タックス ファンタスティック! 第97回テーマ テレビに映れば、信用されるか?


 ■ 今回の登場人物

 ・大輔:天野大輔。このコラムの作者。NHK放映後も何も変わっていないと言い張る。

 ・マダナイ:デジタル遺言アプリ「AIユイゴンWell-B」のマスコット猫。

田久巣会計事務所の代表の田久巣だ。先月7月11日、NHK『サタデーウオッチ9』で、税理士法人レガシィのデジタル遺言時代に向けた取り組みが取材・放送された。このコラムの作者である天野大輔さんも登場した。本人は「何も変わっていない」と言うが、事務所内を歩く速度が放送前より少しゆっくりになった気がする。
もっとも、テレビに取り上げられたことと、その会社やサービスが評価・推薦されたことは別である。むしろ、多くの人の目に触れた分だけ、説明する責任は重くなる。今回は、テレビに放映されることと、士業やAIサービスの信用について考えてみたい。


監 子 みなさん、大ニュースです!全国のみなさんに大輔さんの顔が知られてしまいました!


税 太 大輔さん、もともと顔出しでYouTubeをやっていますよ。


監 子 でも今回はNHKですよ。しかも全国放送です!


(ガチャ)


大 輔 どうも。全国放送を終えても何も変わらない、庶民派の作者です。


襟 糸 何も変わっていない者は、自分から庶民派とは名乗らん。


監 子 そうですよ。事務所を歩く速度も、前より0.8倍くらいになっています。


大 輔 それは放送後の余韻を大切にしているだけです。


税 太 しっかり変わっているじゃないですか。


監 子 でもNHKで放送されると、世間からお墨付きをもらったような気分になりますよね。


大 輔 そこは注意しないといけない。取材されて放送されたことと、NHKが会社やサービスを評価・推薦したということは、まったく別だからね。


税 太 「ニュースで報じられても、公認ではない」。N・H・Kですね。


襟 糸 珍しくダジャレがコンプライアンスに貢献したな。


田久巣 冗談のようだが、大切な線引きだ。


監 子 では、なぜデジタル遺言がニュースになるのでしょうか?


大 輔 遺言を単なる「死後の財産分け」ではなく、「自分はどう生き、家族に何を残したいのか」を整理するものとして捉え直せるか。そこにデジタルやAIがどう関われるのか。多くの人に関係する社会的な問いだからだと思います。


監 子 私も歴代の恋愛について、後世に何を残すか整理しておこうかしら。


襟 糸 残された側が相続放棄するぞ。


監 子 私の恋愛を債務扱いしないでください!


税 太 実際の取材では、話したことが全部放送されるわけではないですよね?


大 輔 もちろん。取材ではたくさんのことを聞いていただいたけれど、放送では限られた時間の中で本質が伝わるように構成される。話す側としても、結局何を一番伝えたいのかを改めて考えるきっかけになりました。


監 子 私の恋愛も、うまくいった場面だけ編集して放送してもらいたいです。


襟 糸 放送時間が余るな。


監 子 失礼ね!


税 太 でも、編集という意味では遺言も少し似ていますね。一人の人生のすべてを書くことはできないから、何を選んで残すかが大事になる。


田久巣 その通りだ。財産を誰に渡すかだけでなく、なぜその分け方にしたのか、家族に何を伝えたいのか。限られた言葉だからこそ、背景や文脈が大切になる。


大 輔 AIユイゴンWell-Bも、AIとの対話を通じて家族への想いや付言事項を言葉にし、遺言書草案づくりを支援するアプリです。ただし、アプリで草案を作れば、自動的に法的効力のある遺言が完成するわけではありません。正式な遺言にするためには法律上の方式を満たし、必要に応じて専門家に確認してもらうことが大切です。


監 子 テレビに出たら、そういう説明は省略できるのかと思っていました。


税 太 むしろ逆ですよ。知る人が増えた分、できることと、できないことを、より正確に伝えないといけません。


襟 糸 メディア露出とは、いわば「信用の前受金」だな。


監 子 では、さっそく売上計上しましょう!


税 太 ダメです。説明と改善という履行義務を果たさないと。


田久巣 急に収益認識基準の話になったな。


襟 糸 信用は一時点ではなく、一定期間にわたり認識されるのだ。


監 子 それは会計基準ですか?人生訓ですか?


マナダイ テレビに映るのは一瞬だけど、家族に遺す言葉は長く残るにゃ。放映されたことより、取材で投げかけられた問いを、これからの仕事やプロダクトに反映することが大事だにゃ。


税 太 なるほど。「放映」より「反映」ですね!


襟 糸 吾輩の台詞を猫に先に言われた。


監 子 大輔さんは、今回の放映を何に反映するんですか?


大 輔 自分が映っている姿を見て、もう少し姿勢を良くしようと思いました。


監 子 社会課題より先に猫背が改善!


マナダイ 猫だけに、猫背は見逃せないにゃ。


田久巣 それも立派な反映だな。取材していただいたことに感謝し、そこで問われたことを次の仕事に生かす。それが一番大切だ。

【今回のポイント】

メディアに取り上げられることは大変ありがたい。しかし、それは会社やサービスへの認定や推薦ではなく、社会がそのテーマに関心を持ち、説明を求めているということだ。
士業やAIサービスにとって大切なのは、露出を信用そのものと取り違えず、何ができて何ができないのかを正確に伝え、利用者の声を聞きながら改善を続けることである。
遺言もテレビも、限られた言葉の中で何を残すかを考える。財産の分け方だけではなく、その背景や家族への想いを言葉にすることで、遺言は人生を振り返り、未来へつなぐための編集にもなる。
テレビに映るのは一瞬だが、信頼は毎日の仕事から生まれる。つまり、信用は一時点ではなく、一定期間にわたって認識されるのだ。大事なのは「放映」より「反映」。取材で投げかけられた問いを、これからの仕事とプロダクトに反映していこう!

※本稿で紹介した取材・放送は、NHKによる税理士法人レガシィまたはそのサービスの評価・推薦を示すものではありません。


[『TACNEWS』タックス ファンタスティック!|2026年8月|連載 ]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員。慶應義塾大学・大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でSEとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人等で、会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後相続専門約60年の税理士法人レガシィへ。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年に士業事務所間で仕事を授受するWebサービス「Mochi-ya」、2020年にシニア世代向けの専門家とやりとりするWebサービス「相続のせんせい」、2024年に士業のためのSNS「サムシナ」、2025年8月にデジタル遺言アプリ『AIユイゴンWell-B』をリリース。主な著書『相続でモメる人、モメない人』(2023年、講談社/日刊現代)『100億円相続事典』(2024年、日経BP)。2025年より中央経済社『税務弘報』にて「文学で学ぶ相続の知恵」毎月連載中。YouTubeチャンネル「相続と文学」配信開始。

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