日本のプロフェッショナル 日本の行政書士

小澤 信朗(おざわ のぶあき)氏
行政書士法人放デイラボ 代表
株式会社放デイラボ 代表
行政書士 保育士
1977年3月31日生まれ、横浜育ち。山形大学人文学部卒業。旧司法試験受験生(無職)の時を経て、2004年、行政書士試験合格。2005年2月、公益法人向けシステム会社に勤務。介護保険対応総合システムのサポートを担当。2010年9月、行政書士として独立、小澤信朗行政書士事務所を開業。2011年7月、おざわ行政書士事務所に名称変更。2020年09月、株式会社放デイラボを設立。2021年08月、行政書士法人放デイラボとして法人化。
行政書士資格取得で、やりたいことを仕事にでき、
40代、50代のセカンドキャリア支援にも注力しています。
放課後等デイサービス、障害福祉サービス分野に特化して展開し、全国の放課後等デイサービス事業所の約1.3%の開設に関与しているのが、行政書士の小澤信朗氏だ。小澤氏がなぜ行政書士資格を取得し、障害福祉サービス分野に特化することになったのか。行政書士資格取得の経緯、開業から今日までの歩みなどについて詳しくうかがった。
今日につながるボランティア経験
行政書士、小澤信朗氏が率いる行政書士法人の名称は放デイラボ。多分「『放デイ』って何?」という読者がほとんどではないだろうか。「放デイ」は「放課後等デイサービス」の略で、2012年4月の児童福祉法改正で、障害や発達に特性のある子どもが身近な地域で福祉サービスを受けられる支援体制が必要とされたことから創設された。制度がスタートした2012年の利用者数は5万1678名。それが2022年には30万6490人になり、2025年1〜3月平均では約37.5万人、全国の事業所数は2万2748ヵ所となっている(厚生労働省統計情報「障害福祉サービス等の利用状況について」より)。
小澤氏は2010年の開業後、2012年の法改正から今日まで「放デイ」、障害福祉サービス分野に特化したサービスを展開してきた。なぜ氏はこの分野を専門にしようと考えたのか。まずは氏の歩みを振り返ってみたい。
東京生まれ、横浜育ちの小澤氏は高校から大学まで、ずっと合唱を行っていた。高校時代は男性合唱、一浪して進学した山形大学では混声合唱だ。
「かなり一所懸命合唱に打ち込んできました。そのような中、大学4年生のころ、合唱以外に新しいことをやってみたい、やるならボランティアがいいなと思い、友人が参加していた障害児の学習、水泳サークルの手伝いをさせてもらいました」
このボランティア経験が、のちに「放デイ」を専門とすることにつながってくる。
旧司法試験から行政書士へ
実は小澤氏が最初にめざしたのは、行政書士ではなく旧司法試験だった。
「ボランティアがきっかけで福祉関係の仕事に就くなら、法律を知っておいたほういいと考えたことが理由のひとつです。そして大学入試のとき、悔しい思いのまま、納得できない状況で進学してしまったため、もう一度勉強してみたいという思いが相まって、旧司法試験をめざしました。ただ、4回受験しましたが箸にも棒にもかかりませんでした」
ここで小澤氏の行政書士への転換に大きな影響を与えたのは、現在の奥様である当時のフィアンセと小澤氏の両親だった。
「妻からは『もう、やめて』、『私と結婚するか別れるか選んで』とはっきり言われました。両親からは『旧司法試験を諦めるなら、落とし前をつけるために司法書士試験か行政書士試験のどちらかに合格しなさい』と言われたのです。
ただ、民法が苦手だったので司法書士試験は受かる気がしませんでした。そこで、行政書士試験の受験を決めました。当時、旧司法試験の択一式試験が5月にあり、もうダメだなとわかりました。当時の行政書士試験は10月の第4週が本試験で、約4ヵ月の準備期間で受験に臨みました」
行政書士試験の勉強に旧司法試験で学んだ憲法と民法の知識は活かせるものの、行政法、一般教養、行政書士法、戸籍法などは新たに勉強したという。
「2004年の行政書士試験に合格しましたが、その年の本試験は一般教養が非常に難しくて、自己採点してみるとギリギリでした。ところが、12月に行政書士試験研究センターからある問題を没問(没収問題)にし全員正解とします、と発表がありました。あっ、これでギリギリ合格と思いました」

企業勤務に戻れるギリギリのタイミングで独立開業
こうして行政書士試験に合格した小澤氏だが、すぐに行政書士の実務に就くことはせずに、一般企業に就職した。
「妻と結婚したかったからです。結婚の条件として安定した収入を求められましたので、企業勤務なら収入は安定します。それに今と比べれば行政書士試験合格者に対する求人はほとんどありませんでした。ましてや社会人経験もない自分に、開業なんてもってのほかです。私が合格したのは27歳でしたが、同世代の人が行政書士として活躍しているイメージはありませんでした」
小澤氏が勤務したのは公益法人向けシステムを専門とする会社。福祉関係の仕事に就きたいと考えていた小澤氏にとって、社会福祉法人の会計システムを扱っている会社の求人はおもしろそうに思えた。
「その会社には約5年半お世話になりました。担当した業務は介護事業者や障害福祉事業者が国保連に対してレセプト請求を行うシステムのサポートです。その仕事を通じて、介護保険や障害福祉サービスの具体的な制度の枠組みなどを勉強することができたのは、大きなメリットでした」
ゆくゆくは福祉関係を専門とする行政書士として独立開業したいと考えていた小澤氏が、実際に独立開業したのは2010年9月である。
「独立開業のとき、私はちょうど33歳。3年間やってダメだったとしても、36歳ならまだ企業勤務に戻れるギリギリのタイミングです。開業時、子どもは2歳と0歳。死にもの狂いでがんばれば、なんとか軌道に乗せられるのではないかと考えました」
情報発信を通じて見込み客との関係を築く
「福祉関係がメインの行政書士としてスタートしましたが、最初の2年間は胸を張って言えるほどの収入はなく、会社勤務時代の半分程度でした。今日につながるきっかけとしては、2012年の児童福祉法の改正のとき、1件の放課後等デイサービスの開設をお手伝いしました。そのことをホームページに載せていたところ、特にSEOなどはしていないのにインターネット検索で上位表示され、そこから集客につながりました。
Webサイトからの集客がうまくいき始めたので、メールマガジンにも登録してもらおうと考え、『放課後等デイサービスをスムーズに開設する方法』というメルマガの発行を始めました。福祉関係のメルマガが少ない中、メルマガに登録してもらうことで、見込み客との関係を築いていくことができました」
さらに小澤氏は2018年からYouTubeでの発信も始めている。
「今でこそビジネス系でYouTubeを通じて情報を発信することは当たり前になりましたが、当時はまだビジネス系、福祉関係の発信はほとんどありませんでした。現在ではチャンネル登録者数が約1万5400名、約1700本の動画をアップしています」
小澤氏が独立開業した当時、福祉関係を専門と謳う行政書士はほとんど見かけなかったという。当初は、会社勤務時代の半分ほどだった売上も2013年には1000万円を超え、翌2014年には2000万円を超えるようになった。そこからはほぼ右肩上がりで来ている。
「行政書士は労働集約型ビジネスですので、売上が上がるようになると、当然1人では回らなくなります。そこで外注や業務委託で新人の行政書士に依頼しましたが、私が求めているクオリティのものはなかなか難しく、手直しが必要だったりと苦労しました。
実際に正社員を雇用したのは2016年7月です。やはり内部に行政書士がいることで、より多くの業務を受けられるようになっていきました」

業務内容は100%障害福祉サービス
小澤氏率いる放デイラボでは、現在までにおよそ310件の放課後等デイサービスの開設を支援している。先のように全国の事業所数が2万2748ヵ所あるとしたら、その1%以上に関わっていることになる。
「開業して1〜2年目の食べられなかったときに、知り合いの司法書士の紹介で運送業の変更届などを行ったことがあるくらいで、福祉関係以外の仕事はまったくやっていません。顧問先は105件ですが、その中で放課後等デイサービスをやっていないのは2件だけです。その2件も就労継続支援B型など障害福祉サービスですので、業務内容としては100%障害福祉サービス分野です」
2020年のコロナ禍以来、企業間のオンラインによる取引が拡大し、士業でも全国対応を謳う事務所が増えた。だが、小澤氏は2013年から全国対応を行っている。
「いまでこそ全国対応は当たり前になりましたが、放課後等デイサービスに対応できる士業がいなかったこともあり、早い段階で自然と全国対応になりました。今では、北は北海道の札幌市、苫小牧市、南は九州の熊本県まで対応しています。九州には5件の顧問先があります」
放デイラボの業務内容は、放課後等デイサービスの設立支援から始まり、実際の運営で日々発生する課題や、経営に関する相談への対応が多い。
「例えば、誰かが辞める場合にどうしたらいいか、人員配置をどうするか、新しく採用する場合どんな人がいいのか、採用に際して何に注意が必要か、といったように、開設して終わりではありません。基準も人員も揃えないといけないし、給与も適性に支払わなければなりません。いろいろなしがらみがある中で、このやり方、この順番で合っているのか、漏れはないかといった心配を、放デイラボと一緒に確認していきましょう、というスタンスです」
顧問先の職員に範を示した保育士取得
小澤氏は行政書士に加え保育士の資格も取得しているが、業務の必要から取得したのだろうか。
「2018年の報酬改定のとき、保育士資格を持っていると、多くの点数が加算される制度に変わりました。保育士を持っている方が多く在籍していると報酬が増えるのであれば、私の立場としては、できるだけ保育士資格を取得しましょう、とアドバイスします。でも、顧問先の職員からは『あなたは奨めるだけでいいけど、やらなきゃいけないのは私たちだ』と言われました。それなら自分も取得しなければ、と勉強を始めました」
小澤氏にとっては、必須資格ではなかったが、顧問先の職員に保育士の勉強を始めてもらうためにも、自身で勉強して取得することが必要だったのだ。
「顧問先の職員は福祉関係ということもあり、女性、主婦が多い環境です。勧めても『時間がない、お金がない、私も年だから』と言い訳をします。私がやることで、その言い訳を「こうすればできる」に変えて、皆さんに取得してもらうために私も勉強しました」
小澤氏は2018年の後期試験と2019年の前期試験および後期試験を経て保育士試験に合格し、保育士資格を取得している。なお、その後の2024年の法改正で、保育士を持っているからといって点数が加算されることはなくなった。

40代、50代のセカンドキャリアを支援
放デイラボは現在、小澤氏と正職員3名、パートタイマー1名の体制。正職員は全員行政書士試験合格者で、2名は行政書士登録をしている。
「行政書士資格の有無にこだわっているつもりはありませんが、最低限の事務作業ができる基礎的な素養は、行政書士試験合格だと考えています。以前、無資格の方を採用しましたが、みな10日間から数ヵ月で辞めてしまいました。
人としての、社会人としてのコミュニケーションができる状態で、行政書士試験に合格していると、放デイラボの最低限の仕事はできると考えています」
現在勤務する正職員の入社は2024年以降。実は2024年に常勤職員全員が退職するという事態に小澤氏は直面している。
「自分が代表としてできていないことが多々あるのはわかっていましたが、職員に投資してきちんと育てていくことが、一番大事だということを突きつけられました。そこから反省して、前の職員のような思いをさせないようにしようと努力しています」
人財育成面では知識の習得と育成のために、実務で必須となる障害児通所支援や障害者総合支援法の枠組みを理解するための所内テストを日々繰り返し行っている。現在の職員はみな業務未経験で始めているので、この取り組みにより福祉的な枠組みをきちんと身につけてもらうためでもある。
「そのおかげで、先ほどお話した日々の運営や経営に関する問い合わせに対して、8〜9割は職員が回答、対応できるようになりました。また、売上や利益も2024年以降、それ以前より上がっています」
現在の職員が勤務を始めたことから、小澤氏は40代、50代のセカンドキャリア支援にも注力している。
「いま放デイラボで働いているスタッフは、業務未経験で40代、50代から資格業でがんばっていきたいという方たちです。働き手として若い世代が減っている中、中高年の方の新しいキャリアの作り方、雇用側からいうと人材の活かし方がポイントになってくると思います。実際に定年も伸びていますし、60代後半、70代で働く方も当り前にいます。若い世代に入ってもらって、育てても数年で辞めて独立されるのであれば、セカンドキャリアをきちんと積んでもらい、10年20年と勤めてもらうほうがいいと思います。
これは開業以外の選択肢を作ることでもあります。若い世代でもセカンドキャリアでも、1〜3年は育成にかかります。そのために職場環境の整備も進めています。3年キャリアを積めば、前職よりもキャリアアップしたと思えるような育成環境、評価制度等の整備にも取り組んでいます」

覚悟を持つための法人化
小澤氏が「放デイラボ」という名称を使うようになったきっかけは何なのだろうか。
「2017年頃にFacebookの非公開コミュニティでオンラインサロンを行い、情報提供していました。そのときの名称が『放デイラボ』です。当時は珍しかったのか、結構大勢の方に参加していただきました。それがきっかけで会社を作ろうと考えました。そんなとき、コロナ禍に見舞われました」
2020年のコロナ禍の際、自粛の名目で学校や会社、多くのサービス業が動きを止めた。しかし、医療・介護・福祉は、個人への「慰労金」 と事業所への「支援金(感染症対策経費等)」 が国から支給され、事業継続を要請された。
「そのときに自分の事務所を振り返りました。当時は個人事務所で正職員は1人。これでは覚悟が足りないと気づきました。覚悟を持ってやるために、まずコンサルティングを株式会社化し、1年後の2021年に行政書士の個人事務所を行政書士法人化しました。
きちんと事業をして、財務戦略、人材確保、人材教育なども自社で行った上で、顧問先にアドバイス、ご提案するかたちに変えました」
まったくの未経験でも活躍できる
障害福祉サービス分野に特化して展開する小澤氏だが、今後についてはどのように考えているのだろうか。
「2026年は株式会社と行政書士法人をあわせて売り上げが5000万円を超える予定でいます。開業以来、平均すると13〜14%の伸びてきています。あと20年続けるとしたら、売上10数億円規模になります。それをひとつの目標に、自分にプレッシャーをかけています」
方向転換して行政書士資格を取得した小澤氏。小澤氏にとって行政書士とはなんだろうか。
「資格があるからこそ、福祉業界に貢献したいという自分がやりたいこと、好きなことはやれていると考えています。コンサルティングをするときに、行政書士を名乗ったほうが受け入れてもらいやすい側面は絶対にあると思います。国家資格者としての信用、それは大きいと思います」
最後に資格取得をめざす読者にアドバイスをいただいた。
「資格の活かし方では、とても柔軟に考えられます。行政書士は開業だけではなくて、勤務という選択肢も増えてきています。
そして、実務未経験でも、うちみたいに40代、50代で始めたまったくの未経験者でも活躍することができます。特に、子育てや家庭の事情などで思うようにキャリアを積めなかった方のセカンドキャリアという意味では、資格業はすごく魅力的ではないかと思います」
[『TACNEWS』日本のプロフェッショナル|2026年11月 ]
















