警察官になるには?仕事内容、試験について詳しく解説

働く警察官の後ろ姿

 警察官と言えば、現場で奮闘する憧れの職業のひとつ!

 しかし、警察官になるには具体的に何をすればいいのでしょうか。「筆記試験や面接等があることは知っているんだけれど…実際どんな試験?」と悩まれている方も多いと思います。

 本ページでは、警察官になるためにはどうすれば良いか、基本的なところから具体的な試験内容、対策方法、合格のための情報の入手方法などについて解説していきます。

1.警察官とは

 警察官とは、地域の治安の維持・安定を図るための職務に従事する「公安職」の地方公務員です。警察官の仕事内容としては、交番勤務・パトロールなどを担当する地域警察、犯罪捜査などを担当する刑事警察、交通規制や取り締まりなどを担当する交通警察などがあります。
 警察の組織は、東京都に警視庁、各道府県に警察本部が置かれ、警視庁・警察本部ごとに警察官採用試験が実施されます。

警察官の仕事

■地域警察

 取り扱う事件・相談案件は多岐にわたり、交番勤務、パトカー勤務を通じて、管轄地域の安全を守ります警察学校を卒業して最初に担当する仕事になります。

■刑事警察

 事件発生とともに現場に急行し、綿密な実況見分を行い、犯罪の証拠となる各種資料を収集。被害者や目撃者からの話を聞き取り、証拠を一つ一つ積み重ね、地道な捜査により犯人を割り出し検挙します。

■交通警察

 交通事故を防止し、安全で快適な交通社会をつくることが最大の任務。交通死亡事故はもとより、交通事故そのものを減少させることを目標に、道路交通を様々な角度から守ります。

■公安警察

 国際テロ組織、過激派、右翼などによるテロ、ゲリラの未然防止に向けた諸対策をはじめ、各種違法行為の取締りを行います。

■生活安全警察

 身近で発生し、生活に直接影響を及ぼす犯罪の取り締まりのほか、地域住民が犯罪の被害に遭わないための各種防犯活動や、生活の中で抱える様々な問題に対処するための相談受理などを行います。

■警察庁警察官(国家公務員)

 国の行政機関として設置されている警察庁の警察官です。警察庁は、広域組織犯罪に対処するための警察の体制なとについて、都道府県警察を指揮監督しています。

2.警察官になるには

 警察官になるには、各都道府県警察行われている警察官採用試験に合格し、その後警察学校での研修を修了する必要があります。

 試験は採用区分ごとに行われ、大卒程度(上級・Ⅰ類・Ⅰ種)、短大卒程度(中級・Ⅱ類・Ⅱ種)、高卒程度(初級・Ⅲ類・Ⅲ種)の3つに分かれている場合と、A(大卒程度)、B(その他)の2つに分かれている場合があります。

■警察官になるまでの流れ

警察官になるには 流れ

3.警察官になるための条件(年齢、身体基準など)

警察官になるには、各都道府県で実施される警察官採用試験を受験し、合格する必要があります。警察官採用試験は、学歴に応じて試験区分が設定されていますが、誰でも受験できるわけではなく、受験するための条件、受験資格があります。受験資格には、「年齢要件」と「身体基準」があり、大卒程度の試験の場合、次のような条件になっています。

年齢要件(大卒程度)

 警察官採用試験(大卒程度)の年齢要件は、都道府県によって異なります。年齢要件の上限は32歳~35歳程度となっています。主な自治体の受験年齢上限は以下の通りです。

自治体 年齢上限
埼玉県 34歳
千葉県 33歳
警視庁(東京都) 35歳
神奈川県 35歳
京都府 35歳
大阪府 33歳

上限年齢一覧は、令和5年度試験の採用案内を元に作成しています。

受験する際は、必ず最新の採用試験案内をご確認ください。

警視庁の受験資格は各試験の1次試験日を基準として35歳未満となっています。

身体基準(大卒程度)

 警察官採用試験(大卒程度)では、身長・体重・脅威・視力などの身体基準が定められています。

 多くの試験では各基準に「概ね(おおむね)」と記載されており、比較的緩やかな傾向にあります(一部身体要件を撤廃の自治体もあり)が、本格的な学習開始前に各都道府県の人事委員会に確認しておくことをおすすめします。

男性 女性
身長 160cm以上 154cm以上
体重 48kg以上 45kg以上
胸囲 78cm以上
視力 両目とも裸眼視力0.6以上、または矯正視力1.0以上
色覚 正常であること
その他 警察官として職務遂行に支障のない身体状態であること。

4.警察官の採用試験スケジュール

 警察官の採用試験スケジュールについて令和5年度の日程を参照しながら、ご説明します(年度によって試験日程は変わりますので、必ず最新の採用試験案内をご確認ください)。

 一般的に、警察官の採用試験(大卒程度)は、「1次試験」「2次試験」の2段階で実施されています。

 1次試験では、「筆記試験」が課されます。科目ごとの対策が必要な試験です。1次試験を合格したら、2次試験に進むことができます。2次試験は、「人物試験」とも称されるように面接や集団討論等が実施されます。「人柄」重視の試験であることが分かります。

 また、体力検査も2次試験で実施されることが多いようです。2次試験を合格すれば、最終合格となります。

■1次試験例

1次試験例.png

■2次試験例

2次試験例.png

警察官採用試験スケジュールと併願について

 

 令和5年度の警察官採用試験(大卒程度)スケジュールは次の通りでした。試験日が異なっていれば併願することができます

 

 また、多くの自治体が試験を年に複数回実施していますので、希望の自治体の警察官試験について受験失敗を恐れず何度でもチャレンジすることができます。例えば、警視庁警察官Ⅰ類(東京都)であれば、年間に3回試験(4月、9月、1月)が実施されています。


警察官大卒1次試験日程(R5).png

試験種横の〇内の数字は実施回数(第何回目の試験か)を表しています。

上記の併願例は、あくまで1次試験の日程が被らなかった場合に併願を組んだ例です。
自治体ごとの試験の傾向や試験日程を考慮して、無理なく対策可能な範囲で併願を組むようにしましょう。

年に複数回の試験を実施!

  • 警察官採用試験(大卒程度)は、警視庁が年に3回、その他20程度の自治体が年に2回、試験を実施しています。また、同じ自治体を年に複数受験することも可能です。

共同試験でチャンス拡大!

  • 警察官(男性のみ)採用試験には、1度の受験で複数の(第二志望)の都道府県を志望先に選んで併願受験することができる「共同試験」という独自の制度があります。例年、各都道府県が協力して、半数以上の自治体で導入されております。

5.警察官採用試験の内容と対策

第1次試験

 

 教養試験(択一式)・論作文・適性検査などの、主に筆記試験が実施されます。

 1次試験合格者のみが2次試験に進むことができるため、まずはこの筆記試験の対策を万全にすることが求められます。


 まずは、どのような出題傾向・傾向・内容なのか調べておきましょう。警察官試験の科目数は多く、試験科目をじっくり学習するには膨大な時間を要します。したがって、本試験での配点と出題数に応じて的を絞った学習が重要です。


教養試験(択一式)

高校までに習った英語、国語、数学、理科、社会のようなものが出題される試験で、マークシート式になっています。

幅広い科目が出題されるため合格レベルに達するまでに時間がかかります。予備校を利用することで学習時間を大きく短縮させることも選択肢の一つに入れておきましょう。

教養試験表.png

数的処理

    傾向


     数的処理はどの試験においても教養試験の中で最も出題数の多い科目です。

     従って、教養試験突破のカギは数的処理の攻略と言っても過言ではありません。公務員受験対策予備校の受験生と独学の受験生との差がつき易  い科目です。


    対策


     過去問分析を基に頻出問題の解法パターンを学び、繰り返し問題練習を行うことが大切です。

     公務員受験対策講座を利用することで、問題が解けるだけでなく、1問あたりに掛ける時間を短縮することができます。

    文章理解

      傾向


       文章理解は、現代文・英語・古文で構成されており、問題のレベルは大学入学共通テストレベルです。多くの受験生が得意科目にしている傾向にあ りますので、確実な得点力が求められます。


      対策


       文章理解は、読解のテクニック・選択のテクニック、即ち「コツ」を体得することで、確実な得点源とすることができる科目です。繰り返しの問題練習はもちろんですが、普段から新聞や小説などを読み、文章を読むことに慣れておくことも、有効な学習法のひとつです。

      社会科学

      傾向と対策


      社会科学は、政治・経済・社会・法律といった科目で構成されている、一般知識科目の中で出題数が最も多き分野です。

      頻出テーマを中心に、万遍なく学習することが求められます。

      人文科学

      傾向と対策


      人文科学は、世界史・日本史・地理・思想・文学芸術といった主に文系科目で構成されています。

      どの科目も1~3問程度の出題ですが、各科目の学習量が膨大なため、頻出テーマに絞った効率的な学習をすることが大切です。

      自然科学

      傾向と対策


      自然科学は、数学・物理・化学・生物・地学といった主に理系科目で構成されています。

      文系の受験生を中心に苦手としやすい分野ですが、基礎的な事項からの出題も多いので、頻出テーマを中心に一通りの学習をしておくことが大切です。

      論作文試験

       字数:600字~1,200字程度/時間:60~120分程度

       警察官としての職務に関する課題や近年の犯罪に関する考察などが出題されます。

       まずは文章の書き方の基礎を学び、論作文の予想テーマや今までの出題テーマを実際に自分の手で書くだけでなく、書いた答案を第三者に見てもらい、評価・添削をしてもらうことが、上達のコツです。

      警視庁 出題テーマ例(令和4年度)

      これまであなたが人との関わりから学んだことについて触れ、今後それを警察官の仕事にどのように活かしていきたいか述べなさい。(1000字以上1500文字程度/90分)

      適性検査

       警察官としての適性を見極めるために、クレペリン検査・性格検査などが課されます。

      (試験によっては2次試験で実施の場合もあります。)

      第2次試験


       全ての警察官採用試験で口述試験(個別面接)体力検査が課されます。2次試験の配点比率は、どの自治体でも高まる傾向にあります。1次試験を通過してから、2次試験の対策を始めるスケジュールでは間に合わない受験生が多くなってきているのも事実です。

       

       したがって、早い段階から筆記試験対策と並行して人物試験のための用意をしておく必要があります。

      口述試験

       

       口述試験(個別面接)は、全ての警察官採用試験で課されます。

       面接の時間は、質問カードを中心に行われ、志望動機や自己PRについて、いろいろな角度から質問がなされます。

       また、試験によっては、その日の新聞の一面の記事について意見を求められることもあるため、自己分析・仕事分析はもちろんですが、日々の生活の中で新聞やニュースにも気を配り自分の意見をまとめておくことも有効な面接対策の方法です。

      面接の質問例

      • 志望理由
      • やりたい仕事(部署名・理由)
      • 自己PR
      • 大学生活(ゼミ・サークル活動・アルバイト)
      • 趣味
      • 併願状況

      体力検査


       体力検査は、2次試験または1次試験でどの自治体でも課されます。

       体力検査の内容は自治体により異なりますが、腕立て伏せ・反復横跳び・バーピーテストなどが実施され、受験者の体力をチェックします。


       勉強はもちろん大切ですが、勉強の合間などに、リフレッシュの一環として、ある程度の筋力トレーニングを行うなどしておくことをおすすめします。

      体力検査例

      • 腕立て伏せ
      • 腹筋
      • バーピーテスト(直立と腹ばいを繰り返す)
      • 持久走
      • シャトルラン(20m程度の往復持久走)

      6.警察官試験と他の公安系公務員の併願

       警察官を受験される方は消防官・皇宮護衛官・海上保安官等、他の公安系公務員も併願されるケースが多くなっています。

       これらの試験は日程が被らなければすべて併願受験が可能です。

      公安系公務員.png

             ※試験種横の〇内の数字は実施回数(第何回目の試験か)を表しています。


      7.警察官採用試験は難しい?どんな人が有利?

      ここまで警察官採用試験の内容やスケジュールについて説明してきました。いろいろなやることがあるなという印象ではないでしょうか。実際にどの程度警察官採用試験が難しいのか、どんな人が警察官に合格しやすいのかを解説していきます。

      警察官採用試験は難しい?


      実は近年、警察官採用試験において、1次試験の倍率が2倍を超える自治体は少なくなってきています。

      またそれに伴い、筆記試験のボーダーは5割程度に落ち着きを見せています。


      しかしその一方、自治体の採用データを見てみると、「最終倍率3.0倍」「最終倍率5.0倍」といった数値が並んでいます。

      最終倍率を引き上げている要因は、2次試験で課される「面接試験」です。合否を判断する要素のうち、面接試験が8割近くを占める警察官採用試験は、「人物重視」の試験であると言えるでしょう。

      試験に有利な人は?


      それでは、警察官採用試験にはどんな人が有利なのでしょうか。


      警察官採用試験には、各種試験やスポーツでの活躍が得点に換算され、加点される制度があります。

      全国大会の出場経験や、武道の有段者などは、試験に有利であると言えるでしょう。


      また、インターンシップや警察署見学、ボランティアなどの警察官の業務に直結するような多様な経験がある人も、警察官として求められている人材です。面接試験の重要度が高い警察官採用試験において、こういった経験が有利に働く可能性は非常に高いです。


      まずは、身の回りにどのような経験の機会があるか調べてみるところから始めましょう。


      8.警察官採用試験 学習期間の目安は?

      筆記試験、体力試験、面接など、警察官になるための試験は準備することがたくさんあります。確実に合格できるようになるためには、どの程度の学習期間が必要でしょうか。

      理想は1年間!


      理想的な目安としては、1年間かけて対策することが望ましいでしょう。


      早い方で新年度を迎える1か月前の3月に対策をスタートします。ただし、闇雲に対策を始めることは得策ではありません。

      ある程度ゴールを見据えたうえで対策をスタートさせた方が効率的です。


      予備校では、最終合格に向けて逆算されたスケジュール、洗練されたテキスト・問題集、気軽に利用できる講師によるフォロー制度、直近の合格者による試験の復元情報など、充実の仕組みがあり、最終合格可能性はぐんと高くなります。

      また、TACでは、配点比率の高い面接試験論文試験の対策6~7月から始めることのできるカリキュラムを用意しています。

      熾烈な争いになる警察官採用試験を勝ち抜くために必要なスキルを早期に獲得し、ライバルに差をつけることができるでしょう。


      1年間を目安に、逆算されたスケジュールを筆記試験を効率的に攻略し、

      難関の人物試験を勝ち抜くための人間力を磨いていきましょう!

      9.まとめ 警察官になるには?

      盾を持つ警察官の後ろ姿

       警察官になるには、逆算されたスケジュールが必須です。まずは、試験日までどのくらい日数があって、どのくらいの学習量が必要なのか、さらに1日に捻出できる学習時間を整理してはじめて試験対策のスタートです。

      つまり、難易度必要な学習量効果的な対策方法、優先順位等について「知ること」が重要なのです。独学の場合、そのような情報を一から自分で探らなければなりません。資格の学校TACであれば、高い合格実績をもとに作られたカリキュラムやテキスト、フォロー制度があります。公務員試験という「情報戦」を勝ち抜くために、自分に合った環境を整えることからはじめていきましょう。


      TAC警察官・消防官講座担任 山口輝講師

      この記事の著者 TAC警察官・消防官 担任 山口 輝 講師

       大学時代、公務員試験において多数合格者を輩出していた公共政策ゼミに所属し、国内を中心とする広範な社会問題についてグループプロジェクト型の研究を行ってきた。その後、大学院に進学し行政学(ガバナンス論)を専門に、公務員(官僚)と国民の相互作用について研究。特に、政策形成過程において公務員(官僚)がどのように関わり、責任を果たすのかといった行政責任論に及ぶテーマで論文を執筆した。現在は研究の成果を生かし、政治学系科目をメインに講義を担当。他にも、論文対策、面接対策の指導も行い、端的・的確な指導と持ち前の包容力で、受講生から熱い信頼を受けている。

      警察官・消防官 合格への第一歩はココからスタート!

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