コラム 結局どれが狙い目? 医療事務資格試験の種類と難易度

医療事務資格試験はいろいろあるけど・・・

これから医療事務として働きたいと考える方の中には、学習して何か資格を得ようとする方も多いはず。ただ、調べてみると医療事務業界には国家試験がなく、たくさんの民間の試験が乱立していることに気づきます。就職やその後の仕事のことを考えたとき、いったいどの試験を選ぶのがよいのでしょうか?

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~ある日の休憩時間~

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新米医療事務ハナコ 「先輩わたし、コンピュータの入力がいまだに遅くて自己嫌悪になります・・・。もっと受付の仕事に合った勉強をして、実践的な資格を取っておけばよかったなー・・・」

ベテラン医療事務カオルコ先輩 「やれやれ、まあ、医療事務は資格がたくさんあるからねー。実際職場に飛び込んでみると、勉強してきたことと現実が違って自信をなくしちゃうことはありがちだけど」

ハナコ 「早く就職したいと思って簡単そうな試験に飛びついたのがダメだったのかなー?」

カオルコ先輩 「うーん、まあ、そうとも限らないよ。はっきり言って、ハナちゃんみたいに一度ひととおりの勉強をして試験にも合格している人が、改めて別の試験を受けなおすまでのことは、そんなにないと思うなー」

ハナコ 「そ、そうですか・・・?」

カオルコ先輩 「うん。ただ、これから学習するんだったら、難易度だけじゃなくて試験の中身も見たほうがいいかもね」

医療事務関連の資格試験の特徴

──医療事務としての知識やスキルを問い、資格を認定する試験はたくさんありますが、以下のような特徴があります。

<医療事務関連の資格試験の特徴>
 ・国家資格ではなく、すべて民間資格である
 ・種類がとても多く、出題内容や水準がバラバラ
 ・どの試験も、参考資料を持ち込み、閲覧しながら解答できる(=暗記が不要である)

──この記事の後半でも解説しますが、難易度だけでなく求めている技能にも違いがあります。各試験には合格率や目安としての学習期間などの情報がありますが、そうした見た目の指標以外にも注目しながら検討するのがよいでしょう。

それぞれの医療事務資格試験の難易度は?

──ただ、そうは言っても難易度が気になってしまう方は多いかもしれません。高すぎる目標を定めてしまうと途中で心が折れてしまうかもしれず、低すぎる難易度の試験だと現場で役立たないのではないか・・・。

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カオルコ先輩 「とりあえず試験の難易度が気になっているんだとしたら、一番難しい試験は『診療報酬請求事務能力認定試験』っていう試験だね」

ハナコ 「そ、その試験は知ってます・・・自分には絶対ムリだと思って敬遠しましたが」

カオルコ先輩 「この試験は最高峰であることも含めて有名だけど、これ以外の試験の難易度はそれほど気にしなくてもいいんじゃないかなー」

<医療事務資格試験の難易度>
 ・「診療報酬請求事務能力認定試験」が最高難度
 ・それ以外は(特に採用の際の印象としては)大きな違いなし

カオルコ先輩 「だから、診療報酬請求事務能力認定試験以外の試験を受けるのであれば、難易度にはあまりこだわらず、試験の中身を確認したほうが、ハナちゃんみたいなことにはなりにくいかもね」

ハナコ 「うう・・・、じゃあ、自分の反省のためにもいろいろ教えてください!」

カオルコ先輩 「医療事務の試験のゴールはそれぞれ違うけど、カテゴリーで分けてみるとこんな感じかな?」

診療報酬請求事務能力認定試験の難易度

──診療報酬請求事務能力認定試験は、公益財団法人 日本保険医療事務協会が実施する医療事務の試験です。2人が話題にしているとおり医療事務の最難関といわれる試験です。

<診療報酬請求事務能力認定試験 基本データ>

 実施 年2回(7月・12月)
 合格率 30%前後
 出題内容

学科試験20問

実技試験2問(外来・入院) 

 制限時間3時間 

 

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カオルコ先輩 「まず、30%前後の合格率っていうのは、やっぱり難易度が高いって言える。医療事務の試験の中には、50~70%くらいの合格率のものも多いからね」

ハナコ 「年に2回しかないのも、『難関資格』! って感じがします」

カオルコ先輩 「学科試験と実技試験があって、どちらも資料から必要な情報を素早く見つける力が問われる試験。なれないうちは、3時間の制限時間もシビアに感じるはずだよ」

ハナコ 「合格までどのくらい学習すればいいんだろう?」

カオルコ先輩 「個人差はあると思うけど、3~6か月くらいが一般的かなー。それと、やっぱり難しい試験なので、一般的な医療事務の学習をひととおりやってから、ステップアップのような気持ちで取り組むといいかも」

医療事務資格試験の種類と難易度(1) レセプト業務に役立つ資格試験

──上で説明したとおり、試験は難易度だけでなく試験の中身にも配慮して検討するのが得策です。まず、将来的に受付・会計だけでなく診療報酬請求業務(レセプト業務)をこなせるようになりたいのであれば、そういった知識を問う試験を受験するのがよいでしょう。

<レセプト業務に役立つ試験>
 ・診療報酬請求事務能力認定試験(日本保険医療事務協会)難易度★★★★
 ・医療事務管理士(技能認定振興協会)難易度★★★
 ・医療事務実務能力認定試験(全国医療福祉教育協会)難易度★★

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カオルコ先輩 「このグループの特徴は、『レセプトを手書きで仕上げる』っていう実技試験が必ず含まれていること。カルテを読み取って、点数を算定して、それをレセプトっていう形式に正しく表現するスキルが問われているわけだね」

ハナコ 「医療機関でレセプトの仕事をするなら、このタイプの資格を取得しておくと安心ですね!」


──詳しくは「意外とカンタン? レセプトの学習と資格」でも紹介していますので、併せてご覧ください。

医療事務資格試験の種類と難易度(2) レセプトの点検能力を問う試験

──実際の医療機関においては、レセプトを手書きで書き起こす場面はほとんどなく、コンピュータへの診療入力に伴って、電子的なレセプトが自動的にできあがります。このため、人が担うべきは提出前の点検を行う「目」ということになり、その能力を問う試験が存在します。

<レセプトの点検能力を問う試験>
 ・医療事務技能審査試験(日本医療教育財団)難易度★★
 ・医療事務管理士(技能認定振興協会)難易度★★★

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ハナコ 「レセプトを書く試験と、できあがったレセプトをチェックする試験があるんですねー」

カオルコ先輩 「そうだね。ただ、チェックするためには正しいレセプトを作るスキルが必要。それが備わったあとで点検のためのいくつかのポイントを押さえると楽だと思うよ」

ハナコ 「最初から点検のポイントだけ身につけずに、レセプト全般の知識をベースにするといいわけですね!」

医療事務資格試験の種類と難易度(3) 受付業務を見据えた試験

──ここまでの2つは診療報酬請求業務に大きく関わる試験でしたが、日常的な受付・会計の際の患者接遇力を問う試験も存在します。

<患者接遇能力を問う試験>
 ・医療事務技能審査試験(日本医療教育財団)難易度★★
 ・ホスピタルコンシェルジュ(技能認定振興協会)難易度★★

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カオルコ先輩 「医療事務デビューして最初に触れるのは患者さんの対応だから、こういう試験の勉強をしておくと、ある程度自信を持って受付に立てるかもね」

医療事務資格試験の種類と難易度(4) とにかく短期間で取得

──最後に、とにかく短期間で資格を取得したい場合、比較的難易度が低い資格を狙うといいでしょう。

<短期間での取得に向いている試験>
 ・医療事務技能審査試験(日本医療教育財団)難易度★★
 ・医療事務認定実務者(R)(全国医療福祉教育協会)難易度★

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ハナコ 「まさにわたしと同じ思惑の方が受験すべき試験ですね・・・」

カオルコ先輩 「まあ、でも短期間といっても1~2か月くらいは学習したほうがいいね。難易度が低いとか合格率が高いとかいっても、いい加減な学習で合格できるわけじゃないから・・・」

まとめ

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カオルコ先輩 「最後に大事なことを言っておきたいんだけど、最初に言ったとおり、ハナちゃんみたいにすでに学習して資格を持っている人は、特別な動機がない限り試験を選んで受けなおす必要はないと思うよ」

ハナコ 「それはどうしてですか?」

カオルコ先輩 「うん、医療事務の資格は、就職のためのライセンスという意味合いが強いからね。実際に現場に入ってしまえば、机の上で学ぶことより現場でダイレクトに学ぶことのほうが尊いし、現場はひとつひとつ違うので、お仕事に就いたあとはその医療機関でがんばることを第一に考えたらいいよ!」

ハナコ 「な、なるほどー、わかりました。わたしも腰を据えてがんばりたいと思います!」


──記事中でも話題になっているとおり、診療報酬請求事務能力認定試験以外は、医療機関側にそれほど正確に価値を把握されているわけではないと考えられます。このため、難易度よりは自分の就きたい業務や、採用のときにアピールしたいポイントに合った試験を選ぶのがよいでしょう。

各試験の難易度は、弊社が独自に判断したものです。あくまで目安として参考にしてください。