令和5年二級建築士 設計製図試験 課題発表
令和5年度課題に関する情報を更新していきます。
令和5年二級建築士
合格発表後の講評
合格者数・合格率等
12月7日に、公益財団法人 建築技術教育普及センターより、令和5年の二級建築士試験の「設計製図の試験」の合格発表がありました。
合格された皆様、本当におめでとうございます。
【製図実受験者数】9,988名(10,797名)
【合格者】 4,985名(5,670名)
【合格率】49.9%(52.5%)
学科からの最終合格率 22.3%(25.0%)
※( )内は昨年
ランクⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳのそれぞれの割合は次のとおりで、「ランクⅠ」のみが合格となります。
【ランクⅠ】49.9%(52.5%)(合格)
【ランクⅡ】5.7%(7.7%)
【ランクⅢ】37.9%(30.7%)
【ランクⅣ】6.5%(9.1%)
※( )内は昨年
昨年より、合格率が製図試験は2.6%下がり、学科からの最終合格率は2.7%下がりました。
TACの講評(二級主任講師:岡部)
皆さん、こんにちは!
TAC二級建築士講師の岡部です。
まずは、合格された皆さま、本当におめでとうございます。
ここからは、令和5年の課題「専用住宅(木造)」について、建築技術教育普及センターの発表内容を受けて簡単な講評をしたいと思います。
今年の設計製図試験の全国合格率は「49.9%」でした。昨年は「52.5%」でしたので、やや合格率が下がりました。前々回の木造の課題(令和3年)の合格率「53.1%」と比べても若干下がっていますが、おおむね例年並みの難易度だったと言えます。
ランク別の割合では、ランクⅣ(失格)が6.5%と昨年より少なく、図面の未完成や主要な室の欠落など、一発で失格となるような大きな失敗をした人は少なかったことが分かります。
また、ランクⅢ(「知識及び技能」が著しく不足しているもの)が、ランクⅡ(「知識及び技能」が不足しているもの)よりも、かなり大きな数字ですので、平面図と立面図の不整合や設計条件違反など、やや大きなミスをした結果、不合格となった人が多かったと考えられます。
建築技術教育普及センターの採点のポイントは以下の項目です。
(1)設計課題の特色に応じた計画
①多目的室の計画
②眺望に配慮した計画
(2)計画一般(敷地の有効利用、配置計画、動線計画、設備計画、各室の計画等)
(3)構造に対する理解
(4)架構計画
(5)矩計に関する知識
(5)要求図書の表現
(6)設計条件・要求図書に対する重大な不適合
①木造2階建てでないもの
②要求図書のうち図面が1面以上未完成
③図面相互の重大な不整合(上下階の不整合等)
④延べ面積が、「140㎡以上、190㎡以下」に適合していないもの
⑤要求室のうち、次のいずれかの室が欠落又は設置階が違っているもの(室名は省略)
⑥著しく非常識な計画(階段の欠落等)
さらに解答の傾向として次のコメントがあります。
「『未完成』、『設計条件の違反(多目的室と台所の配置、階段の計画、吹抜けの計画が不適当なもの)』、『要求図書の違反(矩計図の切断位置が不適当なもの)』、『その他(駐車スペースの位置が不適当なもの等)』に該当するものが多かった。」
以上の項目が主要な採点ポイントですので、これらのすべてにわたって、大きなミスを犯すことなくプランニングを行い、時間内に図面を仕上げなければいけません。
設計条件の違反に挙げられている「多目的室と台所の配置」や「吹抜けの計画」を合格レベルのプランを作るためには、基本を押さえたプランニング力が必要です。
また、要求図書の違反に挙げられている「矩計図の切断位置」については、間違いのない製図力が必要です。
今回の課題は、「専用住宅」という非常にオーソドックスなものでしたが、採点ポイントも基本や基礎がしっかりできているか?を採点された、非常にオーソドックスな試験だったと感じます。
来年試験に向けて
さて、本年度課題を見た上で、設計製図試験に合格するためにどうすれば良いのか?を考えてみますと、以下の対策が必要なことがわかります。
①構造を理解し適切に図面に表現する「製図力の習得」
②課題の特徴を理解し適切にプランにまとめる「プラン力の習得」
令和6年の課題はRC造と考えられます。RC造は木造と構造形式が異なりますので、作図とプランニングの要領が大きく異なります。
RC造は木造と比べ作図量が少ないと思われがちですが、近年出題の多い3階建てでは、作図時間に大差がありません。また、法的な規制も増えますので、プランニングがより複雑になってきます。
課題の発表は来年の6月ですので、②の「プラン力の習得」については今の時点で学習を始めることは難しいのですが、①の「製図力の習得」については今から始めることが可能です。
試験を有利に進めるには、製図力を高めておくことはとても大事です。短い作図時間で図面を書きあげることが出来るようになれば、その分プランニングに時間を使うことが出来、とても有利に試験を進めることが出来ます。
「今年涙を飲んだ方」や「学科合格後、令和6年で初めて製図試験を受験する方」は、是非とも早めに試験対策を始めましょう。
TACでは、早めに対策のスタートを切れるよう、早期コース(2024年2月開講)をご用意しておりますので、ぜひご検討ください。
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2024年は3年の1度のRC造の課題が予想されます。戸惑う受験生も少なくないのではないでしょうか。
当セミナーでは、過去のRC造の課題分析からはじめ到達目標をみんなで共有したうえで、課題発表前にやらなければならないことを整理していきます。(2024年2月収録、二級主任講師:岡部)
令和5年二級建築士
公表課題
令和5年 設計製図の試験の課題
設計課題
専用住宅(木造)
要求図書
・1階平面図兼配置図[縮尺1/100]
・各階平面図[縮尺1/100]
・床伏図兼小屋伏図[縮尺1/100]
・立面図[縮尺1/100]
・矩計図[縮尺1/20]
・面積表
・計画の要点等
(注1)建築物の階数については、試験問題の設計条件において指定する。
(注2)答案用紙には、1目盛が4.55ミリメートル(矩計図については10ミリメートル)の方眼が与えられている。
(注3)建築基準法令に適合した建築物の計画(建蔽率、容積率、高さの制限 等)とする。
【注意事項】
試験問題を十分に読んだうえで、「設計製図の試験」に臨むようにしてください。
なお、設計与条件に対して解答内容が不十分な場合には、「設計条件・要求図書に対する重大な不適合」と判断されます。
令和5年二級建築士
試験後の講評・分析
課題の分析
1.構造の種類について
まず、構造の種類ですが、これは予想どおり木造です。昨年までの課題は、木造➩木造➩RC造➩木造ときてましたので、順番どおりと言えます。工法については特に指定がありませんが、(注2)に「答案用紙には、1目盛が4.55ミリメートルの方眼が与えられている」と記されていますので、これまで通り「軸組み工法」で設計すれば良いと判断出来ます。
軸組み工法が初めての方は、まず、軸組み工法の設計基準(最大の張り間スパンや柱配置の仕方や耐力壁の配置方法など)を理解し、これにそった設計が出来るように練習する必要があります。
2.専用住宅であること
用途は専用住宅です。昨年は「保育所」という専用施設でしたが、今年は一転して住宅の課題です。専用住宅の課題は過去多く出題されています。これまでは、平成26年の「介護が必要な親(車椅子使用者)と同居する専用住宅」や平成23年の「趣味(自転車)室のある専用住宅」などのように、〇〇の専用住宅と条件が付いていました。しかし、今年は条件付けがありませんので、出題の範囲が絞れない、幅の広い課題と言えます。本番の試験では、必ず何らかの条件がつけられると予想されますので、様々な条件を想定した準備が必要な課題です。
3.建物の階数
建物の階数について、昨年の「保育所(木造)」と同様に課題発表時の指定がなく「試験問題の設計条件において指定する」とされました。課題発表の時点では、2階建てなのか3階建てなのか分からない課題ですが、やはり昨年と同様に、要求図書の種類と答案用紙の大きさから、おそらく2階建ての出題になると予想されます。しかし、油断は禁物です。3階建てについての対応方法についても知っておくと万全と言えるでしょう。
4.要求図書について
詳細図については、令和2年に引き続き「矩計図」の要求です。「矩計図」は作図に時間がかかりますので、しっかり練習して時間を縮める努力が必要になります。作図時間の短縮こそが設計製図試験対策のポイントのひとつだからです。
また、令和3年のRC課題での部分詳細図の出題では、「バルコニーの部分を含む」と指定がありました。これは、やや複雑な納まりについても問われる可能性があることを示しています。今年の試験でもバルコニーや土間など、標準的でない場合の納まりについても練習をしておく必要があるでしょう。
以上、課題から読み取れることを速報としてお伝えしました。
この文末に木造の直近課題である令和2年「シェアハウスを併設した高齢者夫婦の住まい」の【TACオリジナル課題答案例】を掲載しましたので、作図内容の参考にしてください。
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