タックス ファンタスティック! 第70回テーマ 受験勉強と恋愛は両立するのか?

田久巣会計事務所の代表の田久巣だ。会計士・税理士受験生にとってこの時期は憂鬱の季節。というのも夏の試験までカウントダウンが始まり、勉強が進んでいないと焦ってくるからだ。ただそんな焦った時であってもどうしても頭から離れにくいのが恋愛問題。資格試験に限らず早い人だと中学受験くらいからこの悩みは付きまとい、古今東西の偉人もこの問題だけは解けなかったとか。勉強と恋愛の両立問題、さてどう解くか?


税 太 四月は残酷極まる月だ/リラの花を死んだ土から生み出し/追憶に欲情をかきまぜたり/春の雨で鈍重な草根をふるい起すのだ


監 子 税太君、なになにどうしたの?前回ではいきなりことわざから始めたと思ったら今度はいったいなに?しかも4月はなんちゃらって、今は4月でなくてもう5月よ。会計士も税理士も繁忙期真っ盛りでそれどころじゃないの!


税 太 監子先輩!そんな返しはあんまりです。文字通り「残酷」です!


襟 糸 フフフ。税太君、監子ちゃんにそんな洒落の利いたことを言っても無駄だ。受験勉強が進んでいない現状の君の愚かな怠惰ぶりをかっこよく味付けするためにT.S.エリオットの『荒地』(西脇順三郎訳)を引用したからって監子ちゃんには閑古鳥。


税 太 襟糸先輩も「残酷」極まります!しかも最後のダジャレは意味不明だし。確かに僕は今、受験勉強が進んでいなくて不利な状況です。言い訳ですが仕事も家庭もあるし。でも僕は唯一、他の受験生に勝っているところがあります。それはまさに家庭があるためいわゆる「恋愛」に悩まされていないってところです。


監 子 なになに、それ?ちょっと聞き捨てならないわね。さっきのエリなんとかさんの「追憶に欲情」ってやつ?


税 太 監子さん!!ここの場はWorld Wide Webってことをお忘れなく!えー、というのも僕と違って独身の資格受験生は付き合っている人がいたり、いなくても誰かに多かれ少なかれ「恋愛」していたりするものなんです。恋愛しているとただでさえ勉強に相当時間が取られるので恋愛に時間を使えずかなりストレスになることも多いわけです。


監 子 わかるわかる。私もそうだった。このコラムの筆者の天野さんも恥ずかしいから絶対言うなよって言ってたからほんとここだけの話だけど、今の奥さんとお付き合いしながら勉強していたみたい。どうやらいろいろ大変だったみたい。


税 太 監子さん!!ここの場はWorld Wide Webってことをお忘れなく!


襟 糸 受験と恋愛ねぇ。でも果たしてストレスと言い切れるだろうか。吾輩は両立すると思うのだが。


監 子 まぁ、なんてこと!襟糸先輩みたいな恋愛無関心な人からのとっても意外な答え!もしかして先輩も天野さんと一緒のタイプ?


襟 糸 いや、恋愛に興味がないのは今も昔も変わらない。しかし一般論として両立するはず。


監 子 なぜ?


襟 糸 吾輩が得意とする相続だってそうだ。評価額などの数字や「勘定」と遺産分割でモメる原因になる様々な「感情」。これも矛盾するようだが実は両立している。「勘定」を気にするときは「感情」をプラスに持って行ったり、「感情」的になったら「勘定」を気にしないようにしたりとバランスを取っている。受験だって勉強のモチベーションが下がったら恋愛が大きな後押しになったりもするし、恋愛していると受験にやる気がついたりすることもあるだろう。


税 太 さすが襟糸先輩!相続と一緒だったとは!あ、両立するってなると僕の唯一の勝っている点が失われてしまいます!うわ~うわ~!


監 子 あらあら、「荒地」だけに「あれち」ゃったわ(笑)

【今回のポイント】

今回の恋愛のテーマ、実はこれはかなり勇気がいる話で講師からもあまり話に出ないだろう。出ても「恋人を作りましょう、『六法』という名の恋人を」というくらいだ(前時代的で申し訳ない)。しかし、実は受験生の間ではわりと切実な悩みでよく話していることも知っている。実際に受験勉強前はお付き合いしていたが受験勉強をすると決めた瞬間にお別れして専念している人もいれば、お付き合いをそのまま継続したり、受験勉強中にお付き合いをはじめたり、皆様々だ。結果が気になるだろうが、わしの知る限りは様々だ。どれが正解というわけではない。しかし、最初の問いに答えるとすれば両立はできる。天野さんもそうだしこのわしも実はそうなのだ。家庭がある方も実際両立したことも知っている。最後は何より意志の力。四月は残酷な月だったとしても、「ふるいおこ」せば試験のある八月は「はち」きれんばかりの希望の月になるはずだ。



[『TACNEWS』タックス ファンタスティック!|2024年5月|連載 ]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員。慶應義塾大学・同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でSEとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人等で会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後相続専門約60年の税理士法人レガシィへ。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年に士業事務所間で仕事を授受するWebサービス「Mochi-ya」、2020年にシニア世代向けの専門家とやりとりするWebサービス「相続のせんせい」をリリース。主な著書『相続でモメる人、モメない人』(2023年、講談社/日刊現代)。2023年、YouTubeチャンネル「相続と文学」配信開始。

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