「デザイン経営パートナー認定講座」内に対話力向上講習を導入

~「対話と傾聴」を通して、中小企業を支える伴走支援者育成を目指す~


対話力向上講習/大阪デザインセンター

一般財団法人 大阪デザインセンター(ODC)は、1960年の設立以来、長年にわたり関西圏の中小企業を中心に、企業とデザイナーの橋渡し役として地域産業の活性化を支えてきた。

近年では「デザイン経営」を取り入れた中小企業支援メソッドを学ぶ「デザイン経営パートナー認定講座」を開設したことで、多くのデザイナーや診断士などの支援者から注目を集めている。その講義の1つとして、資格の学校 TACが実施している「対話力向上講習」が採用された。

今回は、ODCの内海専務理事と事業推進部の石川氏・遠藤氏に、ODCの事業内容や認定制度について伺った。

※この記事は、2025年9月に行った取材に基づいています。

まず、(一財)大阪デザインセンターさんの現在の事業内容についてお聞かせください。

内海:大阪デザインセンター(ODC)は、1960年に発足した日本で最も歴史ある公設デザインセンターの一つです。私どもは「企業とクリエイターが交わるビジネスコミュニティ」として、デザインを軸にした産業振興と価値創造を支援しています。

事業領域は大きく3つで、①事業支援 ②研修・教育 ③機会創出 の三本柱で活動しています。1つ目の事業支援におけるデザイン相談が事業の大きな柱となっています。従来のスタイルでは、企業から相談があれば適切なデザイナーをご紹介し、そこまでで役割を終えるのが一般的でした。しかし、紹介して終わりでは、企業側もデザイナー側も十分な成果につながらないケースもありました。

そこで、現在は紹介の後も当センターで企業とデザイナー双方に伴走し、責任を持ってフォローする仕組みをとっています。企業にとっては不一致のリスクが軽減されて安心して相談でき、デザイナーにとっては壁打ちしながらも企業に正当に評価される環境が整います。

したがって、デザイナーは2回目以降の案件については自分の提案やデザイン力次第で発注を再度受けることができ、企業とデザイナーにとって持続可能な関係が築けるようになりました。


石川:10年20年も関係性が築けているデザイナーさんとお客様もいて、その後のお話を伺ったり実際に完成したパッケージを見せていただいたりすることもあります。また、相談内容も変化しています。

以前は「パンフレットをつくりたい」「パッケージをデザインしてほしい」といった単発の依頼が多かったのですが、最近では「より良いパンフレットを作るために一緒に考えてくれる人がいい」「新規事業を立ち上げたいがどこからやったらいいのか、相談したい」「ブランディングの方向性を一緒に考えてほしい」というような、一緒に考えて欲しいといったご要望や経営に直結するご相談が増えています。

そのため、デザイナーだけでなく中小企業診断士やプロデューサーなど、異なる専門性を組み合わせたチームで支援にあたるケースが増えてきました。こうした伴走型のサポートは、長期的な成果につながりやすいと感じています。


専務理事 内海 美保 氏


その他の事業についてはいかがでしょうか。

内海: デザイン相談以外に、2つ目の研修・教育事業の中のセミナー事業も当センターの大きな柱です。例えばマーケティングやパッケージデザインといったテーマを取り上げ、企業の方にもデザイナーの方にも実務的に役立つ内容を提供しています。単に知識を学ぶだけでなく、参加者同士が交流し、新たな協業につながる場にもなっています。

他にも会員事業としてコワーキングスペースを拠点にしたコミュニティ形成に力を入れています。ここでは、異なる業種やバックグラウンドを持つ会員同士が自然に出会い、互いの強みを活かした新しい試みに発展することが少なくありません。

3つ目の機会創出では、オンライン上で企業とクリエイターのマッチングも行っています。こうした事業の三本柱=デザイン相談、セミナー、マッチングを通じて、ODCは地域産業の成長を支えるハブの役割を果たしています。

研修・教育事業の中で新たに創設された「デザイン経営パートナー認定講座」についてお聞かせください。

遠藤: この講座を立ち上げた背景には、企業を取り巻く環境の変化があります。これまでの大量生産・大量消費を背景にして商品・サービスを提供していれば売上が上がっていた時代からVUCAの時代となり、事業環境が大きく変化したことで、あらためて事業を見直す必要性が出てきました。

同じくデザイナーもパンフレットやパッケージなどの成果物をつくる役割が中心でしたが、今や企業の経営そのものにデザインの力が求められています。ブランディングや新規事業開発といった上流工程に関わり、経営者と一緒に方向性を考える役割を果たすことが期待されているのです。

しかし現状では、多くのデザイナーにも経営的な知識が不足していたり、経営者と対等に議論する経験を持っていなかったりします。一方、企業側では中小企業を中心に「デザイン経営」の重要性について認知が不足しています。

「デザイン経営」とは、デザインの力をブランド構築やイノベーション創出に活用する新たな経営手法です。2018年には経済産業省・特許庁から「デザイン経営宣言」が出されていて、国もデザインの力を経営に活用することを推奨しています。

そこで、デザインと経営を橋渡しする人材を育成するために「デザイン経営パートナー認定講座」を設けました。対象はデザイナーだけではなく、中小企業診断士や経営コンサルタント、あるいは事業プロデューサーといった幅広い人材が対象です。

デザイナーには経営面の知識・スキルを修得してもらい、診断士やコンサルタント、プロデューサーにはデザイン的なマインドを理解してもらうことを目的としています。そして、確かな企業支援スキルと柔軟なデザインマインドを兼ね備えた人材を育成し、中小企業のデザイン経営を一緒に実践する伴走者を数多く輩出することがミッションとなります。


事業推進部 遠藤 賢 氏


具体的にはどのようなプログラムなのでしょうか。

遠藤: 具体的なプログラムは、「総論」「マインドセット」「スキルセット」「実践」と段階的に学習していく内容で、経営デザインシートやデザイン経営コンパスなど、実際に活用できるツールを用いて学びます。ワークショップやロールプレイングも多いことが特徴で、座学だけではなく身体的に体感しながら実践的に学ぶことができます。

こうした体験を通じて、単なる知識習得ではなく「現場で活かせる力」を磨くことができます。また、パートナー認定後は、オープンバッジを付与し、ODCのネットワークを活かして案件に関わる機会もあり、学んだことをすぐに実務に活かせる環境を整えています。また、コミュニティ活動への参加やアフターフォローを受けることもできます。

プログラムの一環としてTACの「対話力向上講習」を導入されたということですが、その効果についてお聞かせください。

内海:デザイン経営を実践するうえで最も重要なのは「傾聴力と対話力」だと考えています。デザイナーはこれまで現場の担当者とやり取りすることが多かったのですが、経営者と直接対話する機会は限られていました。そのため、経営者の思考や立場を理解し、適切な問いを投げかける力が不足しているのが現実です。

そこで導入したのが企業経営アドバイザー資格の認定要件となっている「対話力向上講習」です。参加者は経営者役、面談者役、評価者役に分かれてロールプレイングを行います。経営者役を体験すると「どんな質問が負担になるのか」「何を聞かれると本音を話したくなるのか」が実感できます。評価者役では他人のやり取りを客観的に見て、自分の癖や改善点に気づくことができます。

受講後の参加者からは「質問の質が変わった」「相手が自然に話し始めるようになった」といった声が多く寄せられています。これは単なるスキル習得にとどまらず、経営者と信頼関係を築く姿勢そのものを養うものだと感じています。また、対話力を磨くことで、デザイナー自身が「経営者と一緒に未来を描く伴走者」であるという自覚を持てるようになります。この意識の変化こそが、認定制度の真の成果だと思っています。


石川:実際に受講して感じたのが、ロールプレイングでそれぞれの立場でお話しする際に、客観的な視点になるんです。そうすることで発言が変わるというか。頭の中では「相手の立場にたって質問をする」というのはわかっているのですが、実際には自分の思いや答えをぶつけてしまいがちです。

それを「経営者」「支援者」「評価者」という立場をグループワークで回転させるからこそ、思考の切り替えができている。質問内容が変わっていて面白いと感じました。


事業推進部 石川 佳名子 氏

大阪デザインセンターさんの今後の展望について教えてください。

内海:今後は産学官の連携をさらに広げていきたいと考えています。立命館大学との連携協定をはじめ、学生をプロジェクトに参画させる試みを進めています。学生にとっては実践的な学びの場となり、企業にとっては新しい視点を得る機会になります。また、会員デザイナーが大学教育に参画する可能性も模索しており、デザイナーの社会的地位向上にもつながると考えています。


石川:今まで、デザイナーたちは上層部が決めた方針に従ってデザインを行ってきた背景があり、その中でジレンマを抱えていたと思います。しかし、経産省・特許庁が推進する「デザイン経営」の考え方は、デザイナーが経営者と同じ立ち位置から経営をサポートするという新しいアプローチを提供しており、大きな後押しになっていると感じています。

私は、デザイン的な発想を経営に取り入れることで、企業にイノベーションが生まれ、社員たちがよりワクワクして仕事に取り組めるような環境が整うと信じています。 そのため、デザイナーと一緒に仕事をする楽しさを、もっと多くの経営者に知ってもらいたいという思いで、この活動を続けていきたいと考えています。


遠藤:このVUCAの時代において、デザイン経営パートナー認定プログラムは非常に意義深いと感じています。ODCの中核事業として定着させ、デザインと経営を橋渡しする人材を育成することで、企業の競争力強化と社会的価値の創出に貢献したいですね。


内海:もう一つ、将来的な野望としては、ODCを中心に会員や企業を巻き込んで、みんなが好循環の中で幸せになれる“大阪デザインセンター経済圏”のようなエコシステムを構築できたらいいですね。


対話力向上講習 大阪デザインセンター

Profile

一般財団法人 大阪デザインセンター
1960年、大阪デザインハウスとして設立。現在、会員数約250名。大阪市を拠点に会員のコミュニティを形成し、外部企業を含めた「事業支援」「研修/教育」「機会創出」などのソリューションを提供している。デザイン思考を取り入れた経営手法「デザイン経営」の普及に尽力し、「デザイン経営パートナー認定制度」を導入。デザイナーならではの発想力と経営コンサルティングの専門性を融合し、中小企業の伴走支援者となり得る人材の育成を目指している。

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