2023年(73回)税理士試験も

TACはズバリ的中!

TAC講師陣が徹底分析
税理士試験を振り返り、傾向を語る

第73回税理士試験を振り返る

本年も真夏の3 日間、税理士試験が行われました。TACでは今年度も対策を行った多くの論点で「ズバリ的中」を実現することができましたが、ここで今年度の本試験を振り返り、その特徴点や傾向についてTAC講師陣に伺いました。今回は簿記・財表・法人・所得・相続・消費の6科目の講師にインタビュー。税理士受験生の方は必見です!

【簿記論】の的中実績

本試験問題 TAC予想問題
〔第二問〕 実力完成答練 第6回〔第一問〕設問2
直前予想答練 第3回〔第三問〕【資料2】11
〔第三問〕【資料2】1 実力完成答練 第2回〔第三問〕【資料2】1
〔第三問〕【資料2】2 実力完成答練 第1回〔第三問〕【資料2】2
〔第三問〕【資料2】5 ⑵ 実力完成答練 第3回〔第一問〕問1
〔第三問〕【資料2】7 直前予想答練 第2回〔第三問〕【資料2】8
〔第三問〕【資料2】8 実力完成答練 第2回〔第三問〕【資料2】11

【簿記論】寺島 加奈子 講師 インタビューをチェック!

「全体の印象」

塚田 それでは、簿記論の寺島先生に今年の本試験について伺います。全体の印象はいかがでしたか?

寺島 今回の本試験は、第一問で特殊仕訳帳制、自社利用目的のソフトウェア、第二問で外貨建取引、第三問で製造業会計の総合問題が出題されました。 全体的なボリュームが少なかったことや、難易度の平易な個所もありましたので、手を付けられる論点が例年よりも多かったのではないでしょうか。

「個々のポイント」

塚田 では、各問について伺います。第一問はいかがでしたか?

寺島 問1で特殊仕訳帳制、問2で自社利用のソフトウェアが出題されました。ボリュームが少なかったので、問2のソフトウェアを慎重に解き、問1で加点要素として残高試算表の金額を中心に部分点が狙えたかがポイントです。

塚田 第一問は問2を中心的に得点を積み上げていく感じですね。では、第二問はいかがでしたか?

寺島 第二問は、為替予約を中心とした外貨建取引の問題でした。難易度の高い問題もありましたが、取捨選択はしやすかったのではないかと思われます。為替予約は、事前・同時・事後予約と複数のパターンが出題されていました。問題のボリュームは多くなかったので一つ一つ仕訳を切って丁寧に解答できたかがポイントです。

塚田 第二問は取捨選択がポイントということですね。第三問はいかがでしたか?

寺島 第三問は、商品売買業及び製造業の決算整理型の総合問題でした。まず、有価証券が出題されなかったことに驚きました。また、見慣れない論点が多くありましたが、取捨選択は比較的しやすい問題だったのではないでしょうか。小口現金・当座預金・固定資産・賞与引当金・退職給付引当金など、正解しやすい箇所を確実に得点できたかがポイントです。

「合格ライン」

寺島 第一問は13~15箇所程度、第二問は13~15箇所程度、第三問は15~19箇所程度です。 得点でいうと、TAC予想配点での個々の問題の合格ラインは、第一問が13~15点、第二問16~18点、第三問が25~29点です。これを基準にすると、ボーダーラインが54点くらいになり、合格確実ラインが62点くらいになるかと思われます。

【財務諸表論】の的中実績

本試験問題 TAC予想問題
〔第一問〕問1 ⑶ 直前予想答練 第3回〔第一問〕2
〔第二問〕問2 ⑴ 直前予想答練 第2回〔第一問〕3 ⑵
〔第三問〕1 ⑴ 実力完成答練 第3回〔第三問〕1 ⑶
〔第三問〕1 ⑵ 全国公開模試〔第三問〕1 ⑶
〔第三問〕2 ⑵ 実力完成答練 第2回〔第三問〕2 ⑶
〔第三問〕2 ⑶ 直前予想答練 第1回〔第三問〕2 ⑶
〔第三問〕4 直前予想答練 第1回〔第三問〕4
〔第三問〕5 実力完成答練 第1回〔第三問〕5
〔第三問〕6 ⑵ 実力完成答練 第4回〔第三問〕7 ⑶
〔第三問〕7 実力完成答練 第3回〔第三問〕7
〔第三問〕9 ⑴ 実力完成答練 第3回〔第三問〕9 ⑴
〔第三問〕9 ⑵ 直前予想答練 第2回〔第三問〕11 ⑴
〔第三問〕12 実力完成答練 第3回〔第三問〕10
〔第三問〕13 実力完成答練 第5回〔第三問〕9
〔第三問〕14 全国公開模試〔第三問〕11
〔第三問〕15 全国公開模試〔第三問〕13

【財務諸表論】渡辺 俊宏 講師 インタビューをチェック!

「全体の印象」

塚田 次に財務諸表論の渡辺先生にお伺いします。財務諸表論の本試験問題の難易度とボリュームはいかがだったでしょうか?

渡辺 本年度の問題は、第一問、第二問の理論問題が7枚、第三問の計算問題が10枚と全体的には標準的なボリューム感でした。

第一問は、「概念フレームワーク」及び「減損会計」からの出題でした。解答することが困難な問題も含まれていましたが、答練などで対策をしていた論点も出題されていましたので、ある程度得点を伸ばすことはできると思います。

第二問は、「純資産会計」及び「会計上の見積りの変更」からの出題でした。昨年に引き続き事例問題を絡めた出題となっており、基本論点を確実に解答するだけでなく、計算の知識も使って解答にあたることができたかどうかがポイントになります。

第三問は、商業が出題されました。ボリュームもそこまで多くなく、比較的解きやすい問題でした。

塚田 理論問題・計算問題の出題は、どのような傾向となっていたでしょうか?

渡辺 近年の理論問題は、空所補充問題や記号選択問題が多く出題されており、従来と比べて論述問題の出題割合が少ない傾向にあります。また、計算の知識を使って解答しなければいけない問題も出題されています。
計算問題は、近年の本試験の傾向を踏襲した論点が出題されていました。

「個々のポイント」

塚田 具体的な出題論点は、「出題論点・難易度表(PDF参照)」のようになるわけですが、各論点のポイントについて簡単に説明してください。

渡辺 第一問について、問1は解答できた受験生が多かったようです。問2は、(2)のBは解答できた受験生が多かったようです。(3)の論述問題は解答できている受講生は殆どいなかったようです。

第二問について、問1(1)から(3)は解答できた受験生が多かったようです。(4)は解答できなかった受験生が多かったようです。また、問2は、全体的に解答できた受験生が多かったようです。

第三問については、標準的なボリュームであり、出題内容も標準的なものでしたので、得点を伸ばすことができた受講生が多かったようです。

「合格ライン」

塚田 受験生の方の出来具合を考慮した上で、合格ラインをお聞きしたいと思います。先ほど挙げていただいた論点のうち、どの程度できていれば合格レベルに達していると考えられるでしょうか?

渡辺 第一問については、問1で7点、問2で5~7点、合計で12~14点程度を得点することが必要と思われます。第二問については、問1で9~11点、問2で8~10点、合計で17~21点を得点することが必要と思われます。第三問については、38~43点を確保することが必要でしょう。

上記内容を踏まえると、本試験問題での合格ラインは、第一問が12~14点、第二問が17~21点、第三問が38~43点程度になると思われます。ボーダーラインが67~78点程度、合格確実ラインが79点程度になると思われます。

【法人税法】の的中実績

本試験問題 TAC予想問題
〔第一問〕問1(4) 全国公開模試〔第一問〕問2(3)
〔第一問〕問2 実力完成答練 第3回〔第一問〕設問1
〔第二問〕問1【資料1】 実力完成答練 第4回〔第二問〕問1
実力完成答練 第6回〔第二問〕問1
〔第二問〕問1【資料2】 実力完成答練 第2回〔第二問〕問1【資料7】
直前対策補助問題 第4回 問1【資料6】
〔第二問〕問1【資料3】 直前予想答練 第1回〔第二問〕問5【資料6】
〔第二問〕問1【資料4】 全国公開模試〔第二問〕問1【資料1】
〔第二問〕問1【資料5】 実力完成答練 第6回〔第二問〕問1 5
〔第二問〕問2 直前対策補助問題 第7回 問1【資料3】、【資料6】

【法人税法】松田 好孝 講師 インタビューをチェック!

「全体の印象」

塚田 次に、法人税法について松田先生に伺いましょう。本年度の問題のボリュームと難易度はどうでしたか?

松田 今年の本試験は昨年と同様に理論・計算ともにボリュームが多く、2時間の試験時間の中で最後まで解くのは難しい問題だったという印象を受けました。特に計算については減価償却の計算など、非常にボリュームが多い印象を受けました。なお、難易度については近年の本試験問題の中では特に高いとは言えない印象を受けましたので、解答できる論点を問題の順番どおりに解答していると時間がなくなってしまい、完答することは難しかったと思います。

理論の印象ですが、グループ通算制度、海外取引関係から過大支払利子税制と近年の改正未出題論点の中でも特に重要度が高い論点及び貸倒損失と貸倒引当金というオーソドックスな論点が出題されています。今回出題された論点は直前期の理論ランクでもSランク、Aランクに位置づけられる理論であったことから、正確に覚えていた受講生の方も多いのではないかと期待しています。なお、全ての問題が事例問題であることから、単なる条文の暗記だけではなく、幅広い知識と正確な理解、そして問題に対応する能力が問われる、とても質の高い問題という印象を受けました。

計算については、昨年の別表4、別表1形式の出題とは異なり、過去に出題された大問2題の個別問題形式でした。論点としては法人税の基本論点とも言える、租税公課、受取配当関係、役員給与、減価償却、交際費等、グループ法人税制と寄附金を論点とした問題で、受験指導校でしっかりと学習を進められていた方であれば、かなりの部分で対応が可能な問題であったと思います。ただし、事業年度が6月1日開始となっていたことから、その点については注意を要する問題となっていました。

塚田 そうですか、それでは今年の本試験の合否を分けるとすると、どのあたりがポイントとなりそうですか?

松田 そうですね、理論・計算ともに基本的な論点が多いことから、しっかりと対策をしていれば解答できる箇所が多数あることから、ケアレスミスに注意をしながら、早く、かつ正確に解答し、最終的にどれだけ得点を積み重ねられたかが合否を分けるポイントになると想定されます。具体的には、理論では問1の⑵の②一般財団法人と⑶の通算対象欠損金額以外でどれだけミスなく正確に得点を伸ばせたかがポイントになります。また、計算では多くの受験生は時間が足りないと思われますが、そのような状況でも、まず問1で基本的な加算、減算項目を漏らさず調整した上で、問2のグループ法人税制と寄附金をいかに得点できたかがポイントとなります。

「個々のポイント」

塚田 では次に、個々の論点についてポイントを挙げながら伺いたいと思います。「出題論点・難易度表(下記参照)」を参照しながら、説明をお願いします。

松田 まず理論ですが、今年は3題出題されましたが、問1のグループ通算制度については⑵の「通算子法人となることができるか」の②の一般財団法人は難易度が高く正解できない受験生が多いと思います。また、グループ通算制度は覚える規定が多かったため、用語の意義まで覚えきれている受験生はあまり多くないと思います。それ以外の規定については正確な記載が求められるでしょう。なお、期限後申告に係る通算前欠損金額が損益通算の対象外となる点は難易度が高いため、通算対象欠損金額を正解するのは難しいでしょう。問2の過大支払利子税制については改正未出題論点ということで重要度が高く、正確な記載が求められます。そして問3の貸倒引当金も法人税法では唯一認められている引当金ということもあり、その適用対象法人を含めて、やはり正確な記載が求められると思います。

計算については、昨年出題された暗号資産のように極端に難易度が高い論点がないため、全体的に満遍なく解答する必要があります。ただし、ボリュームが多く時間が不足することで、いくつかの論点は解答ができないかも知れません。

塚田 講師としてぜひ解答して欲しい論点と実際の受験生の解答で、異なっている論点はありますか。

松田 そうですね、理論の問1は重要理論のグループ通算制度からの出題でしたが損益通算の遮断措置の規定が正確に書けなかったとか、問2で過大支払利子税制ではなくて、過少資本税制の規定を書いてしまったという声を聞いています。また、計算の問1は全体的には難易度は高くないものの、事業年度が6月開始であったことに最初は気が付いたものの、解いているうちに忘れてしてしまったとか、ボリュームに圧倒されて普段なら解答できる論点もケアレスミスをしてしまったとか、問2で寄附金に気を取られるあまり譲渡損益調整資産の調整を失念してしまったなどの声を聞いています。普段の答練では解答できる論点でも、本試験でミスなく解答して実力を発揮することは、やはり難しいものなのだなと感じました。

「合格ライン」

塚田 最後に、合格ラインをお聞きしたいと思いますが、出題論点のうち、どの程度できていれば合格ラインに達していると言えるでしょうか?

松田 合格ラインの検討としては、理論については問1から問3まで基本的な規定については、正確な解答が必要となります。また、事例についても、問1の⑵②や⑶、⑷の金額以外は正確な解答が求められるので、問2や問3は金額も含めてどれだけ正解できたかが合否を分けるポイントになると思います。 計算については、特別に難しい論点がないため、時間配分に注意しながら取れる部分をしっかりと見極め、ケアレスミスなく確実に得点できたかどうかがポイントとなります。具体的には、次頁の表の◎、○を取れたかどうか、ということになるでしょう。

最終的には、理論・計算とも、得点できるところをミスなく解答し、合計点で64点以上ならば合格可能性があり、78点以上ならば合格可能性が高いと考えます。

【所得税法】の的中実績

 
本試験問題 TAC予想問題
〔第一問〕問1 実力完成答練 第5回〔第一問〕問2
〔第二問〕問2 実力完成答練 第4回〔第一問〕問2
〔第二問〕問【資料Ⅰ】 直前対策補助問題 第7回【資料2】
〔第二問〕問【資料Ⅲ】 全国公開模試〔第二問〕問1 5・6
〔第一問〕問【資料Ⅲ】 実力完成答練 第2回〔第二問〕問1【資料Ⅰ】7 ⑶
〔第一問〕問【資料Ⅴ】 直前予想答練 第2回〔第二問〕問1【資料Ⅲ】
〔第二問〕問【資料Ⅵ】 直前予想答練 第2回〔第二問〕問1【資料Ⅵ】4

【所得税法】信澤 奈津美 講師 インタビューをチェック!

「全体の印象」

塚田 次に、所得税法につきまして、信澤先生にお話しいただきます。 本年度の試験問題のボリュームと難易度はいかがでしたでしょうか?

信澤 まず、ボリュームについてですが、昨年度と異なり、理論はとても多く、計算は標準的で、全体的にはボリュームの多い問題でした。

次に、難易度についてですが、こちらも昨年度に比べると若干難易度は下がりましたが、易しい問題というわけではなく、理論・計算ともに難易度は高かったと言えます。理論は解答要求が広範にわたる問題でしたので、解答の柱を挙げきれなかった受験生も多かったようです。

計算は、総合計算問題1題の出題でしたが、難易度は高く、基本論点をケアレスミスなく解答できたかどうかがポイントになりそうです。

塚田 ボリューム・難易度ともに昨年度と同様に、全体的にボリュームは多く、難易度も決して易しい問題ではなかったということですね。 次に出題傾向の変化はあったのでしょうか。

信澤 理論に関しては、昨年度と同様に2題形式でしたので、出題の形式に変化はなかったと言えます。なお、昨年度までは配点が示されていませんでしたが、本年度は問1が30点、問2が20点と示されていましたので、解答にあたっての目安になったと思います。出題傾向については、問1は応用理論で、問2は個別理論の集合体でしたが、改正論点の特定非常災害まで解答を要求される出題でした。

計算に関しては、昨年度と同様に総合計算問題が1題という出題でした。なお、昨年度と比較すれば、ペース配分が比較的しやすい問題でしたので、基本論点に時間をかけることができたと思います。

「個々のポイント」

塚田 では続きまして、個々のポイントについてお聞きします。実際に出題された論点は、「出題論点・難易度表(下記参照)」のようになるわけですが、その論点のポイントについて簡単に説明してください。

信澤 第一問の問1は、上場株式の配当を受けた場合の取扱いについて、理解している内容からどれだけ引き出せたかがポイントになります。もれなく解答することができたかどうかが試されている問題でした。

また、第一問の問2は、災害損失についての個別理論の集合体でしたので、こちらは暗記ができていたかどうかがポイントになります。

次に、第二問の計算については、一見解きやすそうに見えますが、難易度は高かったです。判断に迷うところや計算が複雑なところを後回しにして、基本的な論点をいかにケアレスミスせずに解答することができたかどうかがポイントになりそうです。

塚田 理論については、理解をしながら学習ができていたか、1題でも多く理論を暗記できたかがポイントになり、計算については、得点できる基礎的な論点をいかにケアレスミスなく解答することができたかがポイントになりそうですね。

「合格ライン」

塚田 最後に、合格ラインをお聞きしたいと思いますが、どの位できていれば合格レベルに達していると言えるでしょうか?

信澤 まず、第一問の問1については、上場株式の配当を受けた場合の取扱いについて正確に書けたかどうかがポイントです。問2については、各種資産の災害損失について理論マスターどおりに書けたかどうかがポイントになると思います。次に計算については、先程、塚田先生がお話しされた通り、基本項目で確実に得点をし、基礎点を確保することが必要でしょう。

塚田 それを具体的に点数でいうと、何点となるのでしょうか。

信澤 ボーダーラインが第一問32点、第二問24点、合格確実ラインが第一問40点、第二問32点程度になるのではないでしょうか。

【相続税法】の的中実績

本試験問題 TAC予想問題
〔第一問〕問2 上級演習 第7回〔第一問〕問1
〔第二問〕【資料1】3 ⑴ 宅地F 実力完成答練 第3回〔第二問〕3 ⑷ 宅地Q
直前予想答練 第3回〔第二問〕4 ⑶ 宅地1
〔第二問〕【資料1】3 ⑵ 宅地G 直前対策補助問題 第8回〔第二問〕3 ⑷ 宅地 J
〔第二問〕【資料1】3 ⑶ H社株式 実力完成答練 第5回〔第二問〕3 ⑵ ① S社株式
実力完成答練 第6回〔第二問〕3 ⑹ O社株式
実力完成答練 第3回〔第二問〕3 ⑸ R社株式
直前予想答練 第3回〔第二問〕4 ⑻ M社株式

【相続税法】阿部 史生 講師 インタビューをチェック!

「全体の印象」

塚田 次に相続税法の阿部先生にお話しいただきます。本年度の試験問題のボリュームと難易度はいかがでしたか?

阿部 理論は二問形式、計算は総合計算問題一問と、出題形式は例年どおりでした。

理論は二問とも事例理論であり、解答スペースが答案用紙4枚とコンパクトであることや、自分の言葉で説明しなければならない部分があることも、近年続いている傾向です。解答量は多くありませんでしたが、予想Cランクの規定や一昨年に出題されたばかりの規定が出題されたりと、難易度の高い問題だったと言えるでしょう。

計算は、出題論点は少ないのですが、法人税法等の知識が必要な問題や思わぬところにトラップがしかけられていて、計算力のある人でも正解するのが難しい問題ばかりで、こちらも大変難易度は高かったですね。

ただし、一人の受験生だけでなく、全受験生が公平に難しいと感じているわけですから、むやみに恐れることなく、常日頃から申し上げているとおり、できる箇所を確実に拾うことが重要です。

塚田 試験傾向に何か変化はありましたか?

阿部 理論・計算共に新しい試験委員に変わりましたが、理論については難易度は高かったものの、過年度の傾向を踏襲した出題だったと言えるでしょう。目新しかったのは、理論の配点が問題文に明示されていたことで、解く際の時間配分に多少は役に立ったかもしれませんね。

対して計算については、昨年までとは違う点が多く、かなり異質な問題でした。財産評価は宅地と取引相場のない株式しか出されませんでしたし、一つの財産評価に複数の論点が詰め込まれた複合的な出題が多く、解くのに時間がかかるものばかりでした。一筋縄ではいかないと言いましょうか、大変緻密に作られた問題という印象を受けましたね。

「個々のポイント」

塚田 続きまして、個々の論点のポイントについて説明してください。

阿部 はい。まず、理論問1についてですが、小規模宅地等の特例についてはAランクに挙げていましたが、特定居住用宅地等の意義は、出題サイクルがまだ早いということもあって、しっかり暗記して試験に臨んだ人は少なかったのではないでしょうか。規定の記述で高得点を取ることは難しいでしょうから、特定居住用宅地等に該当するかどうかの判定は正解して欲しかったですね。また、時間に余裕があれば、措法69の4①を記述しても加点が見込めるでしょう。

理論問2のみなし個人については、平成30年度、令和3年度と、本試験で立て続けに出題され、また、年明けの上級演習で法66④を一度取り上げただけでしたから、精度の高い記述ができた人は少なかったでしょう。合格するためには、問の⑴は、課税関係の説明でしっかり得点するとともに、法66④の規定を挙げることが最低限必要でしょう。その上で問の⑵は、法66の2①だけでも挙げることができれば、大変有利になると思います。

また、問1、問2とも規定のほかに事例に則した取扱いを自分の言葉で説明しなければならない部分があったのですが、これを苦手とする人がいまだに多いですね。しかし、今後もこの傾向は続く可能性がとても高いですから、丸飛ばしすると印象が良くありません。怖がらずに、とにかく何か書くだけでも印象はかなり違うと思いますよ。

計算は、取得財産の評価額を正解することはかなり困難ですから、計算過程で部分点を積み上げられたかどうかがポイントとなるでしょう。財産評価以外の論点は、基本的なものばかりでしたから、そこはミスなくきっちり拾うことも大変重要です。また、答練では時間切れで手がつけられないことが多い税額計算も、今回は解答することが可能なボリュームでしたから、配偶者の税額軽減等の配点も確実に拾いたかったところです。

塚田 受験生の出来と、講師から見てできて欲しい論点に違いはありますか?

阿部 思うような答案作成ができなくて肩を落としている人が多いようですが、自分一人ならともかく、ほぼ全受験生が同じように感じているわけですから、できなかった点を数えて落ち込むのは、意味がありません。基本的な論点をミスなく拾えたかが、合格するための最重要ポイントです。また、理論も計算も、個々の論点の難易度が高く、ボリュームも多くなかったため、受験生間の差がつかないことが予想されますから、初学者も合格が充分期待できる問題だったと言えるでしょう。

「合格ライン」

塚田 では最後に、受験生の出来を踏まえた上で、合格ラインをお聞きしたいと思いますが、どの程度できていれば合格レベルに達していると言えるでしょうか?

阿部 そうですね。理論については、自分の言葉で説明しなければならない箇所は、多少精度が低くても、とにかく書いて部分点を拾うことが大切です。問1は、特定居住用宅地等の判定が正しければ、用語の意義の条文があやふやであっても、合格は充分狙えます。問2の課税関係は、設例に示されている具体的な金額を用いて説明できれば大きなアドバンデージとなるでしょう。そのうえで、法66④か法66の2①のいずれかの条文を挙げることができればさらに安心できますね。

計算は、繰り返し申し上げるようですが、財産評価は計算過程で部分点を積み上げ、それ以外の基本的な論点の配点を確実に拾えれば、合格答案となるでしょう。

塚田 それを具体的に点数でいうと、何点となるのでしょうか?

阿部 合格確実ラインは、第一問(理論)が31点、第二問(計算)が38点、ボーダーラインは、第一問が24点、第二問が30点くらいになるものと考えています。

【消費税法】の的中実績

         
本試験問題 TAC予想問題
〔第一問〕問1 直前対策補助問題 第4回〔第一問〕問1
実力完成答練 第2回〔第一問〕問1 ⑴
合格情報補助問題〔第一問〕問2 ⑵
〔第一問〕問2 ⑵ 直前対策補助問題 第3回〔第一問〕問2
理論ドクター P203
〔第一問〕問2 ⑶ 直前対策補助問題 第1回〔第一問〕問2
〔第二問〕問1 実力完成答練 第2回〔第二問〕問1
〔第二問〕問1 実力完成答練 第1回〔第二問〕問1 3 ニ・ヘ
〔第二問〕問1 全国公開模試〔第二問〕問1 ⑸ ヌ
〔第二問〕問2 全国公開模試〔第二問〕問1
〔第二問〕問2 実力完成答練 第1回〔第二問〕問2【資料1】
〔第二問〕問2 実力完成答練 第3回〔第二問〕問1【資料5】 イ (ハ) A
〔第二問〕問2 全国公開模試〔第二問〕問1 ⑸ ロ (イ)(ハ)(ニ)(ホ)
〔第二問〕問2 全国公開模試〔第二問〕問1 ⑸ ハ・ヘ

【消費税法】藤本 悟史 講師 インタビューをチェック!

「全体の印象」

塚田 次に、消費税法につきまして、藤本先生に伺いましょう。本年度の試験問題のボリュームと難易度はいかがでしたでしょうか。

藤本 ボリューム、難易度共に例年と比較すると控えめであった印象です。

理論については、例年の出題傾向であった個別理論の出題がなく、全て事例理論としての出題でした。問題文自体は長く、読み取りには時間を要するものの、解答要求事項自体は膨大ではなく、ボリュームとしてはやや多い程度に収まった印象です。計算においては、解答に時間を要する難易度も高い納税義務の判定や簡易課税制度の適用の有無の判定が、今年は全く出題されませんでした。納税義務の未出題によりボリューム、難易度共に大きく引き下げられた本試験という印象を受けました。但し、その一方で消費税法の基礎的な部分である課非判定や課税仕入れ等の区分については難易度が高めであり、決して易しいものではありません。

計算のボリューム自体は多くはありませんでしたが、取引内容や対応関係などの把握に時間を要するような問題でした。理論、計算共に全体的にボリュームや難易度が高めである一方、内容としてはストレートな問題で、指示出しも丁寧にされていました。全体的にストレスは少なく比較的解答しやすい問題構成となっており、体感として難易度が低めと感じた方もいるかもしれません。

塚田 次に、試験傾向は例年と比べて大きく変わりましたか?

藤本 今年は例年と比べ、大きく試験傾向が変化しました。全体の大きな変更点として、問毎に点数配分が明記されていました。例年までは第一問50点、第二問50点の点数配分のみしか明記がありませんでしたが、今年は下記のように各大問毎に点数の内訳が明記されました。
第一問 問1:30点 問2:20点/第二問 問1:25点 問2:25点

上記の明記から、ボリュームが少なく点数配分の高い問題から解答するなど、いつもと異なる戦略が求められました。理論については、近年の出題傾向は「個別理論+事例理論」の2問構成でしたが、今年は「事例理論+事例理論」の2問構成でした。また、近年の出題傾向は、問題文が少なく事例理論が4~5題程出題されていたのですが、今年は問題文が長く事例理論は3題と、近年の出題傾向と異なりました。計算についても、大きな出題傾向の変化がありました。今年の本試験は中規模程度の総合問題の2題形式の出題でしたが、いずれも原則課税による出題でした。昨年以前の本試験では、総合問題の2題形式であれば原則課税及び簡易課税の問題で出題されており、原則課税2題での出題は、少なくとも過去10年の間では初の出題です。

また、消費税法の大きな論点である納税義務の有無の判定及び簡易課税制度の適用の有無の判定が全く出題されず、問題文の指示で与えられていました。納税義務の判定が全く出題されなかったのは、少なくとも過去10年の間では初です。ただ、問題文の指示で原則課税であることが明らかと判断できたため、原則課税と簡易課税の判定で迷うことはありませんでした。総評として、大きく出題傾向に変化が見られた本試験だったと言えます。

塚田 最近のタイムリーな話題が出題される傾向にありますが、今年はいかがでしたか。

藤本 タイムリーであった居住用賃貸建物が理論において出題されました。本年に話題になった輸出物品販売場に関する事項については出題がされませんでした。居住用賃貸建物については、施行から数年が経過し、整備がされてきたところでの出題であったように思われます。 また、計算においては、例年に引き続き軽減税率が多く出題されていました。税理士試験においても、標準税率及び軽減税率の複数税率での出題がスタンダードになっているように思います。

「個々のポイント」

塚田 では続きまして、受験生の出来具合についてポイントを絞って伺います。
実際に出題された論点は、次頁の表(PDF参照)のようになるわけですが、それぞれの論点のポイントについて簡単に説明してください。

藤本 第一問の問1は、最重要理論である居住用賃貸建物の出題でした。答練でも出題していた論点になりますので、点数を確保しておきたい問題でした。また、余裕があれば、居住用賃貸建物に付随する用語の意義を積極的に記載し、加点を狙っていければより良い答案になったように思います。
第一問の問2は、事例問題の出題でした。例年は事例問題が4~5題程出題されていたのですが、本年は3題と少ない出題でした。問2⑴は課税期間の短縮の出題でした。答練では事例形式での出題はしませんでしたが、基本的な内容であるため、何とか対応して欲しい問題です。問2⑵は、軽減税率制度に係る出題でした。軽減税率については計算にも繋がる論点であるため、確実に得点しておきたいところです。食事の提供の意義については、書けていればアドバンテージになるでしょう。問2⑶は、金銭債権の譲渡に係る出題でした。類似問題は答練で多く出題しているため、確実に得点をしたいところです。計算については、納税義務の判定や簡易課税判定がなかったことによりボリュームが少ない一方、課非判定や課税仕入れ等の区分は難易度が高めでした。

第二問の問1は、薬局、介護事業、高齢者住宅、化粧品販売店といった、非課税売上を多く計上する事業をメインとした出題でした。各事業毎のポイントは下記のとおりです。
・薬局
保険適用の調剤薬品は非課税売上、保険適用外の調剤薬品や市販薬は課税売上に計上する。
・介護事業
通所介護は、介護保険法に定められているもので、全て非課税売上に計上する。また、介護事業に係る支出は、その他の資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ等に該当する。
・高齢者住宅
サービス付き高齢者住宅は、介護保険法や社会福祉法などの非課税には該当せず、個々で課税売上、非課税売上を計上する。また、食事の提供は軽減税率に該当する。また、サービス付き高齢者住宅に係る支出は、それぞれの売上と対応させて課税仕入れ等の区分を行う。
・化粧品販売店
輸出物品販売場による売上を輸出免税等として計上する。また、化粧品販売店に係る支出は、課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ等に該当する。
上記のうち、介護事業や高齢者住宅については、他の法律が絡むものであるため、解答に悩むところでした。対応関係を把握し、整理して解答できたかがポイントです。問2は不動産関係の出題でした。ボリューム自体は多くはないものの、解答に時間を要する著しい変動が出題されていました。著しい変動については、過年度の課税売上割合は与えられていたため、通常よりは時間を要さず、解答できればアドバンテージになります。不動産賃貸・不動産販売・その他の事業で各事業における売上や仕入れの適用関係を整理できたかがポイントです。

塚田 受験生の出来具合として、どの部分について、どのような間違いが多かったのでしょうか。

藤本 計算においては、第二問1の出題である、他の法律(高齢者の居住の安全確保に関する法律、介護保険法)が絡む部分については、解答に悩んだ受験生が多くいました。また、課税仕入れ等の区分についても、対応関係を把握しきれなかった受験生が多かった印象です。また、第二問2の著しい変動については、時間が足りずに解答出来なかった受験生が多かった印象でした。

「合格ライン」

塚田 では最後に、受験生の出来を踏まえた上で、合格ラインをお聞きしたいと思いますが、先程挙げていただいた論点のうち、どの位できていれば合格ラインに達していると言えるでしょうか。

藤本 第一問の問1:30点、問2:20点の配点のうち、問1は「26点前後」、問2は「15点前後」、第二問の問1が25点、問2が25点の配点のうち、問1は「19点前後」、問2は「21点前後」になるかと思います。

塚田 全体の点数でいうと、合格ラインは何点となるのでしょうか。

藤本 理論と計算どちらもバランス良く解答することが求められるため、先程の単純合計とはいかず、合計で、合格確実ラインが79点前後、ボーダーラインが70点前後になるのではないでしょうか。

【酒税法】の的中実績

本試験問題 TAC予想問題
〔第一問〕問1 ⑶ 実力完成答練 第1回〔第一問〕3
〔第一問〕問2 実力完成答練 第1回〔第一問〕2
〔第二問〕B 直前予想答練 〔第二問〕A
〔第二問〕C 直前予想答練 〔第二問〕D
〔第二問〕D 全国公開模試 〔第二問〕B
〔第二問〕E 実力完成答練 第2回〔第二問〕G
〔第二問〕G 直前予想答練〔第二問〕G
〔第二問〕資料7 全国公開模試〔第二問〕資料8
〔第二問〕資料9 実力完成答練 第1回〔第二問〕資料8
〔第二問〕資料10 全国公開模試〔第二問〕資料11
〔第二問〕資料12 全国公開模試〔第二問〕資料7
〔第二問〕資料13 全国公開模試〔第二問〕資料9

【固定資産税】の的中実績

本試験問題 TAC予想問題
〔第一問〕問1 実力完成答練 第4回 〔第一問〕問1
全国公開模試〔第一問〕問2
〔第二問〕問2 実力完成答練 第1回〔第一問〕 問1
〔第二問〕問1 実力完成答練 第1回〔第二問〕 問1
直前予想答練〔第二問〕問1
〔第二問〕問2 実力完成答練 第3回〔第二問〕 問2
全国公開模試〔第二問〕問2

 【事業税】の的中実績

本試験問題 TAC予想問題
〔第一問〕問1(1) 上級演習 第7回〔第一問〕問2
〔第一問〕問1(2) 上級演習 第7回〔第一問〕問1
〔第一問〕問2 実力完成答練 第3回〔第一問〕(設問2)
〔第二問〕問1【資料】3 上級演習 第6回〔第三問〕【資料】3
〔第二問〕問2 実力完成答練 第2回〔第二問〕

【住民税】の的中実績

本試験問題 TAC予想問題
〔第一問〕問1 実力完成答練 第1回〔第一問〕問1
直前予想答練〔第一問〕問1
〔第一問〕問2 実力完成答練 第4回〔第一問〕問2
〔第二問〕【資料】⑴ ①、③ 実力完成答練 第2回〔第二問〕【資料】⑴ ①、②
直前予想答練〔第二問〕【資料】(1) ①
〔第二問〕【資料】⑴ ④ 実力完成答練 第2回〔第二問〕【資料】⑴ ③
〔第二問〕【資料】⑴ ⑦ 実力完成答練 第3回〔第二問〕【資料Ⅰ】⑻
〔第二問〕【資料】⑸ ② 実力完成答練 第3回〔第二問〕【資料Ⅱ】⑴
〔第二問〕【資料】⑸ ⑤ 直前対策補助問題 第2回【資料Ⅰ】⑻
〔第二問〕【資料】⑹ ① 直前対策補助問題 第3回【資料Ⅱ】⑵ ①、②

【国税徴収法】の的中実績

本試験問題 TAC予想問題
〔第一問〕問1 ⑴ 全国公開模試〔第一問〕1 問1
〔第一問〕問1 ⑶ 上級演習 第6回〔第一問〕2について 問6
実力完成答練 第4回〔第一問〕2について 問6
〔第一問〕問3 上級演習 第3回〔第一問〕4について
〔第二問〕問1 実力完成答練 第4回〔第二問〕問1
上級演習 第5回〔第二問〕問1、問2
〔第二問〕問2 上級演習 第5回〔第二問〕問3、問4

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