タックス ファンタスティック! 第93回テーマ デジタル遺言は日本人の死生観を変えるか?
Part.13 アトツギ編

田久巣会計事務所の代表の田久巣だ。日本における中小企業を始めとしたオーナー会社の後継者不足が言われて久しい。経済産業省でも「ファミリービジネスのガバナンスの在り方に関する研究会」が発足され、後継者による承継も重要なテーマとなっている。後継者は「アトツギ」と言われることが多いが、今回はそのアトツギをデジタル遺言に絡めて考えたい。


監 子 襟糸先輩、お花見行きましょ!


襟 糸 むむむ、監子君。先月に続いてその甘言、何か狙いでもあるのか?


監 子 はい、開き直りますが、めっちゃあります。


襟 糸 なるほど、それなら吾輩も開き直るが、絶対行かない。花粉症だし。


監 子 それは許せません。私のクライアントがMBOで上場廃止するので法定監査不要になるんですが、税務上の相談事が多くなりそうなので引き継ぎをしたいんです。そのクライアントと鎌倉でお花見なのでスーパーエリートな襟糸先輩に来てもらいたくて。


襟 糸 監子君から引き継ぎか。ろくなことにならなそうだからやっぱり行かない。


監 子 かわいい後輩の言うことが聞けない上司なんて、それこそろくでもない!


税 太 はいはい、お二人とも今回もそこまで!監子さん、もしよければ僕でも。


監 子 税太君、えらい!じゃあ!って言いたいところなんだけど、そのクライアントのアトツギ、税理士資格がある人の意見が聞きたいって言うのよね。


税 太 めざしているじゃダメなんですね。。。


襟 糸 そのアトツギ、税理士「資格」にこだわるような狭い了見じゃ、アトツギ「失格」だ。「資格」だけに。


監 子 うわっ、そのダジャレも失格よ!なんでもガバナンスに興味あるらしいの。これまで上場していて財務報告とかもろもろ開示していたから、創業者ファミリー間のルールを作って開示することに抵抗がないみたい。むしろブランディングになるのではないかと思っているみたいなの。でも資産管理会社との取引や承継をめぐって税務が気になるようで、エリートな税理士をお望みというわけ。


襟 糸 むむむ、エリート!それはなかなか興味深い。


税 太 襟糸先輩、もしかして「エリート」という言葉に響いているのでは?


襟 糸 いやいや、まさか。むろん税務だ。


監 子 あ、でもそういえば、そのアトツギのお母様が税理士以外の人とも話したいと言っていたわ。特に家族がある人って。遺言を書きたいみたいなの。


税 太 え、じゃあまさに僕じゃないですか!お花見行きます!でもなぜ?


監 子 お父様とお母様にはお子様が3人いらして、他の2人とのバランスをしっかり考えたいみたいで。アトツギがやはり株を承継するぶん、他の兄弟は不公平感を感じやすいから、そのあたりをしっかりケアしてほしいみたいなの。


税 太 まさに相続・事業承継のお仕事ですね。でもなぜ家族がある人?


監 子 やっぱり利他の精神が働きやすいからかしらね。自分以外の人を優先できる習慣がある人に話を聞いてもらいたいんだと思うわ。あまりそういう人いないから、税理士法人レガシィのデジタル遺言アプリ「AIユイゴンWell-B」で心の整理をしながらAIに聞いてもらっていたみたい。


襟 糸 でもアトツギはエリートをお望みなんだよな?税務上の問題を理論を駆使してクリアにして、新規事業へ投資してイノベーションを起こそうというわけなのだろう?


監 子 そう。でも家族のことを理解してお花見という儀式もしっかり参加できるのがエリートという定義もできるわ。


税 太 襟糸先輩、いざ鎌倉です!略して「さくら」、お花見です!


監 子 自己中も江ノ電降「りた」ら「利他」になれる!


襟 糸 うーむ、「資格」者だけに「刺客」になってしまう気がするのだが。


税 太 いえいえ、「資格」者だけにアトツギが見えない部分の「視覚」になってくれますよ!

【今回のポイント】

ファミリービジネスマネジメントにおけるガバナンスの取り組みは昨今ブームだ。日本企業の多くはファミリービジネスと言われており、承継においても家族問題においても悩みは深い。士業になると今後ますますそのような仕事が増えるだろうが、その際大事なのは、数字はもちろん家族間の感情だ。制度だけでは解決できず最終的には覚悟が必要だからだ。でも税理士としてはやはり数字にもこだわってしまうだろう。そんなときは数字の5を書こう。書く5→覚悟!


[『TACNEWS』タックス ファンタスティック!|2026年4月|連載 ]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員。慶應義塾大学・大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でSEとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人等で、会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後相続専門約60年の税理士法人レガシィへ。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年に士業事務所間で仕事を授受するWebサービス「Mochi-ya」、2020年にシニア世代向けの専門家とやりとりするWebサービス「相続のせんせい」、2024年に士業のためのSNS「サムシナ」、2025年8月にデジタル遺言アプリ『AIユイゴンWell-B』をリリース。主な著書『相続でモメる人、モメない人』(2023年、講談社/日刊現代)『100億円相続事典』(2024年、日経BP)。2025年より中央経済社『税務弘報』にて「文学で学ぶ相続の知恵」毎月連載中。YouTubeチャンネル「相続と文学」配信開始。

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