実務家インタビュー

女性建築士が取り組む家づくりと情報発信

実務家インタビュー

自分らしく、楽しく暮らせる家づくりを発信する、
女性建築士の想いと視点、そして、これから。

設計事務所を営む3名の女性建築士の方々に、資格取得・独立開業までの経緯や、現在の業務内容、将来の目標などについて、お話をうかがいました。また、3名の方は設計者として活躍されるかたわら、共同して住宅に関するWebサイト「暮らしと家」を運営し、女性ならではの視点から「家づくり」に役立つ情報を発信しています。その取り組みと、今後の活動についても取材しました。


出席者のプロフィール

実務家インタビュー
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一級建築士 スピカ建築工房一級建築士事務所
主宰
滝川 良子(たきがわ よしこ)さん

福島県出身。東京デザイナー学院建築デザイン科卒業。1990年、一級建築士登録。設計事務所、都市計画事務所、商社スペースインテリア部勤務を経て、2000年7月、「スピカ建築工房一級建築士事務所」を設立。
http://www.spicahouse.com/

一級建築士 いいひ住まいの設計舎 代表
牛尾 出美(うしお いずみ)さん

新潟県出身。東京読売理工専門学校卒業。1998年、一級建築士登録。中堅ゼネコン、住宅会社に勤務、また、家づくりのためのポータルサイト制作に携わる等の経緯を経て、2006年11月、「いいひ住まいの設計舎」を設立。
http://www.iihi.biz/

一級建築士 インテリアコーディネーター
アトリエオンド一級建築士事務所 代表
大島 有美(おおしま ゆみ)さん

北海道出身。北海道大学大学院修了。2004年、一級建築士登録。再開発ディベロッパー、インテリアショップ勤務を経て、2007年1月、 「アトリエオンド一級建築士事務所」を設立。
http://www.facebook.com/atelier.ond/

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住宅の設計から施工監理、アフターケアまで

──現在、みなさんはご自身の設計事務所を設立されて活躍中です。まず、みなさんのお仕事内容を教えてください(以下、敬称略)。

牛尾
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©いいひ住まいの設計舎・牛尾出美
 一般のお客様からのご依頼を受け、新築住宅の設計から工事監理までを行っています。ホームページからのお問合せやご紹介をいただいてから、実際に家ができあがるまでのすべて、つまり計画段階から竣工までですから、1年~1年半という時間をお客様と共有することになります。
 サラリーマン時代と違い、現在は主人と二人で仕事をしているので、自分達が「いいな」と思う素材をご提案し、ひとつひとつお客様の納得を得ながらの家づくりができています。完成後もお付き合いが続く方が多く、実際に住まわれてから「住み心地がいいね」と言っていただけることが何よりの喜びで、事務所を立ち上げて本当によかったと思っています。
大島 私もお客様と直接やりとりをしながら、住宅の設計を行っています。時には土地を探す段階からご相談を受ける場合もあり、建物竣工後のメンテナンスの部分までを含めると、相当に長期間お付き合いをすることがあります。
 また、住宅以外に商業店舗等の空間作りにも関わっています。生まれ故郷の北海道札幌市での話ですが、地域の中のコミュニティとして、カフェや寄合所のような場所を作ろうという計画があり、街の方々と打合せを重ねながら、どのような空間にすると交流がより活性化するか、今までの設計、空間作りなどを行ってきた経験とノウハウを活かして提案する仕事も始めています。
 大学院修了後、東京で勤務し、その後に自分の設計事務所を立ち上げてやってきました。現在、事務所は主人と二人で営んでいますが、二人とも札幌市出身で、将来的には札幌に戻って地元地域に貢献したいと思っていることから先の話につながりました。
滝川 私もお客様から直接依頼を受けて家づくりをするのは、今までのお二人と同じです。それとは別に、比較的大きな物件に関して他の建築士の方と一緒に協働して取り組む仕事もしていて、そちらはユニットを組んで仕事をしています。どちらも基本は施主のお客様と一対一で、計画からアフターケアまでのお付き合いです。
 また現在、東京建築士会で環境委員会の委員をしています。もともと太陽熱などをそのまま利用するといったパッシブな住宅に興味があり勉強していたのですが、最近になって省エネ住宅などが注目されるようになったこともあり、自分の考えに近い、少ないエネルギーで暮らせる住宅・建物など、ようやく自分が思っていたことができるような時代になってきたのかなと感じています。

それぞれの分野で経験を積んで独立につながる

──独立される前はどのようなお仕事をされていたのですか。

牛尾 専門学校卒業後、公共建築などを手がける中堅ゼネコンに入社し、4年間勤務しました。ところが、一級建築士を受ける年の夏に倒産し、試験が終わるまでの数ヶ月間は無職で受験に専念することに(笑)。試験が終わった後、住宅会社に就職し、8年間勤務しました。そこでは設計から施工までを一貫して担当し、管理建築士としても働きました。その会社を辞めてから1年間、家づくりのポータルサイト制作に関わり、2006年11月に現在の「いいひ住まいの設計舎」を設立しました。
大島
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©いいひ住まいの設計舎・牛尾出美
 大学院を修了してから上京し、再開発ディベロッパーに就職しました。そこには3年間勤務し、再開発事業の権利者対応、事務局業務などを担当しており、その間に建築士試験を受験しました。都市開発という仕事は、業務の対象・規模が非常に大きかったので、もう少し人と直接触れ合えるような仕事がしたくて、インテリア・ショップに転職しました。街中に路面店がある会社で、ソファなどの家具類をお客様に提案したり、インテリアのコーディネートや特注家具の設計やご提案をする仕事をしていました。
 その後、たまたま友人から「家を建てたいんだけれど、設計者を探している」という話がありました。当時、設計の仕事をしていたわけではありませんが、設計案を作成しご提案をしたところ面白そうだという事になり、意外に好評でした。そこで自分の一級建築士事務所を立ち上げることにしました。事務所登録をして5年になります。
滝川 学生の頃から都市計画・街づくりに興味があったため、最初は都市計画と建築の両方を手掛けているアトリエ系の小さな設計事務所に就職し、公共建築や住宅、都市計画のマスタープランなどに関わっていました。ただ街づくりや都市計画はボリュームが大きく、かつスパンが長くて、自分が想像していた街づくりとは違うことに気付きました。お客様と身近に接する住宅の仕事をするようになって、施主の希望を形にできるこの仕事が合っている、そちらの方が楽しい、と感じるようになりました。
 一級建築士の設計製図試験当時は、実は妊娠中でした。幸いなことに合格でき、そのまま働かせてもらっていたのですが、設計事務所は残業も多く、時間的にはタイトです。その反面、子育てに関しては保育園の送り迎えがあり、時間の制約が多かったりします。そのため私ができる仕事はルーチンワークばかりで、正直なところ、だんだん辛くなってしまいました。すると周りの方から「資格を持っているんだから、登録して独立したら?」と勧められて、背中を押されるように事務所登録をして独立しました。

住宅の設計から工事監理までを担当して、初めて建築の面白さに気づく

──みなさんはなぜ建築士を目指されたのですか。何かきっかけはありますか。

牛尾 当初、建築士を目指したいという気持ちは全くありませんでした。高校生の時、何もやりたいことがなかったんですね。就職でもし ようかな、と考えているとき、建築をやっている親が「建築士になったら」と勧めてくれました。騙されたと思って東京の専門学校に行ってみろ、と言われて進んだのがきっかけです。
 働いてからも最初の会社は古い社風の中堅ゼネコンで、当時は図面を描いていても何を描いているのかがわからないままで、仕事がつまらない時期がありました。でも、ある一軒の住宅について基本設計から工事監理までを一人で任せてもらい、完成させた時に初めて「ああ、建築って面白い」と感じました。そこからこの「建築士」という仕事に付いてよかったと、初めて気がつきました。
大島 大学に進学するときは、初めは農学部を志望していました。でも、受験で落ちてしまい、そこでやっと真剣に世の中にどんな仕事があるのだろうと調べてみました。その頃はインテリアにも興味があったので、そこからいろいろな学校・学科を調べて、建築という仕事があるのだと初めて意識をしました。面白そうだな、と興味を持って建築学部に入学したのですが、大学ではデザインというよりも、もっと都市計画寄りの勉強が多かったのですが、私は単に形としてのデザインというより、都市の中や家の中で、人と人との交流をどうすれば上手くつくれるのか、という部分に着目していることが多かったですね。それには例えば旅行に行く、美味しいものを食べる、と言った、日常のちょっとした事もヒントになり、設計につながる可能性があるという事がだんだんわかってきて、単に建物というカタチを作るだけの仕事じゃない、という事に興味を覚えて建築士の道に進みたいなと思っていきました。
滝川
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©いいひ住まいの設計舎・牛尾出美
 私は、父が大工だったんです。子供の頃から職人さんが家に出入りしていて、父の現場に遊びに行って、足場に一緒に上ったりしていました。材木屋さんも家の近所にあって、父や他の大工さんが材木を手刻みしているところなどを見ることができました。そんな環境が普通で、日常に建築がある、家を建てるということが身近な環境でした。当時は「家を買う」という感覚より「家を建てるときは大工さんに頼む」ということが今よりも普通だったと思います。自分の生活と一体で建築がありましたから、建築には何となく興味を持っていました。
 高校受験の時に受験案内の資料を見て、工業高校の存在を知り、建築科に行ったらそういう建築のことを学べるのではないかと漠然と希望するようになりました。ただ、両親には当初反対されて、東京工業大学工学部附属高校(現、東京工業大学附属科学技術高校)に入学できたらいい、といわれ、運良く入れたのがこの道の始まりですね。実際には、専門学校時代に設計事務所でアルバイトをしていて、いろいろな先輩の仕事を見て、カタチになるって面白い、受験資格が出来たら自分も建築士を取ろうと意識して今日があります。

「この家がいいね」といわれる幸せ

──建築士になられて、よかったと感じるのはどのような時でしょうか。

牛尾 自分の能力を活かして誰かの役に立つ、お客様と建物を通じて喜びでつながっていると実感できることが幸せですね。
大島
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©スピカ建築工房一級建築士事務所・滝川良子
 家はお客様の資産でもあり、ずっと気に入って使い続けられるものでなくてはいけないんですね。ですからお客様と綿密に打ち合わせを重ね、可能な限りご希望を伺って、それでも形にするためには、もっと深いところまでお話を伺わないといけないことがたくさんあります。中には気に障ることもあると思いますが、一つ一つ結論を出して進めなければ、家は建ちません。お客様が本心から納得した家を形にしてお渡しできるのは、やりがいのある仕事だと感じています。
 そこから10年、20年、30年と経って、子供が生まれ育って巣立っていき、年を取ってからも「この家がいいね」となったときに、お互いにとって本当によかったと感じられるのではないかと思います。
滝川 私は子供を早く産んだこともあり、そういう意味でも資格を持っていてよかったと感じています。私が出産した頃は、身近に出産しても建築の仕事を続けるというロールモデルになるような人はいませんでしたが、資格を持っていたお陰で事務所登録もできて、好きな仕事を続けることができています。ただ独立すれば、時間は自分で自由にやりくりできると思っていたのですが、実際にはそうとばかりは言えません。それでも、やりがいは大きいですね。

クラシカ隊が発信する『暮らしと家』

──皆さんは「暮らし」と「家」をデザインする女性建築士サイトとして『暮らしと家』というサイトを開設されていますが、その経緯をお話しいただけますか。

滝川
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©スピカ建築工房一級建築士事務所・滝川良子
 3人が知り合ったきっかけは、建築に関するある勉強会でした。月1回ずつ半年間の勉強会に参加していて知り合いました。3人ともお酒が好きだったので、終わってからよく飲みに行ったりもしました。そこで話してみて、3人の家づくりに対する意識が共通していることがわかったんです。
 例えば私たちは「建築士」という肩書きを使っていますが、一方では自分を「建築家」と名乗る方もいます。建築家というと、芸術作品を作るというイメージが根強く残っています。私たち建築士は、お客様のお金を預かってお客様の夢をカタチにするのが仕事です。もちろん自分たちのテイストはありますが、やはりお客様ありきですから決して作品づくりとは思っていません。住まいは自分たちの自己実現の形ではなく、あくまでも「お客様がずっと住む場所だ」という考えが3人で共通していましたので、お互いに共感できたんです。
 今は、建築士と家づくりをスタートする、という意識もまだメジャーではないので、こんな家の建て方もあるんだ、という自分たちの想いを発信していこうということから一緒にホームページを作ることになりました。
牛尾 建築士と家づくりを始めるお客様は、まだまだ少ないと思います。ハウスメーカーさんの展示場に行って疑問を感じないと、そのままエスカレータのように進みますが、途中で「何か違う……、もっとこうしたい……」という思いが出てくる方がいらっしゃいます。
そんな疑問を感じた方に、今、私たちがやっているような建築士との家づくりの方法もある、ということを伝えたいという想いからスター トしました。

──「クラシカ隊」と名乗っていますが、その意味は?

大島 「暮らし」と「家」をもじって「クラシカ隊」になりました。ゴロ合わせですよね(笑)
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©スピカ建築工房一級建築士事務所・滝川良子
牛尾 3人で集まって将来的には何かをやりたいのですが、実際にはお互いに仕事を持っていますから日々3人がアップしていくブログを「住まいのレシピ」というかたちに集約して、あまり負担にならないようなかたちで情報発信を進めています。
滝川 実は2011年に3人で、家づくりを考えている人向けにイベントを計画していましたが東日本大震災もあり、いったん先送りにしています。
 ただ、震災に関連しては、「災害に負けない家と暮らしの研究会」の立ち上げを計画しています。すでに雑誌の特集などで私たちがやりたいことに近いことを具体的に試みている方のご紹介もされていますが、防災という意識だけでなく、楽しみながら家づくりに臨んでいただけたら、という観点で情報を集めて発信していきたいと考えています。
大島 「防災」というと何か堅苦しくて、「ヘルメットをここに置いて……」と言ったような危機管理のための「楽しさ」のない家づくりになってしまいがちです。それを女性の立場、視点を活かして、暮らしと家を楽しんでもらうことは残しつつ、何かの時に家族を守ることのできる設計やアイデア、アイテムがあればいいな、という情報提供を計画しています。家づくりの時にこんなことを考えておけば「有事の時に対応できる、うまく避難できる」という方法論を今後発信していきたいし、充実させていきたいと考えています。

建築士にはコミュニケーション能力が重要

──施主の方が工務店やハウスメーカーではなく、建築士の方に直接お願いすることのメリットについて教えてください。

牛尾 工務店さんやハウスメーカーさんの場合、 会社としてそれぞれに家の標準仕様があります。ですからお客様がこうしたい、こう暮らしたい、という思いにフォーカスしてもらえることが比較的少ないと言えます。
 私たちは設計者として、お客様の様々な要望を暮らし目線で捉えながら、住環境・構造・インテリアまで、エンジニアとして必要な知識をもって設計をまとめます。そうしたスキルがあることが、他に依頼する時との大きな違いだと思います。
滝川 今までリフォームを工務店に頼んでいた方から、「これまでは自分の要望がなかなか伝わらなかったのに、間に建築士さんが入ったら言いたいことが通じるようになって、言いにくいことも言ってもらえるのでありがたい、建築士さんってなんだか翻訳家みたいな仕事ですね」と言われたことがあります。お客様のご希望を把握しつつ、実際に工事を行う専門家にもわかるように、それを具体化するための指示を出せる、これが大きいのかな、と思います。
大島
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©アトリエオンド一級建築士事務所・大島有美
 インテリア家具を販売する仕事も並行して行っているのですが、毎日の生活ではテーブルで食事をし、ベッドで眠り、という家の内側の部分も、気持ち良く生活するためにとても大切です。例えば、お茶椀一つの空気感から生活全体が透けて見えてくることもあります。最初はそこまで考えていなかったのですが、単に外側の建物を建てるだけではなく、インテリアの部分まで含めて考える家づくりは楽しい、そのようなライフスタイルをふまえた提案ができることも建築士ならではなのでは、と思います。

──するとお客様とのコミュニケーションが重要になるのですね。

牛尾 確かに、建築士にはコミュニケーション能力がとても必要ですね。お客様からのご依頼を受け、設計をして、その設計に基づいて工務店に工事を依頼する、つまり自分がお客様のお財布を握って、家を完成するまでナビゲートするのが仕事です。建築の技術的な知識があることはもちろんですが、コミュニケーション能力が重要ですし、実はサービス業であるという意識もないとできない職種だと思います。
大島 例えばご家族の関係や、二世帯の場合は嫁姑の関係も、家づくりには大切な要素です。お友だちや親戚にも話さない夫婦の関係なども、きちんとお聞きしないと進められないことがありますよね。こちらが女性だから、特に話してもらいやすい面があるのかもしれません。
牛尾 ご主人からこっそり「奥さんが収納ベタだから、片付けやすい家に」とメールがきたこともありました(笑)。
滝川 お客様の中には家づくりを始めるにあたって、そもそも何が不都合かがわからない、こういうふうにして欲しい、という思いを上手く伝えられない方も多くいらっしゃいます。局所局所では希望があっても、全体としてはうまくお話しできない……それを少しずつひも解いて、解決し、話を進めていく中で、家族としての問題点が見えてきて、解決方法が見えてくる。思いを引き出してまとめ、伝えるコミュニケーション能力は、建築士には無くてはならないスキルかもしれませんね。

ホッとできる居場所としての家づくりを

──今後の計画がありましたら教えてください。

牛尾
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©アトリエオンド一級建築士事務所・大島有美
 独立してからの仕事のスタイルが自分には合っているので、この家づくりのスタイルで今後もずっとやっていきたいと考えています。ただ、設計事務所だけでは家づくりはできないので、理解を示してくれる工務店さんと上手くつながってお客様に喜んでいただける家をつくって行きたいです。
 また、私たちが普段やっているお客様、工務店、建築士の三者での家づくりのカタチがあることを、これから家を建てる方に知って欲しいと思います。「暮らしと家」もそうですし、自分が発信する「いい日ブログ」の中でも伝えていき、家づくりをする一人でも多くの方に「家をつくってよかった」と感じて欲しいと思っています。
 家での暮しが幸せって思えることは、少なくとも人生の三分の一くらいは幸せでいられることじゃないかと実感しています。人生のベースとなる家を心地いいものにして、日常を心地よくできれば、そこで暮らす人が幸せですよね。その幸せが会社・学校といった社会に連鎖していく。家づくりを通して、そんな喜びを生んでいきたいです。
大島 家をつくるには、法規に適合させ、構造設計をし、更には断熱等の環境性能の計画をし、そのうえでコストの管理をするといった、いろいろな要素があります。実際に私たちでも把握しきれないくらい、考えて取り組まなければならないことがたくさんあります。
  そのうえ、さらに法改正に対応させたり、新素材が開発されたり、エネルギーの問題にどのように取り組むかという課題があります。
 そうした多くの情報を、できるだけかみ砕いて、正確にわかりやすく、いい形に落とし込んで伝えていきたいですし、つくっていくものに取り込んでいきたいと考えています。そのためにも、金融や不動産、または福祉など他の資格を持っている専門の方々と協力し合って、いいチーム、いいつながりを持って仕事ができれば、よりよいものがもっと創り出せるのではないかと考えています。
滝川 先にお話したように「暮らしと家」でのイベントは先送りしましたが、もっともっと情報発信をして建築士との家作りの現場を知っていただきたいと思います。
 私個人としては、環境共生住宅・エネルギー利用の少ない家を実現していきたいですね。外で辛いことがあっても、家に帰ってきたらそこが自分の居場所でホッとできるような、そんな空間をつくっていきたいです。ホッとできる家が子供の記憶に残りながら大人になっていく、そんな家づくりにもっと関われたらいいと思います。

──これから建築士を目指す方たちにメッセージをお願いします。

牛尾 私は建築士になりたいという強い動機はなかったんですが、建築の学校を出て、会社からも取得するように勧められ一級建築士を取得しました。下積み時代は辛かったこともありましたが、一級建築士の資格があったからこそ、独立してお客様と納得のいく家づくりができるという自由を得ることができました。漠然とでも建築に関わりたいという夢があるのならば、一級建築士という資格は早めに取った方がいいと思います。もちろん、すぐには役に立たなくても、将来必ず役に立つので頑張ってください。
大島
実務家インタビュー
©アトリエオンド一級建築士事務所・大島有美
 建築士の受験では、毎日猛勉強をしたり、難しい部分もたくさんありました。それだけ広い範囲を勉強してきましたが、実際に設計に携わっていると把握しておかなくてはならないことが本当にたくさんあります。法規もそうですし、人の命を預かるものを作るという意味でも大きな責任があります。実務に携わっていると、そういう面をヒシヒシと実感します。気持ちの良い家づくりをしたいという、フワッと優しげな部分もありますが、その内側では様々な法規や規律に照らしあわせながら、街の中でどうやってその家をつくっていくかを検討し、何とか形つくっていくという面もあります。試験には設計製図がありますが、お客様に意思を伝えるときには、やはり絵を描けないと伝えられないという事も実感しました。資格を取得した上でも、仕事をしながら覚えていかなければならないこともたくさんありますが、頑張って欲しいと思います。
滝川 耐震偽装事件以来、建築士にとっては大変な時代が続いていると思います。今や一級建築士を取らないと何も始まらないですが、持っているからといって全部の仕事ができるわけではない職業です。まずは取得して、そこがスタートライン。それからも日々勉強しないといけないのですが、そういう意識を持って夢に向かって欲しいですね。取得すれば役に立つ資格なので、頑張って欲しいです。

──本日は興味深いお話、温かいメッセージをありがとうございました。

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