人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第88回 大和ハウス工業株式会社

Profile

松本 由香子(まつもと ゆかこ)氏

本社 経営戦略本部
人事部 採用・人財開発グループ
グループ長

1997年、新卒で大和ハウス工業株式会社に入社。人事部に配属され、途中、グループ会社への出向を除き、一貫して人事畑を歩み、幅広く人事業務に携わる。現在はグループ長として、採用と人財開発をメインに担当。

私たちのビジネスは、
思考力と行動力の両方が求められることから、
「考動で夢をかたちに。」
という求める人物像を定めました。


 一般にはハウスメーカーというイメージが強い大和ハウス工業株式会社の業務内容は、住宅部門を含むハウジング・ソリューションと、「ハウスメーカー」の域を超えるビジネス・ソリューションの2つに大別される。ハウスメーカーだけでなく、ゼネコン、デベロッパーという顔も持つ大和ハウス工業株式会社では、どのような方針で人財を採用し、育成しているのか、人事部採用·人財開発グループ、グループ長の松本由香子氏にお話をうかがった。

住宅部門をベースに統合的な事業を展開

──大和ハウス工業について教えてください。

松本 大和ハウス工業=ハウスメーカー、とイメージされる方が多いと思います。でも、当社グループの全売上高に占める住宅事業の割合は全体の2割程度です。現在、当社の事業はハウジング・ソリューションとビジネス・ソリューションの2つに大別されます。
 ハウジング・ソリューションでは、主に居住空間を提供する住宅事業、集合住宅事業、マンション事業を行っています。ビジネス・ソリューションでは、単なる「ハウスメーカー」の域を超え、さまざまなビジネス課題を解決する統合的な事業を展開しており、流通店舗事業(商業施設など)、建築事業(物流施設など)、環境エネルギー事業、データセンター事業を行っています。ハウスメーカーという顔もあれば、ゼネコン、デベロッパーとしての顔も持っている、業界の中でも非常にユニークな会社ではないでしょうか。
 売上高では、ハウジング・ソリューションとビジネス・ソリューションは半々で、先にお伝えしたように住宅事業は全体の2割程度です。そして、海外展開も積極的に行っており、27の国と地域に56の拠点設置都市があります(2026年3月末現在)。この海外での売上高が全体の2割程度となっています。

「考動で夢をかたちに。」

──大和ハウス工業の求める人物像を教えてください。

松本 2025年に全社アンケートを取り、採用キーメッセージとして「考動で夢をかたちに。」を定めました。候補は4案ありましたが、この「考動で夢をかたちに。」がダントツの1番でした。当社では、頭でっかちで動けない人は活躍できないし、思考できない人も活躍できません。私たちのビジネスは「考動」、つまり思考力と行動力の両方が求められるビジネスだと多くの社員が思っているため、このメッセージが選ばれたと思います。求める人物像を一言で表すと、「考動で夢をかたちにできる人」となります。

──大和ハウス工業の新卒採用とキャリア採用について教えてください。

松本 従来は新卒採用がメインで、キャリア採用は即戦力が求められる場合や、どうしても特定のポジションに人財が必要な際に実施してきました。ただ最近は、キャリア採用の比率を高めていこうとしています。もちろん、新卒採用は引き続き一定数を採用して、新社会人を丁寧に育成していくことは続けつつ、キャリア採用比率を今まで以上に高めていく方針です。

要員計画をきちんと見直す

──2026年4月入社の新卒社員は何名でしたか。

松本 2026年は211名で、2025年は733名でした。今進めている2027年採用は400名を予定しています。実は、2026年の採用数には、少し特殊な事情がありました。以前は、各事業に来年度に必要となる新卒社員数をヒアリングして、その数字を積算して採用人数を決めていました。
 しかし、要員計画をきちんと見直そうということで、各事業に本当に必要なのは何名なのか、単に頭数ではなく、どのようなスキル、経験を持った人が何名必要かを精査しました。その上で、その人財は新たに外部から採用する必要があるのか、グループ内の人財の流動化でカバーできるのではないか、というところまで突き詰めて、外部からの採用が必要な人数として算出したのが2027年の400名という数字です。
 2026年採用は、単に頭数だけ採用するのはよくないと考え、必要最小限の採用にしようということで211名となりました。

──要員計画を見直す転換点にあったのが2026年の新卒採用だったのですね。

松本 そうですね。将来の人員構成ピラミッドを考えても、新卒採用は一定数を決めて採用し、他に必要となる部分はキャリア採用というかたちで戦略的に配置していけるよう計画しています。

一人ひとりと向き合う内定者フォロー

──2026年の新入社員研修について教えてください。

松本 4月1日に入社式を行い、2日から8日まで奈良市にある研修施設、みらい価値共創センター「コトクリエ」で新入社員基礎研修を実施しました。前々日まで学生だった新入社員に、社会人に求められる姿勢や考え方を中心に基礎の部分を教育します。その後、4月10日に自身の配属先に赴任しました。配属先では計画的なOJTを実施するとともに、職種に応じた専門研修を複数回実施します。
 OJTはOJTエルダー制度のもと、各職場での業務や日々の悩みを相談できる先輩社員が成長をサポートします。OJT担当は「業務をひと通り指導できる人」とし、主任職を推奨しています。ただ主任職の場合、新入社員より10歳程度年長になってしまうため、1〜2年先輩のOJTアシスタントがつき、新入社員1名に対して2名の先輩社員がサポートしていく体制としています。なお、OJT担当・アシスタントともに新入社員OJT支援プログラムという研修を事前に受講しています。

──内定者フォローについて教えてください。

松本 2026年入社は211名と前年よりも人数が減った分、一人ひとりと向き合おうと決め、かなり密にコミュニケーションを取りました。内定者を理解することはもちろん、会社のことも理解してもらおうと考えました。そして、コミュニケーションを通じて各人の強み・個性、どの事業が適しているのか、どういう上司なら伸びるのか、そこまでを見ての配属ができました。理想的な内定者フォローができたと考えています。

AIと人の目の二人三脚で選考

──2027年の新卒採用において、選考フローで工夫している点を教えてください。

松本 採用フローは毎年見直しています。当社もAI面接を導入しており、AIにエントリーシートを読み込ませ、AIのアバターが応募者に質問して深掘りをしていきます。応募者が社会人基礎力をどれだけ備えているのかを、AIが可視化してくれます。そして、人の目では何を見るのかを明確化しています。例えば、部下にしたいと感じるかなどはAIにはわかりませんので、そこを面接官が見極めていきます。
 また、営業職については、以前行っていたグループディスカッションを復活させました。目的は、応募者の本当の思考力を見るためです。あるケースについてみんなでディスカッションをして、提案をしてもらうのですが、そのプロセスでの思考力や、他者にどのようにふるまうのか、協力し合えるのか、また最初に発言できるのかを見ています。AIと人の目、二人三脚で当社に適した人財を選考していきます。

住宅営業実習・現場実習で家づくり・ものづくりを経験

──研修制度について教えてください。

松本 当社は創業以来、「事業を通じて人を育てる」を企業理念に、人財の成長を第一に考えてきました。そのため新入社員から管理職まで、一人ひとりの成長とキャリア開発のため、職種・役職・キャリアステージに応じた体系的な教育の場を整備しています。先にお話しした新入社員基礎研修はその入口にあたる大切な研修です。
 新入社員時代に行う当社ならではの研修に、住宅営業実習と現場実習があります。住宅営業実習は、技術職以外の新入社員を対象に、全員に住宅営業を経験してほしいという思いから実施しています。お客様がまだ言語化できていない住まいのニーズを引き出し、夢のマイホーム作りのお手伝いをさせていただくという究極のB to C業務を体験してもらいます。
 現場実習は、全社員が対象の研修で、自分たちが提案する建物がどうやってできるのかを知ってもらいます。実際には現場監督の補佐業務を経験してもらい、ものづくりを担ってくださる技能者の方々をはじめ、どれだけ多くの関係者の協力でものができあがるのかということを現場で経験してもらいます。理屈ではわかっていても、現場で体験しないとわからないことがたくさんあります。全員工事服を着て、ヘルメットをかぶり、現場に立ってもらいます。

──その他に現在、注力されている研修はありますか。

松本 現在、当社の集合研修で注力しているのはミドルマネジメント層の教育です。組織の要であるミドルマネージャーが変わると、組織も変わり会社も変わります。現在、約2,000名のライン管理職を対象にした研修を、2024年から4年間をかけて実施しています。研修期間は半年間で、最初に集合研修を実施し、最新のマネジメント理論を体系的に学び、各人がしっかりとインストールします。その後、参加者は職場に戻り、学んだ知識を実践に移します。さらに、半年間の要所要所で参加者同士が再び集まり、実践したことを振り返って語り合い、次の行動につなげていくという経験学習を繰り返しています。
 本来は、人財の育成をすることが業績の目標達成につながりますし、業績目標を達成することで人財の育成もできるはずです。しかし、当社の場合、業績を高めていくためのマネジメントには一定の成果をあげてきた一方で、人財の育成と連動できていない部分がありました。この研修を通じて業績の目標達成と人財の育成が連動し、好循環を生み出すマネジメントを実現していきたいと考えています。
 その他にも、学習のプラットフォーム「&D Campus」を用意して、全従業員が必要なときに必要な学習が可能な自主選択型学習の環境も整備しています。

役職定年や年収水準の下がる処遇体系を廃止

──人事制度、福利厚生で特徴的なものがあれば教えてください。

松本 2025年4月1日に導入した「67歳選択定年制度」が特徴的ですね。これまで65歳だった定年を、全国社員については65歳と67歳から選択できるという制度にしました。シニア人財の活用については、これまでも取り組みを進めてきました。2013年4月に60歳定年を65歳定年制度に切り換え、2015年4月には65歳以降も現役として働き続けることができる「アクティブ・エイジング制度」を導入。さらに2022年4月には、年齢だけを理由とした60歳一律での役職定年や年収水準が下がる処遇体系を廃止しました。つまり、60歳以降も役職任用や昇格の機会がある制度へと改定したのです。意欲あるシニア人財が、よりシームレスな処遇体系の中で活躍できるよう、環境整備と制度改定を進めてきました
 実際に60歳以上で昇格試験を受ける社員もいますし、社員の意識も変わってきていると思います。ただ、昔取った杵柄でずっと活躍できる会社ではありませんので、先にお話しした「&D Campus」などを活用してのリスキリングがとても重要になってきていると考えています。

宅地建物取引士、一級建築士の資格取得を会社が全面的にサポート

──社員が必ず取得しなければならない資格はありますか。

松本 まず、宅地建物取引士資格は営業職だけでなく私たち管理部門にも取得を義務づけています。資格取得のための複数回の模擬試験や解説動画を用意するなど、会社が全面的にサポートしています。技術職では、一級建築士の資格取得を強く推奨しており、入社1年目はその勉強に多くの時間を割けるようになっています。合宿の勉強会や模擬試験を複数回開催するなど、こちらも会社が全面的にサポートしています。また、資格試験の合格者にはお祝い金の支給があり、宅地建物取引士、一級建築士以外にも数多くの資格がその対象になっています。

──応募者がエントリーシートに学生時代に取得した資格を記載していた場合、どのように判断されますか。

松本 資格取得のための努力、自己管理といった部分は大いに評価させていただきます。ただし、資格を取得しているから加点があるわけではなく、資格取得の背景を確認させてもらい、その意欲や努力といったところを評価します。

──キャリアアップや資格取得をめざしている読者に向けて、メッセージをお願いします。

松本 資格を取得したい、チャレンジしたいという心構えは本当にすばらしいと思います。さまざまな困難を乗り越え、時間の制約などもあるなか工夫しながら取り組まれることは、貴重な経験だと思います。そして、資格を取得した暁には、視野の広がりや可能性の拡大など、世界が大きく広がると思いますので、皆さんのチャレンジが実ることを本当に祈っています。資格を活かして、ご自分の可能性をどんどん広げていっていただく中で、私たち大和ハウス工業とご縁があるのであれば、本当にすばらしいことですし、そういう出会いも楽しみにしたいと思っています。

[『TACNEWS』人事担当者に聞く「今、欲しい人財」|2026年5月 ]

会社概要

社名     大和ハウス工業株式会社
創業     1955年4月5日(設立1947年3月4日)
代表者    代表取締役社長 大友 浩嗣
本社所在地  大阪市北区梅田3丁目3番5号

事業内容

【住宅系】
戸建住宅(注文住宅・分譲住宅)、賃貸住宅(アパート・寮・社宅)、分譲マンション等の企画・設計・施工・販売、別荘地の販売
【建築系】
商業施設(店舗・ショッピングセンター)、物流施設(物流センター・配送センター・食品施設)、データセンター、医療・介護施設、法人施設(事務所・ショールーム)の企画・設計・施工・リフォーム

従業員数

連結:50,390人(2025年3月31日)、単体:16,192人(2025年3月31日)
※有期契約者を除いた人数です。

URL

https://www.daiwahouse.co.jp

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