社会課題を解決する
ソーシャルプリンティングカンパニー®『大川印刷』

大川印刷 SDGsの取り組み

明治14年創業、横浜を代表する老舗企業の「株式会社 大川印刷」。
昨今、同社が推進する環境印刷やSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みに注目が集まっています。特に自社が排出するCO2(材料等を除く)を予めゼロ化した上で行う「CO2ゼロ印刷」の実現やSDGsを通した内部組織力強化などが評価され、第2回ジャパンSDGsアワード(SDGsパートナーシップ賞)、平成27年度環境大臣表彰を受彰。その他にも様々な表彰や認証を受けています。
今回は、ソーシャルプリンティングカンパニー®を掲げる6代目 大川哲郎社長に、環境印刷へ取り組んだ経緯やSDGsを実践する上での工夫点などを伺いました。

※この記事は、2021年8月に行った取材に基づいています。

SDGsのお取り組みポイント

環境印刷として以下の取り組みを行っています。

1

ノンVOCインキ

大気汚染や化学物質過敏症の原因となる揮発性有機化合物を含まない、ノンVOCインキ(石油系有機溶剤0%)を99.9%使用(2020年度)。従業員の健康を守り、大気汚染、光化学スモッグの原因物質を抑えたインキによる印刷を行っています。

大川印刷 ノンVOCインク

2

FSC®森林認証紙

違法伐採などがされていないこと、伐採後の植林をプログラムに入れていることなど、適切な森林管理が行われている材料を使用していることを第三者が認証している用紙。これらを積極的に使用し、持続可能な森林経営と共に、地球温暖化の進行や生態系の破壊につながる森林破壊の防止に貢献します。

大川印刷 エコ用紙

3

CO2ゼロ印刷

印刷事業において排出されるCO2を算定し、その全量をカーボン・オフセット(打ち消し)したゼロカーボンプリントを実施しています。また、太陽光と風力発電による再生可能エネルギーを100%使用しています。

大川印刷 CO2ゼロ印刷

大川印刷では「SDGs」という言葉が社会へ広まるずっと前から環境経営に取り組まれていますが、その経緯について教えていただけますか。

大川:環境活動へ取り組むのは“資金的に余裕のある企業”だと一般的には思われがちですが、私が環境経営にシフトしたのはその真逆の理由でした。バブル崩壊後に売上が激減し、現状のままでは継続が難しく、新しい事業を創出する必要がありました。
 そこで「競争優位性があって企業も持続可能になる取り組みはなんだろう」と考え、初めに浮かんだのが「環境問題」でした。私自身が環境に関心があったということもあり、自分が好きなことほど強みが発揮できるだろうと考えました。

大川社長自身が環境問題に関心を持っていらっしゃったのですね。

大川: 私が生まれ育った横浜市は非常に自然の美しいところで、子供の頃から昆虫や植物と親しんできました。大好きなこの環境にできるだけ影響を与えない仕事がしたいなとずっと思っていました。
 また2002年に青年会議所の活動で社会起業家の調査研究を担当したのですが、その際に社会課題解決を目的に、既にある会社のなかで新たな事業を起こすという方法に気づき、私たちのように長年続けてきた仕事があったとしても社会課題解決に乗り出すことは可能だと自信につながりました。
 当時出会った服飾デザイナーの「洋服を通じて社会を変えたい」という言葉も大きなきっかけとなり、2004年に「社会的印刷会社」というパーパス(存在意義)を掲げて、本業を通じて社会課題解決をするソーシャルプリンティングカンパニー®として改めてスタートしていきました。

大川印刷 大川社長

今から20年前というと、印刷業界では環境問題への関心度はどのようなものでしたか。

大川: 残念ながら関心度は非常に低かったですね。2008年頃だと思うんですけれど「古紙の偽装問題」というのがありました。「環境にやさしい」と謳った再生紙でしたが、『古紙100%』と表示していたにも関わらず一切入っていなかったものもあったという偽装事件です。そこからもわかるように、製紙会社ですらそのような意識の低さでしたので、印刷会社も同じような温度感だったと思います。
 業界内はもちろんのこと、お客様からも評価していただけることは少なかったです。数年前までは、環境印刷を提案しても「それは大川さんがやりたいことでしょう」と断られることが多かったです。

そのような状況でご苦労が絶えなかったと思いますが、「環境印刷」を継続してこられた、その原動力はなんだったのでしょうか。

大川: 当時から続けてこられたのは、やはり「正しいと思った信念」、そしてその信念に対しぶれずに活動してきたということだと思います。あとはやっぱり「好き」ということですよね。
 自分が大好きな自然をより良くする、もしくはこれ以上悪い方向にいかないようにする、という責任は一人の人間としてあると思っているので、そこが続けてこられた原動力、原点かもしれません。

なかなか自分事として環境問題を捉えられない中小企業経営者も少なくないと思いますが、何が課題だと感じますか?

大川: SDGsにしても“国連”が定めている開発目標なので「うちには関係ないでしょ」と思う中小企業は実際多いと思います。しかしSDGsの目標の中には環境問題だけでなく「働きがいも経済成長も」と入っているわけですね。経営者にとっても従業員にとってもまさに一丁目一番地。自分事として考える一つのきっかけになると思います。
 そもそもお金を稼ぐ以前に、自分が生きている場所がちゃんと確保できるのかを現代では考えていかなければなりません。中小企業や自分だけが気象災害から逃れられるわけではありませんから、気候変動や気候危機に関する学びなども必要です。特に最近では台風など、大雨・洪水などの気象災害は非常に頻発していて、それは日本だけでなく世界的な問題となっています。これらの現状をいかに他人事から自分事にするか、それは経営をする上で大変重要だと思います。

大川印刷では、社内外でSDGsの関心を高めるための活動をしていますが、その際どのような工夫をしているのでしょうか。

大川: まず、全員で学び、共有する機会を常に持つようにしています。具体的には週に2回、朝にSDGsクイズをやっています。
 社外では、先日も大手テレビ局でワークショップをやらせていただきましたが、役員クラスの方に「やり方を見直そうと思う良いきっかけになった」と言っていただきましたので、結構インパクトはあったと思います。
 私たちのワークショップはしっかりと時間をかけて、通常90分×4日間ぐらいに分けてやるのですが、それを通じて互いを知り、そこから相互理解が進んでチームワークが深まっていく内容になっています。文字ではなかなか伝わりづらいので、講義やワークショップは是非体験していただきたいです。

いち印刷会社に収まらない、大変視野の広い活動をされていらっしゃいますね。 大川社長にとっては、印刷の定義とはなんでしょうか。

大川: 印刷というのは、もともとは『正しい情報を正しく記録して多くの人に伝える手段』でした。しかし現在の印刷及び印刷会社の仕事は新たな定義づけができると思うのです。『すべての業種業界に入り込んでいる』=『すべての業種業界とネットワークがある』といった特徴を活かし、『あらゆる社会課題に対し、ハブとなって解決していく仕事』ではないかと。
 すなわち、それが「ソーシャルプリンティングカンパニー®(社会的印刷会社)」なのです。実際に紙にインキを乗せる仕事だけを考えれば縮小していくわけですが、そうではなくてこれまでのネットワークや地域密着型の商売を糧として、地域の社会課題を解決していく。それが印刷という仕事だと考えています。

大川印刷 大川社長

最後に大川印刷の今後の目標を教えて下さい!

大川: 社内では、2030年までに『スコープ3(その他の間接排出量)※1』のゼロ化を達成すると掲げています。私たちでいうと原材料となる紙やインキなどが代表的な部分ですが、その製造工程に発生しているCO2もゼロ化するという目標です。
 また「Don’t buy this jacket(このジャケットを買わないで)※2」という有名な広告がありましたが、「(無駄になるから)印刷しないで」とお客様に正しい提案をする、「(時には)印刷しない印刷会社」が必要だと考えています。 従業員さん向けには、「精神的にも経済的にも豊かに幸せになる」というところを掲げてますので、仕事を通じて一つでも多くの幸せが創出されるよう経営者として取り組んでいきたいです。
 さらに老舗企業としては、日本の金属活字の活版印刷の発祥に直接関係する会社※3がまだ現存するということを大切にして、日本の印刷文化や歴史を内外に伝えていきたいと思っています。

  • スコープ3
     事業活動に関係するあらゆる温室効果ガスの排出を合計したサプライチェーン排出量のうち、自社における燃料の燃焼等による直接排出(スコープ1)、他社から供給された電気の使用等による間接排出(スコープ2)以外の間接的な排出量のこと。原材料の調達や従業員の通勤、原材料や商品の輸送、販売した製品の使用・廃棄等の活動において排出される温室効果ガスの排出量を指す。
  • Don’t buy this jacket(このジャケットを買わないで)
     アウトドアブランドのパタゴニアは2011年11月25日のブラックフライデーに「このジャケットを買わないで」という広告をニューヨーク・タイムス紙に掲載し、地球を守るために人びとが消費を抑制する必要があることを訴えた。
  • 日本の金属活字による活版印刷は長崎県で本木昌造がスタート。本木昌造の弟子である平野富二が1872年に設立した東京築地活版製造所に大川印刷の創業者大川源次郎は弟二人を弟子入りさせ、1881年、大川印刷を創業。
大川印刷 印刷機

印刷機にSDGsのゴールパネルが貼られています。

大川印刷 VOCインキ

石油系の溶剤を全く使用していない、ノンVOCインキを99,9%使用。(2020年度)従来のインキの匂いと全然違いました。

大川印刷 印刷機

社員様一人一人が自分の担当する業務について丁寧に説明してくださいました。

大川印刷 活版印刷機前にて

この会社で働いていることに誇りを持っているとおっしゃって工場を案内してくれた笑顔が素敵な草間さん。

会社概要
 ■社   名  株式会社大川印刷(Ohkawa Printing Co., Ltd.)
 ■代表取締役社長  大川 哲郎
 ■設   立  1881年(明治14年)11月9日
 ■本社所在地 〒245-0053 横浜市戸塚区上矢部町 2053
 ■URL:https://www.ohkawa-inc.co.jp/
事業内容
 ■印刷物の企画・デザイン・印刷・加工
従業員数
 ■41名(平成29年10月現在)

企業経営アドバイザーへの第一歩はココからスタート!

資料請求

この講座のパンフレットを無料でお届けいたします。

無料でお送りします!

資料請求

無料講座説明会

まずは「知る」ことから始めましょう! 無料セミナーを実施しています。

お気軽にご参加ください!

無料講座説明会

企業経営アドバイザー講座のお申込み

申込み方法は4種類

申込み方法は4つ

TAC受付窓口/インターネット/郵送/大学生協等代理店よりお選びください。

申し込み方法をご紹介します!

詳細を見る

インターネットから申込む

インターネットで
すぐに申込む

インターネットで、スムーズ・簡単に申し込みいただけます。

スムーズ・簡単!

申し込む

電話やメールで、受講相談を受け付けています。

TACの受講相談で疑問や不安を解消して、資格取得の一歩を踏み出してみませんか?

TAC受講相談

>TAC受講相談