特集 営業職から士業へのキャリアチェンジ
~大手保険会社、社労士法人、メーカー人事を経て開業した社会保険労務士~

feat202404_img01.jpg
Profile

佐藤 三和(さとう みわ)氏

佐藤三和社会保険労務士事務所 代表

法学部を卒業後、新卒で三井住友海上火災保険株式会社入社。営業職で好成績を残すも「自分の名前で仕事がしたい」と社会保険労務士をめざす。社労士法人で実務経験を積んだのち、大塚食品株式会社へ転職し人事・労務に従事。2021年社労士試験合格、同年開業、翌年退職して独立・開業。現在は顧問先企業の社会保険関連手続きや労務問題等に対応するほか、積極的にSNSや執筆活動を行い社労士業界に活気を与えている。「社外人事部」をキーワードに、企業の実態に沿った人事制度設計や人材育成に関するコンサルティングに力を入れている。

 一流大手と目される企業で好調に業務をこなしていた27歳のときに、佐藤三和さんは社会
保険労務士(以下、社労士)になること決心した。その後、社労士法人、企業の人事部門とキャ
リアを変えながら受験勉強を続けた佐藤さんは、資格を取得した末に独立開業という選択をす
る。大手企業の安定よりも自営の道を選んだ佐藤さんに、社労士という仕事の魅力とやりがい、
資格を取得したことによるキャリアの可能性の変化についてうかがった。

「自分の名前で仕事がしたい」

――社会保険労務士(以下、社労士)として活躍中の佐藤三和さん。法学部のご出身ですが、大学時代はどのようなキャリアプランを持っていましたか。

佐藤 明確なキャリアプランは持っていなかったです。当時の就職活動は一般的に大学3年の夏から始めるという時代でした。私の大学3年というと2011年、東日本大震災のあった年で、3月から6月まで企業が一切の採用活動を停止していた頃でした。そんな状況での就職活動だったので、しっかりキャリアプランを描いた上での就職というよりは、内定をいただいた中で最も自分が就職したいと感じた三井住友海上火災保険株式会社へ入社した、というキャリアスタートでした。

――三井住友海上では営業職だったそうですね。

佐藤 はい。私の入社した年から一般職採用が廃止されて全員総合職での採用になり、女性も事務職ではなく営業職として外に出るようになりました。損保の場合、個人のお客様への保険商品販売は代理店に行っていただいています。そのため、営業先は銀行の窓口担当や自動車保険を扱ってくださるカーディーラーなどでした。当時は忙しいことも多く、男社会だったので営業は苦労しました。そんな中で私は幸い、厳しいけれど素敵な上司と先輩方に恵まれて、意欲的に仕事に打ち込むことができました。そうして入社後4年目には、60名ほどいる支店で、トップクラスの評価をいただきました。

――大企業で結果もしっかり出していた中で、資格取得を考えた理由は何ですか。

佐藤 本当におこがましいと思いますが、自分の中で納得のいく成績をおさめられたことで「やり切った」という気持ちになってしまったのです。それと同時に、この成績を残せたのは私自身がすごいからではなくて、「三井住友海上」という看板があったおかげなのだとも思いました。会社の看板があったから、お客様に話を聞いていただけて営業成績もあげられ成長できただけで、ここで満足したら自分の成長は止まってしまうだろうと感じたのです。
 その頃から「三井住友海上の佐藤」ではなく「佐藤三和」という自分の名前で仕事ができるようになりたいという気持ちが強くなり、それを実現するために専門的な資格を取ろうと思いました。とはいえ、どのような資格があれば自分の名前で仕事ができるのかも知らなかったので、まずは難易度の高い国家資格を調べて、順番に自分に合うかチェックしました。そして、仕事をやめて受験に専念しないと合格が難しそうな資格は目標から除外することにしました。私はそんなにメンタルが強くないので、社会と切り離された状態で受験生活に没頭し続けるのは無理だと思ったのです。働きながら取得をめざせる資格を探し、候補に残ったのが税理士、行政書士、社労士。その中で、自分の適性なども考えた上で最終的に社労士試験にチャレンジすることにしました。

――大きな会社をやめることに不安はなかったですか。

佐藤 不安はすごくありましたね。でも、チャレンジしてみたい、新しい世界を知りたいと思ってしまったので、挑戦することにしました。そこで、まずは社労士業界を知らなければ始まらないと、社労士事務所へ転職して受験勉強を進めることにしたのです。

「実務経験」と「大企業の人事部」という肩書

――転職先はどのように探しましたか。

佐藤 社労士専門の求人サイトを利用しました。当時の社労士事務所が出しているのは経験者を募集する求人がほとんどでしたが、タイミングよく未経験可のスカウトが来たので、即決で入所しました。5名ほどの社労士法人で、三井住友海上にいた頃とはまったく違う環境になりましたが、ここでしっかり鍛えていただいたおかげで社労士実務が身につきました。社労士には1号・2号業務(社会保険の入退社手続きや就業規則作成など)が独占業務としてあり、3号業務としてコンサルティング業務や執筆業務などがあります。この法人では約2年半強、1号・2号業務や給与計算を中心に、3号業務である執筆などの幅広い経験をさせていただきました。

――実務に携わった感触はいかがでしたか。

佐藤 社労士実務は自分に向いているなと思いましたね。前職も、数字などにミスがあることは許されない環境でしたし、自分は間違いに対する管理意識が強く、正確に仕事をすることが得意だと気づきました。例えば、給与計算業務は細かい仕事ですが、そこで「1円違うくらい大したことない」と考える人は社労士業務に向かないように思います。私は細かい性格なので、とても気になってしまいます。また、社労士関連法は法改正が多く、常に勉強し続けなくてはいけません。私は頭を使って考えたり新しい知識を学んだりすることが好きなので、性格的にも向いていると思いました。もともと法律が好きで法学部に進学したのですが、大学生の頃は法律を仕事にするには弁護士になるくらいしか方法はないと思っていました。でも社労士は、法律を基本に考察しなくてはいけないので、こういう選択肢もあったんだなと、社労士法人で働いているときに改めて実感しましたね。

――働きながらの受験生活は、長くかかったそうですね。

佐藤 そうですね。最初の2年間は勉強量が足りていなくて、記念受験みたいな感じでした。社労士試験は約1年間という長いスパンで受験勉強をするわけですが、自分がわからないことを長期間勉強し続けるのはかなりストレスがかかります。そのため1~2年目は、試験範囲を学び終える前に勉強をやめてしまって、自分の弱い部分が出てしまったと思います。

――とはいえ、社労士試験の受験期間中にもFP(ファイナンシャル・プランナー)などの資格を取っていますね。

佐藤 はい。AFPのほかにも、第一種衛生管理者やビジネス実務法務検定試験Ⓡ、知的財産管理技能検定Ⓡなど、社労士業務に役立てられそうな資格を取得しました。社労士の受験勉強でスランプを感じてしまったときに、比較的短期間で取れる資格にチャレンジすることで「私はやればできるんだ」と自分で納得していた感じですね。

――その後、受験中に転職をしたのはなぜですか。

佐藤 もう少し収入を上げたかったということと、社労士として生きていく上でプラスになるキャリアを積みたいという気持ちがあったことが理由です。社労士の平均年齢は55.82歳(『社会保険労務士白書2022年版』)ですが、当時の私は30歳。圧倒的に若すぎるし、お客様の立場から見れば仕事を任せるのは経験不足で不安に思われるだろうと考えました。開業すると、企業の経営者や人事部の方がお客様になります。そうした方々にも安心していただくためには、大企業の人事部か経営企画部等の経営者側の部門で10年ほど働いたというキャリアがあれば強いだろうと思ったのです。

――転職によって、経験不足を補おうと考えたのですね。ただ、そうは言っても大企業への転職は簡単ではないと思います。

佐藤 自分で言うのも何ですが、私は面接に強いほうだと思います。2社目も3社目も、面接に進んだ企業からは内定をいただきました。実は転職エージェントには「ネームバリューのある企業の人事部門の求人情報を紹介してほしい」とお願いしていましたが、提案いただいた大塚食品株式会社の求人票には、必要な経験として「社労士資格保有かつ人事経験3年以上」とありました。当時の私は条件を満たしていなかったのですが、とても魅力的な求人情報でしたので、履歴書に「資格はまだ持っていないが、成績上は合格ラインにいる」と書いて応募しました。またエージェントを通す転職の場合、推薦文を書いてもらえますので、人事経験こそないけれど、社労士事務所に2年半以上いたので関連法律についての知識は確実に持っているということを中心に推薦文を書いていただき、書類選考に通りました。そして面接では「前職が営業職だったため、社内のことしか見ない人事管理でなく、営業担当の方々が気持ちよく働ける制度を作ることで会社の売上アップに貢献できる」とアピールしました。実際に売上を取ってくるのは営業担当者ですから、その論理が響いたのではないかと思います。あと、どうしても大塚食品に入社したかったので、面接では「私を落としたら後悔します!」くらいのアピールはしていたかと思います(笑)。

――大変な突破力ですね。大塚食品の人事部ではどのような仕事をしましたか。

佐藤 採用、新入社員の工場見学、入退社に伴う社会保険手続き、育児休業者の対応、メンタルヘルスに関わる対応など多岐にわたって携わりましたが、一番注力していたのは社内研修です。新入社員の社内研修や若手社員研修、管理職研修、経営クラスの戦略研修を企画して、人材育成に携わりました。その他にも、くるみんマークの初取得、健康経営優良法人の初認定も担当していました。また、働き方改革が叫ばれていた頃でしたから、残業時間はかなり厳密に管理していました。振り返ってみると、人事という領域でかなり多くの仕事を経験させていただきました。

「あと一歩」に苦しんだ受験生活

――大企業で忙しく働きながら社労士試験を受け続けたのですね。

佐藤 はい。1~2年目は記念受験と自分に言い訳していましたが、このままの生活を続けていてはいつまで経っても資格は取れないと思い、3年目は本腰を入れました。社労士試験の平均勉強時間は年間800~1,000時間と言われていますが、3年目はまさにそれくらいの勉強時間を確保しています。講義は教室の1番前の席で受けて、内容をしっかり理解するために毎回必ず質問をするようにしていました。
 今でも覚えていますが、2019年8月の試験は完全にケアレスミスの1点で不合格になったのです。社労士試験は午前中が選択式、午後が択一式試験で、それぞれに合格基準点が設けられています。択一式で点が取れないのは勉強不足と言われていて、私の場合は択一式は突破したものの、午前の選択式でケアレスミスをしてしまいました。試験後、受験指導校から発表される解答速報を見て「ああ、やってしまった」と呆然としましたね。1年間本気で勉強した結果がだめだったとなると、また翌年に向けて勉強しようと簡単には切り替えられません。ショック過ぎて、不合格を知ったあとで講師の先生に「だめでした」と直接お会いして報告をしました。
 それで何とか気持ちを切り替えてもう1年同じくらいの勉強量を継続したのですが、なんと2020年も同じく選択式でミスをしたのです。テキスト未掲載の問題が出たとき、手が震えて書けないほどに頭が真っ白になってしまい、2年連続選択式で合格基準点に届かず不合格。このときも講師の先生に会いに行って、「2年も同じことを繰り返すってどう思いますか?私は誰よりたくさん勉強していたのに!」と言っていました(苦笑)。

――緊張のせいで実力を出せないのは悔しいですね。

佐藤 2回のミスを経て、試験で緊張するとお腹が痛くなったり頭が真っ白になったりする性分とわかったので、最後の1年はとにかくメンタルを崩さないようにすることに重点を置きました。勉強量は圧倒的に足りていて択一式は心配ないことがわかっていたので、選択式を間違えないよう、集中力を研ぎ澄ますために勉強以外の日常的な「選ぶ」という場面はすべて排除するようにしました。例えば、会場の下見も何度もして、乗る電車はもちろん、試験当日何を食べるかも決めて、一切迷わないようにしました。

――徹底的ですね。

佐藤 そうですね。日々、起きて、仕事して、勉強することだけを淡々と繰り返していました。昼休みも会社近くの有料自習室を借りて勉強し、スマートフォンのアプリもほとんど削除、LINEのグループも退会して、友人とも音信不通に。髪を乾かす時間を短縮するためショートカットにもして、最後の年は受験だけに集中していましたね。合格発表の日は、怖くて自分で結果を見ることができず、母に受験番号を伝えて確認してもらいました。番号があったと聞いたときは、喜びよりも「やっと終わった」と思いましたね。

――その後、合格した2021年に社労士登録していますね。

佐藤 10月末に合格発表があって、そのまま12月に登録しました。登録には開業登録、勤務登録、その他登録と種類があって、企業に勤めている方の場合は勤務登録の人も多いのですが、登録しないと社労士と名乗れないのです。私は受験期間が長かったので、合格したからには社労士を名乗りたいと思いました。初期費用として20~30万円かかるのですが、ボーナスでご褒美にバッグを買うような感覚で登録しました。そのときは、半年後に会社員をやめて開業するなんて、全然考えていませんでしたね。

「やらなかった後悔」は取り返しがつかない

――社労士登録をして、何か変化はありましたか。

佐藤 すぐに変化はなかったです。開業登録はしましたが、個人での社労士業務はしていませんでした。大塚食品は副業禁止ではなかったので申請すれば社労士業務もできたかもしれませんが、仕事が忙しく、両立は無理でした。ただ、社労士連合会から配付される雑誌『月刊社労士』を読んだり、社労士会の研修を受けたりできるので、実務の勉強だけは続けていましたね。
 そしてちょうどその頃、会社から就業規則を改定する仕事がアサインされたのです。就業規則の改定は社労士業務の王道ですから、身につけた知識をフル稼働して取り組みました。さらに、知り合いから就業規則を作ってくれないかという依頼が2件ほど来たのです。「知人だから」ということで仕事を振ってくれた部分はあるにせよ、これをきっかけに「開業しても仕事をいただけるのでは」と考えるようになりました。

――「大企業の人事部で10年の経験」という目標もあったと思いますが、気持ちは揺れませんでしたか。

佐藤 後悔したくない気持ちのほうが勝っていましたね。転職当初は10年勤めてから独立開業するつもりだったのですが、結果的に2年7ヵ月で辞めることになりました。当時の私は33歳。その年齢なら、独立開業して2年間全力でやってみて上手くいかず35歳になったとしても、それまでの経歴と資格があれば、廃業して一般企業に戻ることもできるだろうと考えました。苦労して取った社労士資格だからこそ、自分の信念に合う仕事に向き合いたい。33歳の今なら「開業しなければよかった」と思えば会社員に戻ることができる。でも10年勤めたあとで「あのとき開業しておけばよかった」と思っても、過去に戻って開業することはできません。そう考えて、独立の道を選びました。本当は顧客開拓など準備を整えて開業しないと大変なのですが、仕事が忙しくて準備期間はまったく取れませんでしたね。

執筆やSNSで社労士としての知識をアピール

――開業準備ナシの状態から、どのように事業を軌道に乗せたのでしょうか。

佐藤 思いつく方法は何でもやってみました。千代田区での開業でしたので、区内の新設法人にDMを送ったり、士業交流会や経営者交流会に行き名刺を配って営業したり、一般的に効果がないと言われる手段も、初めからダメと決めつけずに試してみました。ただ、当初は「社労士実務ができて人事部経験もあるのだから、強みは十分あるはず」と思っていたのですが、PDCAを回しながら実感したのは、まずは「社労士がここにいる」と認知してもらわなくては仕事はいただけないということ。そして「仕事を頼める社労士」という判断もしてもらわなくてはいけません。そこで、自分にしっかりした知識があって、それをきちんとアウトプットできることを実績で示したいと考え、メディア関連、書籍の執筆やWeb記事の監修、セミナー講師の仕事は積極的にやりましたね。この辺りのお仕事は時給単価で考えると低かったのですが、あくまでアピールの場と考えていました。そうやって地道にがんばっているうち、様々な企業からお声が掛かるようになりました。
 認知していただくために、SNSも活用しました。「士業がTik Tokをやるなんて」と思われる方もいらっしゃると思いますが、私はSNSも使い方次第だと思います。私が発信する内容は、いわゆる“映える”日常ではなく、社労士としての知識だけに限っています。30秒から1分の短い動画で人事・労務関連の知識を簡単な言葉でわかりやすく解説していたのをきっかけに、セミナーの講師を探していた方からご依頼をいただいたこともあります。

――トラブルなどはありませんか。

佐藤 SNSユーザーには様々な方がいらっしゃいます。自分とは異なる目的でSNSを使っている方も少なくないなと感じますが、「トラブルの可能性があるからSNSをやらない」というのは、SNSが持つメリットの大きさを考えたらもったいないので、使い方を考えればいいと思っています。

――現在は顧問先も多くお持ちですが、転機などはありましたか。

佐藤 「これをしたら顧問契約をいただけた」という単純なものはありません。ご紹介もありますし、ホームページからもあります。セミナーに参加してくださった方からご依頼いただいたケースもありました。絶対的な正解はなく、いろいろな営業方法を試してみて、効果があったと感じた活動を続けてきたという感じですね。

社外人事部として道筋を示す社労士に

――開業から1年半が経ち、今はどのように仕事をしていますか。

佐藤 開業当初はスタートアップ企業の支援をメインとする社労士をめざしていました。今は起業のハードルが下がっていて30代の社長も多いので、そういう若い経営者は私のような同年代の社労士のほうが頼みやすいだろうと思ったからです。またスタートアップの小規模な会社は人事労務制度を整えないと良い人材を採用できませんから、企業の成長をサポートする仕事にはやりがいがあります。
 でも最近は大きな会社の人事施策にも携わるようになっています。自分も大企業にいたからわかるのですが、大きな会社はなかなか人事施策を動かせません。どんなに人事施策にお金を投入しても従業員の満足が得られないといったお悩みなど、社員5名のスタートアップ企業と社員1,000名規模の大企業では、違う種類の悩みがあるのです。それぞれに合ったご支援をするおもしろさがあると思ったので、今は小さな会社とも大きな会社ともおつき合いしたいと思っています。企業規模は問いませんが、共通して言えることは、「人事のことならとりあえず相談してみよう」と思い出してもらう存在になることをめざしている点です。

――社労士として大事にしていることは何ですか。

佐藤 今は人事・労務に関する法律がどんどん改正されて、企業にかなり負担がかかっています。「労働基準法でこう決まっているので、しっかり守ってください」とだけ伝える方はいますが、中小企業の場合は「わかっているけど人員がいなくて対応できない」「売上が低くて賃金もギリギリ」という現状もあります。悩んでいる経営者に対して、専門家である自分は圧倒的に勉強をしてアドバイスをすることを心掛けています。グレーゾーンのアドバイスをするのではなく、経営者の気持ちもわかった上で、正しい道筋を指し示せる社労士になりたいですね。私のアドバイスひとつで会社の行方が左右されることもあるので責任を感じます。今も受験時代と同じように日々勉強を続けています。

社労士業界を盛り上げたい

――今後のビジョンを教えてください。

佐藤 個人事務所を運営する士業は多いですが、お客様の中には「士業法人と取引をしたい」という方もいらっしゃるので、次のステップとして法人化を目標にしています。大きな会社とお取引きするとなると私ひとりでは対応しきれないと思うので、私のほかにも社労士を採用して、それに応じて企業様も増やしていきたいと思っています。

――社労士をめざす方やキャリアに悩んでいる方にメッセージをお願いします。

佐藤 社労士資格にはたくさんの可能性があると思います。社労士の3分の1が勤務登録として企業に所属していますが、人事部はどんな会社にも必要な部署で、社労士の知識を存分に活かすことができます。組織の中で安定して働くこともできるし、個人で独立開業することも、法人化して事業を拡大することも可能ですので、社労士は選択肢の広い素敵な資格だと思いますね。今は平均年齢が高いですが、私は社労士業界をもっと盛り上げたいと思っているので、若い方がどんどん増えてほしいです。受験時代に不合格が続くと本当に辛いですが、私自身も「逃げなければいつかは合格できる」と講師の方に言われました。それは本当だったと感じているので、ぜひ諦めずにチャレンジしてほしいと思います。

[『TACNEWS』 2024年4月号|特集]