人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第84回 テルモ株式会社

中寺 文徳(なかでら あやのり)氏(写真左)
人財開発室 室長
石井 範子(いしい のりこ)氏(写真中)
人財開発室 キャリア採用チーム 課長
国家資格 キャリアコンサルタント
廣瀬 美緒(ひろせ みお)氏(写真右)
人財開発室 副室長 兼 新卒採用チームリーダー
本社HRBP
医療を通じて社会に貢献するテルモは、
社員のキャリア自律を後押ししています。
体温計の製造販売から始まったテルモは、創業から100年以上の歴史の中で、販売国・地域数160以上、売上規模1兆円を超えるグローバル企業に成長した。多様な人材の様々なスキルや能力、一人ひとりの個性を最大限に活かして、医療の未来への挑戦を続けるテルモでは、どのような人材観を持って人材育成をしているのだろう。人財開発室室長の中寺文徳氏、同副室長兼新卒採用チームリーダーの廣瀬美緒氏、同室キャリア採用チーム課長の石井範子氏の3名にお話をうかがった。
医療を通じて社会に貢献する
──テルモについて教えてください。
廣瀬 テルモは、第一次世界大戦の影響で輸入が途絶えた良質な体温計を国産化しようと、北里柴三郎博士はじめ医師らが発起人となって1921年に設立されました。設立者の思いは今日まで受け継がれ、「医療を通じて社会に貢献する」という企業理念につながっています。
創業から100年の歴史の中で、その時代時代の医療現場のニーズに応えて多角化を進め、現在取り扱っている製品は5万点を超えます。現在、製品ごとに心臓血管カンパニー、メディカルケアソリューションズカンパニー、血液・細胞テクノロジーカンパニーの3つのカンパニーで事業展開を進め、2024年度は売上規模1兆円超を達成しています。グローバル展開は販売国・地域数160以上、アソシエイトはグループ全体で3万人超、国内約5600人に上ります。なお、当社では従業員を「共に働く仲間」という意味を込めて「アソシエイト」と呼んでいます。
そして、2025年には新たに私たちがめざす方向性として、「Our Promise」を制定しました。これは、当社が「医療を通じて社会に貢献する」という企業理念を実現するために、社会に対する約束として、長期的に追及していく方向性を示すものです。
会社の持続的な成長には、それを支える人財が不可欠です。アソシエイト一人ひとりの自律的な成長を後押しするという思いから「キャリア自律」を唱えています。会社が決めたレールの上を歩むのではなく、一人ひとりの志向や強みを最大限に活かしながら、各人のキャリアを実現するための様々な制度、研修、チャレンジできる機会を提供しています。
画一的な「求める人物像」はありません
──新卒採用、キャリア採用に共通する「求める人物像」はどのような人材ですか。
廣瀬 新卒採用では一人ひとりの個性や強みを最大限に引き出したいので、積極性や主体性といった画一的に求める人物像は定めていません。新卒採用、キャリア採用に共通しているのは、当社の企業理念やOur Promise、コアバリューズに対する共感を大前提としている点です。
──2025年4月入社の新卒採用は何名でしたか。
廣瀬 大卒は企画営業系職種約70名、技術系職種約100名、社内向けのオペレーションシステム・セキュリティ管理等の情報DX系人財若干名の合計約180名で、工場勤務の高卒約50名も採用しています。2026年4月入社は2025年同程度を計画しています。
──新卒採用の選考フローを教えてください。
廣瀬 インターンシップに参加した求職者は志望意欲が高い方が多いので、少し早めに選考させていただきます。インターンシップに参加していない、一般応募の方も大勢います。
選考フローは、エントリーシート提出、適性検査、1次面接、2次面接、最終面接で内定に至ります。1次面接、2次面接は、ほぼオンラインですが、最終面接は主に対面で、一部専門的な職種はオンラインの場合もあります。
──新卒採用でミスマッチを防ぐために工夫していることがあれば教えてください。
廣瀬 1次面接、2次面接の過程で各職場の先輩が面接官に入り、入社後の能力発揮や職場環境に適応できるかを確認しています。医療機器は専門性はもちろん、アグレッシブにチャレンジする人財も、品質や安全をしっかりチェックする人財も必要です。多様な人が一緒に協働して初めて新しい価値が生まれるので、多様性ある人財に入っていただくことが大切だと考えて選考しています。
──内定者フォローはどのように行っていますか。
廣瀬 2025年から任意の内定者向けeラーニングを始めました。一般的なビジネススキルが中心のコンテンツです。またオンラインで何回か集まる機会を設け、入社への不安や入社に向けた様々な手続き、入社後の環境についてご案内し、相談に応じています。
廣瀬 美緒 氏
2002年、テルモ株式会社入社。富士宮工場、人財開発室、メドテックデザイン、研究開発本部、CTOオフィス。2017年より産育休取得(1年4ヵ月)。2021年より人財開発室 新卒採用チームリーダー、のちに兼副室長。
キャリア人財は年間120名~150名を採用
──キャリア採用の採用人数と選考フローを教えてください。
石井 年間120名前後の採用を行っています。基本的には人事側の人物面、社風マッチの観点と部門側の専門性、スキル、組織マッチの観点で見ていきます。書類選考のあと、1次面接はオンラインで行うケースが多く、合格者はWebでの適性検査を経て、求職者のパーソナリティの要素を改めて最終面接で確認し、その後オファー面談実施が基本的な流れになっています。候補者によっては、オファーを出す前に若手メンバーや一緒に働くメンバーとカジュアルな面談を一度挟むこともあります。選考期間は1ヵ月から1ヵ月半です。
キャリア採用のオーダーは2種類あります。ひとつは、現組織の中で異動や退職で空いてしまったポジションがある場合、そのポジションで即戦力として活躍できる人財として、一定のスキルと経験、バックグラウンドを持った人財を求める場合です。もうひとつは、今のアソシエイトが持っていない経験やスキルを持っている外部人財を採用し、そのシナジー効果で企業成長を遂げていきたいという内容です。
──キャリア採用で求める素養について教えてください。
石井 企業理念への共感の他にもうひとつ、高度な専門スキルと経験が求められます。当社のキャリア採用の方針は「数合わせの採用はしない」です。内定承諾をいただいて求職者が入社して終わりではなく、入社後しっかりとポテンシャルを発揮し、事業や企業の成長に寄与していってほしいと考えるからです。採用は、企業の未来だけではなく、求職者の人生にも大きな影響を与えます。求職者にとっても最良の選択であっていただきたいと願っています。
石井 範子 氏
2010年、新卒でリテール業界の企業に入社(営業職)。2017年、食品メーカーに転職し人事職。2022年、テルモ株式会社に入社しキャリア採用チーム配属。2023年7月、キャリアチャレンジ制度に挑戦し「課長職」として上級職に任用。
各職種別に手厚い研修を設定
──2025年4月新卒入社者の入社後の流れを教えてください。
廣瀬 入社後、約1ヵ月間の集合研修を実施し、基本的なビジネススキル、社会人マナー、企業理念、歴史、取扱製品について学び、ゴールデンウィーク明けからは職種別研修に入ります。MRはMRに必要な知識、工場勤務者は工場の必須な知識を数週間から2ヵ月かけて学び、その間に配属に向けた準備を進めます。配属後は配属先の受け入れ研修を受けてから、各職場に就く流れです。
本社系職種はゴールデンウィーク明けに各部門で受け入れ研修、そこですぐ配属になるケースもありますし、9月まで研修を行う部門もあります。営業系職種では仮配属のステップを踏むこともあり、何ヵ月間かの仮配属の後、正式配属という流れになります。
さらに新卒は、入社2年目、3年目に同期と一堂に会する集合研修があります。自身と同期の成長を感じながら、次のステップに向けての節目となる機会にしています。
──キャリア採用では入社時研修を実施していますか。
石井 3日間、企業理念や事業理解、医療機器メーカー特有の製品知識に関する研修、コンプライアンスや社内規定に関する研修を実施し、その後は各部門に配属されOJTに入ります。
さらに、実際に医療機器や製品を手に取る機会が少ないコーポレート部門に配属される方には、自分たちの仕事が何に貢献しているのか、お客様にどのように貢献できているのかを理解してもらうために、入社後にオンボーディング研修として、当社の主要工場数ヵ所の見学を行います。
その後、当社の医療従事者向けの研修センター「テルモメディカルプラネックス」で、実際にドクターが行う術式をハンズオンで学びます。こうした研修を1泊2日で行うことで、キャリア入社同志の横のつながりも深めています。
ジョブ型人事制度を導入
──人事制度の特徴を教えてください。
中寺 2022年から管理職にジョブ型人事制度を導入しました。導入後はいわゆる課長職のポジションはフル公募になり、応募した方の中から選考する形になりました。適所適材を推進するため、4年ごとにポジションにつく方を見直す制度となっています。いわゆる部長職相当のポジションは会社側がアサインしますが、こちらも4年に1回見直し、毎年行うサクセッションプランのディスカッションでノミネートされる候補者を参考にしながらアサインが行われることとなります。
2025年4月からは一般・中堅層へも緩やかなジョブ型を広げました。導入後は等級ごとの役割を明確にし、さらに上の等級へのステップアップ条件も具体的に打ち出しています。
石井 ジョブ型人事制度では、ポジションごとにジョブディスクリプションという、そのポジションに必要とされる能力やスキルが明確にされています。中には特定の資格を持っていることが推奨条件、あるいは持っていれば尚良しとするポジションも一部あります。
中寺 文徳 氏
1996年、テルモ株式会社入社。愛鷹工場、本社人事部、血液事業にて海外マーケティング、インドの血液事業会社テルモペンポール社駐在、テルモBCT-Japan管理部を経て、2018年より人事部(国際人事・HRM)。2025年2月より現職。
若手人財を早期育成する選抜研修
──研修制度について教えてください。
廣瀬 次世代のグローバルリーダー人財を早期に育成する目的で、日本人だけでなく海外のグループ会社から人財が集うグローバル選抜研修プログラム「Mirai」を若手、リーダー、幹部向けの3階層で実施しています。グローバルにアソシエイトが集まり、将来の経営を考えたり、会社のグローバル経営を進化させるプロジェクトに取り組みながらネットワーキングをしていく場です。そこでできたつながりが、将来の経営の鍵を握っていく人財の輪になっていくと考えています。
国内では、日本勤務のアソシエイトだけが参加する経営リーダー研修「GRIT」があります。これも選抜研修で、ビジネススキル、リベラルアーツ、世の中の動き、大局的な捉え方を取得しながら、最終的には経営者に対して経営提案を行うプログラムになっています。こうしたプログラムを通じて経営視点、リーダーとしてのマインド、判断力を身につけてもらいます。
──社内制度や福利厚生面でテルモらしい制度があれば教えてください。
中寺 健康を促進して患者様にプロダクトを届けていく。それが当社の使命なので、私たち自身が健康であることがとても大切です。健康経営の意識がかなり高く、福利厚生では健康診断や2次検診、歯科検診などと細かく身体周りの検診を取り揃え、補助が手厚くなっています。
また、アソシエイトのライフイベントに対して、キャリアをどう継続してもらえるかも大切に考えて制度設計しています。社員が海外転勤する際、あるいは配偶者が海外赴任となった際の休暇制度も整えています。今年は不妊治療休暇制度を導入しました。
さらに、一般的な時短勤務制度はお子様が小学校卒業するまで取得可能ですが、2025年4月に制度を見直し、障害を持つお子様がいる場合は、お子様が何歳になっても必要であれば時短勤務を選択できるようになりました。
廣瀬 そのほかにも多様な表彰制度を実施しており、事業や社会に大きく貢献したアソシエイトを称える「テルモグローバルアワード」もありますし、「日々の地道な努力を続けるアソシエイトにも光を当てる」という考えでの「現場の誇り賞」もあります。「現場の誇り賞」は、アソシエイトの推薦が基になり選ばれ表彰される賞になっており、過去には工場の作業着を変更した担当者や、若手を指導している現場の知見が非常に高いベテランの方が受賞されています。
公認会計士、税理士、弁護士(海外含む)、一級建築士に高度専門職務給を支給
──資格取得をサポートする制度はありますか。
廣瀬 資格取得支援については、現時点ではデジタル関連が主ですが、受験費用補助や資格取得後の報償金を支給しています。また、薬剤師のように業務で資格を使用している場合は、給与に資格手当が上乗せされます。
2025年10月から高度専門職務給を導入しました。これは公認会計士、税理士、弁護士(海外含む)、一級建築士の4つの資格に対して、本給に加え高度専門職務給を毎月支給するものです。
──キャリア採用では資格を必須要件にすることはありますか。
石井 必須要件にすることは多いです。必須までいかないケースもありますが、希望要件もしくは歓迎要件として資格を記載しています。TOEIC® L&R TESTの点数に関しても、当社はグローバル企業ですので、今後のキャリア展開を見据え、語学を意欲的に学び、ビジネスにも活かしたい方を歓迎しています。
──新卒応募者がエントリーシートに学生時代に取得した資格名を記載していた場合、どのように判断されますか。
廣瀬 まずその領域に興味を持って努力したと判断します。あとは資格取得に至った経緯、将来どのように使っていきたいか、今後の仕事の中でどのような夢を実現していきたいかを伺い、そこに対して資格が活かされるとしたら、強みのひとつとして受け止めます。
──資格取得やキャリアアップをめざす読者に向けてメッセージをお願いします。
廣瀬 何のために資格を取得するのか、何の役に立てるのか。そこをイメージしていただくと夢につながる道になっていくと思います。がんばってください。
中寺 地道な努力をどこまで続けられるか。その「一貫性」が将来の道を開きます。資格取得をめざす方は、まさにその地道な努力を積み重ねていく日々を過ごされています。挫折もあると思いますが、その挫折を乗り越えていく思いの強さは、社会に出てから財産となるでしょう。
石井 現状に満足せず、常に向上し続けようという思いで資格取得に取り組む姿勢は本当にすばらしいと思います。当社は、「Growth Mindset 」の考え方を大切にしています。自分が持っている能力や才能は、経験や努力によって伸ばすことができます。そんな方が当社の企業理念に共感し、仲間になっていただけたらうれしく思います。
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*L&R means LISTENING AND READING.
[『TACNEWS』人事担当者に聞く「今、欲しい人財」|2026年1月 ]

会社概要
社名 テルモ株式会社
設立 1921年9月
代表者 代表取締役会長 高木 俊明
代表取締役社長CEO 鮫島 光
本社所在地 東京都渋谷区幡ヶ谷2-44-1
事業内容
医療機器・医薬品の製造販売
従業員数
5,633名(テルモグループ 30,689名:2025年3月末現在)
URL
採用Webサイト















