コラム 医療事務の求人 探し方と就職活動のコツ [準備編 (2)雇用形態の違い]
正社員? 派遣? パート?
右も左もわからない医療事務未経験者が就職を果たすのは、なかなか大変。そんな方のために就職活動のポイントを解説するシリーズの第2回です。今回は、労働契約の形態について考えてみましょう。正社員、契約社員、パート・アルバイト、派遣社員、いろいろありますが、違いはどのようなものなのでしょうか?

医療事務の求人の探し方と就職・就活のコツ 労働契約の形も重要なポイント!
新米医療事務ハナコ 「この間の話で、医療事務と一口に言っても、勤務先の規模によってお仕事の質がずいぶん違っていることがわかりました!」
ベテラン医療事務カオルコ先輩 「うん。私たちのいるクリニックと大学病院とでは、医療事務スタッフが担当する仕事はかなり違うだろうから、身につけられるスキルとか経験も全然違ったものになるね」
ハナコ 「医療事務としてのキャリアを自分がどのように考えるのかも、大事なポイントですね」
カオルコ先輩 「そのとおり。でも、就職活動に当たっての準備は実はそれだけじゃ足りないの」
ハナコ 「えっ?? まだあるんですかー?」
カオルコ先輩 「働くっていうことは、労働契約を結んで、その契約に基づいて仕事をして、お給料をもらうってこと。このとき、どんな契約を結ぶかによっても、仕事のスタイルは大きく変わってくるの」
ハナコ 「なんだか難しそう・・・ でも、イチ労働者として、ちゃんと知っておかなきゃいけないポイントですね!」
医療事務の求人の探し方と就職・就活のコツ 雇用形態にはどんな種類があるの?
カオルコ先輩 「就職活動で迷ってるハナちゃんのお友だちは、正社員希望とかアルバイト希望とか、何か決めてるところはあるのかな?」
ハナコ 「うーん、とりあえずフルタイムのお仕事を長く続けたいみたいですね」
カオルコ先輩 「なるほどね。若い人だとそういう希望が多いと思うけど、とりあえず雇用形態の種類を確認してから、1つひとつ見ていくことにしよう」
<雇用形態の一般的な分類> ●直接雇用・・・求職者と医療機関が直接労働契約を結ぶ ・正社員(正職員)・・・期限の定めのない直接雇用で、多くは常勤(フルタイム) ・契約社員(契約職員)・・・期限の定めのある直接雇用で、勤務時間はさまざま ・パート・アルバイト・・・常勤でない直接雇用 ●間接雇用・・・求職者が勤務先である医療機関以外と労働契約を結ぶ ・派遣社員(派遣職員)・・・一般的には期限の定めのある雇用で、求職者が派遣会社と労働契約を結び、派遣先で勤務する |
医療事務の求人の探し方と就職・就活のコツ 働き方(1)正社員として働く
カオルコ先輩 「正社員っていうのは、医療機関と自分との間で期限のない労働契約を結ぶ働き方だよね」
ハナコ 「安定して長く働けるようなイメージがあります」
カオルコ先輩 「医療事務の場合、いわゆる新卒の年齢じゃなくても未経験から正社員への道がある程度開かれているから、長く働きたい人は正社員を希望することが多いかもしれないね。ちなみに、医療機関は会社とは少し違うから、『社員』ではなくて『職員』と呼ぶことが多くて、『正社員、派遣社員・・・』じゃなくて『正職員、派遣職員・・・』と呼ばれるケースが多いんだけど、ここでは一般的にわかりやすい『社員』で紹介していくよ。」
ハナコ 「了解です!そして何を隠そう私も、だいたいそんな動機で正社員志望でした!」
カオルコ先輩 「一方で、例えば、正社員とアルバイトの社員が混在しているような職場だったら、正社員にはみんなの中心的な役割を担って仕事をすることが求められるよね。安定が得られたり福利厚生が充実していたりする分、責任も果たさなきゃいけないっていうのが正社員」
ハナコ 「確かに、みんなのお手本になるように、気を引き締めて仕事しないといけないですね・・・!」
カオルコ先輩 「それと、正社員はだいたい常勤になるよね。例えば水曜日と日曜日が休診のクリニックに勤めるとしたら、その2日を除く月・火・木・金・土の5日間が出勤日になるのが基本だね。診療開始時刻のちょっと前に出勤して、午前と午後の診療に対応して、終わったら後処理をして終了になる。必要であれば残業しなきゃいけないこともある」
ハナコ 「医療機関の診療日によって出勤日が決まってくるから、いまの例だと土日連続して休みたいっていう要望を叶えるのは難しくなりますね」
カオルコ先輩 「そうだね。とりあえず正社員がいいな・・・って考える人は多いと思うけど、単に身分をほしがるだけじゃなくて、それなりの責任をもって医療機関に貢献するってことは忘れちゃいけないよね」
<正社員としての医療事務>
・期限のない直接雇用で、安定しており福利厚生も充実していることが多い
・概ね常勤で、出勤は医療機関の診療日・診療時間に準じる
・職場の事務スタッフの中心として、責任をもって業務にあたることが求められる
医療事務の求人の探し方と就職・就活のコツ 働き方(2)契約社員として働く
カオルコ先輩 「契約社員っていうのは、正社員と同じく直接雇用なんだけど、期限が定められている社員のこと」
ハナコ 「6か月とか1年とか、そういう単位で期間を定めてお仕事して、場合によっては更新して働いていくってことですね」
カオルコ先輩 「例えば自分の側に、ずっとその職場で働けるとは限らないっていう事情がある場合、期限を区切った雇用契約のほうが都合のいいこともあるわけで、そういう人は契約社員を希望するかもしれないね」
ハナコ 「契約社員も、正社員と同じで常勤になるんですか?」
カオルコ先輩 「それはそれぞれの契約内容によって変わるの。正社員と同じ常勤の場合もあれば、出勤日や勤務時間について変則的な契約もありえると思うよ」
ハナコ 「それだったら、パート・アルバイトのほうが自分に都合よく働けるんじゃないですか?」
カオルコ先輩 「うーん、明確な違いがあるわけじゃないんだけど、傾向的にいうと・・・」
<契約社員とパート・アルバイトの違い>
●契約社員
・月給制であることが多い
・身分が正社員に近く、社会保険も完備されていることが多い
・勤務時間は契約内容によって一律に定められることが多い
●パート・アルバイト
・時給制であることが多い
・社会保険適用の有無は勤務のボリュームによって異なる
・1か月ごとのシフトのように、短期的に勤務日時を定めていくことが多い
・賞与や諸手当が設けられていないことが多い
ハナコ 「なるほどー、それぞれ求人に応募するときによく確かめたいところですね!」
カオルコ先輩 「ちなみに、いまの説明に出てきた“社会保険”っていうのは、医療保険制度のうちの社会保険のことじゃなくて、雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険の総称のほうね」
ハナコ 「求人案内に“社保完備”って書かれている場合の社会保険のことですね」
カオルコ先輩 「それから、契約期間を満了した後、お互いに問題がなければ契約を更新することがあるけど、この更新を繰り返して5年以上同じところで働くと、希望すれば無期限の労働契約に切り替えることができる制度もあるの」
ハナコ 「そんな制度もあるんですねー」
カオルコ先輩 「無期限といっても必ずしも正社員とは限らないけどね。最初は将来のことがわからないから短期の契約にしてたけど、問題なく働き続けているうちに期限を区切った契約にする必要がなくなった。そんな場合にはありがたい制度かもしれないね」
<契約社員としての医療事務>
・期限のある直接雇用で、社会保険等の条件は正社員に準じている場合が多い
・勤務時間は契約内容によってさまざま
・パート・アルバイトより安定した収入を得やすい
・5年以上継続して勤務すると、無期限の労働契約に切り替えることもできる
医療事務の求人の探し方と就職・就活のコツ 働き方(3)パート・アルバイトとして働く
ハナコ 「パートはパートタイマーのことだから、短い時間の勤務っていうイメージがありますね」
カオルコ先輩 「そうだね。例えば医療機関で働きたいけど、週に3日くらいがいいな・・・とか、夕方には家に帰っていたいから、午前の診療対応だけにしたいな・・・とか、そんな方がパート・アルバイトで契約していることが多いんじゃないかな」
ハナコ 「家族の扶養に入っている人が、扶養の範囲を超えないで家計を助けたいっていうようなケースもあるかも」
カオルコ先輩 「簡単に言ってしまうと、自分の主たる生活を優先しながら働きたいっていう場合には、このパート・アルバイトが向いてると思う。正社員だったら必要に応じて残業しなきゃいけないこともあるだろうけど、パート・アルバイトは比較的残業なしで帰れる職場が多いかな・・・」
ハナコ 「そのかわり、正社員や契約社員に比べると、身分の保証が部分的になってる面はありますよね」
カオルコ先輩 「例えば、さっき契約社員との違いのところで社会保険の話をしたけど、医療機関側が“社会保険完備”としていても、働く側が条件を満たさないと部分的にしか恩恵を受けられないから注意が必要なの」
<パート・アルバイトの社会保険(※社会保険適用事業所の場合)>
・週あたり20時間未満の勤務・・・労災保険のみ
・週あたり20時間以上30時間未満の勤務・・・労災保険+雇用保険
・週あたり30時間以上の勤務・・・労災保険+雇用保険+厚生年金保険+健康保険
カオルコ先輩 「例えば、週に3日、午前の診療時間だけの勤務っていうボリュームだと、週20時間未満になる可能性が高い。そうすると、上にあるとおり労災保険だけってことになるね」
ハナコ 「求人には“社会保険完備”って書いてあっても、自分の側でも条件を満たす必要があるってことかー。知らないと勘違いしちゃいそうですね・・・」
<パート・アルバイトとしての医療事務>
・所定労働時間のうち一部の日時に限って勤務する
・仕事以外の生活を優先しながら働くのに都合がよい
・正社員や契約社員に比べて、職場から受けられる恩恵が限定的である
医療事務の求人の探し方と就職・就活のコツ 働き方(4)派遣社員として働く
カオルコ先輩 「今日最後に紹介するのは派遣社員。これだけ、医療機関と本人が直接契約しないことになるんだけど、ハナちゃんは派遣のしくみ、わかるかな?」
ハナコ 「・・・実はよくわかりません・・・」
カオルコ先輩 「ちょっと難しいかもしれないから図解すると、だいたいこんな感じになるの」
カオルコ先輩 「上の“派遣社員”っていうのが仕事をする人、左の“派遣先”っていうのが勤務先の医療機関、右の“派遣元”っていうのが人材派遣会社ね」
ハナコ 「ふむふむ」
カオルコ先輩 「まず派遣社員と派遣元との関係を見ると、派遣社員が労働契約を結ぶ相手は派遣元、つまり人材派遣会社なの」
ハナコ 「派遣社員を雇っているのは人材派遣会社で、お給料や社会保険もそこから与えられていますね」
カオルコ先輩 「そう。で、人材派遣会社は派遣社員を医療機関に派遣します。だから、派遣社員の勤務先は医療機関であって、医療機関の指揮命令、まあ指示に従ってお仕事をすることになるわけ」
ハナコ 「なるほどー、よくわかりました!」
カオルコ先輩 「派遣社員本人から見ると、所属している会社と勤務先が別になってるところが一番の特徴だね」
ハナコ 「そういえば、一般的には派遣社員も契約期間が決まっていますよね?」
カオルコ先輩 「そのとおり。3か月とか6か月とか契約期間が決められていて、これも更新されていくこともあるよ。それと、中には、派遣会社の正社員になってから派遣先に行くケースもあるね」
ハナコ 「ここでも、契約社員として働くこととの違いが気になります・・・」
カオルコ先輩 「そうだね。比べてみると・・・」
<派遣社員と契約社員との違い>
●派遣社員
・労働契約は人材派遣会社と結ぶ
・一般的には時給制で、比較的好条件の場合が多い(月給制のところも)
・人材派遣会社の担当者が勤務条件等の交渉を担ってくれる
・契約が更新されなかった場合、人材派遣会社に次の派遣先を探してもらえる
●契約社員
・労働契約は医療機関と直接結ぶ
・月給制であることが多い
・勤務条件等については自分で交渉する必要がある
・契約が更新されなかった場合、自分で次の仕事を探す必要がある
カオルコ先輩 「ハナちゃんは、“派遣”っていう働き方にどんなイメージを持ってるかな?」
ハナコ 「ううー、正直言いまして、漠然とですけどあまりいいイメージないです・・・立場が弱かったり、真っ先に切られちゃったり・・・」
カオルコ先輩 「そんな印象を何となく持っている人は案外多いかもしれないね。まあ、全く当たってないわけじゃないと思うけど。立場が弱いっていうよりは、他の人たちの中にひとり派遣で入っていくことの距離感みたいなものはあるかもしれないし、非正規雇用だから事情によって契約が更新されないことはもちろんある」
ハナコ 「そうですよね・・・」
カオルコ先輩 「でも例えば上に挙げたように比較的高額な時給が設定されていることが多いし、勤務先に直接言いづらいようなことを人材派遣会社の担当者に代わりに言ってもらえるっていうメリットもあるの」
ハナコ 「派遣元から守ってもらえるところは心強いですね!」
カオルコ先輩 「そもそも、正社員として無期限に働くにしても契約社員や派遣社員として期限付きで働くにしても、当人にとっては新しい職場に飛び込んでいくわけだから、その仕事をちゃんと続けていけるかどうかはやってみなきゃわからないと思うの。そう考えると、最初から正社員の身分が必要な絶対的な理由がないのであれば、派遣社員として経験を積むのも悪くないって、私は個人的には思うよ」
ハナコ 「やっぱり、結局は働く本人次第ってことですね!」
カオルコ先輩 「それと、もう1つ大事なことがあるんだけど、派遣社員が1か所で継続して働くことのできる期間は3年までって決められてるの」
ハナコ 「お互いに契約を続けていきたいっていう状況でも、ですか?」
カオルコ先輩 「そうなの。これはどちらかというと、派遣社員として働く労働者を守っていくための決まりなんだけど、3年働いてもらって、なおかつその人がその後も必要だっていうことは、つまり医療機関はその派遣社員を臨時の社員として以上に必要としてるってことだよね」
ハナコ 「そういうことになりますね」
カオルコ先輩 「そういうときには、“じゃあこの先は直接雇用してください”っていう具合に、人材派遣会社が医療機関に対して直接雇用を促すことになるの」
ハナコ 「契約社員と同じように、派遣社員から正社員への道もあるっていうことですね!」
カオルコ先輩 「本人が希望しなければそのタイミングで別の医療機関に移る決断をしてもいいと思うよ。3年続けてれば、今度は派遣社員じゃなくて正社員として転職活動をするにも、じゅうぶんな経験が得られるからね」
<派遣社員としての医療事務>
・労働契約は人材派遣会社と結び、派遣先の医療機関の指揮命令のもと勤務する
・勤務の条件等は人材派遣会社が医療機関に交渉してくれる
・同じ職場で勤務できるのは3年まで
医療事務の求人の探し方と就職・就活のコツ 雇用形態の違いまとめ
カオルコ先輩 「いろいろ詳しく見てきたけど、どうだったかな?」
ハナコ 「そうですねー、何となく“正社員がいい!”って流れがちなところはあるけど、自分が“仕事”ってものにどういうものを求めるかによって、働き方の最適な形は人それぞれなんだなーって」
カオルコ先輩 「そのとおり。前回、医療機関のタイプによって仕事の質が違うっていう話をしたけど、“どんな医療機関で”、“どんな風に(=どんな契約形態で)”仕事をしたいかっていうイメージがとても大事。ここがブレてしまうと、就職活動しながらいちいち迷っちゃうからね!」
ハナコ 「フルタイムで仕事を長く続けたいっていう希望も、“1か所で長く働く”希望なのか、“医療事務という仕事で長く働く”希望なのかによって、最適な形は違うかもしれないですね!」
カオルコ先輩 「ちなみにハナちゃんはあんまり深く考えずにこのクリニックに就職しちゃったみたいだけど、今日の話を聞いて気持ちが揺らいだりしないのかな?」
ハナコ 「私は何があっても無期限でカオルコ先輩の後輩でいるつもりです!(きっぱり)」
カオルコ先輩 「あ、そうなんだ・・・じゃあ、まあこれからもよろしくね・・・」
──就職活動をする上ではたくさんの求人を吟味しますから、それぞれの労働契約にどのような傾向的な差があるのか知っておくのはとても大切なこと。医療事務というお仕事をすることを通して、どのような自分を叶えたいかをよく考えておきましょう。
※ 本シリーズでは2018年4月現在における社会状況に合わせた一般的な内容を主に話題にしています。現実には、ここに記されている内容と異なる例外的なケースも存在しますので、予めご了承ください。
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