LET'S GO TO THE NEXT STAGE 資格で開いた「未来」への扉 #56

  
Profile

石川 優弥(いしかわ ゆうや)氏

株式会社Aoi Plus 代表取締役CEO
税理士法人Aoi Plus 公認会計士・税理士

1998年生まれ、秋田県出身。学生時代はサッカー一筋で、全国高校サッカーインターハイや全国高校サッカー選手権大会にも出場経験がある。
大学進学時から公認会計士の道を志し、20歳で試験に合格。明治大学経営学部卒業後、EY新日本有限責任監査法人に入社。上場企業の会計監査、内部統制監査、国際会計基準での会計監査などを経験。
同監査法人を退職後、Aoiグループを設立し、代表取締役CEOに就任。

【石川氏の経歴】

2016年 18歳 明治大学経営学部に入学。入学時より公認会計士を志し、1年生の夏から学業と並行してTAC新宿校に通う。
2018年 20歳 大学2年生の12月に受けた短答式試験に合格。3年生の8月に論文式試験で合格。
2019年 21歳 大学卒業のための単位取得と並行して、監査法人でのインターンを経験。
2020年 22歳 大学卒業後、EY新日本有限責任監査法人に就職。金融事業部保険セクターにて会計監査を担当。
2022年 24歳 同監査法人を退職。在職時の同期3人とともにAoiグループを設立し、代表取締役CEOに就任。お客様に寄り添える企業をめざし、業務の幅を拡大中。 

「3人共同経営」ならではのチームワークで 
クライアントに寄り添う公認会計士 

 幼い頃に憧れたプロサッカー選手への道を断念するも、大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人で経験を積んだのち、20代のうちに同期3人で独立。代表取締役CEOとして活躍中の石川氏に、TACでの受験生活から、独立に至った経緯、共同経営ならではの強みのほか、現在の業務内容や今後の展望までうかがった。

一度決めたらとことんやる!サッカー少年が公認会計士をめざすまで 

 元日本代表のゴールキーパー、川口能活選手に憧れ、サッカーを始めた石川氏。中学時代には将来有望な選手としてセレクションに選抜され、JFAアカデミー福島や地元・秋田県の強豪高校で研さんを積んだ。インターハイ出場、全国高校サッカー選手権大会出場、東日本選抜選出といった華々しい結果を残すも、プロへの険しい道を前に夢を断念。医学を志し勉学に励む兄の背を見て、大学進学にあたってはある新たな目標を掲げた。

「私はずっとサッカーが生活の中心で、まじめに勉強し始めたのは高校3年生になってからでしたね。医師である父と、薬剤師の母、医師の兄がいるという家庭環境だったのもあって、せっかく勉強するなら、将来自分も資格を取って手に職をつけたいと思ったんです。学生のうちに取得できる資格を調べる中で、公認会計士(以下、会計士)を知りました。それで『大学在学中に会計士資格を取得する』ことを目標に据えたんです」

 指定校推薦で明治大学の経営学部に進学した石川氏。入学と同時に、会計士試験合格を大学がサポートしてくれる「経理研究所」に所属した。黙々と勉強に取り組み、1年生の6月には日商簿記検定3級に合格。会計士資格への一歩を踏み出す中で、外部講師として指導を受けていたTACの講師からの誘いもあり、TACでの受講を決めた。

「サッカーサークルからの熱烈な勧誘もありましたが、他に楽しみを見つけてしまうとダメだと思い、サークルにも入らずアルバイトもせず、大学には必修科目を受けるためだけに通っていました。TACの講師から自分に合った勉強法や教材を教えてもらったので、それを信じて試験勉強に取り組みました。経理研究所での出会い以降、会計士試験に合格するまでお世話になったその先生は、恩師とも呼ぶべき存在で、今でも交流があります」

目標を絞ってとにかく集中。在学中の合格をめざす日々

 平日は大学で1限目から授業を受け、その後お昼過ぎにはTAC新宿校へ移動。そこから5~6時間資格の勉強をするストイックな日々が続いた。

「家ではリラックスしたいタイプなので、勉強するときは大学やTACに行き集中していました。土日もTACの自習室に通っていましたね。
 また、学業との両立という面では、大学の専攻が会計学科だったので、履修する科目と資格の勉強で共通する部分があったのは幸いでした。会計士試験の勉強時間を確保するため、大学では出席状況よりもテストの結果を重視する科目を多く取るなどの対策をしていました」

 そんな努力の甲斐あって、1年生の11月に行われた日商簿記検定2級試験をクリア。そして2年生の12月に受験した会計士の短答式試験に合格、勢いをそのままに3年生の8月に受験した論文式試験に合格し、20歳という若さで会計士試験を突破した。

「合格発表に合わせて上京してくれた母と一緒に番号を確認しました。TACの講師にもすぐに電話をかけてお礼を伝えると、とても喜んでくれたのを覚えています。
 試験が終わり4年生を迎え、卒業を目標になんとかギリギリで単位を取りました。またその頃アルバイトで監査法人のインターンを経験し、座学と実務の違いを目の当たりにしました。それまで受験勉強ばかりで、パソコンスキルをはじめ一般教養を身につける機会がなかったので、Office系ソフトの使用法など実務に役立つ学びを得られたことは、今の仕事に活きていると思います」

大手監査法人の実務を経験し、より自分の強みを活かせる道を選択

 大学卒業後、石川氏はBig4の一角、EY新日本有限責任監査法人(以下、EY)に入社。上場企業の会計監査や内部統制監査を担当した。

「EYには知人も多く、雰囲気もよかったのですぐに入社を決意しました。入社後は金融事業部保険セクターで、日系大手保険会社の会計監査のほか、国際会計基準での会計監査にも携わりました」

 そうしてEYで仕事をする中、1年目で独立を志すように。独立も視野に入れて資格を取ったとはいえ、予定よりも早い決断となった。

「もともと体育会系なのでコミュニケーション力には自信がありますし、営業活動も苦手ではありません。周りに優秀な人が多いEYの環境で、自分のキャリアプランを考えたとき、独立したほうが自分の長所を活かせるのではと思ったのです」

互いの強みを活かせる同期メンバーと共同で会社を設立

 石川氏のEY退職と独立の話を聞いて、仲のよかった事業部の同期2人が話を持ち掛けてきた。「独立するなら、共同経営でやってみないか」。そう誘ったのが、現在Aoiグループを共同経営するCFOの東 陽洋氏と、COOの大川 紗苗氏だった。 

「東はスピーディかつクレバーで丁寧に仕事に取り組む職人気質。大川は国際会計業務の経験が豊かで英語が堪能、細やかな気配りをする能力もある。そして私はリーダーシップを発揮することや人とコミュニケーションを取ることが得意。こうしたそれぞれの得意分野を活かせば3本柱の会社になるのではと考え、共同経営を決意しました」 

 2022年8月に株式会社Aoiコンサルティング、税理士登録を済ませ11月に税理士法人Aoiパートナーズを設立。それぞれの名前の頭文字を冠したAoiグループで、3人での仕事が始まった。 

「性格診断テストをしてもまったくタイプが異なる3人です。喧嘩もしますが、『3』という人数は、多数決で確実に決着がつくというメリットもあります(笑)。独立したのはちょうどコロナ禍で、足を使って一から開拓してもまったく契約が取れない月もありました。それでもがんばれたのは、3人で励まし合えたからかもしれません。私としては、自分の営業が成功すれば、2人に任せた仕事は必ず信頼されて次につながるだろうという自信があったので、とにかく営業をかけ続けていました」 

 会社を立ち上げてから約1年半。設立当初の苦境を乗り越え、紹介を中心に着々とクライアントは増えていった。営業の場もオンラインから対面の場に移り、石川氏はより営業力に磨きをかけている。現在では月に8~10件の顧問契約をする月もあるという。

お客様と一緒に幸せになれる道を模索 

 Aoiグループで現在担当する業種は、ITやコンサルティング、人材、美容業など幅広い。FAS業務(財務に関するアドバイスやサポート)と税務を中心に、規模や業界を絞らずクライアントをサポートしている。

 石川氏に、仕事をする上で大切にしていることをうかがった。 

「創立時は『何でもやります』というスタイルでしたが、軌道に乗ってきたのもあって、現在は『仕事のクオリティを評価していただけるかどうか』を重視しています。具体的に言うと、例えば『相見積もりが前提の場合、うちは身を引きます』といったようなスタンスです。価格ではなく、仕事の質で信頼関係を築くことは、結果的に双方の幸せにつながると思っています」 

 2023年10月には社名を「Aoi Plus」に変更。「Plus(プラス)」には、お客様、社会、従業員など、会社をとりまく人たちと一緒に成長したいという気持ちが込められているという。Aoi Plusの強みを聞くと、「若くて、スピード感があり、中国語と英語にも対応できることです」と、力強い答えが返って来た。スタッフはみな、機動力があり、クラウド会計ソフトに対応、クライアントとのコミュニケーションも迅速に行う。 

「今後は規模拡大のためにスタッフを増員し、クライアントをワンストップでサポートできるような会社に成長したいと考えています」

 2024年現在で26歳。業界でもかなり若いが、その表情や言葉には貫禄を感じる。そんな石川氏へ、資格取得や独立をめざす人へのアドバイスをうかがった。 

「会計士の受験勉強は、合格後も実際の仕事に活かせる知識になります。また、試験勉強を通してマルチタスクの習慣やPDCAサイクルを回すスキルが身につくこともメリットです。資格取得をめざしているときは、将来の姿を想像しづらいかもしれませんが、今がんばっていることは必ず身になり、未来への糧となります。どうかあきらめずに、目の前の目標をまっすぐに追いかけてください」

[『TACNEWS』 2024年3月号|連載|資格で開いた「未来への扉」]