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日本のプロフェッショナル
瀬谷 幸太郎 瀬谷 幸太郎

株式会社会計事務所リライト 代表取締役
税理士法人リライト 代表社員税理士

瀬谷 幸太郎(せや こうたろう)
1978年生まれ、福島県出身。2002年、立教大学経済学部経営学科卒業。2004年、税理士試験合格。2007年、税理士登録。会計事務所勤務を経て、2011年4月に独立開業。2012年1月、税理士・宮田祐輔氏とともに税理士法人リライト設立。
事務所: 東京都千代田区三崎町3-2-8 グランバレー三崎町4F
Tel: 03-6380-9280
URL: http://www.relight-kaikei.com
▲総勢21名、正社員16名のうち5名が税理士。税理士試験3~4科目合格者も4~5名いる。
▲事務所はJR水道橋駅徒歩4分、地下鉄神保町駅・九段下駅徒歩7分のグランバレー三崎町4F
▲開業からの4年間、リライトの正社員退職者はゼロ。創業時から内部的に掲げているコンセプトは『人が辞めない事務所』。最初から人が辞めない組織を狙ってスキームを作っているから辞める人がいない、と瀬谷氏は話す。
顧客満足度と従業員満足度を両輪に。
社員全員で、クライアントが最も信頼できる経営のパートナーを目指す。

 税理士法人や会計事務所が新規顧客を獲得する方法には、地道な営業活動と既存のクライアントや提携先の金融機関、士業等からの紹介、さらにはホームページの活用などがある。最近目立つのは何と言ってもインターネットによる営業で、SEO対策は当たり前でリスティング広告(検索連動型広告)などを抜かりなく行い集客率を上げている事務所も少なくない。
 そんな中、ほぼ100%クライアントからの口コミによる紹介によって新規を獲得してきたのが税理士法人リライトだ。開業から3年間で200件以上という驚きの新規顧問契約を実現している背景には、独創的な経営方針と人材感がある。代表社員税理士の瀬谷幸太郎氏に、税理士になった経緯からリライトの経営理念やビジョンについて伺った。

経営サポートを目指し33歳で独立開業
 「雇用の流動性が高い」。税理士業界は、そう表現されることが多い。言い換えれば「離職率が高い業界」。理由は、税理士という資格の建て付けが、本来は独立開業にあるからだ。資格取得を目的に実務経験を積む、幅広い専門分野を経験することの最終目的が独立開業にあるならば、辞めてしまうことが前提になっているとも言える。最近では税理士法人の勤務税理士や一般企業勤務も選択肢として広がってきたが、その場合さえ勤務した事務所や企業がたった1ヵ所、一生同じ組織というのはまだ少数派だ。言い換えれば、人が辞めない事務所はほぼゼロに等しいということになる。
 会計事務所側にしてみれば、育ててきた社員が辞めてしまうダメージは企業と同じ。戦力として期待して育てた人材だけに、辞められるのはとても大きな痛手だ。
 「それなら人が辞めない組織を作ろう」と、ユニークな仕組み作りを考えたのが税理士法人リライトの代表社員税理士・瀬谷幸太郎氏だ。実際、開業からの4年間、リライトの正社員退職者はゼロ。税理士業界広しと言えど、こんな事務所は類を見ない。どうすれば税理士法人や会計事務所で「人が辞めない組織」を作れるのか。そこを探るべく、まずは瀬谷氏の生い立ちから追ってみたい。
 福島県いわき市にある瀬谷氏の実家は、祖父の代から続く中堅土木建築会社である。父は2代目。長男として生まれた瀬谷氏は、幼い頃に「3代目」と周囲から囃し立てられた記憶がある。経営者の家に生まれ、ずっと経営の近くで育ってきた。この環境が、自然と経営に興味を持つ土壌を育んできた。
 加えて、人に教えるのが得意で「経営を教える先生になりたい」という漠然とした夢を持つようになる。それが「将来、経営コンサルタントになりたい」に変わり、建築会社を継ぐより「自分の力で生きていきたい」と、いつしか自分なりの目標になった。
 立教大学経営学部に進学するために東京に出て来ると、「経営コンサルタント」という資格はないこともわかってきた。「それなら経営に一番近い資格を取ろう」。その時、頭に浮かんだのが税理士と中小企業診断士。「より経営に近くて、将来的に独立して商売ができる税理士を目指そう」。税理士への道を考えたのはこの時だ。
 「税務・会計が好きというより、経営に携わりたいから税理士というアプローチ」と話す瀬谷氏は、充実した学生生活の中で重い腰がなかなか上がらず、受験勉強を始めたのは大学4年になってからだった。最初に受験したのは卒業1年目。もちろん同期の友人は就職して社会人になっている。そんな中で「2年間だけやらせてほしい」と親を説得して受験に専念。
 「とにかく専念して勉強していたので、親に悪くて必死でやりました。結果は、1回目の試験で簿記論と財務諸表論に合格しましたが、翌年は税法3科目を受けて全滅。一瞬、もう止めようかと思いましたが、ここまでやったのだからと何とか食らいつく気持ちで3回目にこぎ着けました。この3回目の本試験後に就職し、結果は税法2科目に合格。働きながら残り1科目を目指し、最後は法人税法で5科目合格しました。合計4回の受験です」
 こうして26歳で合格し「税理士」への扉を開けたのである。就職する際は、独立に備えて何でも経験できる事務所に行こうと、都内にある100名規模の大型事務所に入った。その大規模な組織の中で、新規顧客開拓や売上目標で常に表彰される成績優秀者になり、どんどんキャリアップ。3年目には社内最速の28歳で課長になった。支店が8店あるこの事務所なら、自分も支店を任されれば一国一城の主になれる。「このままここに残ってキャリアアップしていくのも良い人生かなあ」と思ったりもした。所長にも可愛がられ、事務所に愛着を持つようにもなって、気がつくと7年が経っていた。
 一方で「独立は30歳」と決めていたのに、気づけば33歳。人生が決まりつつあることも感じていた。現状の満足か、自分の夢か。「やはり自分の夢を叶えたい」。瀬谷氏は、夢だった「経営コンサルティングをする」ために、勤めていた事務所を後に、33歳で独立へと踏み出した。
3年で新規契約200件

 テレビや映画の中でしか起こらなかった世界。それが現実のものとなった2011年3月。東日本大震災が起こった。日本は凍りついたように時が止まり、復興はほど遠かった。
 奇しくも同じ2011年3月、会計事務所リライトは産声を上げた。暗澹たる日本を再び元気に明るくしたい。そんな思いから社名は「リライト」(再び明るくする)にした。
 開業すると、「ぜひ瀬谷さんに見てもらいたい」と以前のお客様が10件もついてきてくれた。
 10件のクライアントは「良い会計事務所があるよ」と、口コミで知り合いを紹介し、熱心に応援してくれた。この口コミから広がった紹介は、3年間で新規顧問契約200件以上に上った。「開業当初ついてきてくださったお客様には感謝してもしきれません」。開業4年で、クライアント数は法人約270件、個人の申告ベースで240件、合計約510件になっている。
 震災後の景気の落ち込みで、新規開拓が難しいと言われていた時期に、これだけの速度で新規開拓できたのは注目に値する。しかも事務所のホームページはあるものの、ネット上での集客の仕掛けも、SEO対策も一切していない。「新規は99%お客様からの紹介、あるいは提携している若手士業からの紹介」による顧客拡大だ。「敢えて言えば、紹介型事務所として特化している」点が、リライトの最大の特徴だ。
 業務内容で言えば、リライトの第一の特徴は業務として特化している分野が特にない点になる。オールラウンドにクライアントニーズに対応する。「厳しい時代でも、うまく顧客のニーズにマッチすれば充分拡大できる。そこが当社の一番の売り」と瀬谷氏は話す。
 「税理士という職種の業務範囲がカバーする領域はかなり広い。法人から始まり、個人もあり、相続あり、上場企業税務や国際税務もあるという中で、うちは国際税務と上場企業税務以外のほぼすべての領域をカバーしようというコンセプトです。どこか一つに特化しようとは考えていません」
 幅広い業務範囲。ただし、その先に共通するのは、こだわり続けてきた「経営コンサルタント」としての業務である。
 「税務・会計はもちろん、重視するのは経営に関する部分。そこで何か悩みがあったり、判断しなければならないことがあった時に、一番に相談する。そのポジションに、私たちがいるということなんです。従来の会計事務所との違いがあるとすれば、このクライアントにとっての税理士というポジションが違うのではないでしょうか」
 記帳代行・月次決算から始まり、税理士の業務領域内であれば受ける。見た目は他の事務所と何ら変わりない。では紹介だけで新規が4年目で約500件という圧倒的数字はどこから生まれるのか。
 「会計事務所の多くは税務・会計中心、あるいはそこにウェイトを置いています。一方世の中の経営者が税理士に何を求めているかというと、過去の数字を分析する税務・会計より、将来の経営について相談できることを圧倒的に求めています。リライトは税務・会計50%、経営相談50%。単に税金計算をするだけではなく、経営者が信頼できる参謀、相談役として税理士の機能を発揮する。そこが大きな差だと思っています」
 顧客満足度を上げる。それには地道に信頼を積み重ねるしかない。さらに持ち込まれたどんな相談も断らないことも重要だ。リライトは「うちは税理士なので分野が違います」とは決して言わない。すべて一旦受け止め、リライトを通して解決する。このワンストップサービスも、リライトの大きな特徴だ。
 相続税申告や法人・個人のファイナンシャルプランニングと、法人税等のタックスプランニング。そして経営相談からあらゆる課題解決へ。川上から川下まで、相談された案件はすべて解決できる体制を構築するために、自らがハブとなって、人事労務、許認可、法務、不動産、生保・損保、証券、M&Aと幅広いサービスをカバーするための専門家ネットワークを作り上げているのである。瀬谷氏は提携先の士業も優秀なプロフェッショナルを厳選し、一度依頼があった先からは、必ずリピートが来る関係を築いている。
 すべて解決できる盤石の体制により、リライトのサービスに感動したクライアントは「リライトのファン」になる。好きなミュージシャンを友人に知ってもらいたいと思うように、「リライトって、すごく良いよ」と、新規を紹介してくれる好循環。それがリライトの成長の極意と言っていい。
 2つ目の特徴は、税理士としての基本的税務業務での品質の高さが挙げられる。リライトは、税理士1万名超が会員となっているTKC全国会のメンバーであり、そしてニューメンバー部門で2年連続、6部門中5部門で全国ランキング1位を獲得している。言い換えれば、TKC会員会計事務所の中でもトップレベルの品質の高さを担保されていることになる。
 最近では月次巡回監査に対して否定的な事務所も多いが、リライトは必ず毎月一度、クライアントを訪問し、現物を確認する。それは正確な会計帳簿に基づく「経営判断」、「対税務署への証拠能力」という企業にとって大きなメリットのある素材だと瀬谷氏は考える。加えて、こうして作成した正確な会計帳簿に書面添付をセットして申告した法人税の税務申告は、開業以来申告是認率は、ほぼ100%。税務調査に関してもリライトの申告したもので調査による修正はほとんど出てこない。
 3つ目の特徴として、リライトは経営革新等支援機関として国の認定を受け、金融機関が行う個別相談会のアドバイザーとして活動を行っている。認定を受けた機関のみが扱える各種創業補助金や創業融資制度を活用することができるのは、クライアントにとって大きなメリットとなる。認定を受けたことで金融機関との関係も密接になり、通常の融資相談や事業計画策定、事業再生のための資金繰り指導でも強みを発揮できる。
 開業した時、瀬谷氏には既に組織のコンセプトとビジョンが明確にあったという。5ヵ年の中期経営計画を策定し、集客目標、社員数という数値目標と理念をしっかり立てていた。
 「理念だけはぶれないように、最初から作りました。それは私たちがお客様に指導する時と同じです。中期経営計画を立てて5年後にどうなりたいか、プラス理念的な柱と企業コンセプト、そして事業領域。そうしたことを事業を始める前にしっかりと作っておかないと、始めてから問題が生じます。経営理念と経営計画は設立当初からの必須事項として、自社内でしっかりと作っていました」

 中期経営計画の4年目には、既に最終の5年目の計画に突入し、現実は計画より1年近く早いペースで達成できている。幼い頃から育まれてきた「経営の目」は確実に活かされている。

優秀な人材による専門家集団
 独立したての若手税理士がインターネットで集客し、記帳代行をいかに安く効率的にこなすか、量の勝負に出ようとする。あるいは記帳代行を海外へ安価にアウトソーシングして、どんどん値下げ勝負をかけてくる事務所もある。
 そんな業界の流れの真逆にいるのがリライトだと言っていい。毎月一度時間と手間をかけ月次巡回をきっちりとこなし、経営者に一番近いポジションでサービスを提供する。そこで信頼を得た結果として、ほぼ100%口コミでの紹介による新規拡大を追求する。いたずらに売上だけを求めているわけではない。働く社員にとって働きやすい環境を整えるためにも、この方法が前提になる。
 「せっかく税理士資格を取ったのなら、ずっと帳簿付けや作業の一環でその資格を使うより、経営まで入り込み、税理士としての資格を100%活かせるポジションになって、お客様との信頼関係を結べたほうが遙かに士業としてのやりがいを感じられるはずです」
 ずっとやりたかった「経営コンサルタント」。瀬谷氏はそれを組織という形で実現しようとする。だからこそ経営まで関わっていける「優秀な人を集める」のは、リライトの重要なコンセプト。目指しているのは、多くの優秀な税理士有資格者が集まった専門家集団だ。「現在、社内には16名の正社員がいますが、そのうち税理士は既に5名。その他、現在大学院に通っている、あるいは税理士試験3~4科目合格者が4~5名いるので、2年後には税理士9名体制を想定しています。もっと税理士有資格者を集めたいし、社内でもどんどん税理士資格を取っていって欲しいですね」
 優秀な専門家が協力し合う組織体。ただ、優秀な税理士は流動的で同じ事務所にずっと勤務することは少ない。
 「そこを共通のブランド、旗印の元、協力し合って、どんどん会社を大きくしていく。そんな同じ価値観で仕事をしてもらうのです。独立して仕事の規模が小さくなってしまうより、優秀な人たちがタッグを組み、ひとつのブランドの元で組織力を活かした幅広いサービスを提供したほうが、お客様も安心すると思いませんか」
 リライトの社員スタッフは平均年齢30代前半。みんなフットワークが軽く、明るく、若い。自由な組織風土で、やりがいを持って勢い良く活躍する。しかも税理士有資格者が多いので、組織としてのクオリティの高さも担保されている。独立開業だけでなく、そんな理想的な環境で資格を活かすのも選択肢の一つだと瀬谷氏は考えている。
 さて、2011年3月にスタートしたリライトに、その年の12月、勤務時代の同期だった宮田裕輔氏が共同代表として加入した。
 「宮田はお客様に対してとても丁寧に柔らかく接していくタイプ。一方私は『こうした方が良いですよ。ああした方がいいですよ』と強く促して勧めるタイプです。両極のアプローチですが、最終的なゴール地点の『お客様の満足度が高い税理士像』を目指しているという点では一致しています」
 宮田氏の参加と同時に法人化を果たしたリライトは、開業から4年でアルバイトを含め総勢21名の陣容となった。新たに入社してきた社員は、瀬谷氏と宮田氏が新規顧客を紹介してもらえるスタイルを見て、仕事の仕方を覚える。1年、2年と仕事を共にする中でそのコツを覚え、自分たちのものにしていく。前職で新規の紹介がない、営業も経験したことがないという社員は多い。あるいは、税理士資格は持っていても、所長の指示の下でしか仕事をしたことがないという社員もいる。彼らは、リライトに入って1年もすると、年間3~4件の新規顧客を当たり前のように紹介されるようになる。
 「紹介が1件もない担当者と紹介が多い担当者の差は何か。やはり顧客満足の視点で提供しているサービスかどうかの差です。顧客満足度が高ければ、必ず紹介は受けられます。ですから、成果や業績に対する当社の判定基準は紹介があるかないか。価値基準ははっきりしています。
 お客様のハートを掴む、経営者の信頼を得るというのは、心からお客様のことを真剣に思っている人でなければできません。そこは人間力にかかってきます。本当にお客様のために頑張れる心があるかないか。それさえあれば、不器用な人でもお客様には好かれるものなんです」
人が辞めない会計事務所

 担当者に成果や業績として紹介の対価を与えることで、やりがいを感じてもらいたい。

 「社員には、価値を感じられる仕事をしなさいということを徹底しています。お客様は、担当者が好きだから知り合いを紹介してくださる。担当者が好きだから付き合ってくださるのです。それは担当者にとって、たいへんなやりがいになるはずです。会社に強制的にやれと言われてやりたくないことをやらされるのとは大違いです」
 税理士として「価値を感じられる仕事」をすることでやりがいが感じられる。しかもやったことに対する対価はきちんと返ってくる。そんな理想的な職場環境なら、辞めたいと考える社員はいないかもしれない。事実、リライトには辞めたいと言う社員がいないという。独立から今まで、正社員の退職者はゼロなのである。
 人の入れ替わりの激しい税理士業界にあって、これは驚異的なことと言える。特に開業当初は人と仕事量のバランスがうまくいかずに退職者が多くなる傾向が強い。その時期を退職者ゼロで過ごしてきたというのは、特筆すべきことだ。

 「リライトが創業時から内部的に掲げているコンセプトは『人が辞めない事務所』。最初から人が辞めない組織を狙ってスキームを作っているから辞める人がいないんです」と、瀬谷氏は話す。

 「給与水準の問題、労働時間と労働環境の問題、資格の取得の問題、仕事仲間等の人間関係に関する社内環境の問題。大体この4つが要因となって人は辞めていきます。これをベースに、会社の仕組みを作りました。
 まず、給与は他の事務所に比べてちょっとだけ高いと思います。労働時間・労働環境に関しては、一部の猛烈に働かせる事務所に比べたら、当社の生産性は少し落ちるかもしれません。でも社員が辞めないで継続して一緒に仕事をしてくれたほうが、長い目で見たときに、結果としてより生産性も高いしメリットが大きいと考えています」
 繁忙期に当たる確定申告時期はどうしても帰りが遅くなるので、逆に閑散期は休みを多く取るように推奨するのも一つの仕組みだ。

 「なるべく残業をしなくていい仕組みと有給を消化できる仕組み。これによって繁忙期に頑張った分は仕事がない時期にしっかりと休んでもらう。そんな制度を作って、労働時間をコントロールしています。
 よく開業から3~5年は休みなしという事務所があると聞きますが、うちは有給を半年間で10日間、1年間で20日間程度を付与して、自由に使ってもらっています。みんなが取りやすいように、まず私が率先して年に1回は海外旅行に行くようにしていますね。有給は、社員に何日までに休暇の申請書を出しなさいと、半ば強制して取らせる。そんな特殊なマネジメントまでしています(笑)」
 受験生は試験直前期にまとめて有給を取って長い試験休暇として活用。5科目合格を目指して受験指導校に通うのも、3科目合格で大学院に通うのもまったく問題ない。「すべて本人の希望に任せている」そうだ。
 給与に関しては、インセンティブを導入し、本人が頑張って新規顧客を紹介してもらったらその分を、それ以外でも収益を上げた分だけ、目に見える形でリターンする。未経験者も、最低給与は世間一般より少し高めの設定だ。

 「みんな本当に一生懸命働いてくれますよ。だから業務効率がすごくいいんです」と、瀬谷氏は強調する。
 採用についてはどのような方法で進めるのか。リライトの採用方法について伺った。

 「1つ目は知識や科目数というベースの部分。2つ目は、話す雰囲気ですね。話し方がはっきりしていて、明るさが感じられるか。この2点は必須です。当社の面接はユーモアたっぷりです。わざとかっちりした面接はしません。就職希望者の方が本音の部分で何を考えているのか、何を求めているのかを引き出して面接をします。
 そして3つ目、最も大事なのはここで、うちの事務所で税理士になり、将来をどう考えているのか。とにかく税理士になってビッグになりたい、お金を稼ぎたい、お客様の役に立ちたい、有名になりたいなど、税理士を目指すきっかけとなった、本当の、本音の動機が一番大事です。資格を取るにあたっての動機をそのまま大きく語れる人がいい。うちはそういうビッグマウス型が好きですね」
 顧客満足と従業員満足。似て非なるもののようだが、リライトではこれが同時に叶えられている。だからこそ、この2つは非常に重要なキーワードになっている。「顧客満足度と従業員満足度。この2つが非常に高いからうまくいく。人が辞めないって、意外と良いキーワードなんですよ」と、瀬谷氏は満面の笑みを見せた。

経営に一番近い税理士
 創業5年目に入る2015年は、最初の5ヵ年計画が終わり、次の5ヵ年計画を決める時期に当たる。瀬谷氏は次の5年で社員数50名を目指し、支店展開にも力を入れるという。
 「社員数50人と支店展開。支店は今年あるいは来年に横浜に出す予定です。そして50人規模になっても紹介でやっていくのがベース。紹介は人と人とのつながりなので様々な垣根を飛び越えるんですね。すごく強い。口コミによる紹介は古いと言われますが、絶対的な王道です。ネットでの広告費にお金をかけるぐらいなら、お客様に満足してもらって宣伝してもらったほうが効果的だし、お金もかかりません。『ありがとうございます』と感謝されて、お客様を紹介していただける最高のパターンです」
 そこから価値観をずらさない。提携士業も同じ価値観で動いてくれる人を探していった結果、若手士業が多くなった。
 「みな優秀な方です。お客様に紹介すると『良い先生を紹介してくれてありがとう』と感謝されます。逆に私たちを紹介してくれた提携士業の先生が『良い税理士を紹介してくれてありがとうございます』と言われた場合は、その先生の満足度が上がって、またリライトを紹介しようとどんどん広がっていくんですね。当社が提携したい他士業の先生は『良いサービスをしてお客様に満足してもらえるか』に第一義を置いている人ということです」
 受験時代を振り返ると、やはり辛い思いが蘇ってくる。だからこそ受験生には何とか厳しい受験時代を乗り越えてほしいと、瀬谷氏は願っている。
 「受験時代は今思い出しても本当に大変だったなと思います。受験専念の方は期間が限られていますから、後悔がないように必死になって勉強してほしい。私の経験則から一つアドバイスすると、私は受験専念期間が2年半あったのですが、最初の1年半は友だちを作りませんでした。結果、やってみたら非常に苦しかった。そこで残り1年は友人を何人か作って勉強しました。両方経験してみて、やはり何人か受験仲間を作ったほうが支えができて、受験生活は乗り越えやすいと思いました。仲間は大切ですね。
 税理士は経営に一番近い資格。困った時に経営者を助けられる税理士の仕事は、本当にやりがいのある仕事です。その特性を活かしていけば、どの士業よりもやりがいが感じられるはずです。税理士を目指している方は、そのことを胸にぜひ夢を実現してほしいですね」
 実家は弟が後を継ぐことになり、今修業中だという。弟が3代目、瀬谷氏が顧問税理士になったので、両親には本当に良い恩返しができたと嬉しそうに話す瀬谷氏。夢を実現することで、親孝行も果たすことができた。
 幼い頃からずっと見てきた経営への思い。今税理士になって、その思いはさらに強くなったという。中小企業の経営者を助けたい。その思いなら誰にも負けない自信がある。それは福島にいる両親を助けたいという思いにもつながっている。