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日本のプロフェッショナル
前田 敏幸 前田 敏幸

ウィズアス行政書士法人 代表
ウィズアス社会保険労務士事務所 代表
ウィズアスホーム株式会社 代表取締役
行政書士・社会保険労務士・宅地建物取引士

前田 敏幸(まえだ としゆき)
1980年、東京都生まれ。青山学院大学法学部卒業。在学中に、宅地建物取引主任者、社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー2級、管理業務主任者、色彩検定などを取得。大学卒業後、建設会社などに勤務し、営業などを経験。2008年より、不動産会社に勤務し、賃貸事業の立ち上げに携わる。2009年に行政書士試験に挑戦し合格。2010年、独立開業を果たす。同年9月に社会保険労務士登録。2014年、ウィズアス行政書士法人を設立し、新宿支店開設。
事務所: 埼玉県川越市並木865-1・2階
Tel: 049-236-1885
URL: http://sougyou-with.com/ (ウィズアス行政書士法人)

http://sr-with.com/ (ウィズアス社会保険労務士事務所)

http://withushome.com/ (ウィズアスホーム株式会社)
▲「あまり勉強は好きじゃなかった」と語る前田氏が資格の取得を意識したのは、友人に誘われて挑戦した宅建主任者の試験で一発合格だったことから。
▲現在、ウィズアスは14名(社会保険労務士1名、社会保険労務士有資格者2名、行政書士4名、宅地建物取引主任者2名他)の陣容。
▲不動産業と行政書士のシナジー効果で新規ビジネスを展開したい思いで、2010年4月、前田氏は行政書士として前田法務事務所を開設。しかし、思うような成果にはつながらず、「行政書士・社労士の二枚看板」に切り替え、後に不動産会社も設立し、今日の姿に。
▲学生時代に多くの資格を取得していた前田氏は、資格は取れるなら学生のうちに、と主張。「すぐには使わないとしても、選択肢の一つとして持っておける。持っているに越したことはないですね」と語る。
行政書士、社会保険労務士、不動産業を一本のサービスラインに。全方位サービスで全国展開を目指します。

 行政書士法人、社会保険労務士事務所、不動産会社、そして経営支援コンサルティングのウィズアスグループ株式会社。そのすべてのトップである前田敏幸氏は、複数資格で八面六臂の活躍をするプロフェッショナルの1人。行政書士として独立して6年目の今年は、拠点展開に力を入れ、行政書士法人の全国展開を視野に入れる。ただ、決して開業当初から順風満帆でここまで来たわけではない。前田氏はどのような経緯で資格取得を目指し、どのようにして独立開業し、現在の姿になったのか。前田氏のプロセスを追いながら、複数資格のシナジー効果についてもご覧いただきたい。

リーマンショック後に独立開業

 資格の取得を目指す人の中には「その資格を取得して自らの人生に活かそう」という人と「資格を取ることに挑戦するのが楽しい」という人がいる。往々にして後者は、次から次へと複数資格を取得していく傾向にあるが、取得した資格で独立しようとか、士業をなりわいにしようとは考えていない場合が多い。
 しかしある時、取得した資格が自分の人生の選択肢として強い光を放ち始めるようになる。「その道に進んでみたい」という意思が強く増してきて、そこから独立開業へとつながっていったりもする。
 行政書士・社会保険労務士・宅地建物取引士の前田敏幸氏は、まさにそんな経緯のプロフェッショナルかもしれない。大学2年の時、友人に誘われて宅地建物取引主任者(現・宅地建物取引士。以下、宅建主任者)に合格してから資格の世界にスライドし、数々の冒険をしながら成長してきた。今回は資格をフックに、人生を転換する成長物語でもある。
 「将来の夢なんてなかった」。いきなりそう話し始めた前田氏は、幼い頃、両親が離婚し、自身ではどうすることもできない環境の変化を経験してきた。それが、幼少期から青年期にかけて、何となく暗い影を落としているように思える。住まいもそれまで住んでいた東京から、母方の祖母が住む埼玉県ふじみ野市に引っ越すことになり、以降は埼玉県で暮らすようになった。「小学校、中学校、高校と学校の成績も悪くて、小学校では夏休みの補習を受けていたし、高校の成績も学年で下から10番位でした。あまり勉強は好きじゃなかった。そもそも学校が好きじゃなかったんです」
 学校に馴染めない。楽しくない。もちろん勉強も好きじゃない。無邪気に笑ったり遊んだりの、子供らしい底抜けな明るさはそこにはない。
 高校の定期考査は40点以下が赤点だったが、成績は全科目平均20点。ところがその中で唯一、ほぼ100点の科目があった。英語である。中学校時代にたまたま英語で先生に褒められたのが嬉しくて、それから英語だけは好きでやるようになった。
 「大学受験は戦略的に、英語の配点が高いところを選ぼう」。前田氏は英語特化の攻略方法で、青山学院大学法学部に入学した。
 入学すると、入学式で仲良くなった友人と「Free行事同好会」という大学公認のイベントサークルを作って部長になった。授業よりもサークル活動が楽しく、遊びとアルバイトもあって、ほとんどの授業は欠席。結局、7年かけて大学を卒業することになる。
 大学2年の時には友人から、宅建主任者の試験を受けるから一緒に勉強しないかと誘われた。結果は、初挑戦の資格試験で一発合格。
 「普通は『法学部で勉強した下地があるので受験勉強は楽でした』といった合格コメントを言うんでしょうけど、私は大学のアカデミックな授業に、まったく興味が湧きませんでした。逆に、TACの講座で学んだ民法はとても面白かったんです。
 そこから興味が湧いて、管理業務主任者、ファイナンシャル・プランナー2級(AFP)、社会保険労務士(以下、社労士)…、民間資格では色彩検定2級、防火管理者と次々と取得していきました。合格はしませんでしたが、中小企業診断士と不動産鑑定士にも挑戦しました。
 国家資格系はすべてTACを利用しましたが、大学の授業と違って、TACの講座はとてもわかりやすく、良く理解できたんです」
 資格マニアのように次々と資格試験を受けていったのは、自分の将来像を描けない不安があったからかもしれない。大学の成績は悪く「やはり自分は組織に馴染めない人間なんだな」と思っていた。ストレートに卒業できなかったので一般的な就職というルートは無理だという諦観もあった。
 「やはり資格はできるだけ取っておいたほうがいいな」。この頃から前田氏は人生の方向性を模索し始め、漠然と「もしかしたら、資格はセーフティネットになるかもしれない」と思い始めていた。ただ、資格の何をどうしたらいいのか。社会人経験もないし、ましてや独立開業の仕方もわからない。身内や知り合いにも士業の人はいない。
 結局25歳で大学を卒業すると、内定をもらえた建設会社に入社。法人営業を担当したが、どうしても組織には馴染めない。前田氏は半年間でその会社を退職。その後1年間ニートとして過ごしている時、学生時代にアルバイトをしていた不動産会社から、家業を継ぐので手伝ってほしいと頼まれ、不動産業の手伝いをすることになった。家業を事業承継すると同時に、新しく賃貸事業の起業もするという。新しい事業の立ち上げを初めて目の当たりにし、「事業ってこうやって立ち上げるんだ」と目を光らせた。それからは「自分で何か事業を興したい。起業したい」という思いが頭から離れなくなった。
 そんな2008年、リーマンショックが起きた。不動産価格は一気に大暴落。勤めていた会社は、鳴かず飛ばずで給料さえまともにもらえない状況になった。仕事もなく暇になった前田氏は、「それならまた資格を取ろう」と1ヵ月間の学習期間で行政書士試験を受験。短期決戦はうまく成功し、一発合格を果たした。
 「会社設立時のテナントや不動産絡みの相続手続き、外国人の居住先…。当時社労士の資格は持っていましたが、それよりも行政書士のほうが不動産業にリンクする仕事があるなと考えていたんです。私が行政書士として独立すれば、勤めている不動産会社とうまく連携してやっていけるのではないかと思いました。収入もなくなってしまったので、何かで独立せざるを得なかったという事情もあります。正直言えば、積極的な独立開業ではなくて、消極的な独立開業でしたね」
 こうして2010年4月、前田氏は行政書士として前田法務事務所を開設。士業の第一歩を踏み出した。

初年度売上200万円

 不動産業と行政書士のシナジー効果で新規ビジネスを展開したい。前田氏は、志の高いスタートを切った。
 ただ、行政書士の実務経験はないし、貯金も登録料を支払うと手元には8万円しか残らなかった。そもそも行政書士として独立するのに、行政書士が何をするのかもわからない。前田氏は古本屋で『初めてでもわかる…』といったタイトルの書籍を購入。離婚、相続、許認可等々あるのを読んで、仕事のイメージをインプット。まずはプリンターとインクを購入し、自分でチラシを作成した。
 「有限会社を株式会社にしませんか?相続関係のご相談に乗ります。契約書を作ります。建設業の許認可をやります。不動産会社との対応もできます。入居者が滞納した家賃を請求します。飲み代のつけを請求します…」。チラシには、そんな言葉が踊る。それを配布したり、ポスティングしたりして、営業活動が始まった。

 開業したのはふじみ野市にある自宅だったので、京王線の千歳烏山、仙川周辺エリアの不動産業者を中心に地域の業者に挨拶回りしながら、チラシを配っていった。しかし、行政書士の仕事は1件も来ない。そこで今度は、開業したふじみ野地域を商店街も含めて飛び込みで営業して回り、直接名刺を配ったり、チラシを配布して歩いた。自宅で開業登録したので、近隣にチラシを配ると問い合わせに来る人もいて、自宅にいた祖母を困らせてしまった。それだけ頑張っても、1件、2件の問い合わせだけで、不動産会社絡みの案件は来なかった。
 そんな状況が続き、最初の半年間はとても食べていけるだけの仕事は取れなかった。当時の様子を前田氏は次のように振り返る。
 「数千円の相談料が少しずつ月何件か取れるようになってはきましたが、それでも想像以上に仕事が取れなかったので、今後どうするか、常に悩んでいましたね。自宅事務所でマンパワーは自分1人、広告費もあまりかけられない。これじゃあ1年やって売上になるかといったら、おそらくならいないだろう。この方法は間違っているんだと、考えを切り替えることにしたのです」
 前田氏は頭を切り替えて、第二のチャレンジをすることにした。それが「行政書士・社労士の二枚看板」だ。行政書士登録の4ヵ月後、2010年9月に社労士登録をしてスタートした。
 同じタイミングで、320万円の融資を地域の金融機関から取り付けた。その資金を元手に、自宅事務所から独立し、事務所を川越市に構え、ホームページを整備、SEO対策なども自分なりに工夫して、積極的に広告展開を図った。川越合同庁舎の入口にある大きな看板にも、100万円を投入して事務所の広告を出した。
 同時に、その費用で思い切って2人の採用を行うことにした。資格業の交流会にちょくちょく顔を出しては名刺交換し、そこで知り合った受験生を採用。あとは友人の紹介で2人目を採用した。初年度について、前田氏は次のように話している。
 「人を採用しても当初は仕事がないので日々近隣に挨拶回りに行ったり、営業ばかりしていました。4月に開業して初年度は売上200万円もなかった。それにプラス融資で入った320万円が初年度の運転資金ですね」
 初年度の売上から言って、2人を雇うのはかなり厳しい状況だ。それでも事務処理をしてくれる人がいれば、自分は営業に集中できる。2年目に入ると、単発の仕事が中心とはいえ、何とか月々を回せる程度に売上は増えていった。
 この2年目は事務所にとって節目となる年でもある。行政書士業務から社労士業務へ、少しずつ連携が取れるようになってきたのである。

 ある時は行政書士の許認可業務を受けた際に「社会保険の手続きも頼むよ」と頼まれ、またある時は会社設立の際に「就業規則も作って欲しい」と頼まれた。行政書士と社労士がリンクする領域ができて、複数資格のシナジーが生まれつつあった。
 ただ、前田氏が社労士の資格を取ったのは学生時代。受験勉強で学んだはずの手続きなどは何も覚えていない。それなのに社労士の手続き業務は扱う書類が非常に多い上、毎年改正があるので、覚えきれないほどのボリュームだ。前田氏は行政書士としてスタートした当時に立ち返り、一つひとつの社労士業務を調べ、実践を通じて実務を覚えていった。

全方位サービスのウィズアス設立

 開業した時、勤務していた不動産会社と連携を図り、事務所探しや起業支援をして、会社設立、許認可、社会保険業務と、行政書士から社労士ビジネスにつなげていきたいと考えていた。しかし正直なところ、その不動産会社からこうした新規ビジネスが入ってくることはあまりなかった。
 「それなら自社で不動産業をやろう」。2012年11月、知り合いの司法書士と共同出資で不動産会社を設立。起業支援から入り、具体的な場所の提供や内装業者紹介と、サービスラインを広げ、行政書士から社労士、宅建主任者と士業としての領域が格段に広がっていった。事務所や店舗の紹介、内装リフォームまでも手掛けることで、起業から会社の成長までをトータルサポートする組織の土台ができ上がった。埼玉中心だった依頼が、東京・神奈川・千葉へと広がっていき、ここから展開する事業がハイペースで進んでいくことになる。
 同じく2014年2月には、2つの個人事務所を吸収する形で行政書士事務所を法人化。ウィズアス行政書士法人を設立し、新宿に支店を出して新たな展開も始めた。2015年初めには、税理士法人とタッグを組み、共同で外国人支援の合同会社ビザーズを設立する。外国人のビザ申請専門の行政書士を集めた新たな事業ブランド「Visa's」を展開し、外国人ビザの申請はもちろん、不動産購入や起業支援、融資案件の相談に乗り、ウィズアスグループとしてバックアップすることになった。
 現在ウィズアスグループのワンストップサービスは、士業向け、個人向けといったコアなニーズにも対応できる体制が整っている。士業に関しては、介護系の許認可、風俗営業系の許認可において、特に不動産物件に対する基準がかなり厳しくなっていて、なかなか物件が見つからないことが課題だ。その課題にもピンポイントで応えられるという。
 「私たちは自社物件を探す際に、そうしたニーズに応えられる物件も一緒に探しておきます。介護や風俗専門の業者の方とも連携がとれているので、あまり表に出ない物件も押さえられる。そうした物件まで抱えているので、他の行政書士に頼んだけど物件が見つからない、どこを探していいのかわからないといった時も、ウィズアスならご紹介できる。これは当社の強みですね」
 厳しかった開業当初を乗り切るための思い切った転換。そこからビジネスの点と点はつながり、士業同士のつながりができて、サービスは縦横に面となって広がりを見せ始めた。

行政書士、社労士、不動産業務の3本柱

 行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、そしてウィズアスグループ・ウィズアスホーム株式会社の代表取締役。前田氏の守備範囲は広い。その業務範囲となると、相続手続き、遺言書の作成、法人・組合設立、営業許認可、離婚・慰謝料請求、債券請求、外国人の入管手続きといった行政書士業務はもちろん、人事労務、社会保険などの社労士業務、起業・経営に関する幅広いサービスと、数えきれない。それを一本のサービスラインに集約すること。これが目下の目指すところだ。その結果、行政書士として受けた依頼が、人事労務といった労働問題に飛んで、社労士実務に発展するケースも増えてきた。
 ここでウィズアスの「強み」について触れておきたい。まず、ウィズアスの特徴は「全方位サービス」である。建設業許認可や入管業務等の特化型でブランディングする行政書士事務所が多い中、ウィズアスは「何でもできます」というスタンスを貫いている。例えば、行政書士なら許認可から法人設立、補助金サポート、融資申請サポート、相続、離婚、外国人ビザ申請と、それぞれ専門の担当者を置いているのが特徴だ。

 社労士業務ではコンサルティングから入るケースが多い。前田氏が行政書士として民事に携わってきた経験から、他の社労士より民事に強みを発揮できるからだ。例えば、「残業代を請求された時どうしたらいいか」、「請求された時のサポートで、どのような方法があるのか」。その辺りのコンサルティングから入り、顧問につなげていくのを強みとしている。コンサルティングから入って、就業規則作成、助成金申請、給与計算等通常の手続き関係、そして顧問まで。社労士業務においても、まんべんなく全方位サービスを展開していく。
 「行政書士としてやっていきたいのは、やはり起業支援の部分。ワンストップでの起業支援を自社サービスとして伸ばしていきたいです。物件から入って内装リフォーム、設立許認可、融資、その後の人事・保険手続き関係、社労士顧問と、それも一元的にサポートしていくことを目指しています」
 「行政書士と社労士と不動産業務が3本柱」というウィズアスの業務は、比率でいえば社労士4、行政書士3.5、残りが不動産と、割合的には社労士が多い。「行政書士法人を全面に出しながら社労士が後ろからついてくるイメージ。会社が大きくなって就業規則を見直したり助成金が必要になってくると、バックヤードががっちり押さえる。不動産業もそこにつながっていく」という。
 事務所の大転換でもそうだったが、前田氏はあらゆる課題に対してスキームで解決していくコンサルティングが得意だ。企業とスキームを組み、相続手続きを一元的に処理、あるいは受けるといった総括的案件は、ビザ申請専門の「Visa's」からも入ってくる。全方位だからこそのスキーム作り。ワンストップサービスだからこその業務領域のシナジー効果。そこが前田氏の最大の強みと言っていい。今後も全方位サービスを展開し、何かには特化しない。「だからこそいろいろなスキーム作りにお誘いいただくケースが多い」と、前田氏は分析する。
 また、行政書士として離婚や相続に携わっていくと、不動産売却につながっていくこともある。つまり誰よりも先に、市場に出る前に売り側に入り、売却に関われる位置に立てるということ。これが他の不動産会社との差別化になっている。
 時には異業種と組んで離婚手続き等の案件を受け、離婚後のアフターフォローでもスキーム作りをする。「一緒にやりましょう」と提案し、離婚関連のサービスをさらに厚くしていくといった取り組みもしている。

 時に語気を強め、熱く語る前田氏。その姿には、青年期までのトーンの低さは微塵もない。自分の進むべき道が見つかり、それまでかかっていた雲が晴れたかのように、自信たっぷり、はっきりと目標を見据えている。

関東、九州、そして全国展開へ

 現在、ウィズアスは14名(社労士1名、社労士有資格者2名、行政書士4名、宅建主任者2名他)の陣容だ。新宿への拠点展開も果たし、今後は相続などを関東全域で受けられるスキーム作りを進めている。
 「今は新宿にだけ支店がありますが、そこに大きなフロアを設けるのではなくて、支店をどんどん展開していきたい。それも、少し離れた近隣に戦略的に作っていこうと考えています。ちょうど商圏が重ならない範囲で置いていきたい。その時には、今はまだ法人化していない社労士事務所も法人化して、行政書士法人と一緒に展開していく。そんな動きをしていこうと考えています」
 具体的には新宿よりもう少し川越寄り。そこには特定の業務で商圏があるので、その商圏に合わせて支店展開していこうという戦略だ。
 「そしてもう一つ、予定では来年、九州のような遠方に支店を出すつもりです。相続関係をやっていくには、地域性もありますし、川越にいて遠方の相続を集中的に受けるのは難しい。やはり地元地域に支店を設けて、九州の商圏を取っていきたい。関東の仕組み作りが年内で落ち着いたら、行政書士法人の支店を九州に出して、関東のスキームを九州で活かすつもりです」
 将来は大きな行政書士法人グループによる全国展開を目指す。
 「支店展開については、1ヵ所目がうまく機能するようになれば、2ヵ所目、3ヵ所目は難しくはないと思っています。ただし落下傘的にポンと出すのではなく、ある程度その地域性をマーケティングリサーチして、商圏を特定してから。そしてダメなら、すぐ撤退する柔軟さも必要です」
 試行錯誤はない。「まず、動いてみる」。「あまり考えないでやってしまうタイプなんで」と、前田氏は笑顔を見せた。

資格は学生時代にできるだけ取ろう

 宅建主任者を取得してから広がった資格の世界。前田氏にとって資格とはどのような存在なのだろう。
 「なければどうなっていたかわからない。大学に7年間もいたので、取得していて本当に良かったと心から思います。宅建主任者試験を受けようと誘ってくれた友人は一生の恩人ですね(笑)。
 資格は、使わなければ無駄になってしまいますが、使おうと思えば無限に使えるものです。資格で食べていけるのかという話は尽きないと思いますが、やっていくとなればその資格の範囲に限定しないで、そこから派生した仕事まで考えれば無限にできることはあると思います。

 飛び込んだら見えてくる世界があります。でも、飛び込んでみなければ分からない。私もわからなかったんですが、今は思っていた以上に、そしてもっともっと広がりのある世界だなと実感しています」
 確かに、学生時代の前田氏に、九州でのスキーム作りへの挑戦は、とても想像できなかっただろう。それ以前に、行政書士として独立開業することすら、考えもしなかったはずだ。それが、今や行政書士法人のトップとして全国展開をも目指している。それこそ、「ある資格が自分の人生の選択肢として強い光を放ち始めるようになった瞬間」だ。
 行政書士という仕事のやりがいについて、「きちんと仕事をして、ひとつの結果を出せば、お客様は喜んでくださる。行政書士は自ら率先して切り開くことで、さまざまな業務を開拓できるというとても大きな魅力がある。アイディア次第でどんどん業務を広げられるのでやりがいは大きい」と感じている。一つひとつをきちんと真面目にやってきたからこそ、現在の自分がある。ただ、普段はあまり資格を意識していない。

 「バッジはつけていますが、資格はあまり意識していません。常に『何でもやっています』というスタンスで相談を受けます。行政書士だけで仕事を受けても社労士の案件も入ってくるし、司法書士の先生と一緒に会社設立もするので、意識していないですね。
 これからはおそらく資格の枠を超えた仕事もしていくことになるでしょう。ただし資格のアンテナでそうした仕事が入ってくるので、資格があってこそのものではあるんです」
 相変わらず「資格マニア」の一面もあるようで、日本地ビール協会認定の「ビアテイスター」も取得し、クラフトビール部という交流会を主催している。「交流会に友人やお客様を招いて、ベルギービールやイギリスビールを飲もうと企画したり。楽しいですよ」と嬉しそうだ。
 趣味的なものから仕事に活かせるものまで、民間資格も10を超えた。
 「もう何を持っているのか忘れちゃってます(笑)」
 開業当初は「想像の6倍以上苦労した」という前田氏。それでも6年目の今、振り返って一般事業会社を起業するより行政書士で独立するほうが遥かにメリットがあると感じている。
 「まず限られたマーケットで、それほど競合がいない。私もそうでしたが、資格を取る方は未経験であったり、職人気質で営業が得意ではなかったりするので、少しがんばればチャンスはものすごくあると思います。確かに有資格者の数的には増えてきていますが、それでも国家資格の後ろ盾があっての起業なので、他の事業で起業するよりも遥かにチャンスはあると思います」
 宅建主任者から始まり、学生時代に多くの資格を取得した前田氏は、資格は取れるなら学生のうちに取ったほうがいいと主張する。
 「早ければ早いほどいいと思いますね。すぐには使わなくても、選択肢の一つとして持っておける。例えば一般企業に就職をして、その会社を辞める時、単に同業種や異業種への転職だけでなく、資格を活かして独立、あるいは転職という選択肢も広がります。ですから独立しないとしても、持っているに越したことはないですね。
 行政書士には自主性のある方が向いています。私たちの仕事にはマニュアルというものがありません。イレギュラーなことが日々発生するので、自分で調べたりして対応できる方がいいですね。
 行政書士を目指す方は、受験すること自体が目的にならないようしてほしい。明確なビジョンを持って取り組めば、確実に未来につながります。資格取得が年々難しくなっていると聞きますが、努力は必ず報われるものです。諦めずにがんばってください」
 「為せば成る 為さねば成らぬ 何事も 成らぬは人の為さぬなりけり」。何事もぶつかってみて、できるのかできないのかは、そこから考えてみよう。前田氏の教えてくれた人生哲学である。