可を得られないだろうかと考えているときが一番楽しいですね。
 またお客様も外資系企業がほとんどですし、海外の人事部の外国人の方と、メールや電話などでコミュニケーションをとる楽しさもありますね。日本の会社が海外に支店を作る時の手続をすると、海外の商慣習などついても知ることができますし、こうした知識の充実も、行政書士業務が一番好きな理由のひとつです。

──ビザを申請して、却下されてしまうケースもありますか。

若松 基本的に、絶対にビザを取れないと思われる案件はお受けしないことにしています。ですから却下になるケースは、ご本人が私に申告していない経歴詐称等があったために不許可になるような場合ですね。残念ながら、これまでにそのようなケースは何回かあります。入管はビザが申請されると事実関係について相手国でも調査をしますので、些細な嘘でも調べればわかるんです。そのため何回か痛い目に遭いました。

──現在はどの国からのビザ申請が多いですか。

若松 毎年トレンドがあるなと感じますね。私のキャリアもそれほど長い年数ではありませんが、過去11年の最初の4〜5年は圧倒的に中国人が多かったと記憶しています。ここ最近はヨーロッパが多い気がしますね。IT系エンジニアがウクライナやスウェーデンから来るんです。ウクライナからは、「国は情勢不安定だけど、良い大学を出ているので、日本のIT企業で働きたい」というケースがかなりありました。カンボジアやベトナムといった東南アジアの方もかなり多いです。インドの方もいましたが、震災後はインドの優秀なエンジニアはほとんど帰国し、その後は皆アメリカに渡ったようです。

──インドのエンジニアはなぜ日本に戻らず、アメリカに渡るのですか。

若松 日本とアメリカでは収入が全く違うからです。例えば今ビザ申請を頼まれている新卒22歳のアメリカ人はITエンジニアとして日本に派遣予定なのですが、初任給40万円です。かなり高額に思われますが、アメリカの大企業の日本法人では、それぐらいが普通なのだそうです。中国などアジア諸国に関しても、例えば上海や北京はもう日本を追い越しているようで、「日本のほうが給料が安いから上海で就職します。日本には魅力を感じません」と話している中国人の方もいらっしゃいました。

──日本の収入が低くて魅力もないとなると、入管手続も減ってしまいますね。

若松 今のところまだ順調ですが、本当にそう思いますね。私と違ってさらに難しい在留特別許可、いわゆる不法在留している方たちに特別許可を取らせる仕事を専門にしている行政書士も多く、そうした同業者は仕事はなくならないと言っています。

「資格プラスアルファ」を意識して

──行政書士には他にどのような業務がありますか。

若松 行政書士業務にもいろいろ選択肢があります。入管だけでなく、例えば建設業の許認可も独占業務ですから、建設業専門で活躍している方もいます。あとは風営法といって、パチンコ屋やバー、キャバレーなど風俗営業店の営業許可申請をする仕事があります。こちらは仕事はあるのに受ける方が少ないので、専門にするととても大きな需要があると思います。ただし、ちょっと怖い感じの方とやりとりすることもありますし、警察とも渡り合うので、気丈で仕事もきちんとできるタイプの方が向いているかもしれませんね。

──入管業務以外に、行政書士業務で何か次の一手を考えてらっしゃいますか。

若松 もちろん考えています。士業で成功している方は、社労士で言えば労働保険事務組合を持っていたり、買い取ったりと強みを持っている方も多いです。私にとって、将来強みにしていきたいものは、やはり「英語力」です。
 そこで今、社労士事務所や弁護士事務所の中でお客様との間に入り、社会保険や入管業務等の専門分野の通訳をする仕事をやろうと考えています。今も時折、外資系企業に入社する外国人の方に「社会保険とはどういうもので、どのような手続きが必要か」を英語で説明しています。これらの業務も主要業務にプラスして収入を増やしていきたいと考えているので、継続して英語のブラッシュアップをしています。

──英語力プラス労働基準法等の法律的知識を蓄えた上でできる、専門的な仕事ですね。

若松 そうですね。社労士は、企業と外国人との間に入って社会保険について説明したり、どれだけ収入があるのか、どれだけ控除されるのか、あるいは社会保障協定、労働基準法、就業規則についても説明してあげたりしなければなりません。それはかなり大変なことなので、専門職プラス強みを活かした仕事として、今後需要の出てくる分野だと思います。

──強みは、最初に学んだ語学力ということですね。

若松 資格に「プラスアルファ」がないと難しくなってきたかなと思っています。今後は語学力を活かす一環として、英語が得意で外資系企業の社労士として活躍している女性社労士と、「在日就労外国人をトータル的にサポートできる業務」を目的としたビジネスができないかと模索しています。具体的に何ができるのかはまだ漠然としていますが、例えば解雇されたり労働条件が違っていたりなどといった、在日外国人の悩みや相談に対して受け皿を作っていければと考えています。いずれは、社労士業務や入管業務の枠を越えて、幅広く働く外国人をサポートできるサービスを広げていきたいですね。

── 今後はどの位の期間、働き続けたいとお考えですか。

若松 まだまだ20年以上働かなければとは思っています。けれども、法改正に追いついていくのも年々大変になってきていますし、英語も日々頑張ってブラッシュアップするように努力していますが、これもあと20年も頑張らないといけないと思うと、体力的にきついものを感じますね(笑)。

──行政書士と社労士、2つの資格を取って良かったと思われますか。

若松 心からダブルライセンスで良かったと思いますね。結果的に今は行政書士中心ですが、両方取っていたからこそ、今があると思います。時には入管業務を依頼してくださったお客様から就業規則の仕事をいただいたり、社労士業務に発展したりすることも多々あります。
 何より自分にとって良かったのは、メリハリが利くことです。いくら入管業務が好きといっても、ずっとやっているとやはり違うことをやりたいと思うことがあるんです。逆に社労士業務をやっていた時は給与計算や社会保険手続ばかりなので、「入管業務も来ているから、こっちをやってからにしよう」と切り換えて、メリハリをつけていました。1つの資格だったら、おそらく続かなかったでしょう。

── ダブルライセンスで活躍できることが活力になっているのですね。

若松 会社員時代と違って、自分で仕事を選べるようになったのがいいのかなと思います。会社員の時は毎日何かしらストレスを感じていましたが、自分で仕事を選べる今は、全くストレスを感じません。

──最後に、行政書士や社労士をめざして勉強中の受験生に向けて、メッセージをお願いします。

若松 社労士や行政書士という資格は取っても食べていけないとよく言われます。でも私はそうは思いません。私はそれほど売上が高いわけではありませんが、きちんと営業している人は私と同年代の男性も女性も皆さん成功しています。異業種交流会に出て、色々な方とお会いして業績を伸ばした人もいれば、ホームページを頑張って作り込んで伸ばす人もいます。努力と工夫次第でいつの時代も普通に食べていける職業だと思いますね。ただし、単に「資格さえあれば大丈夫だろう」と思っている方は難しいと思います。
 私の経験でいうと、入管をやりたい方がプラスで持っているといいのはやはり語学力です。私が良い例になると思いますが、得意な語学と士業としての業務をプラスするとシナジー効果が生まれます。ただ、行政書士は今語学ができる方がかなり多いのが現状です。海外留学を経験している人も多いので、私も日々勉強しています。また社労士業務で成功している人は、人事の経験が長く、コミュニケーション能力がとても高い方が多いですね。
 行政書士や社労士をめざしている方は、ぜひ「資格プラスアルファ」を意識しながら勉強してみてください。資格を取ったあとの世界がぐっと広がるはずです。

[TACNEWS 2016年8月号|特集]