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建築士試験と法改正・基準改定
~JASS5(鉄筋コンクリート工事標準仕様書)の改定について~(第2報)
JASS5(鉄筋コンクリート工事標準仕様書)の改定について
2022年11月に、「JASS5 鉄筋コンクリート工事標準仕様書」が改定されました。
地球温暖化抑制や資源循環に対する要求の高まりとともに、SDGs達成への社会の共通目的化、情報技術の進歩などの時代の変化に適応するための改定です。具体的な改定内容が判明しましたので、今回は実際の試験対策を述べていきます。
改定の内容は、概ね次のとおり多岐にわたります。
1. 用語の見直し・追加
2. 構造体等の要求性能の見直し
3. コンクリートの種類・品質の基準の見直し
4. コンクリートの材料・調合に対する細目の見直し
5. コンクリートの発注、受入れ、運搬、打込み、締固め、養生といった一連の工程の見直し
6. 型枠工事の基準の見直し
7. 鉄筋工事の基準の見直し
8. 品質管理及び検査に関する基準の見直し
9. 特殊コンクリートに関する基準の整備
鉄筋コンクリート工事の実務に携わる皆様等にとっては、いずれも重要な改定ですので、講習会や勉強会等によって、改定内容の把握をする必要があります。
一方で、これらの改定項目が令和5年の建築士試験にすぐに出題される可能性はそれほど高いとは考えていませんが、過去に出題された本試験問題が今回の改定によってそのまま使えなくなる箇所は確認しておく必要があります。
直近10年の問題に絞って、主要なものを列記しますので、確認をしておきましょう。多くは、問題そのものではなく、解説や問題の理解に関連する改定となります。
出題年 | 項目 | 改定のポイント |
---|---|---|
H25-No.8 H28-No.8 |
鉄筋の結束 | 帯筋・あばら筋は、柱・梁の四隅の交点は全数を結束するが、あばら筋の下端隅部は半数を結束すればよくなった |
H26-No.12 H30-No.12 R3-No.12 |
コンクリートのかぶり厚さ | 屋内・屋外の区分に代えて、一般劣化環境が、非腐食環境と腐食環境の区分とされた |
H30-No.8 | スペーサーの配置 | スペーサーは、スラブ配筋で間隔0.9m程度、端部0.1m以内、梁配筋で間隔1.5m程度、端部0.5m程度とされた |
R1-No.8 | 鉄筋の継手位置 | 柱主筋の継手位置は、梁上端から上に500㎜以上かつ柱内法高さの3/4以下とするが、最下階は、柱せい以上とされた |
H25-No.9 H28-No.9 H29-No.9 R2-No.9 |
型枠の側圧 | 打込み速さや部位にかかわらず、コンクリートの単位体積重量(W0)×打込み高さ(H)とされた |
R3-No.3 | コンクリートの練混ぜ水 | 計画供用期間の級が超長期の場合と高強度コンクリートの場合にスラッジ水を用いないこととなった |
H26-No.10 | アルカリシリカ反応 | 「アルカリ骨材反応」の用語が「アルカリシリカ反応」となった |
H26-No.10 | 水セメント比 | 「水セメント比」の用語が、強度や中性化に関する規定では「水結合材比」となった |
H28-No.10 R2-No.11 |
単位セメント量 | 「単位セメント量」の用語が「単位結合材量」となった |
H30-No.11 | 暑中コンクリート | 適用基準は日平均気温の日別平滑値25℃超とされた |
その他の試験対策上、確認したい改定項目として、以下があげられます。
・構造体等の要求性能として「環境性」が追加され、「資源循環等級」、「低炭素等級」が新設された。
・高強度コンクリートの定義が、従来の設計基準強度36N/㎟超から48N/㎟超に変更された。これにより、48N/㎟以下は一般仕様として扱われることになる。
・コンクリートの計画供用期間の級について、「超長期」が200年から100年超となった。
・せき板の存置期間を定めるためのコンクリートの材齢について、中庸熱ポルトラントセメント等で20℃以上は7日、10℃以上20℃未満は9日と追加された。
・構造体コンクリートの検査方法が、従来のB法に加えてA法(受入検査と構造体コンクリート強度検査の供試体を併用する方法)が規定された。
・特殊コンクリートに関する規定が整備され、低収縮コンクリートや現場練りコンクリートなどの用語も新設された。
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建築士試験の学科「施工」における出題の出典根拠ともなっているJASS5(鉄筋コンクリート工事標準仕様書)が2022年11月に約10年ぶりに大改定されました。 建築士試験に対するその影響について解説します。(講師:井澤)
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