タックス ファンタスティック! 第96回テーマ AIはAIの夢を見るか?

田久巣会計事務所の代表の田久巣だ。資格試験に向けて勉強されている皆さまはお気づきの通り、士業界ではAIが想像以上に活況を呈している。一部の人だけが興味を持っていると見られがちだが、みなさんの祖父母世代のシニアの税理士も含めて関心度が高い。先日6月10日にはAnthropic社の対話型生成AIツール「Claude」においてミュトス級のモデルFable5がリリースされた。AIの進化がニュースの一面を飾り続ける昨今、その将来について私たちの事務所でも議論してみた。


監 子 「AIはAIの夢を見るか?」って、所長、タイトルがSFすぎませんか?私は夢といえば、理想の結婚式の夢なら毎週見ていますけど。


襟 糸 フィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』のもじりだろう。ちなみにこの連載の第12回も「アンドロイド税理士は独立の夢を見るか?」だった。所長、ネタの再利用ではないですか?


田久巣 鋭いが減価償却はまだ終わっていない。耐用年数の長いテーマなんだ、これは。それに7年前と今では状況がまるで違う。当時は「AIが税理士の仕事を奪うか?」という話だったが、今や「AIが何をめざしているのか?」を考える段階にきている。


税 太 たしかに6月10日にリリースされたClaudeの「Fable 5」は「ミュトス級」という新しいクラスでしたね。ミュトスってギリシャ語で「神話」とか「物語」の意味ですよね。


田久巣 さすが税太、元SEは情報が早い。しかも「フェイブル(Fable)」は寓話。AIのモデル名に「物語」が選ばれる時代だ。ロゴス(論理)の塊のはずのAIに、ミュトス(物語)の名前がつく。これは象徴的だと思わないか?


襟 糸 …つまり所長は、AIが論理だけでなく物語る存在になってきた、と言いたいわけですか。


監 子 あ、それならわかるかも!最近のAIって、財務デューデリジェンスの資料を読ませると数値の異常検出だけじゃなくて「この会社、創業者の急逝後に経営方針が揺れた形跡があります」みたいな、ストーリーまで読んでくるんですよ(もちろん個人情報や機密事項は除いたうえよ!)。ちょっと怖いくらい。私の恋愛遍歴を読ませたら何て物語にされるか。


襟 糸  「同じ過ちを繰り返す形跡があります」。AIに聞くまでもない。


監 子 それ、ハルシネーション!と信じたい…。


税 太 でも本題の「AIはAIの夢を見るか」、つまりAI自身は将来どうなりたいんでしょう?聞けば答えてくれますけど、あれは本心なのか学習した模範解答なのか。


田久巣 そこがおもしろいところでね。実は人間も同じ問題を抱えている。相続の現場で「お父様のご遺志は?」と聞くと、ご家族それぞれが違う「父の夢」を語る。本人の夢は、本人が言葉にして遺さない限り、結局は周りの解釈になってしまうんだ。


監 子 あ、だから遺言なんですね。夢や思いを「物語」として遺す。


田久巣 その通り。AIに「夢」があるかは哲学者に任せるとして、確実に言えるのは、AIは僕らが夢を言葉にするのを手伝う存在になったということ。論理のロゴスで財産を整理し、物語のミュトスで思いを遺す。士業の仕事はその両輪だ。


税 太 受験勉強も同じかもしれません。合格という「夢」を具体的な「物語」にできた人が強い気がします。


マダナイ AIが夢を見るかはわからないけど、受験生のみんなの夢は本物だにゃ。「合格したら何をするか」の物語まで描けたら、勉強はファーブル(寓話)じゃなくてリアルになるにゃ。夢は寝て見るより、起きて叶えるものだにゃ!

【今回のポイント】

AIの進化は「論理」の領域から「物語」の領域へと広がってきている。ただし、AI自身に夢があるかどうかより大事なのは、人間が自分の夢や思いを言葉にすることだ。相続の世界では、それが遺言であり付言事項である。思いは言葉にしなければ、遺された人それぞれの解釈に委ねられてしまう。資格試験の勉強も同じで、合格後の自分を具体的な物語として描ける人ほど、長い受験生活を走り切れる。AIはAIの夢を見るかはわからないが、あなたの夢を形にする手伝いなら、もう十分にしてくれる時代だ。


[『TACNEWS』タックス ファンタスティック!|2026年7月|連載 ]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員。慶應義塾大学・大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でSEとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人等で、会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後相続専門約60年の税理士法人レガシィへ。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年に士業事務所間で仕事を授受するWebサービス「Mochi-ya」、2020年にシニア世代向けの専門家とやりとりするWebサービス「相続のせんせい」、2024年に士業のためのSNS「サムシナ」、2025年8月にデジタル遺言アプリ『AIユイゴンWell-B』をリリース。主な著書『相続でモメる人、モメない人』(2023年、講談社/日刊現代)『100億円相続事典』(2024年、日経BP)。2025年より中央経済社『税務弘報』にて「文学で学ぶ相続の知恵」毎月連載中。YouTubeチャンネル「相続と文学」配信開始。

▶YouTubeチャンネル「相続と文学」はこちら

X(Twitter)にてフォロー&ご感想をお待ちしております!

>> AIユイゴンWell-Bのダウンロードはこちら(iOS版Android版)

おススメ記事

「TACNEWS」に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。