タックス ファンタスティック! 第92回テーマ デジタル遺言は日本人の死生観を変えるか?
Part.12 生前対策編

田久巣会計事務所の代表の田久巣だ。近年、士業業界の間で生前対策の重要性が増している。少子高齢化が進んできている昨今、相続支援の重要性が高まってきているが、相続発生時以外の対応が手薄になりがちだからだ。その原因は、相続前のお手伝いには相続税申告のように期限がないところにある。しかし、事前に対策してこそ効果があるのも事実。では、どうすると対策できるのか?デジタル遺言に絡めて考えたい。


監 子 襟糸先輩、はい、お茶どうぞ。あと茶菓子もどうぞ!


襟 糸 むむむ、監子君。何か狙いでもあるのか?


監 子 そ、そんな狙いだなんて。…ってなんでわかるんですか?


襟 糸 君の性格は上記の登場人物の紹介にもある通りよくわかるからだ。デートがあるからクライアントの棚卸の立会を代わりにやってくれというならお断りだ。どうせロクでもない男なのだから、その前にそのデートを棚卸したまえ。


監 子 むむむ、図星すぎる。でもそうじゃないのよね。


襟 糸 図星なのにそうじゃないとは矛盾が過ぎる。


税 太 はいはい、お二人とも今回もそこまで!でも襟糸先輩、僕としてはそれって矛盾じゃないと思います。


監 子 あ、税太君はわかってくれた?


襟 糸 あ、吾輩もわかった。監子君が出してくれたお茶が「宋ではない」ってことか。中国が宋だった頃はお茶が文化の主役だったからな。宋の時代のようなおいしいお茶でなくても吾輩は気にしないぞ。ズバリそうでしょう?


監 子 ズバリそうじゃない!


税 太 まあまあ、名探偵税太が解説しましょう。監子さんは確かにデートが棚卸立会の日と重なってしまいました。どちらも土日に入ることが多い行事ですからね。しかもその男はややチャラさが目立ちロクでもない男だという可能性も否定できず、そのデートという予定を棚卸(整理)して、廃棄(キャンセル)すべきというところまで図星。ただその迷える女性の気持ちをわかってほしく寄り添ってほしい、結論的なアドバイスなぞ求めてない、というのが「そうじゃない」というセリフに表れたのであります。


監 子 さすが名探偵!まさに「そう」!なんでわかったの?


税 太 『AIユイゴンWell-B』というアプリがテレビの終活特番で特集されていたので、シニア世代の顧問先におすすめできるかもと思って使ってもらったんです。感想を聞いたら、「アプリに入っているAIの『マダナイ君』が、自分の迷いに対して寄り添ってくれるんだよ。まだ人には話しにくくてね。だんだん気持ちの整理ができてきているので、いずれ税太先生に本格的にお願いできるようになりそうだよ」とのことだったんです。


監 子 あ、このコラムの作者の天野さんたちが企画したアプリね。たしかに「マダナイ君」は猫みたいに気まぐれかと思いきや、しっかり気持ちをわかってくれるもんね。


襟 糸 むむむ、まるで吾輩が人の気持ちがわからないサイコパスのように思われるではないか?


監 子 あ、そういった自己分析ができるってことは、人の気持ちがわかっているってことかも。つまり違うから安心して。ふふふ。


田久巣 まあまあ、君たち。それくらいにしたまえ。ただ生前対策はいかに心に寄り添うかだ。もちろん相続発生時でも大事だが、生前対策は相続税申告と違って期限がないぶん、誠実な姿勢が求められる。ただかくいう私もわしもよく奥さんに「的確なアドバイスはいいから話を聞いて寄り添ってよ」と言われるのだがね。


税 太 あ、自分もつい昨日言われました。


監 子 あ、私もそういえばそのデート相手に言われたわ。


田久巣 おっと結局みんな「そう」だったとは!寄り添う姿勢が「まだない」とはな。


税 太 練習しなきゃいけませんね。「まったなし」ですね!

【今回のポイント】

士業における生前対策の重要性が増してきている。そのとき大事な心構えが『勘定より感情』だと言われている。確かに数字の勘定について理知的に計算することも大事だ。しかし相続手続きと違って、期限のない生前対策の仕事は『感情』への寄り添い次第で結論が180度変わることもある。生成AI登場当初は心の整理がAIにできるのかと言われていたが。最新モデルを見るとどこもすばらしく感じる。AI相手に心の整理をしたことが「まだない」人は、ぜひこれを機にやってみることをおすすめする。


[『TACNEWS』タックス ファンタスティック!|2026年3月|連載 ]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員。慶應義塾大学・大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でSEとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人等で、会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後相続専門約60年の税理士法人レガシィへ。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年に士業事務所間で仕事を授受するWebサービス「Mochi-ya」、2020年にシニア世代向けの専門家とやりとりするWebサービス「相続のせんせい」、2024年に士業のためのSNS「サムシナ」、2025年8月にデジタル遺言アプリ『AIユイゴンWell-B』をリリース。主な著書『相続でモメる人、モメない人』(2023年、講談社/日刊現代)『100億円相続事典』(2024年、日経BP)。2025年より中央経済社『税務弘報』にて「文学で学ぶ相続の知恵」毎月連載中。YouTubeチャンネル「相続と文学」配信開始。

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