賃貸不動産経営管理士と宅建士・マンション管理士・管理業務主任者・業務管理者の違い

 

賃貸不動産経営管理士と宅建士・マンション管理士・管理業務主任者・業務管理者の違い

賃貸不動産経営管理士は、2021年に国家資格になった比較的新しい不動産系資格です。他にも不動産に関わる資格はいくつかあります。特に、「宅地建物取引士(宅建士)」「マンション管理士」「管理業務主任者」は賃貸不動産経営管理士との違いがわからない・・・という方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、賃貸不動産経営管理士と関連資格との違いについて、仕事内容や試験・合格率などを比較しながらご紹介します。また、不動産系資格と混同しやすい「賃貸住宅管理業における業務管理者」もあわせて説明します。

 
 

賃貸不動産経営管理士と宅建士の違いとは?

賃貸不動産経営管理士は「賃貸住宅の管理」の専門家なのに対し、宅地建物取引士(宅建士)は「売買・賃貸借など不動産取引」の専門家です。
賃貸住宅を例にとると、入居者募集から入居するまでが宅建士、入居してから退去までの物件管理が賃貸不動産経営管理士の活躍フィールドと言えます。
宅建士は毎年約20万人が受験するほどの有名な資格である一方、賃貸不動産経営管理士も国家資格化後は受験者数が3万人を超えるなど知名度が上がってきています。

仕事内容の違いは?

それでは、仕事内容の違いをもっと詳しくみてみましょう。

宅地建物取引士(宅建士) 賃貸不動産経営管理士
活躍フィールド 不動産の売買や賃貸借の媒介(仲介)を行います。
例)
・入居者募集の広告を出す
・賃貸物件のオーナーと入居者を結ぶ賃貸借契約の媒介
賃貸住宅管理業の専門家
賃貸物件の建物や設備の保全と賃料等の管理、物件オーナーや入居者対応を行います。
例)
・設備の修繕手配
・退去時の原状回復・敷金精算
・オーナーへ経営アドバイス
独占業務
(資格保持者にしかできない業務)
宅地建物取引業の専門家
あり
・取引物件の重要事項の説明
・重要事項書面への記名
・37条書面(契約書)への記名
なし
※「業務管理者」としての業務はあり。
事務所への設置人数 従業員5人につき1人以上 1人以上

このように、賃貸不動産経営管理士と宅建士では不動産業の中でも活躍フィールドが異なります。ただ、現実には9割の「賃貸住宅管理業者」が「宅建業」を兼業しています。そのため、賃貸不動産経営管理士と宅建士の両方を持っていると賃貸住宅の入居者募集から退去後までをトータルで担える人材になれるでしょう。

試験や難易度の違いは?

宅建士試験は例年10月第3日曜日、賃貸不動産経営管理士試験は1か月後の11月第3日曜日に行われます。試験時間はどちらも2時間です。問題数も50問四肢択一のマークシート形式で実施されるなど、試験形式は共通する部分が多いです。

難易度はどちらが高い?

では、難易度はどうでしょうか。近年の合格率と合格点は以下の通りです。

合格率 合格点
宅建士試験 約15~18% 34~38点/50点
賃貸不動産経営管理士試験 約30% 34~40点/50点

宅建士試験のほうが合格率が低いですね。
合格に必要な学習時間も、宅建は300~400時間程度、賃貸不動産経営管理士は200時間程度と言われています。※いずれも資格予備校利用の場合。
ただし、賃貸不動産経営管理士も2021年に国家資格になったことで今後は難化する可能性もあります。試験対策はしっかりと準備する必要があるでしょう。

出題内容はどう違う?

業務内容の関係性が深い宅建士と賃貸不動産経営管理士。出題内容も一部重なる部分があります。
民法の一部や借地借家法などは共通して出題される分野です。また、賃貸不動産経営管理士試験で出題される「賃貸住宅管理業法」は宅建試験の「宅地建物取引業法(宅建業法)」と考え方が似ています。税金関係や建築基準法も、宅建士試験で学習したことがあればその知識を賃貸不動産経営管理士試験に活かすことができます。
このように、宅建士試験の受験生や受験経験者は賃貸不動産経営管理士対策を有利に進めることができるため、同一年度の受験や宅建士受験後に賃貸不動産経営管理士に挑戦する人も多くいます。

ダブル取得がおススメ!

これまで見てきたように、賃貸不動産経営管理士と宅建士はとても相性が良い資格と言えます。不動産関係でダブルライセンスを狙うなら、この2つをまずはおススメします。

 

賃貸不動産経営管理士とマンション管理士・管理業務主任者の違いとは?

賃貸不動産経営管理士と宅建士・マンション管理士・管理業務主任者・業務管理者の違い

賃貸不動産経営管理士は「賃貸住宅」を対象とし、マンション管理士と管理業務主任者は「分譲マンション」を業務対象とするという違いがあります。さらに、「マンション管理士」は、分譲マンションの購入者で構成される管理組合側に立って助言やコンサルティングを行います。「管理業務主任者」は分譲マンションの管理を管理組合から委託された管理会社側で業務を行います。

仕事内容の違いは?

賃貸不動産経営管理士は、オーナーから管理業務を委託された管理会社で「賃貸」物件の維持・保全の管理業務を行います。オーナーが貸し出している物件を管理し、入居者に対しては入居後から退去時までの対応を行います。
一方、管理業務主任者は「分譲」マンションの管理会社側の専門家です。マンション管理組合から管理業務を委託される際の重要事項の説明や管理受託契約書への記名押印などは管理業務主任者の独占業務です。
マンション管理士は「分譲」マンションの入居者で構成される管理組合やマンション住民からの相談に応じて助言や指導・その他援助を行います。また、分譲マンションの価値を守るための長期修繕計画や修繕積立金についてのコンサルティングも行います。

不動産管理会社において、30管理組合につき1人以上の管理業務主任者の設置が求められています。また、賃貸管理の場合は200戸以上の物件を管理する場合には1人以上の業務管理者としての賃貸不動産経営管理士の設置が決められています。マンション管理士に設置義務はありません。

試験や難易度の違いは?

賃貸不動産経営管理士試験、マンション管理士試験、管理業務主任者試験を比較してみましょう。

賃貸不動産経営管理士 マンション管理士 管理業務主任者
試験日 11月第3日曜日 11月第4日曜日 12月第1日曜日
出題形式 50問四肢択一マークシート形式
受験者数 約31,000人 約12,000人 約16,000人
合格率 27.7% 11.5% 18.9%
合格基準点 34点/50点 40点/50点 36点/50点

※受験者数、合格率、合格基準点は令和4年度参考

試験は11月中旬から1週間おきに賃貸不動産経営管理士、マンション管理士、管理業務主任者の順で実施されます。出題形式は同じですが合格率を見るとマンション管理士が一番難易度が高いと言えるでしょう。必要な勉強時間も、マンション管理士が約600時間、管理業務主任者が300時間、賃貸不動産経営管理士が200時間程度とされています。

出題分野は?同時受験できる?

マンション管理士試験と管理業務主任者試験は「分譲マンション」に関する高度な知識を得るということもあり、出題分野がかなり重複しています。また、どちらか一方に合格していればもう片方の受験をする際に試験の一部免除(5問免除)という制度があります。そのため、ダブル取得や同一年度の受験を目指すことも可能です。
一方、賃貸不動産経営管理士とマンション管理士・管理業務主任者は、一部学習内容が重なる部分もありますが、トリプル受験は難しいと言えそうです。

どの組み合わせが最適?

同じ不動産系国家資格の賃貸不動産経営管理士、マンション管理士、管理業務主任者ですが、活躍フィールドからすると3つの中では「マンション管理士&管理業務主任者」の組み合わせが一番相性が良いと言えそうです。
一方で、先述したように、賃貸不動産経営管理士は宅建士との相性が良く、資格取得後もそれぞれの知識を活かすことができます。

 

賃貸不動産経営管理士と業務管理者の違いとは?

賃貸住宅管理業法で設置が定められている「業務管理者」は国家資格ではなく、業務上の役職名称です。賃貸不動産経営管理士は賃貸住宅管理に関する高度な知識を持った国家資格であり、「業務管理者」となる要件の一つです。

業務管理者は賃貸住宅管理業者において、従業員が行う管理業務の指導・監督を行うとされており、営業所または事務所ごとに1人以上の設置が求められています。業務管理者には賃貸住宅管理の専門知識が求められるため、業務管理者となるには一定の要件があります。

業務管理者になるには2つの要件どちらかを満たす必要があります。
①賃貸不動産経営管理士
②宅建士で管理業務2年以上の実務経験があり、さらに管理業務に関する指定講習を受けた方
※管理業務2年の実務経験は、実務講習で代えることができる。

賃貸不動産経営管理士を取得しなくても「業務管理者」にはなれますが、宅建士は賃貸住宅管理の専門家ではありません。管理業務を監督・指導するには賃貸住宅管理の高度な知識を持つ賃貸不動産経営管理士であることで、オーナーや入居者に安心感を与えるでしょう。また、宅建士は合格率15~18%の国家資格であり合格するのはそう簡単とは言えません。このように、賃貸不動産経営管理士の資格をもって業務管理者となるほうがおススメです。

まとめ

ここまで、「賃貸不動産経営管理士」「宅建士」「マンション管理士」「業務管理主任者」の4つの国家資格と「業務管理者」を比較してきました。
4つの国家資格においてはそれぞれ活躍フィールドが異なります。不動産業界や関連業界の方は業務との親和性やキャリアアップを見据えて資格を選びましょう。

一方、「不動産関連の仕事には就いていないけど不動産系資格に挑戦してみたい」という方には、賃貸不動産経営管理士をおススメします。なぜなら、賃貸不動産経営管理士は家を借りる時、退去時、家を貸す時にも役立つ身近な資格と言えるからです。
例えば、こんな事例を賃貸不動産経営管理士の学習内容で理解することができます。

入居者側 壁に画びょう、床の傷の原状回復は借主負担?貸主負担? 原状回復ガイドラインで学習
入居者側 エアコンを追加設置した場合どうなるの? 原状回復ガイドライン&借地借家法で学習
入居者側 自然災害への予備知識(修繕義務はあるの?耐震化の種類って?) 民法&設備構造で学習
オーナー側 家賃を滞納されたらどうやって回収するの? 民法&未収賃料の回収方法で学習
オーナー側 賃貸経営にはどんな税金がかかるの?(節税はできるの?) 賃貸経営の支援業務で学習
オーナー側 管理会社はどんな法律で規制されているの? 賃貸住宅管理業法で学習

一般の方でも身近にある事例を学べる資格、それが賃貸不動産経営管理士です。賃貸不動産経営管理士を足掛かりとして、宅建士などの他の資格にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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