コラム 独学でめざす診療報酬請求事務能力認定試験 準備編

どうやって勉強する?

医療事務資格の最高峰に位置づけられる診療報酬請求事務能力認定試験。医療事務としてのスキルアップのために受験を考えている方も多いかもしれません。しかし、スクールに通う費用は高額だし、仕事をしながらスケジュールを空けるのも困難・・・。それなら、いっそ独学でめざしてみてはいかがでしょうか?

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診療報酬請求事務能力認定試験に挑戦しよう!

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新米医療事務ハナコ 「先輩! ちょっと相談に乗ってください~!」

ベテラン医療事務カオルコ先輩 「ど、どうしたの・・・?」

ハナコ 「院長にさっき呼び出されまして、例の医療事務の難しい試験を受けてみたらって言われたんです・・・」

カオルコ先輩 「それって、ハナちゃんが難しくて絶対ムリだって言ってた診療報酬請求事務能力認定試験のことだよね」

ハナコ 「そうなんです! レセプト点検の人手が足りないから、早く勉強して受けてこいって」

カオルコ先輩 「まあ、仕事しながら覚えてもいいけど、この試験を受けるのは近道ではあるかもね。期待されてるじゃない、がんばれ~」

ハナコ 「い、一応がんばってみようかな、と・・・。ただ、昼間はお仕事があるので、学校に通って勉強するのは難しいと思うんです。だから、対策本をそろえて独学かなって」

カオルコ先輩 「学校に通うと費用もかかるしねー。じゃあ、2人で作戦立ててみよう!」

診療報酬請求事務能力認定試験とは

──「結局どれが狙い目? 難易度と質で見る医療事務試験」でも紹介しましたが、診療報酬請求事務能力認定試験は、医療事務の最難関試験です。ここでは、医科の試験について解説していきます。

<診療報酬請求事務能力認定試験 基本データ>

 実施 年2回(7月・12月)
 合格率 30%前後
 出題内容

学科試験20問

実技試験2問(外来・入院) 

 制限時間3時間 

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カオルコ先輩 「学科試験は20問あるんだけど、1問につき4つの文があるから、合計80の文について正誤を判定していくわけ。ひとつ1分で済ませたとしても80分かかってしまい、試験時間の半分くらいを費やしてしまうことになるね」

ハナコ 「これだけでもかなりシビアな試験だってことが伝わってきます・・・」

カオルコ先輩 「最大の難関は、2問ある実技試験のうち、入院の症例。ボリュームのあるカルテだから、最低でも1時間くらいはこの入院レセプトに費やすことになるよ」

診療報酬請求事務能力認定試験の合格をめざすための方針

──それでは、試験の合格をめざすための具体的なプランについて、話を進めていきましょう。基本方針とスケジュールの2つを考えてみます。

(1)基本方針
書店を訪ねると、医療事務関連のコーナーに診療報酬請求事務能力認定試験の受験対策本を見つけることができます。いくつかの対策本がありますが、どれにも共通する特徴として、「ある程度診療報酬算定の知識がある」読者を想定していることが挙げられます。つまり、知識ゼロのスタート地点からこれらの本を手にとっても、優しく初歩の初歩から解説してはくれません。

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カオルコ先輩 「診療報酬請求事務能力認定試験対策の書籍は、ひと通りの医療事務の勉強を終えた人が手に取らないと、あまり役に立たないものばかりなの。ハナちゃんは基礎学習が済んでいるから問題ないけど、そうじゃない人は、何らかの形で基礎を身につけたほうがいいかな」

ハナコ 「スタンダードなレベルの医療事務講座をどこかで受講するってことですか?」

カオルコ先輩 「学校に通ってもいいし、通信教育でもいいと思うよ。ただ、診療報酬請求事務能力認定試験のための基礎だから、“レセプトを手書きで作り上げる”ことを含んだ学習をしないと意味がないね」

ハナコ 「うーん、でもどのくらいのことがわかれば“自分は基礎ができてる”って思っていいのかな・・・」

カオルコ先輩 「そうだなー、例えば、こんなのがカルテに書かれてたときに、ちゃんと点数を算定できてレセプトも書ける! っていう人は、基礎はばっちりだと思っていいんじゃないかな」


(例題)麻酔管理料(Ⅰ)届出あり、麻酔科標榜医により手術前後の診察及び麻酔を施行
4/20
・膀胱悪性腫瘍手術(経尿道的)「ロ その他のもの」
・閉鎖循環式全身麻酔(仰臥位、9:30~11:45)
 液化酸素CE 850ℓ
 セボフレン吸入麻酔液 120mℓ
 ベクロニウム静注用4mg「F」1A
 ネオスチグミンメチル硫酸塩注射液0.05%4mℓ 1A
 笑気ガス 550g
(解答例は記事の最後にあります) ⇒ 今すぐ解答例を見る

ハナコ 「なんだか難しい気が・・・」

カオルコ先輩 「診療報酬請求事務能力認定試験では、こんなふうに麻酔を伴う手術がよく出てくるからねー」

ハナコ 「どんなところがポイントなんですか?」

カオルコ先輩 「手術とか麻酔とか、そういう診療行為の点数を資料から探すのは、実はそんなに難しいことじゃない。ポイントは、それを正しくレセプトに表現できるかどうかなの。(1)手術や麻酔はレセプトの摘要欄ってところに実施日を書かなきゃいけないっていうルールがあるし、(2)この場合麻酔のときに酸素吸入をしてるから、その酸素の料金の計算ができて、レセプトに書けなきゃいけない。あと、(3)数多くの薬剤の料金を正確に計算できるかどうか。このあたりがポイントだね!」

ハナコ 「うう・・・自信ないからあとでこっそりチャレンジしてみます・・・」

(2)スケジュール
スケジュールは、上で説明した「知識ゼロ」の状態にあるかどうかで変わってきます。初めて医療事務に触れる場合、まずは基礎学習を済ませましょう。

<12月試験の場合のスケジュール>
 ・6月~7月 :医療事務の基礎学習をスタート
 ・9月~10月 :診療報酬請求事務能力認定試験対策をスタート
 ・9月~11月 :出願(インターネット経由と郵送による出願が可能で、受付期間が異なる)
 ・12月上旬 :試験対策の仕上げ(時間を測って本番と同じような形式の問題にチャレンジ)
 ・12月中旬 :試験本番!!
 ・2月下旬 :合格発表

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カオルコ先輩 「ハナちゃんの場合、基礎学習をしなおす必要はないから、この場合9月~10月から2~3か月で対策すればいいと思うよ」

ハナコ 「7月試験の場合もだいたい同じですよね」

カオルコ先輩 「うん、ただ7月試験の場合は、1つ気をつけなきゃいけないことがあるの」


──偶数年度の7月試験(例えば、2018年7月の試験)を受ける場合、注意が必要です。偶数年度は4月に診療点数の改定があるため、この年度の7月試験は、改定後の点数で実施されることになるからです。例えば、6か月かけて基礎的な学習から始めようとすると、開始時点では改定前の点数で学習し、途中で新しく変わった内容に知識を改める必要があるわけです。


カオルコ先輩 「偶数年度の7月試験は、新しい診療点数が世に出てからの猶予が少なくて、短い期間でそれに対応して受験しなきゃいけないから、少しハードルが高いかもしれないね」

ハナコ 「特にゼロから学習する場合は、偶数年度の7月以外の試験を狙ったほうがよさそうですね!」

カオルコ先輩 「ちなみに、診療点数の改定がない年度でも、受験者は7月より12月のほうが多い傾向だよ」

独学での合格のためにそろえるべきアイテム

──自分の受験する試験日程が定まったら、まずは当日試験会場でも活躍する、参考資料を入手しましょう。

(1) 『診療点数早見表』(医学通信社)

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カオルコ先輩 「まずは何と言ってもこれがないと始まりません! 早見表です」

ハナコ 「結構な分厚さと重さです・・・」

カオルコ先輩 「学科試験の大半はこの本を調べることで答えを導く作業だし、実技試験でも活躍するから必需品だねー。重たいかもしれないけど、いちばんお世話になる本だよ!」


──『診療点数早見表』は、毎年新たな情報を加えて刊行されていますので、試験を受ける時点で必要な情報が掲載されたものを入手するようにしましょう。

(2) 試験対策問題集

カオルコ先輩 「問題集は有名なものがいくつかあるから、どれか好きなのを選べばいいと思うよ」

<試験対策問題集>  A.『診療報酬請求事務能力認定試験 受験対策と予想問題集』(医学通信社)
 B.『診療報酬請求事務能力認定試験 医科 最新問題と受験対策』(社会保険研究所)
 C.『医療事務 診療報酬請求事務能力認定試験 医科 合格テキスト&問題集』(日本能率協会マネジメントセンター)

A.は問題集としてはおそらく最もポピュラーなもの。前半は試験概要やカルテ読解、レセプト記載の指南がまとめられており、後半が問題集となっています。問題は過去問が直近6回分、さらに学科と実技に分けてオリジナル問題も収載されており、試験前にじゅうぶんな対策ができます。
B.も同様に、過去問とオリジナル問題の両方を収載したもの。学科試験についてはテーマごとに並べたものから導入して、試験そのままの形式にステップアップする流れがあるため、じっくり対策できます。過去問は直近6回分掲載されています。
C.は前の2つに比べると、「テキスト」としての性格が強いです。これだけでゼロから知識を持ち上げるのは難しいですが、ひと通り学習の済んだ受験者が、各項目についてのおさらいをしつつ、この試験向けに細かい対策をするには効果的です。実技の過去問は直近5回分が収載されています。

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ハナコ 「ちょっとずつ違うんですねー。本屋さんに行ったとき、自分で手にとって眺めてみます!」

カオルコ先輩 「そうだね。好みもあるだろうから、実際に確かめて選ぶといいよ。あとちなみに、問題集の使い方についても、1つポイントがあるよ」


──診療報酬請求事務能力認定試験は、制限時間の配分がとても重要な試験です。当日を迎える直前に必ず、本番と同じ形式の問題を1セット、実際に自分で時間を測りながら取り組むリハーサルが必要です。このとき取り組む問題は初見でなければ意味がありませんから、直前対策用に手付かずの問題を1セットか2セット、残しておくとよいでしょう。

(3) 『最新 医事関連法の完全知識』(医学通信社)

カオルコ先輩 「これは必要に応じて、だけど、持っておくと安心かな」

ハナコ 「この本は何に使うんですか?」


──この後にも解説しますが、学科試験の20問のうち、最初の4問は診療報酬算定以外の分野から出題されるため、『診療点数早見表』ではカバーできない知識が必要になります。この4問の正答率を確保したい場合は、この本を入手しておくとよいでしょう。

診療報酬請求事務能力認定試験の学科試験対策

──学科試験は全20問であり、1問は4つの文((1)~(4))で構成されています。この4つの文の正誤を判定し、その正誤の組合せを示した選択肢の中から正しいものを選び解答します。 概ね、問1~問4の4問は、医療関連法規や療養担当規則等、診療報酬算定以外の分野からの出題で、問5~問20の16問は、診療報酬算定に関する出題となっています。合格ラインは回によって異なりますが、概ね「60点」と公表されていますから、20点満点の6割ということは、12問を正解すればよいものと考えられます。

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カオルコ先輩 「ここはまさに、『診療点数早見表』を使い倒すところだよ!」

ハナコ 「解答時間の目安はありますか?」

カオルコ先輩 「学科試験は60分くらいで解答を終えるのが目標だね。とにかくたくさんの問題にあたって訓練すること!」


──詳しくはこちらの記事で解説しています。「独学でめざす診療報酬請求事務能力認定試験 学科試験対策編」

診療報酬請求事務能力認定試験の実技試験対策

──実技試験は外来と入院の2つの症例がありますが、特に入院のレセプトは時間がかかります。こちらにどのぐらい時間を割り当てられるかが、試験全体のポイントになります。

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カオルコ先輩 「入院のレセプトはほんとに大変! 外科手術をするために入院するっていう筋書きの症例が多いんだけど、手術、輸血、麻酔のあたりの算定が複雑になるから、これをしっかり処理できるかどうかがポイントになるね」

ハナコ 「麻酔とか点滴の薬剤がたくさん出てきて、薬価計算も大変そうです・・・」

カオルコ先輩 「そうそう。ただお薬を書き写すだけでも大変だけど、ぜんぶ終わった後で検算するための時間の余裕は残しておいてね」


──詳しくはこちらの記事で解説しています。「独学でめざす診療報酬請求事務能力認定試験 実技試験対策編」

診療報酬請求事務能力認定試験の試験会場

──少し気が早いですが、当日のことについてもいくつか注意点があります。

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カオルコ先輩 「この試験に限らず医療事務の試験は同じだと思うんだけど、受験者の大半が女性だから、試験前の女子トイレは激混みなんだよねー」

ハナコ 「そ、そうなんだ・・・盲点でした! この試験3時間もあるから、お手洗いには余裕をもって行っておきたいですね」

   

カオルコ先輩 「会場に到着するタイミングも早目がいいかも。それと、自分の座席を見つけたら、一度試験中に使う資料を広げてみるといいよ。どの資料をどの場所に広げたらいいか、試験前にイメージできるから」

ハナコ 「なるほど~、前の試験のとき自分のスペースが思ったより狭かったので、家のテーブルを広々と使うのと勝手が違って焦りました・・・」

カオルコ先輩 「そんなところかな。周りにはグループで受験しているような方がたくさんいることも多いけど、1人で受験する場合も雰囲気に飲まれずにね!」

ハナコ 「とっ、とりあえず、勉強がんばります・・・!!」

<当日・試験前の注意点>
 ・お手洗いが混みがちなので、早めの会場到着を心がける
 ・座席に主要な資料を広げてみて、使い勝手を確認しておく
 ・周りの雰囲気に流されず、試験前の最終確認をする

解答例

──解答例(※平成30年4月現在の法令等による解答例です)

解答例

続けて読むなら・・・

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資格・試験/学習法

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