令和5年一級建築士 設計製図試験 課題発表

令和5年度課題に関する情報を更新していきます。

令和5年一級建築士
合格発表後の講評

合格者数・合格率等

12月25日に、公益財団法人 建築技術教育普及センターより、令和5年の一級建築士試験の「設計製図の試験」の合格発表がありました。
合格された皆様、本当におめでとうございます。

【製図実受験者数】10,238名(10,509名)
【合格者】3,401名(3,473名)
【合格率】33.2%(33.0%)
 学科からの最終合格率 9.9%(9.9%)
※( )内は昨年

ランクⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳのそれぞれの割合は次のとおりで、「ランクⅠ」のみが合格となります。
【ランクⅠ】33.2%(33.0%)(合格)
【ランクⅡ】2.1%(6.1%)
【ランクⅢ】22.1%(32.4%)
【ランクⅣ】42.6%(28.5%)
※( )内は昨年

昨年より、合格率が製図試験は0.2ポイント上がり学科からの最終合格率は同じでした。 予想しておりましたが、ランクⅣ(重大な不適合)の割合が非常に大きかったですね。

TACの講評(一級製図主任:清田講師)

皆さんこんにちは!
TAC一級建築士設計製図講師の清田(セイタ)です。

まずは本日、一級建築士試験に合格された皆様、本当におめでとうございます!

ここからは、今年度の課題「図書館」について、建築技術教育普及センターの発表内容を受けて簡単な講評をしたいと思います。
まずは合格率と採点ポイントについてです。

合格率とランクの割合

令和5年の受験者数、合格者数、ランクⅠ~Ⅳの割合は、下記のとおりです。
直近2年と比較してみましょう。


昨年と比べると、製図の実受験者数は270名ほど少なく、合格者数も70名ほど少ないですが、製図の合格率自体は33.2%と、昨年の33.0%と変わらない結果でした。

一方で、今年度の試験結果の大きな特徴として、「ランクⅣ:設計条件及び要求図書に対する重大な不適合に該当するもの」が42.6%とかなり増えたことが挙げられます。昨年と比較して14.1ポイントも増加しており、受験者の半数近くが「ランクⅣ=失格」に該当してしまったことになります。

採点ポイント

次に、建築技術教育普及センターから公表された「採点のポイント」を示します。

(1)空間構成
①建築物の配置・構造計画、②ゾーニング・動線計画、③要求室等の計画、④建築物の立体構成等

(2)建築計画
①多世代の交流促進及び効率的な施設管理について配慮した計画
②ユニバーサルデザインや自然採光に配慮した計画
③省エネルギー化の実現及びエネルギー自立度を高めた計画

(3)構造計画
①閉架書庫の構造的特徴に配慮した計画
②地盤条件や経済性を踏まえた基礎構造の計画

(4)設備計画
①一般開架スペースの空調設備計画
②屋上に設置する設備機器等の計画

【設計条件・要求図面等に対する重大な不適合】
①「要求図面のうち1面以上欠けるもの」、「面積表が完成されていないもの」又は「計画の要点等が完成されていないもの」
②図面相互の重大な不整合(上下階の不整合、階段の欠落等)
③次の要求室・施設等のいずれかが計画されていないもの
一般開架スペース、児童開架スペース、閉架書庫、対面朗読室、自習室、ワークルーム、企画展示スペース、セミナールーム、荷解き配本スペース、カフェ、ブックポスト、ポンプ室、消火ポンプ室、PS・EPS、エレベーター、車椅子使用者用駐車場、駐輪場
④法令の重大な不適合等、その他設計条件を著しく逸脱しているもの

「ブックポスト」は室ではありませんが、その欠落で「失格」と判断されました。うっかりミスで描き忘れた方もいたのではないでしょうか。
「エレベーター」については、施設利用者用、管理者用の最低2台がないと「失格」ということになります。
★要求室表の条件にあった「乳幼児連れに配慮した室」や「施設の運営管理に必要な室」といった、受験生自らが考えて計画する室については、計画漏れがあったとしても「失格」とは判断されていないようです。これらの室の有無についての採点上の判断がどのようなものなのか、気になる所です。

さらに、「採点結果の区分(成績)」には、次のようなコメントも記載されています。

【受験者の答案の解答状況】
「ランクⅢ」及び「ランクⅣ」に該当するものが多く、具体的には以下のようなものを挙げることができる。
・設計条件に関する基礎的な不適合:「要求室・施設等の特記事項の不適合」等
・法令への重大な不適合:「道路高さ制限、北側高さ制限」、「延焼のおそれのある部分の位置(延焼ライン)と防火設備の設置」等

★上記からわかるように、やはり法規に関するミスが致命的となった方が多かったようです。特に今回初出題の「北側高さ制限」についてクリアしたかどうか、正しい理解ができていたか、が合否を分けた最大のポイントであったと言えるでしょう。

総評コメント

今年度の試験は、「乳幼児連れに配慮した室」や「施設の運営管理に必要な室」について、受験生自ら考えて適切に計画する「建物の用途の知識」「柔軟な設計力」が求められたとともに、「法規をクリアすること」が合格するためにマストであることを改めて認識した試験であったと思います。


また、標準解答例を見てもわかるとおり、要求室の設置階、建物へのアプローチ計画なども自由度が高く、「実務の設計に近い試験」になってきる印象も受けます。
このような、近年の試験の傾向に対応するためには、まずは「計画の基礎」をしっかり固めた上で、自由度の高い課題に触れることが大切でしょう。

多くの課題をやみくもにこなしても設計力は向上しません課題を繰り返し解くことでプランのバリエーションを身に付けることができますが、それぞれのプランにおける一長一短を理解することが重要となります。よりよいプランを目指した「課題の消化」を心掛けた学習が合格に向けて有効であると考えます。

令和6年度試験にチャレンジする方へ

以上を踏まえ、近年の「設計製図の試験」に合格するためにはどうすれば良いのか?を考えてみます。来年の7月の課題発表までに以下のような対策が必要でしょう!

1.作図力の強化
2.エスキス力の強化
3.記述力の強化
4.タイムマネジメント力の強化
5.チェック力の強化


それぞれについて順番に見ていきます。


1.作図力の強化
作図力を強化するとは、具体的には「作図の表現力を上げる」、「作図スピードを上げる」、この2点が大きなテーマです。現状、2時間半以内に作図完成ができない方は、来年7月の課題発表までにスピードを上げておくことが合格のためにマストとなるでしょう。

2.エスキス力の強化
エスキスと一言で言っても、「課題文の読み取り」、「周辺環境を考慮したアプローチの取り方」、「ゾーニング」、「グリッドの計画」、「室の納め方」など様々な要素があります。自分がどこでつまずくのか、ミスをするのか、自己分析(弱点の把握)をしっかり行い、その弱点を克服する必要があります。また、近年の試験は計画の自由度が高く、「自分で考えて計画する」という実務としての本来の「設計」に近い力が求められてきています。しかし、自由だからと言って何でもよい訳ではありません。用途ごとに必要な「計画の基礎」を押さえる必要があり、様々な用途に関しての計画のセオリーを学んでおくと良いでしょう。

3.記述力の強化
近年の記述は、毎年新しい要素がいくつか求められ、なかなか対応することが難しい状況です。しかし、それ以外の設問は、過去の出題をベースにした学習で十分に対応できるので、そちらを落とさないような対策をしておくと良いでしょう。

4.タイムマネジメント力の強化
難度の高い本試験では「エスキスに時間がかかって、作図はギリギリ。チェックする時間がありませんでした。」という方は多いのではないでしょうか。自分の中でエスキス、作図、記述、チェック、などそれぞれの工程のデッドラインを決めておき、課題の難易度にかかわらず、毎回、必ずチェックまで行えるような「タイムマネジメントの訓練」が必要です。

5.チェック力の強化
チェック自体を甘く見ている受験生が多く見受けられます。エスキスや作図の完了直後は、誰しも必ず漏れ落ちがあります。チェックを行うことは、合格のために必要不可欠な工程なのです。
漏れ落ちのない図面を仕上げるための「自己チェックを習慣付ける訓練」が必要でしょう。

以上、令和6年の「設計製図の試験」を有利に進めるためには、上記の5つの項目について課題発表前までに身に付けておくことがとても大事になります。 この試験は、相対試験(ライバルと競う試験)ですから、今のうちにアドバンテージをとっておいた者勝ちです!

そこで早めに対策のスタートを切れるように、TACでは3月から開講する「総合設計製図本科生」の講座をご用意しています。
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標準解答例について

令和5年「標準解答例」を分析!
一級製図主任:清田(せいた)

「標準解答例」から読み取れる「課題のポイント」やその「活用の仕方」などについて詳しく解説しています!令和6年(2024年)受験をお考えの方は是非ともご視聴ください。(2023年12月27日収録))

 

令和5年一級建築士
公表課題

令和5年 設計製図の試験の課題

課題名

図書館

要求図書

・1階平面図・配置図(縮尺1/200)
・各階平面図(縮尺1/200)
 ※各階平面図については、試験問題中に示す設計条件等において指定する。
・断面図(縮尺1/200)
・面積表
・計画の要点等

昨年からの変更点①

以下の具体的な法令に関する記載がなくなりました!
(注1) 建築基準法令等に適合した建築物の計画 (建蔽率、容積率、高さの制限、延焼のおそれのある部分、防火区画、避難施設 等)とする。
(注2) 「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」に規定する「建築物移動等円滑化基準」を満たす計画とする。

【建築物の計画に当たっての留意事項】
敷地の周辺環境に配慮して計画する。
バリアフリー、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減、セキュリティ等に配慮して計画する。
各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする。
建築物全体が、構造耐力上、安全であるとともに、経済性に配慮して計画する。
構造種別に応じた架構形式及びスパン割りを適切に計画するとともに、適切な断面寸法の部材を計画する。
空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する。

【注意事項】
「試験問題」及び上記の「建築物の計画に当たっての留意事項」を十分に理解したうえで、「設計製図の試験」に臨むようにしてください。
なお、建築基準法等の関係法令や要求図書、主要な要求室等の計画等の設計与条件に対して解答内容が不十分な場合には、「設計条件・要求図面等に対する重大な不適合」等と判断されます。

昨年からの変更点②

建築基準法だけでなく、関係法令についても厳しい採点がされることが読み取れます。

令和5年一級建築士
試験後の講評・分析

課題の分析

「図書館」の出題は、過去の類似の課題として平成24年「地域図書館(段床形式の小ホールのある施設である。)」、平成9年「緑豊かな吹抜け空間のある地域図書館」、平成4年「アトリウムと小ホールをもつ地域図書館」、昭和48年「集会施設をもつ市立図書館分館」等があり、過去にも比較的多く出題されています。
また、今年の建築設備士試験の第二次試験(設計製図)の用途も「図書館」であり、用途が同じであることは非常に稀です。
なお、今年も近年の傾向どおり副題のない建物の用途だけのシンプルな課題名でしたので、図書館の計画として、設備、構造、法規に関する幅広い知識が必要となるでしょう。

1.図書館

図書館は、大きく以下のように分類されます。
(1) 国立(国会)図書館(国が設置)
(2) 公共図書館(主に地方自治体が設置)
  →さらに「広域参考図書館」と「地域図書館」に分けられる。
(3) 学校図書館(高等学校以下の学校に設けられる)
(4) 大学図書館(大学に設けられる)
(5) 専門図書館(公的機関、公益法人、企業等が設置)
過去の試験の出題からは、(2)公共図書館が出題として可能性が高そうです。 公共図書館の計画上の留意点としては、
①建物やアプローチは親しみやすく、気軽に立ち寄りやすいようにする。
②地域住民の徒歩圏内に計画し、十分な収容台数の自転車置場を設ける。
③利用者用と管理・事務用の通路・入口を分離し、動線が交差しないようにする。
等が一例として挙げられます。
さらに、「出納方式(書籍の貸し出し方式)」、各室の計画としては「閲覧室(一般・子ども)」、「書庫」、「貸し出し・返却カウンター」、「レファレンスルーム(調べものをする室)」、「ブラウジングコーナー(新聞・雑誌等を気軽に読む空間)」、書籍の持ち出し防止のための「ブックディテクションシステム(BDS)」、移動図書館としての「ブックモビル」等、様々な要素の学習が必要となります。

2.図書館以外の用途

課題名は「図書館」ですが、他の要素の併設も十分に想定できます。過去の試験では、レストラン、カフェ、集会機能としての小ホール、会議室、温室、アトリウム等の併設の出題がありました。

3.法規について

前述した発表内容において吹き出しで示しましたが、昨年までは■要求図書の項目の最後に、適合させなければならない具体的な法令が示されていたのですが、今年はその記述がなくなりました。
これは「図書館」を計画する上で、建築基準法上、適合させなければならない法令は受験者が各自で判断して学習しておくことが求められていると言えるでしょう。当然、これまでの建蔽率、容積率、高さの制限、延焼のおそれのある部分、防火区画、避難施設等についての適合はマストとして考えておくべきです。なお、「図書館」という用途については、建築基準法上の法的な「採光」については基本的には不要となります。
さらに、バリアフリー法の「建築物移動等円滑化基準」を満たす計画とするといった記述もなくなりましたが、図書館は特別特定建築物に該当するため、床面積の合計が2,000㎡以上の場合は、「建築物移動等円滑化基準」に適合させる必要があります。なお、課題文の条件によっては「建築物移動等円滑化誘導基準」を満たす計画についても求められる可能性もあるので、知識として知っておきましょう。

4.要求図書

要求図書は、昨年と同様に「各階平面図については、試験問題中に示す設計条件等において指定する。」と示されました。これは、計画建築物の階数が試験当日の「課題文で示される」または昨年のように「課題文にも示されない(階数自由)」ということです。建築物の階数が試験当日まで分からないというのは、令和2年から4年続いて示されているので、近年の定番です。
また、平面図は3面求められることが多いので、このような要求の場合、次のようなパターンが考えられるでしょう。
①「1階平面図・配置図」「2階平面図」「3階平面図」
②「地下1階平面図」「1階平面図・配置図」「2階平面図」
③「1階平面図・配置図」「2階平面図」「基準階平面図」

5.「建築物の計画に当たっての留意事項」について

発表内容は昨年と全く同じでした。
「建築物の計画に当たっての留意事項」は抽象的な内容ではありますが、採点に大きく関わる非常に大事な部分です。「注意事項」にあるとおり、「十分に理解したうえで」試験に臨まなければなりません。
なお、昨年から「二酸化炭素排出量削減」という項目が新たに加わりましたが、世界的にも温室効果ガスの排出量の削減が掲げられている背景から、設計製図の試験でも省エネに関する様々なシステムや高性能設備の導入、材料等の多様な学習が求められています。

6.「注意事項」について

建築基準法令等の関係法令や要求図書、主要な要求室等の計画等の設計与条件に対して解答内容が不十分な場合には、「設計条件・要求図面等に対する重大な不適合(=失格)」と判断されます。
昨年と異なる部分としては、今年は建築基準法だけではなく、「関係法令についても厳しく採点される」と示されたので、バリアフリー法等の関係法令も遵守した図面の作成が必要となります。

以上、課題発表の内容から読み取れることを速報としてお伝えしました。

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