日本のプロフェッショナル 日本の会計人|2017年3月号

山内 真理さん
Profile

山内 真理氏

公認会計士山内真理事務所
公認会計士 税理士

山内 真理(やまうち まり)
1980年生まれ、千葉県出身。一橋大学経済学部卒業。公認会計士試験合格後、有限責任監査法人トーマツにて法定監査やIPO支援等に従事。2011年にアートやカルチャーを専門領域とする会計事務所を設立。
NPO法人Arts and Law代表理事(共同代表)、株式会社ギフティ監査役、特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会監事、東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京研究員。共著『働き方の育て方 アートの現場で共通認識をつくる』、一部監修『イラストレーターの仕事がわかる本』(グラフィック社)他。

仕事は好きを軸に創り出すもの。
「ミッション+領域+専門性」で会計専門職の可能性を示します。

元日本画家にピアノ弾き、DJに学芸員、美術館からの転職組…そんなメンバーがそろっているとくれば、何かの文化活動と思うだろう。ところが実はこれ、会計事務所である。公認会計士山内真理事務所の所長、山内真理さんはアートやカルチャーをこよなく愛する公認会計士だ。「文化・芸術領域+自分の専門性」で「自らも楽しみ、精神的にも刺激を受けながら、社会に役立つ仕事がしたい」と、これまで粛々と月次決算や申告業務をこなすイメージの強かった会計業界に、新風を吹き込む。二兎を追う。でも二兎とも得る。それが山内流だ。山内さんはなぜ公認会計士を選んだのか、また、関心ある領域と会計をどのように結びつけたのか、現在に至るまでのことの成り行きを伺った。

芸術・文化にも不可欠な計数感覚

 一橋大学経済学部に在籍していた山内真理さんが「公認会計士(以下、会計士)をめざそう」としたのは「会計感覚を活かした専門性は、産業領域を規定せず職業選択できるパス(チケット)になるのではないか」という、漠然とした思いからだった。
 山内さんは学生時代、経済学部でありながら経営学など興味を魅かれる他学部の講義をよく受講していた。マーケティング、戦略論、組織論、会計学…と、むしろ他学部の勉強に傾注。選択したゼミもブランディングを実践的に学べるゼミ。学生のアイデアを企業にプレゼンしに行く機会もあった。クリエイティブなアイデアをビジネスにインストールするには会計的思考が役立つのでは?そんな仮説を持つようになっていった。
「会計士になりたいというより、どんな形なら自分のやりたい領域で人の役に立てそうなポジションを選び取れるかという視点でキャリアの入口を考えていました」
 人の集まるところには経済活動がある。経済活動のあるところにはその活動を記録、評価して、意思決定やビジョン実現に役立てる、といった会計本来のニーズがあるはず。
「経営学全般が好きだったので経営的な支援をするプロをめざしてみたいというのもあって、その入口として会計士を選んだのです」
 しかし、専門性を活かすにも資格を取得しないと選択肢が限られてしまう気がする。「まずは最低限の条件として会計士の資格を取る」と、山内さんは心に決めた。
 こうして学生時代に受験勉強を始めた山内さんだが、大学生活は他に魅力的なことが沢山あって本腰を入れることができず、本格的に始めたのは卒業後。個人の会計事務所でアルバイトとして税務の実務経験を積みながら受験勉強に励んだ。バイト先は「小さくても独立した時に役立ちそうな会計事務所」と、おぼろげながら将来の構想を練っていた。そして2006年、会計士試験合格を手にした。

会計士として経営サポートを模索

 美術館巡りやアート作品が好きで、学生時代からアートに自然と親しんできた山内さんだが、同時に人が生みだすものが広がるプロセスにも興味があった。
「影響を受けた経営学の理論に知識創造理論というものがあります。知識は固定的なものではなく、人と人との関係性や相互作用によって生み出され、その意味付けは変化する。そのダイナミズムによって新たな知が生まれる、という知識の創造プロセスを、日本文化と西洋などの文化を比較しつつ説明した理論で、当時とても感銘を受けました。今思うと、人の知によって文化が創られていくさま、人の創造性(クリエイティブ)が社会の原動力になるさまが関心を持つきっかけのひとつだったかもしれません。ゼミではブランドなどオンバランス化されにくい無形の価値をどう捉えてマネジメントするか、というテーマにも興味を持って、価値測定の手法を研究した時期もありました。アートの本質的な価値の究極は主観的な価値の総体だと考えていますが、芸術や文化が個人の内面や社会に与える質的な影響と、経済活動に与えるインパクトとの関係性に興味を持ったのも、こうした学生時代の経験が影響しているように思います」
 ただ、芸術や文化と会計をどう結びつけるか。大学卒業後、模索する期間は意外にも長かった。その間に会計士試験に合格し、有限責任監査法人トーマツに入所。監査を一から学び始めた。
「大手監査法人の中でも、トーマツには独立志向の強い人が集まる社風がありました。中でもトータルサービス部門は、IPO支援などいわゆるミドルマーケットの中小企業の成長を支援する部門。独立するうえでのヒントが多く、監査以外のいろいろな経験もできるのではと考えました。中小の法人と迷ったりもしましたが、結局トーマツを選びました」
 監査法人で監査を学びながらも、自らの方向性を見い出すべく、多くの人に会い、クリエイターとも交流を図っていった。
「彼らは単にものづくりをしているのではありません。専門的な視点・思考体系や鋭い感性を通じて、企業や社会の課題を発見・再定義し、問題解決をしている存在とも言えます。また、表現者(アーティスト)はその活動を通じて、今の時代を鋭く抉り出し、鑑賞者に問いかけたり、インスピレーションを与える存在でもあります。では、自分はどう彼らに関われるだろうか。会計士として協働できることはないだろうか」
 新しい領域を開拓していそうな会計士の先輩を見かけるととにかく話を聞いてみた。しかし、自分のめざす方向で会計士の職能を結びつけている人は見つからなかった。
「これは自分で始めるしかない」。そう結論づける少し前に出会ったのが「Arts and Law」(以下、AL)だ。ALはクリエイターやアーティストを法的にサポートしようという有志により2004年に創設された非営利団体だ。「アートと法律の間にある敷居を取り崩し、表現者に新しい可能性を提示するインフラを創りたい」、そんなビジョンを持つ知財や法律を学ぶ学生たちを中心にスタートした組織だったが、彼らはやがて司法試験に合格し、修習を経て実務に携わるようになり、ALはプロの集団として活動するようになった。
 具体的な活動は、弁護士を中心とする相談員がクリエイターやアーティストから無料相談を受けたり、セミナーや執筆活動を行うというものだ。また、相談事例を元に知見を共有したり、各ジャンルのプレーヤーと交流して課題の整理などを行う活動もある。こうした活動を通じて、ALはさまざまな表現や創作物が流通すること、そして法律家プロフェッショナルのキャリアの発展を支援することをめざしている。
 ALには当初、会計面でサポートできる人間はいなかった。そのニーズと山内さんの文化・芸術支援への熱い思いがマッチングして、2010年頃からALの活動に参加するようになった。
 「隣接する法律分野でできることがあるなら、会計分野にもやり方はあるはずだ」と、着地点を見つけ独立開業への意思が固まった。
 そして、会計士登録を済ませた2011年、独立開業に踏み切った。
 山内さんは開業から現在も事務所の業務と平行してALの活動を続けている。独立当初の顧客は友人知人経由で獲得したわずか4件。助けを求めるクリエイターや文化経営の実践者が周辺に集まる中で、泥臭く実に多くの人と会話を重ねた。こうした地道な活動がベースとなって、信頼を得ていったのである。

クリエイターや文化経営の実践者の立場に立った対話

 会計は事業活動を鏡のように写しとらなければ状況を正確に識別できないし、未来の計画も立てられない。では、実際に写し取ったものをどう使うか、そこには経営者の思想や組織の目標が色濃く反映される。
「会計は使い手にとって意味のあるフィードバックでないと価値がない。だから、クリエイターの創作物の特長や背景の思想、事業の中身やマーケット構造などを極力理解するよう努力し、丁寧に対話しながら並走することが重要と考えています。
 文化・芸術領域といっても、ジャンルやプレーヤーによって使われる言語も違い、思考体系も異なっています。そのため、なるべくそれぞれに馴染みやすい言葉に変換して説明したり、根本的に実現したいことは何か?という点を踏まえた対話を心掛けています」
 そこが「他にはない強み」であり、現在の山内事務所の特徴となっている。
「だからこそ、コミュニケーションをとても重視しています。弊所にお問い合わせいただく方の中には会計事務所と有益なコミュニケーションが取れない、と不満や失望を抱えていらっしゃる方もいます。彼らは事業の中身を理解して、次なる経営上の処方箋を一緒に考えてほしいと望んでいるんです。節税策を提案したり数値を報告するだけでなく、一歩踏み込んでほしいと期待している。そこにフラストレーションがあるのだと思います。
 カルチャー領域の経営者は、経済活動の側面と文化活動としての側面の両面を意識して経営のバランスを図ろうとします。よいもの、面白いもの、素晴らしい創作物を持続的に生み出し、供給することは簡単ではありません。また、市場の評価と文化面での評価は必ずしもイコールというわけでもありません。主体にとって経営そのものがある種の表現という側面もあるし、経済的な糧を得る手段という側面もある。また、より多くの人に『届ける』ために普遍性を実装し、客観性を保つことが重要になる局面もあります。利益追求は究極的には目的ではなく手段です。利益を獲得できなければ次の創作の原資を得ることも持続的に活動することも難しくなります。一方で、売上追求や利益追求に向かった結果、供給するものの質や個性を犠牲にするなど、プレイヤー自らあるいは既存ファンの満足度を損ねるようなことを望まず、組織規模が小さいながらも存在感を発揮し続ける事業体もあります。良いものを作るためには、労働環境もきちんと整備しておかなければなりません。創り手の労働環境をどう向上させ、創り手に価値を還元していけるのかも業界の課題です」

震災から独立開業へ

 山内さんが独立して自分の事務所を持ったきっかけのひとつに、ALとの出会いがあった。そしてもうひとつ、きっかけとなったことに2011年3月の東日本大震災がある。同年3月、山内さんはまさに震災の渦中でトーマツを去った。
 震災により日本中で混乱が起きており、文化芸術領域も例外ではなかった。助成金はストップ、イベントや広告宣伝が中止になるなど、非常事態ともいえる状況にあった。その結果、資金の融通をしなければ破たんしてしまいそうな危機的状況の企業も出てきた。  資金が続かない。融資を受けたいが受けたことがない。月次決算などの体制は整備されていないから融資を受けるにもまずはそこから。寄付を促す仕組みを作りたいけれど、どういう事業設計が可能かわからない。そんな混乱の中で、独立間もない山内さんにも手伝えることが山のようにあったのだ。山内さんは経理体制を整え、資金調達を可能にするなど、あちこち奔走した。
「だから私の開業の入口は震災です。とにかく手伝えることがあったので、できることを積極的にやりながら徐々に信頼関係を築いて、少しずつ仕事につなげてきたのです」
 そして、開業から1年経つと文化芸術系のお客様が徐々に増えてきた。そして「文化芸術」を専門領域とすることを前面に打ち出し、自分のやりたい方向での仕事がさらに舞い込んでくるようになった。

採用条件のひとつは「文化芸術への思いのある人」

 会計業界では文化芸術支援を事務所の柱に据えるところは見当らない。それぐらい文化芸術と会計はかけ離れたものという認識がある。
「人の数だけ選択肢はある、そう受けとめたら仕事人生の充実度は増すのではないかと思います。クリエイターはそれを実践している偉大な先輩です。文化・芸術領域を『作る・届ける』人とそれを『支える』人に分けるとすると、私たちは後者でマネジメント支援のインフラをめざしている。でも、逆に『作る・届ける』ことが得意ならばプロデュ―サーをめざしてもよい。組織内なら財務・経理の他、事業推進、経営企画のポジションもあります。相対的に得意なところで社会と関わり、役割分担していけばよいのだと思います」
 会計を活かした経営支援。そこにはこだわるが従来の会計事務所の枠にはまったくこだわらない。その経営支援も売上や利益の絶対値というより、やっている人の充足感と事業の継続性、ビジョンの実現や社会的インパクトを考慮する。
「会計や税務のサービスは一方通行なようでいて、お客様は何かしら協働できるパートナーでもあるという感覚があります。実際会計や税務の専門性を活かして関われそうなプロジェクトへのお誘いも多く、時間が足りません。日々トップレベルのプレーヤーの思考に学ばせていただきながら経営をサポートする幸せな仕事です」
 と言っても、事務所は誕生してまだ5年。今後の専門性の深度や組織としての拡充を考えていかなければならない段階でもある。
「弊所の基本サービスは法人・個人の会計税務顧問サービスが軸です。その上で現場のクリエイティブの足かせとなるものを極力排しながら経理や予算管理、業績評価などの体制をどう構築するかなど、経営の見通しをつけるための見える化や、コンプライアンスを整えていくなど、経営や組織の足腰に関わることを並走しつつ時間をかけてクライアントと考えていきます。お客様にはそれぞれの山場や谷があり、タフな役回りと感じることもあります」
 業務比率は会計・税務が事務所のサービス全体の9割以上を占めている。クライアントはもちろん法人・個人含めて文化芸術関係がほとんどだが、新規の問い合わせも多く、その数は日々増え続ける。まだ小規模な事務所に、幅広いジャンルのクリエイターや経営者たちが駆け込み寺的に次々とやってきたらどうなるのだろうか。
「事務所では組織のミッションを定義しており、それに沿わなければたとえ採算の取れる仕事の依頼であってもお断りすることがあります。それに、お客様のニーズを聞きすぎると職場が混乱してしまう。だから、業務量の設計にもこだわっています」
 と、山内さんは組織を守るためのラインを設定。まずは残業が増えすぎないよう徹底している。
「スタッフの残業時間は多い月では30~50時間を超える月もありますが、基本的にアフター7や週末はプライベートな生活の充実も図ってほしいと望んでいます。どんな仕事でも引き受けていては職場がブラック化してしまう。だから仕事量が組織の体力以上に増えないよう、バランスを取ることも大事と考えています」
 助けを求めてくる人が多い駆け込み寺。だからこそバランスをとってスタッフを守る。マネジメントを司るボスとしてとても大切な決断だ。
「事務所ではマインドセットも重要です。スタッフにも精神的に充足して働いてほしいし、どんなジャンルでもいいので文化・芸術が好きであるというのも大切な要素です。一方、会計士は経済活動を通じて客観的に状況を分析していく専門的視点がある。それが相対的な強みだと考えています。作り手のマインドを理解しながらも、客観性を保つこと。そのためには事務所全体としての専門性を強化していくことが大切です」
 事務所の人材採用でも、思いと専門性の両面を重視する。
「採用活動では事前に文化・芸術に対する思いを文書で提出してもらっています。自分の言葉にできるぐらい思いがあるか、その思いを整理できているかを見るためです。そして、次に専門的な経験値を重視します」
 山内さんは事務所の運営をし、実務をこなしながらも、ALの理事を務め、さらには美術大学や文化芸術支援団体の主催する会計・税務講座の講師をしたり、共同研究プロジェクトに参加したり、書籍の執筆・監修をしたりと、実に精力的に動いている。
 長らく感じていることは、「美術系の大学は経営や会計に関する教育の機会がほとんどないに等しく、社会科学系の学生との交流も乏しい環境にあるということ。社会人教育としても、創作活動以外の会計や法律に対する学びの機会は決して多くない」という教育面での課題だ。
「自分たちの創作物をより広く社会に届けるためにこうした学びは有益です。でも、その機会がないまま若くしてプロデビューしてしまう。そんな人が多い業界だからこそ、法律や会計を理解して使いこなし、ビジネス上の交渉力を持つことができれば、かなりのアドバンテージになります。これからの若いクリエイターは自らも経営センスを持っていないと生き残れない部分もあるし、そうした感覚を養成するうえで会計専門職が貢献できる余地は沢山あると感じます」

「好きなもの×自分の専門性」=「好きなことを仕事に」

 山内事務所は現在、総勢7名。会計士は2名在籍している。
「開業から5年経って、事務所の基礎的部分ができたと思います。今後はより専門性を強化すべく専門人材のプラットフォーム作りを進めていきたい。例えば、IPOやM&A支援や国際税務の経験を積んだ人、非営利分野のスペシャリスト、プログラミングや多言語が堪能な人など、幅広く専門的経験値の高い人にジョインしてもらって専門性に厚みをつけることが目標です。事業の進捗としてはまだ2合目といったところ」
 そんな山内さんだが、会計士・税理士をめざしている受験生にも、目の前に広がる選択について語りかける。
「『好きなもの×自分の専門性』のかけ算で誰かに役立てそうなことを探していけば道は見つかるんじゃないかな。まずは動いてみて自分のものにしていくプロセスは大切だと思います。価値観で動くことが共感されやすい時代でもあるし、自分の思考を発信することは有益です。この領域はまだ会計専門職が少ないので、志を同じくする仲間が増えてくれたらうれしい」
 一方でテクノロジーの進化にともなうAIやIoTなど機械化が進む中で、なくなると言われて戦々恐々とする職業も出てきた。果たして、会計・税務は機械に取って代わられてしまうのだろうか。
「人間が行う以上、エラーの発生をゼロにすることはできません。機械に置き換えた方が精度が上がりユーザーの利便性も増すならばプログラムに置き換えていけばいい。そして人間がプログラムを使いこなして生活の質や仕事の生産性を上げていけばいい。労働人口が減っていく時代ですから生産性向上は不可欠です。制度もユーザー志向で簡素化していく方向はこの先避けられないと考えています。けれど、どうしても人間でなければ満足度や幸福感を作りにくい仕事は残ると思います。会計を使う人の思いをくみ取る作業を機械化することは簡単ではないですし、社会も個人も絶えず揺らぎがある中で、問題を定義することすら難しい時代です。税務の領域の中にも人工知能に置き換えることで効率化する業務と、やっぱり人間がやった方がよい業務がある。日々新しい経済活動は生まれゆくし、交換手段も多様化してきている。社会通念や法令の趣旨などに照らした解釈や判断はしばらくは人間の方が得意なのではとも思います。もちろん時代と共に会計専門職の役割も変化していく。でも、技術の進歩によって本来やるべき仕事に注力できたり、AIによってさらに高度なことができるようになるなら、それは魅力的なことです。
 会計は中世の時代から何百年もの間、人類が活用してきた道具です。今はクラウドやAIの登場によって会計が民主化しつつある時代だと思いますが、根本的には経済活動を写し取ることの必要性は簡単にはなくならない気がします。会計言語を使ってコミュニケートしたり事業をデザインすることも引続き有用性が残ると考えています」
 文化と経済は一見相性が悪いようにも見えるが、両輪で世の中を豊かにする存在であると、山内さんは話す。
「公認会計士法第1条では、公認会計士の使命として『~国民経済の健全な発展に寄与する~』というくだりがあります。文化が豊かな生態系を織りなすためにはやはり経済的な基盤が不可欠だと思います。そうした基盤があるからこそ、多様で豊かな文化が花開くことができる。そしてその文化は人間の精神的充足や幸福に関わる要素であり、創造性を刺激することで社会の原動力にもなっている。そこから新たに生まれ発展していく産業もあることでしょう」
 日本には創作者として優れた作品を生み出しながらも、自ら経営を回している人もいる。映画『シン・ゴジラ』の脚本・編集・総監督を務めた庵野秀明氏は、良いロールモデルかもしれない。庵野氏の作った映像作品制作会社、株式会社カラーは無借金経営。過去の作品からの原資を使い、新しい作品に積極的に投資をしている。
 実は山内さんのご主人も税理士試験に合格しているが、現在は「マンガに関する企画会社」を経営している。山内さんは「趣味で長年研究してきたマンガとビジネス的な感覚を掛け合わせて、マンガの企画展や商業施設のコンテンツ開発など、プランニングやプロデュースの仕事をしています」と優しい笑顔を見せる。
 山内さんは、これまでの税務・会計業界になかった「好きな領域で仕事を創る」というアプローチで業界に新風を送り込んだ。「好きなことに専門性を結びつけることが会計業界でもできる」という新しい切り口は、多くの読者に響くに違いない。

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