人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第86回 トラスコ中山株式会社

田口 雄基(たぐち ゆうき)氏(写真右)
経営管理本部
人事部 採用課 課長
床島 琢斗(とこしま たくと)氏(写真左)
経営管理本部
人事部 人材開発課 課長代理
社員が自覚を持って活躍し続けることが、
トラスコ中山の継続的な成長につながっている。
1959年創業のトラスコ中山株式会社は、プロツールの卸売業者として日本のモノづくり現場へ、早く、スムーズに安定して商品をお届けするために61万アイテムを超える在庫を持ち、自社配送も行っている。そのようなトラスコ中山の成長を支えているのは、自覚を持って自ら成長する人材である。トラスコ中山では、どのような人材観を持って採用、教育研修を行っているのか、経営管理本部 人事部採用課課長の田口雄基氏と、同人材開発課課長代理の床島琢斗氏にお話をうかがった。
お客様が欲しいものを自社ですぐにお届けする
──トラスコ中山株式会社について教えてください。
田口 トラスコ中山はプロツール(工場用副資材)の卸売業者として、日本のモノづくり現場へ、早く、スムーズに安定して商品をお届けすることを使命としています。プロツールは耳慣れない言葉かもしれませんが、工場で使われる主原料、鉄や木材などではなく、それを加工するときに使用する、手作業工具や切削工具、またヘルメットや保護メガネ、手袋といった保護具などです。現在、約3800社の仕入先様から商品を仕入れ、約5700社の得意先様に卸し、得意先様が実際に使用するエンドユーザー様に販売しています。国内拠点90ヵ所のうち営業拠点は60ヵ所、物流センターは28ヵ所、アジア・欧米の海外拠点は7ヵ所で、売上高は3250億円(2025年度予算)となっています。
当社がめざしているのは、ものづくり現場のユーザー様に必要なときに必要なものを必要なだけ、すぐにお届けすることです。そのために全国に28ヵ所の物流拠点を自社で保有するだけでなく、お客様にとって見やすいカタログ作成、新商品開発、デジタル推進などすべて自社で行い、お客様の利便性を追求しています。
長期的に成長して活躍して欲しい
──トラスコ中山の新卒採用と中途採用について教えてください。
田口 当社は新卒採用を中心としています。世の中の一般的な年間採用計画では新卒採用と中途採用の比率は半々か中途採用が半数を超えますが、当社では約8割が新卒採用となり、中途採用は一部に限られています。会社の思いとして、新卒で入社して当社のこころざしや文化・価値観、考え方を理解してもらいながら、長期的に成長して活躍してほしいという社員への思いがあるからです。社長の中山は「気がついたら定年まで働いていた」という状態が理想だと語っています。
中途採用に関しては、例えば、経理部門やデジタル部門などで専門知識、スキルを持った方を採用しています。2025年度の大卒の新卒採用は97名で、2026年度は90名を予定しています。
──トラスコ中山の求める人物像を教えてください。
田口 入社後、長期的に当社で活躍してもらえる人材を、ミスマッチがないよう採用することを意識して採用活動を行っています。そのため採用時点でのスキルや語学力、保有資格よりは「トラスコで働きたい!」という熱意や人間性・人物像を重視しています。
また、当社のこころざしである「人や社会のお役に立ててこそ事業であり、企業である」を採用の段階で一番に伝えています。当社がやっていることが長期的にお客様や社会のお役に立つかどうかが経営判断の根底にあることを伝え、それに対して共感してもらえることを大切にしています。
──とすると貴社のこころざしへの共感が採用の第一歩となるのですね。
田口 そうですね。当社には「トラスコイズム」という、経営の根底に流れる独自の考えがあります。インターンシップや会社説明会など、学生と接点を持つ機会には、こうした会社としての考え方をしっかりと伝え、当社を理解してもらったうえで「トラスコで長く働きたい」と考える人材を採用していこうと考えています。
田口 雄基氏
2012年、トラスコ中山入社。2017年より海外調達課を経て、2022年、人事部採用課課長。新卒採用、中途採用を管轄している。
再チャレンジの機会、TRUSCOリトライ制度
──新卒採用の選考フローについて教えてください。
田口 インターンシップ、または会社説明会に参加した上で、当社に興味を持った方にエントリーしてもらいます。仮に説明会などの日程に都合がつかなかった場合は、オンラインで視聴できる環境を用意しています。書類審査後は、1次面接、2次面接、最終面接を経て内々定に至ります。
また、面接の前に相談会という独自のイベントを設けています。面接は選考の場ですので、学生が本当に聞きたいことを聞けないケースもあるでしょう。そこで、選考には一切関係なしの相談会を実施し、学生が聞きたいこと、気になることを質問できる機会を提供しています。これもミスマッチなく採用したいという思いの現れですので、参加した学生全員を必ず次の選考にご案内することを約束しています。
──選考に関係なく質問できる機会を設けているのですね。
田口 さらに「トラスコ導き隊」という社内のリクルーター約30名が、学生といつでも面談をして、質問などに答えられる体制を取っています。1次面接以降に進んだ学生であれば、いつでもアクセスでき、質問などができるようにしています。これもミスマッチを防ぐための一環です。
また、人材戦略に関わってきますが、社内リクルーターは人事側での選抜ではなく、すべて立候補制でやりたい人、やってみたい人にお願いしています。
──一度面接で落された学生に再チャレンジの機会を設けているとお聞きしましたが。
田口 2025年度入社から、TRUSCOリトライ制度を導入しています。面接で一度ご縁がなかった学生の中にも、トラスコでがんばりたいという思いを持った方がいるなら、ぜひ再チャレンジしてほしいと考えました。限られた面接の時間で、自身を上手く表現できなかった方や極度に緊張してしまった方もいることでしょう。逆に面接官がその場で学生のよさに気づかない場合もあるかもしれません。一度ご期待に沿えない旨の連絡を差し上げた皆さんにご案内して、再チャレンジしたいという方に再度選考を受けてもらいます。
──ユニークな取り組みですね。選考はどうされるのですか。
田口 再度面接をするのではなく、当社の物流センターで3日間働いてもらいます。一緒に仕事をする中で人物像やその人のよさ、仕事での工夫についてなどが見られたりします。物流センターの社員の意見も含めいろいろな人の意見を聞いて総合的に判断し、2025年度は10名の応募で3名、2026年入社は20名の応募で5名採用しています。
床島 琢斗氏
2016年、トラスコ中山入社。プラネット滋賀を経て、2017年、福井支店。2023年、人事部人材開発課。新入社員研修から階層別研修までを担当している。
入社式前に1週間の新入社員研修
──新入社員研修の内容を教えてください。
床島 当社では入社式の1週間前に新入社員研修を実施しています。この期間は、「学生から社会人へと意識と行動を切り替えるための準備期間」と位置づけており、会社の考え、価値観を学んでもらうのはもちろんのこと、グループワークを中心に、どういう社会人になりたいのか、トラスコでどういう活躍をしていきたいのかを言語化します。入社式には、新入社員のご家族も招待しますので、ご家族にトラスコに入ってよかったと安心してもらえるように、ご家族の前で言語化した決意を発表してもらいます。
──新入社員は入社式にトラスコ中山のマインドセットを持って臨むのですね。
床島 そうですね、所属一日目から社会人としてのスタートダッシュを切れるようにしています。入社式の翌日には、全員が配属先である物流センターに着任します。当社では、ジョブローテンションを基本としており、入社後1年2ヵ月は、重要な戦略のひとつである物流を学ぶ目的も含めて、物流センターで勤務してもらいます。その後、主に営業部門に着任し、さらに当社の根幹を理解しながら、各拠点での営業活動を行います。その後は、所属5年前後を目安に営業、物流、本社部署など部門を超えた人事異動によるジョブローテーションを経験し、仕事力・人間力を磨いてもらいます。
──新入社員研修後はどのような研修を行っていますか。
床島 まず、物流センター配属後はOJTの傍ら、オンライン研修で規定や会社について理解を深めます。その後、配属部署によるばらつきがないようにグランドデザインを基盤として各部署での研修が始まります。その後は階層別研修となり、2年目、3年目、4年目の研修があります。4年目以降の研修に関しては、立候補制の研修が用意されています。
自覚することが成長の第一歩
──立候補制とは、いわゆる手挙げ式の研修でしょうか。
床島 当社では、教育に対して「自覚に勝る教育なし」という考えが念頭にあります。これは、どのような教育をしても、本人に自覚やモチベーション、責任感がなければ成長はない、「自覚することが成長の第一歩」であるという考え方です。この考え方に基づいて、4年目以降の研修に関しては立候補制としています。
例えば、当社では責任者のことを「ボス」と呼びます。このボスになるのも立候補制で、自分がボスになりたいと思ったら手を挙げて、ボスになる登竜門であるボスチャレンジ・コース(以下、ボスチャレ)に参加します。ボスチャレに立候補し合格すると、ボスチャレ生として次のボス候補となり、2年という任期の中でOJTを通じて、ボスに必要な実務知識の習得や、実際のマネジメントを経験します。
また、ボスチャレの前段階として、ボスチャレに立候補するほどの自信はないけれど、マネジメントを一部経験してみたいという社員の為に、マネチャレ・コースというものもあります。
──その他にも人事制度でトラスコらしいものがあれば教えください。
床島 自ら挑戦する社員を後押しする制度として、オープンポジションチャレンジ制度があります。これは増員を希望する部署を全社員に開示し、チャレンジしたい社員は所属のボスの承認なしで応募できます。新しい仕事にチャレンジしたいという想いを持った社員にとっては魅力となる制度だと思います。
もうひとつ、トラキャリ申告制度があります。これは、希望部署だけでなく、高めていきたい能力、こんな人材になっていきたいという自身のキャリアに対する想いを人事部に申告できる制度です。希望がすべて叶うものではありませんが、想いがある社員の声を把握し、実現につなげるための制度です。ちなみに私はこのトラキャリ申告制度で人事部へ希望を出し、現在人材開発課での仕事ができています。

安心して長く働くための制度
──福利厚生面で特徴ある制度を教えてください。
床島 積休バンク制度は、期限内に使わずに余った有給休暇を積立てられる制度です。以前は60日までという制限がありましたが、2022年にその上限が撤廃され、無制限に積立てられるようになりました。介護や病気などの理由での使用も可能ですし、退職時には積休(積立有給休暇)を会社に一括買取もしてもらえます。
おしどり転勤制度は社内外問わず配偶者に転勤があった場合、転勤エリアの拠点に異動し、勤務を続けることができる制度で、これは日本全国に拠点があるからこそ実現できる制度といえます。これらの制度の根底にあるのは、先にお伝えした、長く当社で働いてほしいという思いがベースにあり、実現できているものです。このように社員が安心して長く働けるように制度を整備しています。
興味を持って取り組んでほしい
──トラスコ中山には資格取得支援制度はありますか。
田口 私たちは総合職(キャリアコース)ですが、スペシャリストコース、エキスパートコースという専門性を高め、高い職務遂行能力を取得して特定の部署で力を発揮してもらうコースがあります。そこにはコース内容に合わせた推奨資格を設けています。資格取得は自己啓発ですので、取得に対しての手当は設けていません。ただ、通信教育で240講座ほどを用意しており、こちらを受講して修了し、修了証を提示してもらえれば、受講料の50%をキャッシュバックする制度は設けています。
床島 資格とは異なりますが、大学卒業資格「学士」を取得するための制度、あすなろ補助金制度があり、大卒資格、修士を持っていない社員や改めて大学で学びなおしをしたい社員に対して、最大30万円までを補助する制度を設けています。
──新卒の応募者がエントリーシートに日商簿記検定やITパスポート、TOEIC® L&R TESTなど学生時代に取得した資格を書いてきた場合、どのように判断されますか。
田口 資格の取得や、それに伴うスキルを採用活動の絶対条件としている訳ではありません。しかし、例えば、営業部門に配属されると取引先の財務諸表を読み解いたり、Excelスキルが必要になったり、仕事を進める上で必要になる資格やスキルは多く出てきます。入社してから、それらの勉強をしようとしても日々の仕事に追われ、財務諸表を読む基礎となる簿記の勉強をするための時間を取るのは労力がかかるでしょう。そのため、学生時代に資格の勉強をしておいたほうが、これからのプラスに働くことが多いと思います。
また、選考時にも資格によっては学生時代にがんばってきたことの裏付けになりますので、資格取得に至った経緯や取得までの努力や工夫などを聞かせていただきます。

──キャリアアップや資格取得をめざしている読者に向けて、メッセージをお願いします。
床島 資格を取得していることは、会社という組織にとっても、個人のキャリア上も人生を豊かにしてくれると思います。いま資格取得に向けで勉強されている皆さんは、こうしたことを理解した上で勉強されていることと思いますので、ぜひ最後までがんばってください。そして、当社の事業に興味を持ち、同じこころざしを持つ仲間として入社される方がいれば、うれしく思います。
田口 何か勉強をするとき、「もっとやらないと」「いつまでにやらないと」と切迫感に駆られて前向きに考えられないこともあると思います。逆に、ご自身が「おもしろいな」と興味を持ち、自分から知りたいと思う知識は、苦もなく取り組んでいけるでしょう。資格取得の勉強をされる際も、取らなきゃいけない、いつまでにやらなきゃ、と追われるのではなく、興味を持って取り組むと前向きに楽しく取得できるのではないかと思います。ぜひがんばってください。
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[『TACNEWS』人事担当者に聞く「今、欲しい人財」|2026年3月 ]
▲物流センター「プラネット愛知」
会社概要
社名 トラスコ中山株式会社
創業 1959年5月15日
設立 1964年3月2日
代表者 代表取締役社長 中山哲也
本社所在地 東京都港区新橋四丁目28番1号 トラスコフィオリートビル
事業内容
生産現場で必要とされる作業工具、測定工具、切削工具をはじめ、あらゆる工場用副資材(プロツール)の卸売業
従業員数
連結3,184名(役員11名、社員1,709名、パートタイマー1,464名:2024年12月末時点)
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